ローマでMANGA[64]モーニング編集部とヨーリのやりとり/midori

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●1992年ヨーリは講談社とコンタクトをとった

"幸運が服を着て歩いている"マルチェッロ・ヨーリは、「ユーリ」の作者イゴルトとお友達でボローニャの家も近い。お友達に誘われてヨーリも講談社にコンタクトを取った。

ボローニャは毎年復活祭の頃、年によって日は変わるけれど3月の終わりから4月の初めに「国際児童図書展」が開催される。一般向けの見本市ではなく(実際、本を販売しない)出版社同士の取引の話と、出版社と作家の話し合いの機会として業界では知られている。

そこに講談社は毎年ブースを設けているので、ボローニャ住まいのイゴルトもヨーリも気軽に行けるわけだ。

講談社に対してすでにイゴルトが道をつけているし、ヨーリは幸運が服を着て歩いているまったく物怖じしない人だし、当時のモーニング編集部は気炎をあげて書き下ろしをしてくれる外国人作家を探していたから、ま〜〜ったく問題はないのであった。

外国人作家の講談社の窓口は、当時「国際室」と呼ばれていた国際版権を扱う部署だ。この部署は毎年必ず図書展に参加をしていて、後日イタリア人作家に「ユッカンドー」と呼ばれた安藤さんという才媛がいつも対応していた。いつも同じ人がいると話が早くていい。しかもユッカンドーは頭の回転が速い。

1992年、イゴルト・ヨーリコンビは嬉々として図書展を訪れて、ユッカンドーに会った。10年付き合ったのでイゴルトのリアクションが想像できてしまう。ミーティングでイゴルトがヨーリの前で、もう何年も彼女を知っているかのように振る舞ったであろう姿を想像する。

イゴルトが講談社と懇意にしている姿はヨーリに安心感を与えたろうし、打ち解けるイゴルトに、ユッカンドーはイタリアの作家とモーニング編集部の協力体制が成功しているという印象をもったと思う。イゴルトはミーティングで真剣で打ち解けた空気を作るのが上手な一人だ。

イゴルトはすでに編集部と仕事をしているのだから、直接モーニング編集部とコンタクトを取る方法も知ってるわけだけど、編集部とは翻訳を介して文のやり取りになる。図書展では直接出版社の人間と話ができる。地元だし。ただ、国際部は編集を兼ねることはできないから、結局、翻訳を介して文でやり取りすることになる。




●編集部の三条件

編集部とヨーリのやりとりで、手元にある一番古い日付は1992年7月28日の編集部からヨーリへのファックスだ。私の家に郵送されてきたヨーリから編集部へ宛てた作品企画の解説と作品のコピーがあって、ファックスはこの企画の返事だ。だから、ヨーリとの共同作業はお盆あたりに始まったわけだ。

編集部の返事は、ヨーリの提案をそのまま受け入れるわけにはいかないというものだった。というのも、ヨーリの提案は過去にイタリアの雑誌に掲載したものを、手直ししただけのものだったからだ。

モーニング誌の外国人漫画家企画は、あくまでも日本の読者へ向けての書き下ろしを基本にしていた。日本の漫画家とする作業と同じように、企画、ネームの段階から編集部が介入し、日本市場で価値が出るように模索しつつ作品にしていくことで、なにか新しいものを生み出すのが目的でもあるからだ。

編集者は、「主人公が世界旅行をしながら次々と様々な驚異を経験していく」という構想自体は面白く思えるので、これを基に日本向けに構成しなおし、次々に物語を描いていく気持ちがあるならば検討に値する、と言った。

次に、日本ではまず週刊誌に掲載され、そして単行本にまとめられる、とも続けている。日本人漫画家が相手だったらいちいち言わなくてもいいことだけれど、日本以外ではまったく当たり前ではないのだ。ヨーリへの最初の通信でこの事を伝えたということは、編集者の方でも海外の事情を把握し始めたということでもある。

そして条件を三つ出した。
1:各話読みきりで、カラーなら8ページ、白黒なら32ページ以内。
2:主人公の存在をはっきり描く。主人公が経験するものとして描く。
3:すでに描いた話は描かない。

「2」の条件は、まさにMANGAの特徴である「読者はキャラクターに感情移入をして物語を生きる」を具現するための必須条件だ。これも、日本人の漫画家に対してだったら新人だったとしても改めて言う必要のないことだ。

外国産のコミックスは、必ずしも「主人公の存在をはっきり描く。主人公が経験するものとして描いて」いないわけで、編集者はこの事実も学習した結果がここで見てとれる。

この条件で第一話のシノプシスを作って送ってくれるように、そして、通信の最後に、カラーだったら11話、白黒だったら8話で単行本になることを追加している。暗に、このエピソードの数でとりあえず話に切りがつくように構成しろよ、と言ってるわけだ。それを明記しなくてもわかるよね? とも。

ヨーリの返事はもちろん了解だ。
そのやりとりは次回に。

【みどり】midorigo@mac.com

前回のあとがきで書いたインタビュー記事がウエブ雑誌に載りました。
< http://www.marieclaire.it/Attualita/Intervista-a-Midori-Yamane-al-Romics-di-Roma >

メールで送られてきた質問がとても表面的なものだったので、ちょっと意味ないじゃんと思い、表面的な答えにとどまらずに、現代社会の問題点など私の意見を結構長々書いて送信しました。

初めての受け答えは笑いをとったほうがいいのはわかってたけど、根が真面目なもので......。

この記事は表面的な受け答えのみに拠ってます。ちょうどローマのコミックスフェアが終わったばかりだったので、そのことに集中した対応のみで、残りはdonnareportorという別のウエブ雑誌に載せると言ってたけど、一か月以上経っても音沙汰なし。まっいいか。このページに私のマンガのリンクも載せてくれたし。

主に料理の写真を載せたブログを書いてます。
< http://midoroma.blog87.fc2.com/ >