どうしたらできるかな?[step:03]基本が出来てないから応用が利かない
── 平山遵子 ──

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慣れない手付きで裁縫とぬいぐるみ制作を始め、2か月が経過しました。時々、針で自分の指を刺し、夜中に「いてぇ〜!!」と叫ぶこともありますが、イライラすることもなく、時間は掛かるものの楽しくぬいぐるみが作れるようになってきました。

練習のために作ったオリジナルキャラクターのぬいぐるみも数が増え、ぬいぐるみを作る楽しさが以前より増してきました。

今、当時作ったぬいぐるみを見てみると「うわっ! ひどい縫い方しているな」とあきれますが、当時は針と糸の感覚を掴むのに必死だったんだなと思います。

ある日、いつものようにオリジナルキャラクターのぬいぐるみを制作中、いつにも増して苦戦を強いられることになりました。「プリン博士」というキャラクターがかぶっている博士帽が上手く作れないのです。

・プリン博士
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>
 ※オリジナルキャラクターブース1と9の写真を参照。いちごと生クリームが
 のった博士帽を被ったキャラクターがプリン博士です。




ひとまず落ち着いて、紙で工作をするように博士帽の型紙を色々検証してみました。その結果、何とか博士帽は出来ましたが、博士帽の上にパフェのように盛られているいちごと生クリームが上手く作れません。型紙を丹念に検証して、形としては再現が可能だと分かりましたが、問題はどうやってこれを縫うか?ということなのです。

「プリン博士」のチャームポイントは、いちごと生クリームののった博士帽。これがないとただのプリン星人......。

悩んでいても仕方がない。とりあえず、縫ってみます。なんとかいちごと生クリームの形になって来たものの、いちごの丸みや種をどうやって表現すればいいのか? 悩んで手が止まってしまいます。そんな時でした。

「ちょっと。縫いかけのそれ貸してみなさい! いいから!」

そう言うのは以前、裁縫をはじめると意気込んでいた私に意外にも冷たい態度を取った母でした。母は怒らせるとスーパーサイヤ人ばりに怖いので、恐る恐る縫いかけのいちごと針と糸を渡しました。私は黙って彼女の針と糸さばきを見ていました。

すごい! なんという手際の良さ! 早い! 縫い目がきれいだ!思わず見惚れている私に、

「丸みを表現したければ、運針でこの周りをサクサクと縫って、最後に口を閉じるように思いっきり糸を引っ張るのよ。ほら、やってみなさい!」

母が教えてくれた通り二つ目のいちごを縫ってみたら、みごとにいちごの形に!でも、問題はいちごの種。私は恐る恐る母に聞いてみました。

「いちごの種? あぁ、あなた玉結びは出来るようになったわよね。こうしてみれば」

母の言うとおりに針と糸を動かしてみたら、なんと種が表現できました。いつもの玉結びのやり方で、糸を巻く回数を増やすだけ。それをいちごに縫い付けると、いちごがよりいちごらしくなったのです。

作業を進めようやく「プリン博士」のぬいぐるみが完成しました。喜んでいる私に、母はこういって笑いました。

「だから、最初に言ったでしょう。針と糸の感覚がまったくない人には、いくら教えても無駄だと。そろそろ、教えても大丈夫かと思って教えてみたの。裁縫ってやり方は色々あるのよ。だから、基本がちゃんと出来てないと駄目なのよ。型なしって言葉があるでしょう。型、基本が出来てないと応用が利かないってことかしら。まぁ、あなたがいつまで続けるかわからないけど頑張ってね」

オリジナルティーという言葉が大好きだった、無鉄砲な私にこの言葉は胸にグサッ! と刺さるものがありました。基本って大切なんだと改めて思い知らされました。そして、身近にこんないい先生がいることに気が付きました。

裁縫、ぬいぐるみ作りを始めて、ひとつ目の目標が出来ました。この人、母を、あっと言わせるぬいぐるみが作れるようになりたいと!

【平山遵子・ひらやまじゅんこ】
J★(Junko allstars)〜思い出を形に未来につなぐハンドメイド〜
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夢は「世界一楽しいぬいぐるみ」を作る!