3Dプリンタ奮闘記[08]3Dプリンタ「発動篇」その1/織田隆治

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「ウィィィィィィィィ〜〜〜〜〜ン!」
「こいつ。動くぞ...」

まずはラフトと呼ばれる土台となるベースを出力してゆく。これは、土台(ベッド)と出力する樹脂の水平(レベル)を出す事にも関係しているようだ。とりあえず、じっと見てみる。

「ヴィィィィ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン」

というステッピングモーターとステーのベアリングの音とともに、ヘッドが前後に動き回る。ヘッドの動いた下には、溶かされた素材が細い線になって土台(ベッド)の上にのってゆく。

分かりやすく言うと、ホットボンドの小さいのから、細く溶かされた樹脂がギュギュっと絞り出されて行くのである。

「ヴィィィィ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン」
「............」

一層目が終ると、土台(ベッド)が0.125mm下がり、その上にまたヘッドが動いて積層して行くわけだが、今度はヘッドが左右に動いて「井」の字のような状態のラフトが出来上がる。

「ヴィィィィ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン」
「............」




このラフトは、底面積の小さいブツを出力する場合、ベッドから出力したものが剥がれてしまうのを避けるために、底面積を増やす役割もあるのである。ラフトの出力が終ると、その上から本来の3Dデータの出力が始まった。

「ヴィィィィ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン」
「............」

なんか感動!
これが積み上がって行って、形が出来上がって行くのね〜!

「ヴィィィィ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン」
「............」
「ヴィィィィ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン」
「............」


「うん...これ、凄く時間かかるよね...そりゃそうだよね...」

分かってはいたことだが、一層が0.125mm。それが終るとベッドが0.125mm下がり、その上にまた0.125mmと積み上がって行く。例えば、125mmの高さのある物を出力する場合、この作業が1000回繰り返される訳だ。

床面積(平面)が大きいと、それだけ一層目に時間がかかる。その高さが高いとダブルパンチで時間がかかるわけである。

本当はじっと見ていたのだが、こんなのずっと見てたら眠ってしまう。とりあえず、見ておきたい衝動を抑えつつ、本来の仕事に戻って出来上がりを待つことにしよう。

時間がかかるといっても、本来手作業でコツコツやる作業を、文句も言わずに黙々とこなしてくれる。

単純な形状なら、手作業で作った方が早い時もあるし、形状によっては手作業の方が早いが、うまく使い分ければとても良い相棒になるに違いない。

僕はその間に他の作業が出来るし、その形状を同じ時間で正確に手作業でモデリングするよりも遥かに早いので、一石二鳥とはまさにこのことだ!

「果報は寝て待て!」だ!

って言うか、寝てたら意味ないので他の制作物の作業に戻る。

「ヴィィィィ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン」
「ギュッ!ギュッ!ギュッ!ギュッ!ギュッ!ギュッ!」

という軽快な動作音をBGMに作業を始めて一時間程経った頃...。

「ヴィィィィ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン」
「シャ======================」
「ヴィィィィ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン」
「シャ======================」

ん? 何か音変わったな...。
と思って振り返ってみると、なんだかおかしい...。

ヘッドの先から何も出ていないし、造形も半分くらい終ってその上の空間にヘッドが動いている...。

「なんじゃこりゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜! どないなっとんねん!」

震える手と心をどうにか抑えてよく見ると、セッティングの際、ヘッド部分に素材を止めるボルトがあるのだが、そのボルトの締めつけが甘く、成形が進むうちにボルトがゆるくなり素材が空回りしてしまって、ヘッドの先に素材が行ってなかったのが原因のようだった...。

「おおおおぉぉぉぉぉぉ。これが失敗という奴か!」

僕の使用している3Dプリンタの場合、途中で止まるとアウトで、それまで出力した物は使えなくなる。

僕は幾多の災難を乗り越えてきた、たくましい個人事業主である。こんな時に頭使わんでどうする! うう〜ん、どうしたものか...。

そこでキラッ! とひらめく訳である。おもむろにノギスを取り出し、出力が止まってしまった所までの高さ寸法を計る。

そして、制作した3Dデータの下部のその寸法までを切った状態のデータを制作して、それを出力すれば良いのだ!

う〜ん、僕ってかしこいやん!

とかバカなことを考えながら、またプリンタにデータを送り込んで再可動させるのであった。

完成にはまだ色々と苦難の道を通って行くことになるのを、僕はこの時まだ知る由もなかった。

【織田隆治】
FULL DIMENSIONS STUDIO(フル ディメンションズ スタジオ)
< http://www.f-d-studio.jp >

制作もまだ始まったばかり。色々な困難や問題をどうクリアして行くか、など順を追って紹介していきます。