武&山根の展覧会レビュー 心地よいリアリズム──【アントニオ・ロペス展】を観て/武 盾一郎&山根康弘

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山:こんばんはー。
武:こんばんわ! 代官山アートラッシュ「Tシャツ展」に出展してますので、買ってください! 6月17日(月)までです! Tシャツデザインは「ネズミに恋したネコのタムちゃん」です!
< http://www.artsrush.jp/ >
< http://take-junichiro.tumblr.com/post/51032588456 >

山:いきなり告知かい。手刷のシルクスクリーンTシャツです! 山根が刷っております!ノーギャラでな。
< http://www.facebook.com/junichiro.take?ref=hl#!/photo.php?fbid=564344840277074&set=a.428410123870547.101931.206228169422078 >

武:売れたら山根にもギャラが入ります! あ、でも俺いっぱい差し入れしたじゃん! 唐揚げとか弁当とか柿ピーとかのつまみとかビールとか。トータルで4千円くらいは買ってる気がするから、あれでギャラ分だなw

山:...となると、時給は400円以下か、、
武:いえいえ。一回2時間くらいだったから時給1000円かな。
山:なんで2時間やねん! もっとかかったっちゅうねん。

武:それはもう呑んでるから労働時間外。
山:だまされた! いいように使われている!
武:いいえ。コンプライアンスです。

山:過酷な労働を強い、さらに賃金も払わんのかっ! ひどい! あ、あんまり言うとデジクリ批判になるからやめようww
武:わはは! あ、あと、
山:なんでしょう。

武:大好評だった、「パステルと線画を楽しむワークショプ」第3弾やります!
日時:7月9日(火)午前10時〜12時
場所:浦和パルコ10F「浦和コミュニティセンター」
詳しくはTeam Uttoco ブログにて!
< http://ameblo.jp/uttocoichi/ >

山:まだ告知か! はよ展示いこ、展示。今回は、スペインはマドリード・レアリスムの巨匠、アントニオ・ロペス・ガルシアです!
< http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/13_lopez/index.html >




【アントニオ・ロペス展/Bunkamura ザ・ミュージアム】を観て

武:ワタリウムのJRとどっち行こうか迷いましたが、結局、ロペスにしました!
山:ワタリウムはこちら。
< http://www.watarium.co.jp/exhibition/1302JR/index_e.html >

武:「JR」か「ロペス」か、でロペスにしちゃうところが時代に逆行してるよなあ、俺たち。
山:そうか?

武:まあ、ひるがえって「絵画」ってのはあるだろうけど、、アクティビスティックなアートがようやく流行ってるよね。バンクシー、JR、そして日本だとチンポムっていうラインはあるだろうな。90年代の俺が今に生きてたら、ここに連なっていたはずだw

山:そうなんかな。
武:ロペスは「絵」だよね。
山:立体もやるけど。
武:彫刻やってるけど造形作家っていう感じではないよね。
山:メインは絵なんやろね。

武:「スペインリアリズム」っていわれてるけど、なんかグループってあるんかな?
山:「マドリード・リアリズム」、みんなマドリードなんですね。バルセロナではない。何十年か前の「みずゑ」で特集があって、僕はそれで知った。「スペインの魔術的リアリズム」って号だったかな。
武:「シュールレアリスム」のような形ではないのかな「スペインリアリズム」ってのは。

山:「また、50年代後半あたりから活動を開始した現代スペインの写実画家アントニオ・ロペス・ガルシアとその周辺に集う画家たちも、徹底した観察眼で対象に迫りながらどこか超現実的な雰囲気を醸し出す作風から、「魔術的リアリズム」あるいは「マドリード・リアリズム」と称されるときがある。」(Artwords)
< http://artscape.jp/artword/index.php/%E9%AD%94%E8%A1%93%E7%9A%84%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%82%BA%E3%83%A0 >

武:「魔術的リアリズム」かあ。。
山:「卑近な対象を冷たく無機質な描写で描き、事物の背後にひそむ謎めいた
  感覚を引き出すのが魔術的リアリズムの典型的なスタイルと言える。」っ
  て言葉に集約されるのか。ひいてはジュルジョ・デ・キリコってことは、
  シュールにも繋がる訳だ。

●日本人におけるリアリズム絵画

武:「絵が上手い」ってこととの関係ってどうなるのかなあ。
山:どういうこと?
武:「あらー上手ねー」っていう場合の「上手な絵」ってリアリズムじゃん。
山:写実ってことか。

武:「絵が上手」って日本人なら二種類しかなくて、「リアリズムが上手か」「マンガが上手か」なんだよ。「絵」ってそこからスタートする感じするんだよね。
山:言わんとしてることはわかるが。

武:何を言いたいのかというと、自分がリアリズムに傾倒できなかった理由は彩光舎美術予備校で優等生じゃなかったからなんだよね。リアリズムって「絵の優等生」というのかな、その「優等生」っぽさが馴染まなかったんだよね。なのでリアリズム絵画を見ると常になんか「疑問」と「劣等感」を覚えるんだよね。
山:はあ。

武:そしてもうひとつは「写真があるのになんでリアリズム絵画を描く必要があるのか?」という素朴な疑問の壁を超えられなかった。
山:まあねえ。
武:なんだろこの「リアリズム絵画の優等生感」って。

山:絵の話をしてて、よく「私は絵かけないから」って言われたりするよな。
武:そうそう! 「私、絵を描けないのよ〜」って言った場合、「絵」って「リアリズム絵画」のことを指しちゃうじゃん。

山:巧く、本物のように描けない、ってことやな。
武:鉛筆でピーって線を引けばそれはもう「絵」なんだって考えないでしょ?
山:そうかもな。

武:実際、それだって絵じゃん。つか、それこそが「絵」の原点じゃん。今、ちまたには様々なビジュアルアーツがあるけど、この、「リアリズム絵画が絵である」という主軸はブレずにずっとあるじゃないですか。それが「なんなんだろーなー?」って、すんごく思ったわけです。
山:うーん。。まあわかりやすいんやろうけどな。

武:ロペスがこれだけ人気があるのはリアリズム絵画だからなんよな。「リアリズム」強えーww
山:わからない。
武:わからないのか? 俺の言ってることが?
山:言ってることはわからなくもないけど、その感覚がわからない。

武:「リアリズム絵画」ってさ、日本に入って来るの明治以降でしょ。その前までの日本の主な視覚藝術ってのはさ、浮世絵もそうだけど、中国源流の山水画もあるけど、ほとんどが琳派みたいな自然の草花かなんかを模して略してデザイン化させた平面でしょ? なのになぜ今の日本人「リアリズム絵画」大好きなんかなー? 琳派観る方がむしろ異文化を眺めるような感覚になるじゃん。自分も含めてだけど。

山:本物そっくりに描けるって、単純に技術がすごい、ってことがわかりやすい。ここまで描けるのか!と。やっぱり奥行きのある画面を作りやすい油絵具と、日本人が昔から使っていた絵具とでは、素材の違いで表現の仕方が違う。
今の日本人がリアリズム絵画大好きって、僕はそう思わないけど、観てすぐに技術の高さがわかるから、反応しやすい、ってとこはあるかもな。

●ロペスと現代美術

武:ロペスって、というかスペインリアリズムって写真から描かないじゃん。写真観て描いちゃダメなの?
山:写真を見て写真のように描くってのは、意外と最近のことなんとちゃうか。「ハイパーリアリズム」とか。チャック・クロースとかよく見るよね。美術館で。
< http://www.weblio.jp/content/%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%82%BA%E3%83%A0 >
< http://www.shinbun-p.co.jp/blog/photo/late20th32.jpg >

武:ハイパーリアリズムとロペスの違いってなんだろ? 細密なのがハイパーリアリズムでロペスは細密ではないから?
山:ロペスは古典的やね。ハイパーリアリズムは、ジャンルとしては現代美術よな。

武:そうねえ、「絵の具を置いてゆく」描き方が古典っぽいのかなあ。ロペスとハイパーリアリズムの違いは古典美術と現代美術の違いと言われても、両者とも現在に生きてるのでちょっと分かりにくいなあ。あ、ひょっとして、ヨーロッパとアメリカの違い?
山:それもあるかもね。あと油絵具とアクリル絵具の違い、とか。

武:ハイパーリアリズムってやっぱりアメリカ的だよね、映像を主体にしちゃいたいんだよな、きっと。ポップアートのアメリカ性って日本人と相性良さげだけど、リアリムズとなるとハイパーリアリズムよりスペインリアリズムの方がしっくり来ないか?

山:しっくりくるこないは、人によって違うんやろうけど、写真を元にして描く絵画は、到達点が「まるで写真のような」絵画であるのに対し、実際の風景を見て描く絵画の到達点は、視覚的に「本物のような」ということだけにとどまらず、情緒的な「現実感」をもたらそうとする、、とかか?

武:なるほど、ロペスの絵を見て「いいなあ」って感じるのは、どこか「情緒的」だからだよね、たしかに。「光」を感じる、とかね。光の捉え方もまたなんとなく情緒的なんだよなあ。。

山:確か「みずゑ」のロペス評に、スペイン独特の、なんやったかな、「暗さ」のようなものがある、って書かれていた気がする。

武:ロペスを初めて知ったのは彩光舎時代なんだけど、もう18年とか前か、その時はロペスの絵に対して「魔術的リアリズム」っていう言葉がピッタリな「闇」を感じたんですよ。

今回、ロペスの絵を実際に見て感じたのは「暗さ」も感じなくはなかったけど、どちらかというとホッとするような感じだったなあ。それってノスタルジーじゃないのか? と自分に問いかけてみたけど、ノスタルジーとも違う絵がもたらす安堵感というか。
山:確かに観ていて気持ちがいい。

武:「過剰ではない」ってことなのかな。リアリズム絵画って過剰になって行くじゃないですか。描写とかモチーフとか、いろいろ。それがなんか下品に感じたり俗っぽく感じたりしちゃうんですよ。だけど、ロペスはどこか心地良かったんだよね。

山:室内の風景、窓とか浴槽とかをロペスは描いているけど、その色彩とか画面の平坦な感じとかは、古典主義と言うよりも、現代美術として捉えれる気はするよね。それこそ写真を使ってああいう雰囲気の絵を描いてる作家もいそう。

だけど、ロペスは実際にイーゼルをそこに立てて、何日も何年もその風景を見て描いてる。写真も参考にはしてることあるみたいやけど、それを写しているわけではない。ロペスとしてはおそらくそこにいる時間とか、空気感とか、そこで自分がモチーフに対峙している事実そのもの、とかが大事なんやろうな。ただ画面が出来上がればいい、というわけではなくて。映画「マルメロの陽光」見たら、よくわかる。

武:その場の状況、プロセスを大切にするってことだよね。
山:そうなんやろね。そこに何かしら、諦めにも似た情緒性も感じるな。
武:対象や環境が主体だからね。描き手じゃなくて。それはなんかよく分かる気がする。

山:そう言う意味では風景画家、って感じもするな。
武:印象派もある意味そうだよね。
山:そうかもね。

武:ただ、ロペスは風景画家か? と問われると、風景画でしばしば感じてしまう「趣味っぽさ」からくる退屈さってのがあるんだけど、ロペスにはあんまりそれを感じないが、何が違うのかなあ。「時間」か?
山:「主題の選び方」なんかな。さっき武さんが言ったように、「過剰さ」を求めてるわけではなくて、静かな、そのままを求めてる、とか。だから動きはないよね。ほぼ。

武:動きはないけど、絵を観ててさ、飽きないんだよね。ずっと観てられる「何か」がある。未完の作品があるくらい過程に重きがあるってことは、結果を放棄してるとも言えるよね。
山:だから、どっか諦めてる、って感じる。

武:アイデアの善し悪しを求めてないんだよね、作品が「アイデア(主題)の実現化」じゃないんだよね。アイデアを実現したいだけなら、デザインを設計して制作は外注でも良いわけで。プロセスは速くて安くて正確であればいいわけだ。けど過程そのものが作品なので結果が未完にもなる。で、そういう作品だからこそなのか? 見てて飽きなかったりするのは?

山:まあ、アイデア勝負してる作品ではないわな。最近のは若干アイデアも含まれてるっぽいけど。めちゃめちゃでかい彫刻とか。
武:現代美術っぽくなってる、とw
山:そう、ある意味「ハイパーリアリズム」に近いことをやり始めた、とか。

●老い

武:いい加減老人だもんね。過程を重んじるってことは、身体性を重視してるってことじゃないですか。歳とって身体を使うのしんどくなるじゃないですか。
山:体力いるわな。

武:だから、老人になって作品が身体性から離れて行くってのはなんか自然な感じするな。なにしろ、そろそろ本当に身体から離れて行くわけだから。
山:まあなw

武:最晩年になって体力も衰えるし、もう過程重視の制作も出来なくなるし、そろそろお迎えも来るし、現実感から超越した作品を作ってもいいと思うんだよ。最晩年の超越感を作品化させたら相当馬鹿でかい妄想のような作品になる気がするんだよね。

山:年とったから現実感から超越してもいい、とは思わんが。別に若くてもいいやろw
武:若い頃の現実超越ってのはさ、「欲望」なんだよ。
山:ええやんか。
武:最晩年の現実超越ってのはさ、「死」なんだよ。
山:そうなんかもな。

武:死>>>欲望
山:そうかなあ。どっちもリアルやないかw
武:若い頃の欲望ってのはさ、「自意識」なんだよね。
山:それ自体は悪くはないんとちゃうの。

武:その自意識を支える強靭な身体があるわけだよな。老人はその身体が奪われて行く。身体性を失った自意識や欲望は壮大だ。若者による身体性の虚弱化は不自然なんだけど、老人の身体性の虚弱化は自然の成り行きだから、老人の妄想は自然で巨大に膨れ上がり自我を突き破る可能性もあるのだよ。

山:何を期待してるんやww
武:老人の俺ww
山:そうなるとすれば、それは表現において実現されるのではなく、ただ静かに、心の内に実現される、、そんな気がするな。

武:表現されなきゃ意味ないんだよなー。
山:表現には形式化とか、理念化とかが必要やったりするやん。メタ化とか。だから実現は、心の内で。それが表現として染み出てくるには、何か別の形が必要だ、と。

武:それは老人に至るまでのプロセスが形成させてくれるんだよ。ロペスに戻るけどさ、デッカイ彫刻は、スペインリアリズムっぽくはないよなw
山:現代美術の範疇やな。スペインリアリズム、マドリード・リアリズムについてもう一個言っとくと、そこでくくられてる作家って、かなり作風に幅がある。全然タイプ違うんよな。

武:現代美術でもあるんだろうけど、例えばポール・デルボーの最晩年の絵みたく「ふわ〜っ」てしちゃうってあるじゃん。藤田嗣治も最晩年はキリスト教の天上の絵を描いちゃうように、なんかどこか「ふわ〜っ」てしてっちゃうじゃん。
山:ふむ。

武:自分の人生の晩年も、「ふあん」じゃなくて「ふわ〜っ」としたいね。
山:「ふわ〜っ」とするにはけっこう技術いるんちゃうかw
武:そうね。いろいろな意味で、技術だな。


【アントニオ・ロペス展/Bunkamura ザ・ミュージアム】
< http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/13_lopez/index.html >
会期:2013年4月27日(土)〜6月16日(日)会期中無休
時間:10:00〜19:00(入館は18:30まで)
毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)
入館料:一般1,400円 大学・高校生1,000円 中学・小学生700円

【武 盾一郎(たけ じゅんいちろう)/経済自立してる画家】
アトリエ世界征服研究所に食べ物を差し入れてくださった方、似顔絵描きます! そして、画家活動のご支援受付けております! 10万円をご入金の方にもれなく「武盾一郎は私が育てた」と公言してよい権利をプレゼント! まだ誰もその権利を獲得していませんので今がチャンスです![埼玉りそな銀行 上尾西口支店 普通 4050735]

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【山根康弘(やまね やすひろ)/心地よい酒】
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