[3450] 婚活したっていいじゃないか、人間だもの。

投稿:  著者:  読了時間:27分(本文:約13,400文字)


《恋愛しろ結婚しろ。そして後悔しろ。》

■ショート・ストーリーのKUNI[137]
 月
 ヤマシタクニコ

■3Dプリンタ奮闘記[07]
 3Dプリンタ『接触篇』
 織田隆治

■歌う田舎者[43]
 婚活したっていいじゃないか、人間だもの。
 もみのこゆきと




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■ショート・ストーリーのKUNI[137]


ヤマシタクニコ
< http://bn.dgcr.com/archives/20130328140300.html >
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こんなことを知っているのは私くらいだと思うが、月は腰痛持ちである。上弦の月とか下弦の月とかいわれるかたちを思い浮かべるとわかりやすいと思うが、あんな姿勢でじっとしてると絶対、腰が痛くなるのである。

「おまえら人間はほんの何時間かパソコンの前にいるだけで腰が痛いといって騒ぐが、おれに言わせりゃおおげさだってんだ。おれなんか何千年、何万年もこうやって宙ぶらりんでいるんだからな」

もっともだ。で、そんな月は腰痛軽減と気分転換をかねて時々人間をいじりにいくのだそうだ。以下、月のぼやき。

おしゃれなバーでカップルが向かい合っている。
女がカクテルのグラスを見て言う。
「いやーん見て見て。グラスの中にお月さまが〜!」
「あ、ほんとだ。レモンがまるでお月さまだ。レイコちゃん、かわいいこと言うねー」

ふううん。そうかねそうかね。あほらしくなっておれはひゅうっとグラスの中に入り込み、代わりに半月形のスライスレモンをおれのかわりに夜空に放り投げた。レモンは機嫌良く空にぶらさがった。夜道を歩く人たちも気づかない。

「今夜の月はまるでレモンみたいね」
詩人が増えるだけのことだ。

女はストローでグラスをからからとかきまぜる。氷が冷たくて気持ちいいぜ。
「信じてくれよ。いまつきあってるのはレイコちゃんだけなんだから」
「ほんと?」
「ほんとだとも。ほかの女の子のことなんか考えられない。結婚しよう」

女はほほえむ。おれはふたりを見比べ、ぱちぱちぱちっとまばたきをする。録画を早送りにしたみたいに未来が見える。
「やっぱりうそだったじゃない。私だけだなんて言ってうそばかり! 新婚早々浮気ばっかりして!」
「ごごごご、ごめんよ!」

殴る蹴る。ものが飛ぶ。ふふふ。修羅場だ修羅場だ。やっぱりな。これだからあほな人間どもはおもしろい。恋愛しろ結婚しろ。そして後悔しろ。おれは満足してグラスから抜け出し、夜空のレモンと交代する。

次におれはあたたかな光に満ちたマンションの一室をのぞいてみた。まだ幼稚園児くらいの男の子が母親に爪を切ってもらっている。ふわふわのほっぺたがいちご大福みたいな、絵に描いたようなかわいい子だ。

「ママ、みかづき」
「あらま、ほんと。ダイちゃんの爪は三日月みたいねー」

母親はかわいくてたまらないように男の子にキスをする。広げたティッシュの上に、今切られたばかりの男の子の爪があった。薄くてつるつるで、確かに三日月型だ。

なるほどな。おれはさっそくその爪を夜空にぽーんと投げかけ、かわりに自分が爪になった。そしてぱちぱちぱちっとまばたきすると目の前の親子がどんどん年をとっていった。

「ダイちゃん、いったいどうするつもりなの! 学校にも行かず就職もせず毎日毎日だらだらと!」
「るせえなあ! 黙れババア!」

ダイちゃんは親を殴る。ぎゃっと叫んで泣き伏す母親。
「し、信じられないわ。あのかわいかった子が。うわああああああ」

かわいかったダイちゃんは見る影もなく太り、指には毛がはえ、爪は硬くて濁った色をしている。爪切りで切ったところでとても「みかづき」にはならないだろう。

ふふ、こんなものだな。おれからみりゃよくあることで、何が「信じられない」んだかわからんのだけどね。まあ盛り上がってけっこうだ。ばかな人間どもめ。おれはまたぱちぱちぱちっとまばたきして元に戻り、夜空に浮かぶはかなげな爪の三日月とチェンジする。

ついでにおれはスーパーの中のがらんとしたパン屋に行き、アルミのトレーに売れ残っていたクロワッサンを見つけるとそいつをぽーんと空に放ち、代わりに自分がトレーに乗っかる。ああ、楽ちん楽ちん。やっぱり寝っ転がるに限るぜ。空にぶら下がってるなんて冗談じゃねーぜ。

「見てみて。なんだか今日の三日月ってこんがり焼けたような色?!」
「気のせいじゃない?」
「そうね・・・気のせいよね。あはははは」
気のせいじゃねえっつーのに。クロワッサンだっちゅーのに。

「人間いじりはやめられないな。あいつらばかすぎる」
おれがそういってけらけら笑うといつも心配するのが雲だ。

「あんまり調子に乗るなよ」
「なんで。いいじゃないか。おれの勝手だ」
「なんか良くないことが起きそうな気がするよ」
「気のせい、気のせい!」

夕暮れというのはどことなくさびしげだ。そのどことなくさびしげな時間帯にどことなくさびしげな女が台所に立っている。うつむいて、まっしろな大根を輪切りにする。ことん、ことん。

失敗する。
「あああ」
まっすぐ切れなかったために下の方が透けそうに薄くなった輪切りを指先でつまみあげ「えっと」とつぶやく。

「大根の月、とかいう小説があったわよね。確かにこれって、夕暮れの月そのもの。うまいこと言ったものね、あの作者。ん? 作者ってだれだっけ」

女はどことなくさびしげに笑う。いや、これだけ「どことなくさびしげ」が集まったら、もうはっきりと「さびしい」女にちがいない。おれは少し興味がわいて大根を夕暮れの空にひっかけ、入れ替わりに自分が大根の月みたいな大根になりすまして女の顔の真下に横たわった。さびしげな顔だ。そして、ぱちぱちぱちっとまばたきをして女の過去を見た。

今より若い女が今と同じようにさびしそうに大根を切っていた。なんだこりゃ。おれはまたぱちぱちぱちっとまばたきをして女の未来を見た。今より老けた女がやっぱり夕暮れの台所で大根を切っていた。なんだこりゃ! 一生大根切りで終わるのか! あきれてまたぱちぱちっとまばたきするとおれの真上で女ははっと目を上げた。

「思い出した。宮部みゆきの小説だわ!」
いや、奥さん、それ間違ってるって。

なんだか不景気な女に行き当たったものでこっちまで不景気でさびしげで心の底までねずみ色に塗りこめられたみたいな気分になり、おれは大根の月はやめて、すっかり夜になった町を眺めまわした。

うまそうなにおいに誘われ、藍色ののれんがかかったうどん屋をのぞきこむ。テーブルでは中年のカップルが派手な音を立ててうどんをすすっている。

「ほんで私もびっくりしたんやけど、吉村さんとこの娘さん、やっぱり結婚す
 ることにしたそうやわ」
「おお、そらめでたい」
「めでたいゆうたらまあめでたいんやろけどなあ。ほんまに一時はもうあきらめたかと思てたけどしつこい、やない、一途な子やわ。いろいろ悪いうわさもある男やのにようまあ」
「本人がそれでええんやったらええがな」

「しやけど、絶対あの男、浮気するで。私、賭けてもええわ。いまは『ほかにつきあってる子はいてへん』とか何とかゆうてるらしいけどそんなもん信じたらえらいめにあうわ。そこんとこがまだわかってないねんな、もう、あほというか子どもというか、ああ、歯がいいてかなんわ。私、ちょっと言うたろか、言うのが親切と思えへんか、あんたどない思う」

にぎやかにしゃべるものでおれはついついこいつらにひきつけられた。
「おまえもでしゃばりやな。ほっとかんかい」
「そやろか。でしゃばりやろか、あとで後悔するのはあの子やし、私かて黙っとくのは何やしらん良心がとがめるわ。あ、それから太田さんとこの息子さん、ほれ、あのかいらしい子。お母さんも目に入れても痛うないようなかわいがりようで、それも無理ない思うけど、あれは気ぃつけなあかんと思うわ」
「なにが」
「ああゆうふうに溺愛されてた子に限って年頃になったら別人みたいになってしもて、ひきこもったり、あげくのはてに家庭内暴力ふるったりするねんて」

なんか聞いたことのあるような話が続いてないか? おれがそう思い始めたころ、女が目の隅でかすかに笑ったように見えた。ん? すると女は急に言葉を止めて丼に視線を落とし
「このかまぼこ、まるでお月さんみたいやな・・・」
丼の中の白いかまぼこを箸で示した。
「おお、ほんまや」

男が答え、おれもつられて見ると、確かに模様も何もない真っ白のかまぼこは半月に見えた。おれのいたずら心に火がつき、おれはさっそくかまぼこを夜空に放り上げ、代わって自分が丼の中に飛び込んだ。ああ、あったかい。いい湯だ。極楽極楽。おれはいい気持ちでおれの真上にいるおばはんを見ながらぱちぱちぱちっとまばたきをした。女の未来を見ようとしたら・・・見えなかった。

ん? じゃあ過去を、と思ったらそれも見えなかった。ええ? すると女がおれに向かって、にった〜〜と笑った。おれは心底恐怖で凍り付き、動けなくなった! 女の箸先が伸びてきた。

危機一髪で救ってくれたのは雲だった。雲はおれのピンチを発見し、急遽大量のおぼろ昆布になって丼の中に出現、一瞬でおれを隠してくれたのだ。そのあとはおれも雲も無事に丼鉢脱出。やれやれ。

「だから言っただろ。調子に乗るなって」
「いやあ、びびったよ。しかし何者だ? あのおばはん」
「わかってないのかよ。風に決まってるだろ」
「風?」
「そうとも。いつも我が物顔にそこらをぶいぶい吹きまくってる風。といってもほんとはおまえにとってはどうってことない相手なんだろうけどな。風がいくら吹いても月にかないっこない。ただし、かまぼこVSおばはんなら話は別だ」
「なんだ、じゃあふだんからおれに不満があって、ストレス解消に女装してたのか?!」
「知るもんか。だいたい、女装って・・・風の性別ってあるのか?」
「ちきしょー。すっかりはめられてたんだ!」

以上のような話を月は長々と、時々腰をさすりながらしゃべってくれた。私も腰痛持ちだから、そこは人間と月という違いを超えて共感できたりするところが、あるかもしれないし、ないかもしれぬ。

「ところで今、ここで私としゃべってるということは・・・いま空にいるのは?」
「あれは『満月ポン』だよ。だれも気づかないけど、ほら見てみな」
確かに、そういわれて見れば、夜空に浮かんだ満月はうっすら醤油色している。
「人間ってほんっと、バカだよな」

【ヤマシタクニコ】koo@midtan.net
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ところで私は腰痛持ちだけど肩こりはあまりない。美容院に行くと、途中で肩をもんでくれたり背中をぎゅーっとやってくれたりするけどいまいちありがたみがわからない。「それで?」な感じである。といっても「肩はいいから腰を」というわけにもいかないし。

満月ポン
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■3Dプリンタ奮闘記[07]
3Dプリンタ『接触篇』

織田隆治
< http://bn.dgcr.com/archives/20130328140200.html >
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さて、前回までは色々と前置きというか、基礎的な事について触れてきた訳だが、今回から「どんなふうに使っているのか?」について、雑談を交えながら、《ここ重要》というところを述べて行くつもりだ。凄くつまらない事かもしれないが、これが結構忘れがちなポイントで、個人的には重要事項なのだ。

まず、僕が導入した2012年1月。事務所に到着する時に時間は遡る。ただでさえ糞狭い事務所に、「ピンポ〜ン、宅配便で〜す」の声と共に、600mm角のデカイ段ボール箱が届いた訳だ。

狭い事務所の入り口をギリギリ通過して、とりあえず事務所にご案内。でかいぞ...。これ...。まずは梱包を解かない事には、事務所内を動き回るのも大変だ。まあ、一人親方の個人事業なので、人に迷惑をかける事もないのだが。

設置するのに「地べた」に置く訳にも行かず、まずは設置する台を用意するのだが、知り合いの大工さんに、木工で制作してもらうには重くなるし、いざという時に持ち出すのも大変。夜逃げ、とか、引っ越し、とか、ね。という事で、スチールシェルフの600角のBOXを作ってその上に設置した。

僕が購入した3Dプリンタの「3DTouch」は、要は昔懐かしい製図用プロッターみたいなもので、前後左右にヘッドが動き回る。製図用プロッターを使った人には分かると思うが、その際の音と振動は結構なものである。騒音と振動でご近所に迷惑をかけるばかりか、台が崩壊する恐れもある。

《ここ重要》自重も37kgほどあるので、しっかりした台を用意したいところだ。他の機種はもっと重いのである。

これは、購入前に動作を確認していたので、準備は万端だった。

さて、セッティングにかかる訳だが、これが結構一人で持ち上げるのは辛い。本当に辛い。箱から出す事が出来ず、箱の底をカッターで切り取って開封...。笑い事ではない。持ちにくいこれを、無理な体勢で持ち上げたらギックリ腰になるのは必定だ。

《ここ重要》みなさんも導入、セッテイングされる時には、複数の人が居た方がよいという事を忘れてはならない。

なんとか老体に鞭を打ってスチールシェルフ上に鎮座させる事に成功し、「さて、今日は終るか...」という考えが頭に浮かんだが、そんな事してたらいつまでたっても使えないので、説明書を片手にセッティングを開始する。

「3DTouch」は3mmφの樹脂の線材を原料とし、その線材が電線の巻いた物みたいなドラムに1kg巻かれている。まず、その線材を本体に付いているチューブに差し込んで、高温になるヘッドに誘導する。線材の先端を丸く削って、チューブを傷つけないように差し込んで行く訳だ。

なんとかヘッドに差し込みが完了し、ヘッドの動作とベッド(積層していく台)の水平をきっちり合わせ、さて、テスト出力。「3DTouch」は、PCを直接接続するのではなく、データをUSBメモリに記憶させ、そのUSBメモリを本体に差し込む。

《ここ重要》PCを占領しないので、その点もこのプリンターを気に入った理由のひとつだ。3Dプリントは、時間がかかる。その間、PCをずっと起動しておく必要もない。

まずは、初めからUSBメモリに入っているテストデータを出力するのがセオリーだが、性格の曲がった僕は、まず自分で作ったデータを出力したいと思い、そこまでやってからMacに向かって、3DCADを立ち上げたのであった。

とりあえず、僕の名前を3Dテキストで制作し、それを出力してみる事にした。「そんなのアクリルをレーザーカッターで切った方が早くね?」とかいう意見は却下。とにかくやってみたいんですよ。これ。

大小何種類かの文字を作って、レイアウトし、専用のソフトで構築データを作る。ここまではスムーズじゃん! って事で、USBメモリにデータを書き込んで「セッタップ!」という声と共に「3DTouch」に差し込む。

《ここ重要》仮面ライダーX、と分かったあなたは立派なオッサンです。

「3DTouch」のセッティング画面で、文字データを選択、スタートさせる。まずはヘッドの温度が上がって行くのが、画面に表示される。そして、PLA樹脂の溶解温度の195°に達した時に、冷却ファンの音と共にヘッドが動き出した。

「ウィィィィィィィィ〜〜〜〜〜ン!」
「こいつ。動くぞ...」 続く...。

【織田隆治】
FULL DIMENSIONS STUDIO(フル ディメンションズ スタジオ)
< http://www.f-d-studio.jp >


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■歌う田舎者[43]
婚活したっていいじゃないか、人間だもの。

もみのこゆきと
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結婚式であった。6年ぶりであった。
......あれ? あんた、それって先月の原稿を過去形にしただけじゃないの? すいませんすいません、やりなおします。やりなおせばいいんでしょ。

結婚しない、結婚します、結婚する、結婚するとき、結婚すれば、結婚しろ。サ行変格活用ですね。思い出しましたか。なに? 思い出せない? そんなことで赤門くぐれると思ってんのか。甘いっ、甘すぎる。いつやるか? 今でしょ!

しかし、わたしの気持ちにぴったりの活用形は、この中にない。

♪嫁に〜こないか〜 僕の〜とこ〜ろ〜へ〜♪
とか
♪ぼくの髪が〜肩までのびて〜君とおなじに〜なったら〜♪
♪約束どおり〜まちの教会で〜結婚しようよ〜んん〜ん〜♪
とかいってほしいのである。

つまり「結婚したい」のである。どうだ、参ったか。しかし、肩まで髪がのびた男とは、あんまり結婚したくないような気がする(※注:肩まで髪がのびた男とは、わたし的にはピンポイントで海援隊時代の武田鉄矢である)。いや、そんな贅沢いってる場合ではない。肩までだろうが白髪三千丈だろうが文句は言わぬ。

だいたい生まれてこの方、結婚願望というものを抱いたことなど、まっっったくないわたしである。そんなもの、犬にでも喰わせときゃいいんである。

そんなわたしが結婚したくなる時というのは、会社ストレスで死にそうになっているときと相場は決まっていたのだが、最近、もうひとつ結婚したくなる要因を発見した。すなわち貧乏で死にそうになっているときである。

手元不如意な日々に、将来が心配すぎて動悸はしてくるわ偏頭痛は襲ってくるわ、そのうち不安に取り殺されそうな気がする......ジャズダンスのレッスン後、踊り子仲間にそのような話をつらつらとこぼしていたところ、ある大御所がこのように仰せになった。

「あら、もみのこちゃん、結婚する気はないの? 婚活すれば? 婚活。死にそうな金持ちのじいさんと結婚すれば将来安泰。安心して生活できるわよ。近所のスミ子さんがそうだもの。あたしの友だちで、50代で婚活とかザラよ、ザラ」と言うではないか。

そんな都合のいいドラマみたいな話があるもんかと思ったが、実話であるらしい。高齢な金持ち爺さまと結婚したスミ子さんは、旦那がぽっくり逝ってしまったあと、莫大な遺産を相続。若いツバメと再婚し、悠々自適の老後を送っているという。ちなみにスミ子さんが70代なので若いツバメは60代らしい。

うむむむ、そうか。ドラマのような出来事も、意外とそのへんに転がっているものかもしれぬ。70代のスミ子さんに比べれば、まだわたしなどピチピチのピーチパイではないか。♪恋が始まる〜予感はピーチパ〜イ♪ 

よしっ! わかった。この際、婚活でもなんでもやってやろうじゃねぇか。いつ結婚するの? 今でしょ! ところが、その気持ちを一瞬にしてしぼませる出来事が起きた。

ある日の飲み会のこと。相手はちょっとした仕事がらみの人々で、一緒に飲むのは3回目くらいであったろうか。宴もそこそこ盛り上がってきたところで、わたしの目の前に座るA女史が、煙草をくゆらせながらこう言った。

「あのさぁ、もみのこって、文章読むとどんなおもしろい子かと思ってたけど、会って話したらつまんないね、全然」

アイゴー! 心はムンクの叫びである。つっ、つまんない......つまんない、ですか。

......えぇ、わかっていましたとも。ほんとのわたしは地味なヤツなんです。地味すぎて居るのか居ないのかわからないくらいです。なんつっても初めてデジクリに書いたコラムが「地味な女・地味な県」ってくらいですから。

[地味な女・地味な県」
< http://bn.dgcr.com/archives/20090724140200.html >

記念すべきデジクリの初回コラムで、「地味で不憫な県」の初代王者として福井県にその栄冠を授けたわけでありますが、何をかいわんや。わたくしの存在自体が、福井県以上に地味で不憫なのでございます。そんな地味なわたくしにどうしてオトコなどできましょうや。

家では威張り散らし、外では意気地のない人を内弁慶などと申しますが、わたくしの場合、コラム弁慶とでも申しましょうか。コラムの中では言いたい放題いたしておりますが、常日頃は口も聞けない地味な小心者で、もうジミー・もみのこと改名したいくらいです。

それになんと申しましても根がビビリスキーであるため、人間が怖くて怖くて仕方がないのでございます。

[私がビビリスキー]
< http://bn.dgcr.com/archives/20121220140200.html >

初対面の方とお話をするのは辛うございます。その方のことを存じ上げないのですから、どのあたりに地雷が埋まっているかわかりません。巨人ファンなのかアンチ巨人なのか知らないと野球の話題は振れません。

埼玉県民に知ったかぶりで浦和レッズの話など振ってみたら、大宮アルディージャのファンかもしれぬではありませんか。AKBが好きだというから、ゆきりんを褒めそやしてみたところ、みいちゃんは坊主にしたのにゆきりんは反省が足りないと逆鱗に触れるかもしれません。あな恐ろしや。人間とはなんと怖い生き物でしょう。ビビりすぎて何もしゃべれません。

誰の地雷も踏まない無難な話題といったら、お天気の話くらいです。こちらに話を振られたら、「今日もいい天気でよかったですね、ははは。そろそろ大隅半島から薩摩半島に火山灰の向きが変わる時期ですから、これからちょっと心配ですね」という毒にも薬にもならない話題を繰り返し、皆様の地雷に触れないように、小さく小さくなっているしかありません。

だからといって、何の話も振られないのも居場所がない気がして、そのような場合は、「とりあえず早く酔っぱらってしまえ!」とばかりに目の前の焼酎を飲みほし、ますます地味にへらへら笑うばかりでございます。

初対面がこんな具合でございますから、相手の地雷情報などリサーチできるはずもございません。2回目も3回目も、結局天気の話を繰り返すばかりの気弱なわたくしです。

そんなことでは恋人どころか友だちだっていないんじゃないの? と思われる方もいらっしゃるやもしれませぬが、失礼ですこと! 恋人はさておき、友だちなら幾人かおりましてよ! ホントだったらホントです。

話は少々さかのぼりますが、1月に関東を訪れたときのこと。べちおサマンサ殿が横浜案内をしてくださったのですが、伊勢佐木町のショッピングモールを歩きながら、「ここをね、ちょっと向こうにいった筋は風俗店がずっと軒を連ねてるんだよね」というべちお殿のつぶやきを聞き逃さなかったわたくし。

「なんですって! 薩摩藩には風俗街なんてないざますよ。行きますっ! そこ行きます!」と叫び、横浜で風俗街を初体験いたしました。初体験と申しましても店に入ったわけではございません。「横浜モンデミ〜テ」とか「マットDEいってミルク」などという看板を大興奮で激写しまくっていただけでございます。さすが横浜。都会には何でもあるのでございますね。

新たな観光スポットを体験し、帰藩後、「風俗街なるものが薩摩藩にもあれば、わたくしの働き口もあるのではないのでせうか」と周囲につぶやいたところ、「あんたが働くんだったらオバ専でしょ? そんな店、薩摩藩みたいな田舎じゃ需要ないからねぇ」という冷たい反応ばかり。

しかしながら、そのつぶやきをずっと覚えていた方がいらっしゃるのでございます。2カ月も経って、オバ専という単語も忘れかけた頃、「いやー、探したよ。見つけた見つけた。薩摩藩にもオバ専あるよ」と、わざわざURLを連絡してくださったのです。そこは「薩摩藩 オバ専」でグーグル先生にお尋ねしても回答がいただけない秘密のクラブなのでございました。

かの方は、ウイルスの危険も顧みず、世界に広がるエロサイトの大海に飛び込み、連続ポップアップするウインドウと闘いながら、わたくしのために情報を探してきてくれたのでございます。

ほら、ちゃんといますでしょ? わたくしにも友だちが。さりながら、友だちがいるということを、なぜ横浜の風俗街の話からしなければならないのか、何かが間違っているような気もいたします。

ちなみに、まじまじとそのオバ専サイトを眺めたところ、「妖艶な美熟女と熟練のプレイや会話を楽しみたい殿方へ」とキャッチコピーがついております。女性一覧にはさまざまな美熟女の写真が並んでいるのでございますが、ご年齢は42歳から52歳といったところ。わたくしでも十分いけそうではございませんか。......にしても、皆さん写真がスレンダーすぎるのが気にかかります。

やはり熟女がお好きな向きには、週刊新潮の広告に出ている「湯けむり旅情・熟女の裸体写真集」のように、脂肪たっぷりの崩れた果実を思わせる肉体でなければいけないのでは......と思うわけでございます。

しかし、どう考えてもサイトの女性一覧は、「VERY」に掲載されている三浦りさ子の写真に顔モザイクかけただけみたいな、ファッショナブルでスレンダーな写真ばかり。これはいかがなものかと。

このような写真など見せられては、ハードルが高すぎて、わたくしが面接に行けないではありませぬか。

脱線してしまいました。話を戻しますと、地味なわたくしにも友だちは幾人かいるのでございますが、よくよく考えたところ、それはすべて高校時代からの同級生。会話のひとつひとつにビビるわたくしは、友だちをつくるのにも長大な時間がかかるのでございます。

その上、わたくしの人生の辞書には『一目惚れ』という項目がございません。ひと目会ったその日から恋の花咲くことなどないのでございます。友だちというステップを通過しないと、その先に移行できないということを考えますと、結婚に至る前に還暦どころか喜寿とか傘寿などがやって来ないとも限りません。ピチピチのピーチパイがドライいちじくになってしまいます。

せっかく婚活する気になったというのに、地味でビビリスキーなわたくしでは、やはり結婚できないような気がしてきた春の日なのでございました。

※「嫁に来ないか」新沼謙治
< >
※「結婚しようよ」吉田拓郎
< >
※「不思議なピーチパイ」竹内まりや
< >

【もみのこ ゆきと】qkjgq410(a)yahoo.co.jp

「あのさぁ、もみのこって会って話したらつまんないんだよね、全然」と仰せになったA女史に、「薩摩藩にもオバ専あるみたいなんすよ〜」と嬉々として報告したところ、「そんな地元の店で働きたくないじゃない。誰に会うかわからないでしょ」とご忠告くださいました。あぁ、全くもってその通りでございます。地味な上に頭の回転も悪いわたくし。オバ専に就職するなら、やっぱり横浜でございますね。


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編集後記(03/28)

●WBC中継のとき一回だけ見た、ええーっ! と驚いた高校野球の選手宣誓のCM、気になって仕方なかったので検索したらナイキだった。坊主頭のニキビ面が「宣誓、我々は......、というか、僕に注目してください。(略)集団に埋もれて、自分を失うのはもうやめ、手に入れられるすべてを、全力で手に入れることを、ここに誓います!」という自分勝手なオレ様。快哉。よくぞやってくれたね。でも、選手宣誓は「様式」なんだから絶対にありえない事態なのだ。リアル高校野球大会の宣誓ときたら、鳥肌がたつ(←本来の意味で)クサいセリフのオンパレードが決められたスタイルなのだ。

今年のセンバツでは、鳴門の主将が「最後まで諦めず全力でプレーすることにより、東北をはじめとする困難と試練に立ち向かっている人々に、大きな勇気と希望の花を咲かせることを誓います」と叫んだ。昨年のセンバツでは石巻工業の主将が「だからこそ、日本中に届けます。感動、勇気、そして笑顔。見せましょう、日本の底力、絆を」と芝居がかったセリフを。昨年夏の大会では、酒田南の主将の宣誓がもっとすごいことを。

「私たちのひた向きなプレーが、あすへと懸命に生きる人々の希望となることを信じ、私たちの躍動する体と精神が、あすへと進む日本の無限の可能性となることを信じ、そして、私たちの追い続ける夢が、あすの若者の夢へとつながっていることを信じます」

これ、野球しかやらない粗野な男子高校生(←事実に反してたら許してw)の言うことか。いったい誰がこんな安っぽい美文調のきれいごと原稿を書いているんだ。いつから長ったらしい選手宣誓になったのだろう。もうやめてほしい。「スポーツマンシップにのっとり、正々堂々闘います」これだけでいい。

テレビを見ていると、「勇気を与えたい」「勇気をもらいました」「感動を与えたい」「感動をもらいました」なんてセリフがいまだに聞こえて来るのが腹立たしい。3.11以来、この正しくない日本語が定着しているようなのが恐ろしい。勇気や感動はもらうもんじゃない。自分の中からわきあがるものだ。ましてや「与えたい」なんて、あんた何様? 開会式でもっとも素晴らしいのは女子高校生の君が代独唱だ。自然と涙が出る。感動をもらいました。なんて言っちゃあイカンのだが。(柴田)

< >
NIKE BASEBALL 選手宣誓
< http://bn.dgcr.com/archives/20080324140000.html >
ずっと前に同じことを書いていた、、、(2391号 編集後記)


●何度も延期しているFIX窓の清掃。先週も強風でできず、金曜日との告知がエレベーター内に貼られていた。えっ、明日ってもう金曜日!? 毎回ちゃんと延期しているのは企業として正しいと思う。無理して事故でも起きたら大変だ。明日は期末だからって無理しないでね。窓の外は今日も白く曇ってる。最近部屋干ししかしていないなぁ。

ネタなし。いまやってる宙組公演『Amour de 99!! 99年の愛』続き。パイナップルの女王(初演1960年。寿美花代が演じた)のことしか書かなかったけど、『シャンゴ』(初演1967年)のシーンにも圧倒されたよ。アフリカの場面で、太鼓の音をバックに足を踏み鳴らして踊る。迫力が凄い。振り付けは海外の人だったそうな。

ブラジルを舞台にした『ノバ・ボサ・ノバ』(初演1971年)のラストとか、こういう力強いダンスは好きだ。頭を振りまくりながら飛び跳ねるので、踊る側は頭がおかしくなるんじゃないかと思う。観る側もしんどいんだけどね。シャンゴで激しく踊った後、こちらにとっては1分ぐらいの間で、息を乱さず穏やかな顔で歌いだしたトップに拍手もんだったわ。

CSに宝塚歌劇専用チャンネル『タカラヅカ・スカイ・ステージ(通称スカステ)』というのがある。視聴しておらず、もっぱら開放デーにチラ見する程度。この番組で花組若手男役が『当たり前体操』をもじって『花組 男前体操』というのをやっており、ニコ動に上がってた。大爆笑したんだが、内輪受けなんかなぁ......。 (hammer.mule)

< http://www.nicovideo.jp/watch/sm19862653 >
宝塚がやる「あたりまえ体操」ならぬ「男前体操」
< http://www.nicovideo.jp/watch/sm20426712 >
それをトレースした戦国BASARA......
< http://www.nicovideo.jp/watch/sm13670495 >
ノバ・ボサ・ノバだょ!全員集合。名作がこんなことに......。
< http://www.nicovideo.jp/watch/sm1957151 >
元はコレの後半
< http://www.nicovideo.jp/watch/1283017158 >
『女々しくて』をヅカの人達に難易度高く踊ってもらった
↑他の曲で踊っているのに、合ってるわ〜。全然女々しくない(笑)
< http://www.nicovideo.jp/watch/sm17956014 >
宝塚のトップスターによる魂のルフラン。実況CDから