3Dプリンタ奮闘記[12]3Dプリンタ「実践篇」その2 トラブルはつきもの
── 織田隆治 ──

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機械にはトラブルがつきもので、3Dプリンタにも当てはまる。前回に掲載した「中折れ」もそのひとつだが、他にも色々な原因でトラブルが生じる。

ABSやPLAの積層タイプの3Dプリンタの場合、一番のネックが土台(テーブル)面からの剥離。これは、ベースになる板にプラ素材を溶かしてくっついている。

何らかの理由でハガレてしまう事により、ハガレている個所が浮き上がり、その上に積層されていく樹脂がどんどん変形して行く......という悲劇に遭遇する。

これは、設置面の面積や、上にある構造による原因がある。ここは、どういった具合に3Dデータを並べるか、にかかっている。

この3Dデータの作り込み、配置は、どう説明して良いのか分からない。経験値によって左右されると思われる。下にあるベースに設置する面積を大きくするといいように感じるが、一概にそうとは言えないのである。

ハガレたところを直ぐに見つけ、ガムテープで留めてしまう、という荒技もあるが、ずっと見ている訳にも行かないので、それはもう大変なのである。

大きい部品を出力する場合、夜スタートして出社してみると......

「うわわわわわわわわわぁぁぁぁぁぁぁ......orz」




となっている時など、本当にorzというポーズで崩れ落ちてしまいたくなる。使い始めのうちは、かなりそういう経験をさせてもらいましたよ。...ふっ...。

webカメラを設置して、家でも確認したい衝動にもかられたが、そこで発見したとしても、また事務所に車を飛ばして行く事になる。でも、これを夜中に発見するのも、これもまたかなり辛い......。

急ぎの物件を出力する場合は、それはもう事務所に泊まり込みで監視しなくてはならないのである。

初めのうち、この現象への前対応が分からない時は、もうずっと泊まり込みで監視する、という非常に悲しくも切ない状況だった。時々見回りして、ちゃんと動作しているかを厳しくも暖かい目で見守るしかないのだ。

まあ、その間はコツコツ別の仕事をしている訳で、他の仕事は進む......と考えると、少しは精神安定的によろしいかと。心の余裕が必須条件......。

それから、材料は再利用出来ないので、失敗した時用に、常に予備を用意しておく事。これもかなり重要。

ギリギリの材料で、足りるから安心していると、このようなトラブルで材料が足らなくなる可能性もある。

ホームセンターで仕入れる! って感じの材料ではないので、どうしても夜中や即日に買いに行く事も出来ないので、計算から出される材料より余裕を持ってストックしておかなければならない。

メーカーや代理店に在庫があるかどうかも分からないし、ギリギリの量での戦いには向かない。「戦いは数なんだよ、兄貴!」という誰かの有名なセリフがあるが、まさにその通りだ。

そういったトラブルもつきもので、最近よくテレビで取り上げられて、簡単に立体物が作れる! 誰でもメーカーになれるんだよん! などと言われてしまっているが、なかなかどうして難しいのである。

まず、個人や中小で、高額な3Dプリンタを最初に導入するのは難しく、この手のプリンタでのトラブルを経験してもくじけない精神も必要だ。

高価で安定した3Dプリンタを導入すれば、それはそれでこの現象は少しは回避出来るのかもしれないが、Zプリンタのようなフルカラーで石膏を用いた高価な3Dプリンタでも、色々とトラブルが起きる。UV硬化タイプの3Dプリンタでも、釣り上げや積層でのトラブルも少しは発生するようだ。

高いから高性能! っていうわけでもないのだ。まあ、本当に高性能、高機能なんだけどね。

3Dプリンタの性能フルに活用出来るかどうがは、やはり使う人間のスキルが一番大事な事だと思う。

そういったトラブルに対応する技術や経験値、知識も、いかに3Dプリンタを使いこなすか、という事がとても重要な事だと言える。

そうは言ったものの、やはりこの3Dプリンタという物には、可能性もあるし、便利な機械でもある。誰もが簡単に扱える機種が、今後登場する事も大いに期待できるところだ。

今後、いろいろなタイプの3Dプリンタが研究されているし、それに使用する素材も色々と研究され、発売されている。機械だけではなく、使用する素材自体が一番重要な気もしている。

同じ機能を持った3Dプリンタでも、扱える素材、提供される素材の優劣があり、コストも違う。3Dプリンタを導入される場合は、そこをよく考慮して導入する事をお勧めする。

前回記載した「中折れ」も、素材の混合比を換える事で、折れにくい素材等も出て来ているようで、メーカー側もかなり色々と考えているようだ。この「素材」の研究開発にも、力を入れて行って欲しいと思う今日この頃である。

【織田隆治】
FULL DIMENSIONS STUDIO(フル ディメンションズ スタジオ)
< http://www.f-d-studio.jp
>

機械にトラブルはつきもの。完璧な物など存在しないですよね。そういったトラブルをあまり発信しているのは見た事が少ないので、あえて書いてみました。