[3448] プレパフォーマンス・ルーチンという魔法

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《しっかり朝ごはん+夜9時以降は食べない》

■装飾山イバラ道[117]
 プレパフォーマンス・ルーチンという魔法
 武田瑛夢

■おかだの光画部トーク[96]
 夜中に食べちゃダメ
 岡田陽一

■ローマでMANGA[62]
 ユーリ、第二部に進む
 midori




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■装飾山イバラ道[117]
プレパフォーマンス・ルーチンという魔法

武田瑛夢
< https://bn.dgcr.com/archives/20130326140300.html
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新学期が始まる前にいろいろと医者通いを済ませてしまえと、歯科などに通っていたけれど、健康診断というものも年度の3月中までが期限なので行ってきた。注意書きには3月は混み合うので早めに検診に行くように書いてあるけれど、それを読むのが2月3月なもんだからしょうがない。

自らギリギリを選んでいる訳ではないはずけれど、ギリギリになってしまうのだ。ギリギリになりがちな学生たちへのアドバイスがあるとしたら「ギリギリでもいい、決して遅れるな。」だと思う(笑)。自分がギリギリをよくやるから、ギリギリの良さも危うさもわかるのだ。

健康診断は最近多い検診専門のセンターに行ったので、段取りも素晴らしくスムーズに運びすぎて、待ち合い室の「婦人画報」がじっくり読めなかったのが不満なくらいだ。

検診着の下はパンツだけとか、ここからはスリッパとかのルールさえきっちり緊張して聞いておけば恥をかくこともない。今年は運動測定系はない普通の健康診断に行ったので、あっけなく終わってしまった。結果はまだ出ていない。

●歯医者さんのルーチン

私が行っている歯医者さんはとてもせっかちで、先生一人で4台くらいの診察台をまわっている。予定時刻に行っても、自分の診察が始まるまでに時間がかかるタイプだ。

たぶん歯科医は一人しかいなくて、他の歯科衛生士さんと手分けしているのだろう。先生の歩きやしゃべりは2倍速で、診察台に来ると4倍速くらいで動作する感じだ。

昨日も、横に先生と助手のお姉さんが来て「さて始めます」とやっと私の番になった。診察台を倒してイザ歯を削る体制に入ったと思ったら、さっと別の患者さんのところへ行ってしまった。先生の中で何かの順番が狂ったのだろう。しょうがないので待つ。

しばらくして先生が戻って来て「はい、じゃあ一回口をすすいで下さいねっ」私は一回口すすぎ。その間に先生は手を洗いに行ったみたいだ。そして戻ってくると「はい、じゃあ一回口をすすいで下さいねっ」と言うので「今しました」と伝えると、「......もう一回して下さいねっ」。

私はまぁ別にいいかと思ってうがいをしていると、となりのマスク姿の助手のお姉さんの肩が笑ったように揺れた気がした。

助手のお姉さんもせっかちな先生の数倍速の動きには、たまに「無駄」が発生していることに気がついているようだ。きっと、先生独特のリズムを開始するための初期動作が整わないと、すべては始まらないのだ。私はおっとり系なのでそんなの全然かまわないけれど、おっとりしている間にこうして観察しているのでいろいろと面白い。

助手のお姉さんが歯に詰めるペーストを練るのに少しでもモタモタすると、先生は道具置きの机の上の確認作業と、金属棒を完璧な角度で手に持つ動きをもう一回やっている。ただでさえ忙しいのに、何度も確認するのは大変なように思うけれど、作業を始めるタイミングのすべてをピタっと揃えるためのようだ。

私も自分でジェルネイルをするので、液体のジェルペーストを爪にのせて硬化用のライトにあてるまでの動作に流れが必要なのはよくわかる。他には、例えばハンダごてのハンダ。液体が固くなるまでにかかる時間が短いので、一瞬の集中のクオリティが肝心だ。一瞬なのに、固まった後は形として残り続けるのだからとても大事な瞬間なのだ。

歯科の先生のように、「瞬間を固定する」作業の人の前後の動作が少々不思議だとしても、しょうがないと思う。それはガラス工芸や飴細工などでも同じで、体をリズムにのせて作業のピークを完璧に持って行くための儀式のようなものなのだから。

●大丈夫、こうすればいつも通り

歯科の先生も作業の前には無駄に思える繰り返しがあっても、作業自体は無駄のない完璧さで治療をこなしているのがわかる。実際、すごく優秀な先生だと思っている。こういった作業の前の繰り返し動作は他の職業でも必要なようだ。

野球の選手が、打つ前や投げる前に行う一定のルーチンの動作を「プレパフォーマンス・ルーチン」と呼ぶのだそう。イチローにもバットを立てる特徴的な動きがあるし、体操の内村航平が跳馬の前に腕をのばしてチョイチョイやるあれもそうだ。独自のクセのように見えるその動きは緊張を解きほぐしたり、どんな場所でもいつもの自分の場所にする効果があるように見える。

自分の最も良い状態を呼び出すための動きは人それぞれで、当たり前だけれどルーチンだけをマネしても、パフォーマンスの結果はマネできない。練習で筋肉や神経に結びつけた心の糸は、その練習を積んだ人だけが引っ張り出すことができるのだ。

日本語だと「げんかつぎ」とも通じると言うけれど、肉体的な動きだけでなく、心の安心のためでもあるのだから近い要素もあるのだろう。

いずれにせよ「がんばろう」としている姿であるには違いないので、人の目には魅力的に映る。「私は今がんばろうとしています」と見る人にも伝わるので、応援している人を落ち着かせる効果もあるのだと思う。

フィギアスケートの真央ちゃんも、リンクに上がってから自分のポジションに立つ前に腕を横に出してシュっと握るような動作をよくしている。私はそれを見るたびにいつも通りにがんばろうとしている気持ちをはっきりと確認することができるし、きっと大丈夫だと思えるのだ。

それに気づく人たちが一斉に安心して作り出す空気も大切な要素だと思う。「大丈夫、こうすればいつも通り」という魔法。そんな魔法が必要なほど真剣になる瞬間を持ってみたいなと憧れる。

【武田瑛夢/たけだえいむ】eimu@eimu.com
装飾アートの総本山WEBサイト"デコラティブマウンテン"
< http://www.eimu.com/
>

すごい吹雪の映像があったかと思えば、東京では桜も散る勢いで季節が入り乱れている印象だ。pm2.5も心配だけれど、うちには震災の時に買ったN95マスクがある。苦しいから使わないでいたけれど、たぶんもう期限切れだ。花粉マスクとN95マスクの中間くらいの精度のマスクがあればいいのにな。


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■おかだの光画部トーク[96]
夜中に食べちゃダメ

岡田陽一
< https://bn.dgcr.com/archives/20130326140200.html
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予想外に早い桜の開花で、「お花見の予定を前倒しに変更で大変」というニュースが流れるほど、一気に春がやってきたようです。先週、22日金曜日に東京出張でしたが、満開でした。神戸はあちこち咲きはじめたくらいで、まだ満開までもう少しかかりそうです。

カレンダーを見てみると今週で3月も終わり。一年の1/4が終了です。ついこの間お正月だったのに......。4月が終わると[ふわっと]を始めてまる一年となります。速すぎます。

最近、久しぶりに会う人に「痩せた?」とよく聞かれます。元がもうダメなくらい太っていたので、痩せたといってもまだまだ標準体重よりはオーバーしていますが、この一年で18kgくらい体重が減り、ベルトの穴が2つ移動しました。

といっても、ダイエットを意識してジムに通い始めたとか、食事制限など何か特別に痩せる努力をしたわけでもなく、普通に生活をしている状態なのです。現状で規則正しい生活をしていて、更にダイエットを考えている人には何の参考にもならないと思いますが、思い当たる理由を考えてみました。

そもそも、会社を始める前は本当に不規則で不摂生な生活を10数年続けていました。しっかりと時間を区切って仕事をすればよいものを、だらだらと意味なく明け方まで起きていて、昼間に片付ければいい仕事を夜中にやっていた日々でした。当然、夜中に小腹が空くので何かと飲んだり食ったり、時には普通に食事か! というくらいがっつり食べたりするので、そりゃ今から思うと太りますよね。

よく「夜9時以降は食べない方が良い」と聞きます。一日の生活リズムが半日程度ズレてるのだから、そんなの関係ないと思っていましたが、どうやらそれは人間の本能だそうで、夜中に食べると太るようにできているみたいです。

太古の昔、まだ地球上を恐竜が支配していた頃の人類の祖先は夜行性だったそうです。昼間の明るい中をうろうろしていたら外敵ばかりで危険なので、夜暗くなってから食べ物を探し活動をしていたのです。当然、その頃は電気もない世界ですから、夜は真っ暗、月明かりだけです。

そんな中で、生きるために食べ物を探し、見つけたら食べ、体内に蓄えるを繰り返していたそうです。その頃から、夜中に食べたものをしっかりと蓄えるというプログラムが人間のDNAの奥深くに記憶されていて、この飽食の時代の現代になっても、夜中に食べたものはしっかりと蓄えるのだそうです。

そして、飲んだ帰りにお腹がいっぱいにもかかわらずラーメンが食べたくなったり、夜中の仕事中にコンビニ行ってあれこれ買って食べたりしてしまうみたいです。本能的に......。

忙しくて時間が不規則で夜中まで仕事をしているみなさん、心当たりありませんか? 「まにまにころころ」を連載している川合和史@コロ。さんとか、よく夜中にコンビニ行ってるのをFacebookなどで見かけますが、気になります。

わたしが体重が減ったのは、元々かなり余分だった夜中の摂取分が、規則正しい生活になったことで、まるっとなくなったからじゃないかと思います。

神戸元町まで一時間ちょっとを通勤するようになったので、必然的に朝は早起きになり、小学生以来食べる習慣のなかった朝ごはんを毎日食べて、しっかりと一日三食。晩ごはんを食べた後、夜中はちゃんと寝る。そんな当たり前のことが今まで出来てなかった分が、どんどん血となり肉となっていたようです。

なので、ここから更に標準体重に近づけるためには、運動などの努力が必要になるのかもしれません。とにかく今、太り気味でダイエットを考えている人は、しっかり朝ごはんを食べて、夜9時以降は食べないようにするとかなり効果あるかもしれませんよ。

【岡田陽一/株式会社ふわっと 代表取締役 ディレクター+フォトグラファー】
< mailto:okada@fuwhat.com > < Twitter:http://twitter.com/okada41
>

3月9日に発売になった、弊社スタッフが執筆した「よくわかるFireworksの教科書」ですが、いま特別プレゼントキャンペーンをやっていますよ。ご購入いただいた方対象に、ページ数の都合で泣く泣くカットになった部分をPDFでゲットできるそうです。詳しくはリンク先をご参照いただいて、Web制作でFireworksに興味のある方は是非一冊お手元に置き参考書代わりにお使い下さい。
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■ローマでMANGA[62]
ユーリ、第二部に進む

midori
< https://bn.dgcr.com/archives/20130326140100.html
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●これまでの話。

ひょっとして初めて私のテキストを読む人や、たまに読むのでつながりが分からなーい、という人のために復習します。私は1989年から10年間、講談社モーニングのローマ支局として、イタリア人作家と編集部の橋渡しをしていました。この事実を記録する意味も込めて書いてます。

講談社モーニングは1982年から(つまり「COMICモーニング」というタイトルで創刊された時から)海外の作品を掲載する企画を立て、日本の週刊誌に書き下ろしをする作家を海外に求め始めた。

母国ですでに出版されたものを翻訳掲載するのではなく、あくまでも書き下ろしを求めた。日本以外ではほとんど本の閉じ方が逆(原稿を反転することになる)という事の他に、日本の市場に向けてMangaの文法で書かれた外国人作家の作品を載せる、つまり新しい風を送るという目的をもって企画が出発した。

経緯を見てみると、82年にアメリカとデンマークからMangaではなくイラストの掲載があり、一年飛んで84年に台湾の作家の作品が掲載された。87年にはアメリカの作家の作品二編(うち一遍は全三回)が掲載され、88年には韓国とアメリカ作家の作品の連載が始まった。韓国のものは20回、アメリカのものは短いエッセイが97回という長期連載になった。

89年、90年にはアメリカの作家が単発も含めて9人を数えた。ただしアメリカ発の作家は素人くさい作品で、93年以降は掲載されていない。

そして、この頃我らがイタリア人作家がモーニングに登場するのだった。編集部とコンタクトを取って、担当編集者がついたイタリア人作家は4人いた。いずれもイタリア内外でプロとして活躍している作家で、今このテキストで話題にしているイゴルトはその一人だ。

・ローマでMANGA[54]アモーレの始まり
< https://bn.dgcr.com/archives/20120725140100.html
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Mangaとそれ以外のコミックスには、その表現法において大きな隔たりがある。Mangaはキャラの感情を中心に構成し、外国のコミックスは起こることの時間軸を中心にして構成する。互いに自分の構成が普遍なものと思っているから、モーニング編集部と外国人作家が仕事をしていくと、どちらも予想しなかった壁にぶつかった。

イゴルトと編集者も(間に入った私も)この壁にぶつかり、乗り越えて「ユーリ」第1部の連載を終えて単行本発行にこぎつけた。

今回は「ユーリ第二部」の話。

●ユーリ制作の厳しい条件

「ユーリ1」は各エピソード8ページのオールカラー。各エピソードは読み切り。セリフはほとんどなく、断ち切りの大きいコマを多用して絵本のような印象を新しい形態のMangaとして出発した。

日本のMangaはほとんどが「片起こし」で構成される。つまり、最初のページが本を開いた状態で左側のページに来る。見開きの状態で何枚か本文が続き、最後のページは右側のページで終わる。

「ユーリ1」もMangaだから、当然そのように構成された。週刊誌連載の時は気にならなかったのだけれど、いざ本一冊にまとまってみると、この特徴が読みにくい構成になってしまうのがわかった。

見開きを構成するのが、右ページに前エピソードの最終ページ、左ページに次のエピソードの1ページ目、ということになるのはお決まりだ。「ユーリ1」の場合は、ほとんどコマ割りされてないページが続くので、ひとつのエピソードから次のエピソードへビジュアルではっきりそれとわかる境がない。

「ここから別の話」という心の準備がないまま次のエピソードに入ってしまって、意味がわからなくて後戻りしたくなったりする。各エピソードの1ページ目にはエピソードのタイトルが入っているのだけれど、「ここから別物です!」というお知らせ度が低い。

大事な特徴が足を引っ張ることになってしまった。企画者で担当編集者の堤さんは、第2部ではあっさりとこの特徴を取り下げることにした。オールカラー、各話8ページ読み切り、はそのままでコマ割りをしましょうということになった。イゴルトの絵の巧みさを印象着ける意味もあって、堤さんは作家にとって厳しい条件を出した。

・1ページに付きコマは最高6コマまで(今の傾向としては当たり前だけど、この1996年当時1ページ6コマは少ない方だった)。
・1コマ目は大きくしてサブタイトルと作者名を入れられるようにする。
・各エピソードに必ず大ゴマをひとつは入れる。できれば1ページまるごと使う。
・各エピソードに別のキャラを立ててユーリを絡ませる。
・1の時のようにト書きで進むのではなく、会話で進む。
・ユーリの感情を描く。
・ツキイチで掲載。

イゴルトは「8ページ」で、「1ページ6コマ」で、「大ゴマをいれ」て、「ト書きではなく会話で」ユーリの感情も描くなんて無理だ! と当初は騒いだけれど、俳句のように規則の中にあって、その不自由さの中から生まれる美というものがあると編集者に諭されて、というより「この条件は曲げない」という編集者の強い意志に屈して、この条件下でネームを作成していった。

今回は、全部できてから掲載開始ではなく、日本の作家と同じように制作しながら掲載していく。

読み切りでありながら「ママを探す」という旅の目的に沿うために、一話目はユーリの星からの出発前夜にし、次からは旅の途中で出会う様々なおかしな人物を介してユーリの可愛らしさや秘密を出していくことにした。

●日本の大会社の内部事情?

第2話ももちろん、まずネームを制作し、ローマを介してファックスで編集者に届け、編集者のダメが出たら直し、OKを待って作画に入るという日本の漫画界で当たり前の行程をたどっていく。作画と同時にその後、またその後のネームもドンドン提出していく。

そして順調に次の作画が決まって行った。

○第一話「春のシンフォニー」(日本風家屋での日常。ほぼロボット・ウバがママの手がかりの報を受け取り、ママを探す旅へ出発を決める)

○第二話「僕の出会ったマカロニッラ」(海の底の目が見えない怪獣)

編集者も大乗り気の様子で、イゴルトから受け取った作画をカラー写真にして保存することにしたと、私にも郵便で送ってくれた。今なら、高解像度でスキャンすれば済む話なのだけど。第一話は写真で、第二話はカラーコピーで作画が手元に残っている。

○第三話「アーザ・ニーシ・マーザは魔法の言葉」(精霊がユーリの寝室に入ってきて魔法の言葉を教えてくれる。この言葉を唱えてユーリはママの姿を見ることができた)

○第四話「スペースオペレッタ」(女宇宙海賊サイレーンに捕まったウバとユーリ。ユーリの子供特有の駄々でサイレーンは嫌気が差して二人を釈放する)

○第五話「イタリアンジェラート」(アイスクリーム屋のウバとユーリ。三人の悪いプロレスラーがウエイトレスに嫌がらせをする)

この三話に関してはカラー写真もカラーコピーもなく、印刷所から出てくるゲラ刷りのみ。

第一話は4月、第二話と第四話は7月、第三話は8月、第四話と第五話は9月に最終の翻訳を私から編集部に送っている。

第一話の掲載は7月だ。第一話掲載が始まってから第二話以降の作画をしていることになる。8ページといえどオールカラー。しかも手塗り作業で何度か重ね塗りをするから手間がかかり、しかも当時は生原稿をイタリアから郵送するのだから、8月掲載予定の第二話を7月に送るというのはちょっと怖い。

このころ、編集者の反応速度が落ちていた。イゴルトは編集者に、日本滞在時の記憶から、日本の作家とは少なくも週に一度は打ち合わせをしている。自分ともファックスを通してそのようにしてほしいと再三伝えていた。

年に一度、反応が悪くなったような気がする。私は講談社の正社員ではなかったから様々な内部事情を知るよしもなく、憶測でしかないのだけれど、日本の大会社にある異動に関係が有るのではないかと思う。

堤さんは創刊以来かなり長く同じ編集部に所属しているので異動の時期になると、その危険が大いに高まったのだと思う。異動されないようにあちこち手を打っていたのか、たまたま他の用事と重なるのかわからないけれど、通信ファックスの文体もこの時期はなんとなく丁寧さに欠けるように思えた。

○第六話「Back in the USSR」(宇宙を一人で遊泳するソ連の宇宙飛行士。ソ連が崩壊したことを知らないでいた。もう家へ帰れない。一人ぼっちの宇宙飛行士を慰めるユーリ】

このネームで、イゴルトは「大きなコマ」を活かすために、見開き全体を一画面とみなして背景のように大きなコマを配し、その上に浮かぶように小さなコマを幾つか配するという技を編み出した。

1ページ目は全部を使って1コマ。2〜3ページの見開きは遊泳する飛行士を横長に、大画面の下の方にちさなコマを三つ並べて計4コマ。見開きで4コマだ。

その後の見開きも、背景をすべて断ち切りにして宇宙を描き、そこに浮かぶように2コマから4コマを配している。8ページ目も1枚で1コマだ。会話は最小限度に抑えられ、取り残された宇宙飛行士の悲哀とユーリの健気さが出ている。

これは1995年に、資金不足と政治の混乱のせいで予定を超えた478日滞在を余儀なくされたソ連の宇宙飛行士の話を怒りを覚えて出てきた話。「非人間的だ!!!」とイゴルトが電話口で怒っていたのを覚えている。

この新しいやり方にイゴルトはホクホクしていたけれど、日本からの反応は鈍かった。あまり受け入れなかったというより、レスポンスが遅く、あまり熱心なやり取りがないままにイゴルトの案のままに掲載になった。

結局、堤さんは異動にならなかったのだけれど、第七話の「イセエビマン」は白黒のコピーだけで、しかも「最高6コマ」という掟を破って平均8コマ、10コマのページもある。第六話とがらりと構成が変わっている。

この頃、メールでのやり取りが始まっていて、古いMacのサルベージをしないと通信内容がわからないのだが、トーンが下がっていったという記憶がある。

海外作品掲載企画が正式に打ち切りになるのは1999年の9月なのだが、1996年後半のこの辺りから、その話が出始めていた。

バブル崩壊の影響がじわじわと押しよせてきた頃だ。

ユーリ第二部は、単行本収録になるほどの量が出てくる前に流れてしまうことになった。

【みどり】midorigo@mac.com

ユーロ、ユーロ。世の中不景気で失業率があがり、家計が月末まで持たない家庭が60%。我が家もちゃんとその中に入っている。日本も不景気なお陰で、私の主な収入源であったガイド業も閑古鳥。もうすぐ還暦の身をやとってくれるところを探すのも困難。旦那が公務員なので、足りないながらも毎月ちゃんと入ってくるのがありがたい。

三橋貴明氏の「2013年、大転換する世界 逆襲する日本」をアマゾンで購入して読書中。
< http://amzn.to/X6COli
>

今はデフレであると認識し、デフレ対策をしようとしているのは世界でも安倍政権だけ(オバマも少々)。日本が見本を示し、世界が少しづつそれを見習っていくでありましょう。

イタリアが(ユーロが。ユーロのお陰でイタリアは独自に為替レートを変えたり、関税を引き上げたり引き下げたりの操作ができない)デフレ対策をして、その効果が現われるまで、草木を食んでやり過ごさなくちゃ。

主に料理の写真を載せたブログを書いてます。
< http://midoroma.blog87.fc2.com/
>


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編集後記(03/26)

●レンタルショップGEOで「第3回ビデオ屋さん大賞」という小冊子をもらった。日本中のレンタル店とセル店で働く目利きが、2012年で一番面白かった、人にオススメしたい作品を選出するアワードだという。対象は2012年リリースの約4600本。ビデオ屋さん大賞のほか、未公開映画、海外TVドラマ、アジアTVドラマ、国内TVドラマ、個人賞の各部門がある。ビデオ屋勤務が目利きとは限らないから(本屋大賞も同様)、あまり本気にしないで、そんなに言うなら見てみようかと参考にする程度でいいのだ。

第3回の大賞は「ドライヴ」(知らない)、2位「モテキ」(知ってたけど微妙)、3位「宇宙人ポール」(知ってたけど微妙)だった。一本も見てないじゃないか。30位までで、見たことあるのは5位「リアル・スティール」、7位「ダークナイトライジング」、9位「ステキな金縛り」、12位「アベンジャーズ」、15位「ミッション・インポシブル」、20位「猿の惑星:ジェネシス」、24位「ロボット」しかない。30本中わずか7本である。あとはあまり食指が動かないタイトルの方が多い。そこで「ドライヴ」と「宇宙人ポール」を借りて来た。

「ドライヴ」は、スタントドライバー兼殺し屋が、愛する女性のためにひとりでマフィアと戦う、クールなハードボイルドだ。主演の男は無表情で無口、やさしくもの静かに見えるがとんでもなく凶暴で、予想外な純情。薄幸のヒロインがなんてかわいいんだ。守ってあげたいタイプNO.1である。キャリー・マリガンという女優、この人のほかの出演作品を見たくなった。安易なハッピーエンドではないところがまたいい。大賞に納得だ。

「宇宙人ポール」はくだらないバカ映画だと思っていた。だったらBC級マニア御用達として必見のはずなのだが、なぜか今まで手に取らなかった。こんなバカバカしい、そして愛すべき映画とは知らなかった。不明を恥じなければならない。SFオタク青年ふたりが陽気な宇宙人ポールと遭遇し、彼を星に還すための道行きで起こる様々な危機、といった話。「E.T.」「未知との遭遇」をはじめ、多くの名作SF映画ネタをぶちこんでいてニンマリさせられる。イントロとエンディングがきれいに辻褄があっていて感動した。むしろこっちを大賞にしてくれ。(柴田)

< http://www.kinenote.com/main/feature/videoyasan03/detail01.aspx
>
第3回ビデオ屋さん大賞
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B008KX5KZY/dgcrcom-22/
>
ドライヴ
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B009RBN046/dgcrcom-22/
>
宇宙人ポール

『おじちゃんJK』リアル女子高生に超モテモテ!ネットでじわじわ話題。
[秒速SUNDAY]←GrowHairさんだよ
< http://www.yukawanet.com/archives/4424964.html
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●宝塚歌劇『南太平洋』を観た。名曲揃いで、ミュージカルって音楽が大切だなぁと改めて思わされた。気持ちよい曲が聞け、終わった後に頭の中で再生され続けると満足度が高い。素晴らしい演技の主要人物ら。脇の人たちの踊りはキレキレであった。

テレビで映画を観た覚えはある。子供の頃か学生時代、夜中のミュージカル特集だったかな。曲は覚えているのに、ラストシーンは覚えていなかった。宝塚のでほろっと来て、これを覚えていないってことは、その頃の自分には理解できていなかったか、ながら見してたかだなと思ったりした。

客層は高め。きっと昔に一緒に映画を観られたんだろうなぁと思う夫婦がちらほら。奥様が宝塚ファンで、普段は来ない旦那さんが同行って雰囲気の人たちもいた。で、旦那さんは普段来ないもんだから、お茶の間感覚で奥さんにストーリーの説明をされるのであった......。そこらで携帯(スマホにあらず)の音が鳴ったりもした。ホタルらの事前注意やアナウンスは聞こえていなかったようだ。でも腹は立たなかったわ。青春時代を回顧されて幸せそうだったもん。
(hammer.mule)

< http://kageki.hankyu.co.jp/revue/319/
>  公演案内
< http://ja.wikipedia.org/wiki/南太平洋
(ミュージカル) >
< https://itunes.apple.com/jp/album/south-pacific-original-soundtrack/id254427484
>
サントラ欲しくなってきた
< http://www.sponichi.co.jp/entertainment/yomimono/takarazuka/2013/
>
原作者は宝塚を観劇して『サヨナラ』という作品を書いた
< http://vintaka.fc2web.com/sayonara.html
>
『サヨナラ』は松竹歌劇団らしい

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ハッピー・トーク。HAPPY TALK。
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Honey Bun
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ワンダフル・ガイ。A Wonderful Guy
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バリハイ。Bali Ha'i
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後半が魅惑の宵。Some enchanted evening
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Cock-Eyed Optimist
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春よりも若く。Younger Than Springtime
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女が一番。There Is Nothin' Like a Dame
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Carefully Taught
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Dites-Moi。ラストシーンから。

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Gleeのマシュー先生が『春よりも若く』を歌ってる
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こっちは『Carefully Taught』