[3480] 働かなくていいんだって

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《金のかかる人生だなあ》

■わが逃走[125]
 父の思い出の巻 その3
 齋藤 浩

■3Dプリンタ奮闘記[12]
 3Dプリンタ「実践篇」その2 トラブルはつきもの
 織田隆治

■歌う田舎者[45]
 働かなくていい
 もみのこゆきと

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  怒りのブドウ球菌 電子版 〜或るクリエイターの不条理エッセイ〜
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◎デジクリから2005年に刊行された、永吉克之さんの『怒りのブドウ球菌』が
電子書籍になりました。前編/後編の二冊に分け、各26編を収録。もちろんイ
ラストも完全収録、独特の文章と合わせて不条理な世界観をお楽しみ下さい。
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■わが逃走[125]
父の思い出の巻 その3

齋藤 浩
< https://bn.dgcr.com/archives/20130523140300.html
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母はもうすぐ後期高齢者だが、いまのところ元気だ。昔から好奇心旺盛で、今は源氏物語の講座なんかを聞きにいっては書物をひもとき面白がっている。

興味をもったことをもっと知りたい、研究したいという願望が健在なうちは、心も健康といえよう。しかし欲しい本が書店になかったり、注文しても何週間も待たされて在庫なし、なんてことが多いという。

だったらインターネットを使いなさいとiPadを勧めたところ、「あたしがインターネットしようとすると、おとうさん(オレの父)が嫌がるのよ」という。

なんじゃそりゃ!

そうなのだ。父はインターネットが嫌いなのだ。とはいえ、母の健康のためにもインターネット環境を、と思って夫婦で1台ずつiPadを買うようすすめたところ、

「たしかにお母さんにはiPadが向いてると思うよ。初心者だからね。でも俺はMacBookProの方がいいと思って、実はもう買っちゃった。こんど初期設定しに来てくれ」と父が言う。

ひと月前に会ったときには、「インターネットなんかいらない!」と言ってたのに。「いや、あのときはiPadは必要だけどインターネットなんか必要ないと言ったんだ」。

なんだか情報が錯綜している。それ意味わかんねーし。オレは釈然としないままS玉県Sたま市へと向かったのだ。

●●●●●

父は武蔵野美術大学デザイン科在籍中に日宣美に入選。卒業後、老舗百貨店宣伝部に就職した。定年まで勤め上げ、いまは版画の制作に精を出しつつ悠々自適の生活を送っている。こう書くときちんとした人のように思えるが、実は昔から何かがずれていたのだ。

父は電話が大好きだった。オレが10代前半だった頃(80年代前半)の話である。電話は家に一台が基本だった当時、父は自分の部屋にも電話線を引き、電話器も複数所有していた。

しかし、たとえば休日にひとりで家にいるときに電話が鳴ってもまず出ない。帰宅したオレに「さっきの電話は15回も鳴ったよ」とか言う。父が好きなのはあくまでも電話器であり、通話は人一倍嫌いだったのだ。

電話器が好きだった父は、その後ビデオデッキが大好きになった。家に一台が基本だった当時、父はなんと13台も所有していたのだ!

しかし見たい番組を録画して楽しむとか、ビデオソフトを鑑賞するといったことはほとんどなかった。

父が好きなのはあくまでもビデオデッキであり、テレビ番組もビデオソフトも嫌いだったのだ。好きとか嫌いとかの問題ではないと思うのだが、父はどうも普通のひとと基準が違うらしい。

父は中古品を好む。新品なんてもったいない。中古品なら新品の値段で3台も買えてお得だといいい、結局父の部屋には13台のビデオデッキが。

しかもそれらは使われることもなく、きれいに梱包され積まれていたのだ。休日にはそれらをていねいに開封、適当な番組を録画し、故障してないことを確かめるとまた梱包して積み上げる。故障が見つかればすぐにサービスセンターへ修理を依頼する。

しかし、機械そのものに思い入れがあるのかというと、そうでもないらしい。結局2000年代の半ば頃、それらのビデオデッキは粗大ゴミとして引き取られていった。

オレは今まで父のこういった行動を不審に思っていたのだが、いま文章にしてみてやっと理解できた。父の趣味は電化製品の動作確認だったのだ。

父はテレビも好きだ。先日実家を訪れた際、薄型テレビを5台も持ってると自慢され驚いた。

しかし、父が好きなのはあくまでも受像機であり、番組にはほとんど興味を示さないのである。テレビはつけるが番組は見ない。つけっぱなしにするだけで内容を見たり聞いたりすることはあまりしないが、いつか見たい番組が現れたときに困らないよう、いつでも受信できる状態にしておきたいらしい。

その時が来るまで、動作確認を楽しみつつ音と光を発生する機械としてセッティングしておく。

どうやら家電量販店におけるテレビ売り場のような環境を理想としているようなのだ。そう考えればビデオデッキを積み上げることも納得がいく。

父はヒトがテレビを見ているといきなり勝手にチャンネルを変えて、その番組を見るでもなしにどっかへ行ってしまう。

これは自分が買ったテレビを他人(=オレ)の娯楽に使われることが悔しいからイジワルをしているのではないかと思っていた。

つまり父はテレビ番組を見て楽しいと感じたことはないので、自分の理解できない楽しさを味わう第三者をねたましく思っているのではないか。

しかし、好意的にとらえれば、ストーリーや情報といった"意味のあるもの"を純粋な光と音というレベルまで一旦解体し、ノイズとして楽むことを教えようとしていたのかもしれない。もしそうなら、それはものすごい美意識ともいえる。

20年ほど前「これからはパソコンの時代だ。パソコンは個人的なものではなく、もっとパーソナルな存在であるべきなんだ」と意味不明の発言をした父はMacintosh LC520を購入、以来Macにハマっていった。その後歴代iMacを次々と手に入れ、つい先日MacBook Proを購入したのは前述のとおり。

しかし、父はMacを使うことはあまり好きではなく、いつでも使える状態でMacを所有することが好きなのだ。

だから最新型でなくてもいいらしく、中古の型落ち品を何台も買う。しかし、常にシステムは最新の状態にしておかないと気が済まないらしいので厄介だ。

父は操作を覚えようとしない。20年ほど前から同じことを40〜50回くらい説明しているのだが、一度覚えると安心してしばらく使わなくなるため、再度使おうとしたら忘れているのでまた聞いてくる。

どうも「この操作はもう覚えたから使わなくていい」と考えるらしい。勉強嫌いの子供が嫌々漢字の練習をし、書けるようになったら「この漢字はもう覚えたから練習しなくていい」といって書けなくなるパターンに似ている。この時点ですでにベクトルがずれている。

そもそも、操作を覚えずに使いたいというのには無理がある。一般的には目的があるからこそ努力するわけだが、父の目的は努力せずに達成することにあるのだ。

で、いつか努力せずに達成したときのために、常に最新のシステムを用意しているわけだ。金のかかる人生だなあ。

こう書くと父は何も理解していないように思えるが、年賀状はMacでつくり、宛名データもMacで管理している。

どうもものすごく狭い範囲では理解しているが、全体の構造が全く見えていないようなのだ。

先日実家にて漢字を調べるときに『ことえり』で変換してみせたところ、「最近のMacは漢字辞典としてもつかえるのか! すごいなあ」と言われて驚いたのだが、冷静に考えてみると、父の認識パターンはひたすら一途なのだということがわかる。

つまり、ひらがなを目的の漢字に変換する動作は普段からしているし理解もできているのだが、漢字を忘れたとき、ひらがなを変換すれば目的の漢字が表示されるということには思い至らなかったようなのだ。

だって本にはそんなこと書いてなかったもんと言う。そりゃ書いてねえよな。この強くまっすぐな思考。

日常生活において「◯◯は健康にいい」と聞けば腹をこわすほど過剰摂取する行動からもその傾向が読み取れる。これは今にはじまったことではなくオレが物心ついたときからそうなのだ。

●●●●●

さて、あれほどインターネットを毛嫌いしていた父がなぜ突然Wi-Fiネットワーク及びMacBook、iPadの導入を奨励しはじめたのかは謎のままである。

しかし、彼は3日ごとに主義主張が変わるので、本人がその気のうちに購入に踏み切らせた。両親と駅前の家電量販店で落ち合い、Wi-Fiベースステーションと母のiPadを入手、そのまま実家へと向かう。

ちなみに父はワイファイと言えない。ういひー、わいはー、うっふーなどと発音していたが、まだどれにも定着していないようだ。ギガバイトは相変わらず"ギバ"のままである。

さて、実家に着いて驚いた。いつのまに光ケーブルが引かれていたのだ。まじか。ろくにインターネットも見ないのに? 父に尋ねると「オマエ遅れてるねえ。3年前からウチは光だよ」という。

なるほど、父はインターネット上のコンテンツには全く興味がないものの、インターネットに接続できる環境が好きだったのだ。そして毎日Macを動作確認していたのだ。

母にネットを禁じたのは、動作確認というある意味純粋な行為に対し、目的という"欲"が介入することに、穢れのようなものを感じていたのかもしれない。

しかし、iPadという母専用のデバイスが導入された今、Macの純潔は保たれる。これなら父も満足であろう。

【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
< http://tongpoographics.jp/
>

1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。


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■3Dプリンタ奮闘記[12]
3Dプリンタ「実践篇」その2 トラブルはつきもの

織田隆治
< https://bn.dgcr.com/archives/20130523140200.html
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機械にはトラブルがつきもので、3Dプリンタにも当てはまる。前回に掲載した「中折れ」もそのひとつだが、他にも色々な原因でトラブルが生じる。

ABSやPLAの積層タイプの3Dプリンタの場合、一番のネックが土台(テーブル)面からの剥離。これは、ベースになる板にプラ素材を溶かしてくっついている。

何らかの理由でハガレてしまう事により、ハガレている個所が浮き上がり、その上に積層されていく樹脂がどんどん変形して行く......という悲劇に遭遇する。

これは、設置面の面積や、上にある構造による原因がある。ここは、どういった具合に3Dデータを並べるか、にかかっている。

この3Dデータの作り込み、配置は、どう説明して良いのか分からない。経験値によって左右されると思われる。下にあるベースに設置する面積を大きくするといいように感じるが、一概にそうとは言えないのである。

ハガレたところを直ぐに見つけ、ガムテープで留めてしまう、という荒技もあるが、ずっと見ている訳にも行かないので、それはもう大変なのである。

大きい部品を出力する場合、夜スタートして出社してみると......

「うわわわわわわわわわぁぁぁぁぁぁぁ......orz」

となっている時など、本当にorzというポーズで崩れ落ちてしまいたくなる。使い始めのうちは、かなりそういう経験をさせてもらいましたよ。...ふっ...。

webカメラを設置して、家でも確認したい衝動にもかられたが、そこで発見したとしても、また事務所に車を飛ばして行く事になる。でも、これを夜中に発見するのも、これもまたかなり辛い......。

急ぎの物件を出力する場合は、それはもう事務所に泊まり込みで監視しなくてはならないのである。

初めのうち、この現象への前対応が分からない時は、もうずっと泊まり込みで監視する、という非常に悲しくも切ない状況だった。時々見回りして、ちゃんと動作しているかを厳しくも暖かい目で見守るしかないのだ。

まあ、その間はコツコツ別の仕事をしている訳で、他の仕事は進む......と考えると、少しは精神安定的によろしいかと。心の余裕が必須条件......。

それから、材料は再利用出来ないので、失敗した時用に、常に予備を用意しておく事。これもかなり重要。

ギリギリの材料で、足りるから安心していると、このようなトラブルで材料が足らなくなる可能性もある。

ホームセンターで仕入れる! って感じの材料ではないので、どうしても夜中や即日に買いに行く事も出来ないので、計算から出される材料より余裕を持ってストックしておかなければならない。

メーカーや代理店に在庫があるかどうかも分からないし、ギリギリの量での戦いには向かない。「戦いは数なんだよ、兄貴!」という誰かの有名なセリフがあるが、まさにその通りだ。

そういったトラブルもつきもので、最近よくテレビで取り上げられて、簡単に立体物が作れる! 誰でもメーカーになれるんだよん! などと言われてしまっているが、なかなかどうして難しいのである。

まず、個人や中小で、高額な3Dプリンタを最初に導入するのは難しく、この手のプリンタでのトラブルを経験してもくじけない精神も必要だ。

高価で安定した3Dプリンタを導入すれば、それはそれでこの現象は少しは回避出来るのかもしれないが、Zプリンタのようなフルカラーで石膏を用いた高価な3Dプリンタでも、色々とトラブルが起きる。UV硬化タイプの3Dプリンタでも、釣り上げや積層でのトラブルも少しは発生するようだ。

高いから高性能! っていうわけでもないのだ。まあ、本当に高性能、高機能なんだけどね。

3Dプリンタの性能フルに活用出来るかどうがは、やはり使う人間のスキルが一番大事な事だと思う。

そういったトラブルに対応する技術や経験値、知識も、いかに3Dプリンタを使いこなすか、という事がとても重要な事だと言える。

そうは言ったものの、やはりこの3Dプリンタという物には、可能性もあるし、便利な機械でもある。誰もが簡単に扱える機種が、今後登場する事も大いに期待できるところだ。

今後、いろいろなタイプの3Dプリンタが研究されているし、それに使用する素材も色々と研究され、発売されている。機械だけではなく、使用する素材自体が一番重要な気もしている。

同じ機能を持った3Dプリンタでも、扱える素材、提供される素材の優劣があり、コストも違う。3Dプリンタを導入される場合は、そこをよく考慮して導入する事をお勧めする。

前回記載した「中折れ」も、素材の混合比を換える事で、折れにくい素材等も出て来ているようで、メーカー側もかなり色々と考えているようだ。この「素材」の研究開発にも、力を入れて行って欲しいと思う今日この頃である。

【織田隆治】
FULL DIMENSIONS STUDIO(フル ディメンションズ スタジオ)
< http://www.f-d-studio.jp
>

機械にトラブルはつきもの。完璧な物など存在しないですよね。そういったトラブルをあまり発信しているのは見た事が少ないので、あえて書いてみました。


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■歌う田舎者[45]
働かなくていいんだって

もみのこゆきと
< https://bn.dgcr.com/archives/20130523140100.html
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インドは暑い。ニューデリーに住む友人N子によると、特に4月から6月にかけては40度越えの日が当たり前であるそうだ。場合によっては、天城越えとかK点越えの日もあるのかもしれない。だからインドに行くときには、この酷暑の時期を避けるべしとのアドバイスを賜った。

国際問題専門家のわたしとしては、カシミール地方の領有をめぐって対立する中印情勢に鑑み、酷暑の時期をものともせずインドを訪れ、調査研究を進めることにやぶさかではない。しかしアベノミクスの影響は首都圏大企業のみにもたらされ、わたしのお財布には全く及んでいないため、インド訪問が叶わず臍をかむ思いである。

それならば、少しでもインドの文化を日本に伝える役目を果たすのが、国際問題専門家としてのわたしの役割ではないか。そのような使命感を胸に、われわれ取材班は、カシミール問題はとりあえず置いといて、日本の皆さまにインドの占いについてお伝えしたいと考える。

......ということで、インドの占いおじさんに占星術で未来を占ってもらおうという経緯は、先月のデジクリでどんぞ。

・庶民的非業の死
< https://bn.dgcr.com/archives/20130425140100.html
>

「わしゃいったいこれから何で飯を食うたらええがか。どこでどんな仕事をすれば金になるんか、もう気が違いそうだがや!」

N子経由で、インドの占いおじさんにこのように伝えて占ってもらったのだが、その日以降、プツリと連絡が来なくなった。

「どういうことや。なんで連絡が来んのや。も、もしや、わし、死んでまうんか。非業の死を迎えるんとちゃうか。せやから連絡できひんのやな!」

世を儚んだわたしは、ひとおもいに超高層ビルから身を投げようと繁華街に出かけたところ、薩摩藩には超高層ビルなどないのであった。

なんといっても、現在のわたしの状況ときたら、こういう感じなのである。

♪お金も無ェ オトコも無ェ 貯金もそれほど残って無ェ
♪若くも無ェ 美貌も無ェ たまに来るのは請求書
♪おら貧乏はいやだ〜 おら貧乏はいやだ〜
♪金稼ぐんだ〜
♪金持〜ち〜なったら〜 インド〜に〜行って〜
♪ボリウッドでスターになるだ〜

いい加減ビンボーネタには飽き飽きしたんだが、ほかに書くことねぇのか? ......ねぇんだな、これが。どう頭を掻き毟ってもビンボーネタ以外なんにも出てきやしねぇ。

仕方がねぇから、超高層ビルの代わりに、飛び降りるのにおあつらえ向きのシラス台地の崖を探したりなんかしているうちに、やっとインドから連絡が来たのだった。

ちなみにインドの占いおじさんはヒンディー語しか話せないので、おじさんの娘が英語に通訳して、それをN子が日本語でわたしに伝えるという伝言ゲームである。

さぁさぁさぁさぁ、わたしはいったい何で稼げばいいんだ? インドの占いおじさんは何と言ったんだ、早く言え。マジで干上がるぞ。スカイプ越しのわたしの勢いに気圧されたN子は開口一番こう言った。

「あ、あのね、占いのおじさんが言うには、働かなくていいんだって」

......は?! おいこらインド人、何言ってんだ、おまいは! 吾輩は金に困っておるのだぞ。養ってくれる旦那もいねぇんだぞ。働かずしてどうする!インドの占いおじさんは、わたしの生年月日からホロスコープを作図し、うやうやしく宣ったという。

「このお方は、近々大金持ちと結婚する運命にあるので、働かなくてもいい。どうしても働くというのであれば、金属の仕事である。そして突然脚光を浴びることになるであろう」

フッ......結婚か。占い師の言う結婚の言葉だけは信じられぬな。そのような戯言に何度騙されてきたことか。しかも金属って何だ? これまで金属とお付き合いしたことなど一度もない。

仕事で金属と関係したこともないが、プライベートで金属に惚れたこともない。♪あ〜の〜人のこと〜など〜 もう〜忘れたいよ〜♪と、片想いをしたこともない。もちろん金属と乳繰り合ったとか、ベッド・インして平和を訴えたとか、そんなこともない。なんなんだ、金属って!

いやいや、冷静によく考えろ。デカン高原におわします八百万の神々の末裔であるインド人がそう言っているのだから、間違ぇねぇのかもしれん。ってこたぁ、金属でどう食っていくのか考えなきゃならん。

しばし沈思黙考。金属で突然脚光を浴びるためにいかに行動すべきか、考えてみることにした。

●貴金属

やんごとなきお育ちのわたくしにふさわしい金属の仕事といえば、貴金属に決まっております。ゴールドやプラチナのまばゆい輝き。上質なダイヤモンドやサファイア、ルビー、エメラルドを貴金属にセッティングした美しい宝飾品の数々。ティファニーやハリー・ウィンストンを越えるブランドをわたくしが立ち上げるのです。ダイヤモンドは女子のベストフレンドでございますわ!

そう言えば、秋篠宮家の桂子さまが成年皇族になられるということで、ティアラのデザインを公募中でした。これですわ、きっとこれに違いないわ! あたくし、桂子さまのティアラデザイナーとしてデビューし、突然脚光を浴びるのですわっ! あぁ、こうしちゃいられない。すぐにデザインに取りかからなくちゃ! 

......あれ? 参加資格があんの? なになに、「内閣府競争参加資格」を持つ業者? あ、お呼びでない、お呼びでないのね。

●超合金

♪空にそびえる〜くろがねのしろ〜♪ 超合金といえばマジンガーZ。同じZの芦川よしみで、ももいろクローバーZのフィギュアを超合金で作り、バンダイから売り出すのだ。ふふ、間違いなく君のハートにパイルダーオン! 大ブレイクで ♪儲けすぎたのは〜あなたのせいよ〜♪ と、左団扇で鼻歌でも唸ってやろうぞ。

......と思って調べたら、ももクロのフィギュアって、ほんとにバンダイから出る予定になってるやおまへんか。超合金じゃないけど。し、し、知らんかった。ぐぬぬぬ。

●レアメタル

父ちゃんのためならエンヤコラ、母ちゃんのためならエンヤコラ......ツルハシを振るう工事現場で掘り当てたものは、レアメタルの大鉱脈。そして濡れ手に粟の大儲け。母ちゃん見てくれ、この姿。そして日本は資源大国となり、吾輩は国の救世主として脚光を浴びるのだ!

うーむ、この作戦なのではあるまいか。ご近所には菱刈鉱山もある。よおし、こうしてはいられぬ。即刻山へ行かねばならぬ。これ、ものども、出撃じゃ!

熟慮の結果、金属関係の仕事で脚光を浴びるためになすべきことは、ツルハシの購入であることがわかりました。価格.comで検索した結果、3,786円が最低価格となっております。

箸より重いものを持ったことがないわたくしが、ツルハシを持てるのか、はなはだ疑問ではありますが、背に腹は代えられませぬ。菱刈鉱山で目の色変えてツルハシを振るっている怪しい女がいたら、それはわたくしでございます。どうかそっとしておいてください。

※「俺ら東京さ行ぐだ」吉幾三
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※「片想い」浜田省吾
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※「Diamonds are a girl's best friend」Marilyn Monroe
< http://vimeo.com/56710275
>
※「マジンガーZ」水木一郎
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※「男と女のラブゲーム」芦川よしみ&武田鉄矢
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※「ヨイトマケの唄」美輪明宏
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【もみのこ ゆきと】qkjgq410(a)yahoo.co.jp

ビンボーネタばかり書いていると、もっともっとビンボーになっていくような気がする。お願いだから誰か止めて。

ところでインドのおじさんの占いには、最後にこういう一言が付いていた。「大金持ちと結婚し、金属の仕事で脚光を浴びる幸運を引き寄せるためには、1カラットのダイヤモンドを身に着けておく必要がある。また、そのダイヤモンドは、常時肌に触れるようなデザインでなければならない」

じぇじぇ! この占いおじさんは、お国が宝石王国であるせいか、最後に幸運を引き寄せる守護石を教えてくれるらしいのだが、N子によるとダイヤモンドといわれる人は珍しいらしい。

そういえば、大昔、「あなたはアメ車みたいな人生を送ってきたのよ。走るためには大量のガソリンが必要なの」と言われたことを思い出した。何をするにも金のかかる女ということだらうかorz。贅沢といえば、お風呂に入れるバブだけという、つましい生活をしているというのに。

昨年の夏にちょっとバイトしていた宝石屋の店長に、1カラットのダイヤについて聞いてみたところ、「有名どころのダイヤモンドだったら、200万くらいはしますよねぇ」とのこと。それでは幸運は引き寄せられんではないか!


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編集後記(05/23)

●DOPPELGANGER(ドッペルギャンガー)202 blackmaxが到着した。[20インチアルミフレーム折りたたみ自転車、シマノ7段変速、ライト/カギ標準装備、SGマーク付属]という製品である。大きな段ボール箱の中に折り畳まれた状態で格納してある。この製品は初期不良があるという情報が少なくないので、用心して梱包箱は捨てずにとってある。箱に入った状態ではかなり重かったが、裸にしてみると12.3kgと、同じサイズの他社折りたたみ自転車と比べると軽い。

組み立ては超簡単である。折り畳まれた前フレームと後フレームを開いて結合する。ハンドルステムを起こして乗車できる状態に立てる。サドルの高さを調整して締め付ける。すべてクイックリリースレバーを使い楽々できる作業だから、3分間で完了。あとは右側のペダルを取り付ける。工具を使うのはここだけだ。簡単な組み立て説明書が付くが、読まなくても大丈夫だ。

ジェットブラックのフレームに、フラッシュオレンジのパーツがとってもカッコいい。いちおう各部の締め付けを確認してから、家の周りでテストランしてみたら、やはり不具合を見つけてしまった。ハンドルとタイヤの中心が合っていない。リア7段変速だが、変速がいまひとつスムーズにいかない。これらはけっこう面倒な調整が必要だ。でも初期不良とは言えないので、自分で調整するしかない。

それにしてもカッコいいデザインの自転車である。いい歳した男が乗るには派手だと、妻から責められたらどうしようと心配だったが、シックでいいじゃないのと褒められてホッとした。小6女子が喜んで、わたしが乗りたいと言う。それにしても安い自転車である。これで約18,000円とは誰も思わないだろう。ビーズという会社が、中国製のフレームにシマノの変速機などのパーツを組み合わせてつくった国産品(?)である。ネット通販に特化しているから破格に安い。すぐ壊れてもあきらめがつく値段といえる。お気楽に乗ろう。(柴田)

< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0026S6FLW/dgcrcom-22/
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これです DOPPELGANGER 202 blackmax


●宝塚歌劇の『ベルサイユのばら』。代表作ではあるが、時代遅れであり、舞台装置を派手に使った演出でもなく、原作を知らなければ、筋のわかりにくい作品だ。代表作とは書いたが、その時々のスターの持ち味によって脚本や演出は多少変わる。今年はじめに上演されたのは「オスカルとアンドレ編」で、いまやっているのは「フェルゼン編」である。宝塚大劇場での公演では、他組のトップスターらが期間限定で特別出演している。

宝塚歌劇といっても、組が違えば色が全然違う。その時々のスターらによっても組の個性は変わる。ダンスのうまいトップがいたら、踊りの○(組)、芝居のうまいトップがいたら、芝居の○(組)と呼ばれたりする。

人事はそれを意識しているように思えることはあるし、ダンスのうまいトップがいれば、必然的に難しい振り付けが増え、結果的にダンスがうまくなり、芝居のうまいトップがいれば、下級生らはそれを自然と学ぶため、伝統的な組色として定着していく。(続く)(hammer.mule)