装飾山イバラ道[120]「アメリカン・アイドル12」フィナーレを見る/武田瑛夢

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「アメリカン・アイドル12」の最終回放送(フィナーレ)も見終わって、毎週必ず見るテレビ番組がなくなってしまった。※以下にはネタバレがあります。※

いつも「アメリカの紅白」だと思って見ている、このアメリカン・アイドルフィナーレだけれど、今年も多様な大御所が若手とコラボして超豪華なステージを披露していた。

私はアメリカの昔の音楽に詳しくないので、知らないほど昔の人とのコラボよりも、ちょっと前くらいの人たちと候補者のパフォーマンスの方が嬉しかった。ただ、このへんは日本でも紅白で演歌歌手の出演が減っているような現象と近いのかもしれない。

・American Idol
< http://www.youtube.com/user/americanidol >

パフォーマンスでの話題では、マライア・キャリーの口パク疑惑がニュースにまでなったけれど、あのシーンだけ録画だったらしいので何だか別格な扱いであったのは確かだ。

私が見て感じたのは、カメラ位置がほとんど固定で、一番歌い上げているところで、なぜか遠い天井カメラだったのが違和感。完璧主義すぎるかららしいけれど、私はすごい時とそうでもない時の両方があってもいいのにと思う。

でも、今のマライアさんが今の表現方法を自分で選んでいるのなら、それはそれでいいのだとも思う。




●TOP3の女性たち

TOP5の時点で全員女性が残るという異例な今年。ダントツのお気に入りという人がいなかったけれど、アンジーがピアノの弾き語りを見せた時に「もうアンジーが優勝でいい」と私も思った。それぐらい彼女の声とピアノは繊細にマッチしていて、皆の心を掴んだのだ。

しかし、TOP3のパフォーマンスで、弾き語りにぴったりの曲だったのにあえてピアノを弾かなかったことがアダとなり、彼女は決勝戦に残ることができなかった。決勝戦はキャンディスとクリー。

●クリーの強さ

TOP3はプライベートジェットで里帰りができ、地元でのコンサートで歌って、ふるさとの皆に直に応援してもらえるという機会を得る。長い戦いに勝ち残った者への最大のご褒美だ。

私はカントリー歌手のクリーが決勝戦に残ったのは、この時の「里帰りビデオ映像」が感動的だったことも影響したような気がした。

キャンディスとアンジーの里帰り映像も、もちろん素敵で感動したけれど、クリーのビデオには今までに見た里帰りのシーンとは違う彼女の歴史があった。(youtubeには帰郷のシーンがみつけられませんでした)

クリー(22歳)は、彼女が19歳の時に母親を、12歳の時に父親を亡くしていたのだ。今までもクリーの紹介ビデオで何度か、両親がいないということは聞いていたと思う。しかし、今回映像で見るまでは、若いクリーのがんばりの深さに気づく事はできていなかった。

クリーは番組が用意したリムジンで故郷に着き、出迎えてくれた姉と、幼少期を過ごした家へと向かう。今は誰も住んでいない家には、家族で過ごした頃の家財道具がそのまま置かれ、壁は朽ちかけていた。

クリーが手に持って広げた古びたTシャツは、父が着ていたものだという。確かに写真でお父さんが着ているものと同じだった。懐かしさと特別な想いで、姉と抱き合うクリー。

今までは里帰りは「一番応援してくれる人、一番会いたい人に会える機会」と思っていたけれど、こういう形での里帰りには胸が詰まる。

オープンカーで移動すると、町の至る所で人々がクリーを温かく迎えてくれていた。町の人々は皆クリーを本当に我が娘のように思っているのだ。

「ここには手で掴めそうなほど愛が溢れていている!」と叫ぶクリーに、喜びをしっかり味わって欲しいと、テレビを見た誰もが思ったのではないだろうか。

クリーは番組スタッフとも一番親しくて、会う人会う人とハグをするという。常にご両親の愛情を心で感じながら優しく育った人なのだろう。「歌に自然に心が込められる」という能力が彼女の最大の武器で、それは他の誰も敵わない。

その後の地元コンサートで、いつも冷静なクリーが「いつかきっと、また会える」という歌詞で感極まるところなんて、涙なくしては見ていられなかった。あの満員の会場でクリーを一番応援したい人たちは、きっとそこに来ていたんだと感じられた。

・Kree Harrison Performs "Up To The Mountain"
< >

●キャンディスの完璧さ

優勝者のキャンディス・グラバーはゴスペルの女性歌手で、圧倒的な歌唱力で審査員を総立ちにさせる回数が最も多かった人だ。声量はもちろん、繊細な裏表の声を使い分け、転がるように複雑なコブシ回しのどの音も自然で正確だと感じさせる。

例えば、ものすごく上手いダンサーが即興で音楽に合わせて踊る時に、ジャンプもターンもジャストなタイミングで決めて、動きの抑揚も完璧だった時のような感じ。キャンディスの歌を聞いた時も同じような満足感がある。

中途半端なダンサーの場合、無駄なステップが入ったり、謎の余り時間が出来たりしそうなものだ。そして中途半端な歌手の場合、コブシも大げさに聞こえ、元の音からアレンジしているつもりが正しいメロディから外れてるようにしか聞こえないようなことがある。

・Candice Glover Performs I(Who Have Nothing)
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優れた歌手とダンサーの、両方が出来ていることって何だろう。きっと自分の「技術」と「気持ち」と「流れ」のすべてを、最善な方法とタイミングで押し出すことができることかな。

最も自分の表現したいことが際立つように「技術」を使い、「気持ち」を高めながら自然な「流れ」を作り出す。

キャンディスは今回のシーズン12で3度目の挑戦だったので、「技術」と「気持ち」と「流れ」のすべてのコントロールが可能なほど、実力をつけていたのだと思う。本当におめでとう。

●アイドルたちのこれから

そして、フィナーレのパフォーマンスで一番ワクワクしたのは、アンジーとシーズン8の準優勝者アダム・ランバートとのデュエット。アンジーは得意のピアノの弾き語りだし、アダム・ランバートは抑えめだけど存在感ばっちりの歌だった。

・Angie Miller and Adam Lambert Perform "Titanium"
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アンジーのハスキーな女性の声とアダムの甲高い男性の声が、複雑なミックスになっていてかっこいー。結局3位だったアンジーだけれど、インタビューで「優勝しなくても活躍できることをアダムは証明したのよ!」と言っていたから、このデュエットの意味が「希望」でもある感じがまた素晴らしい。

候補者たちはTOP10に入ればたぶんデビューのチャンスがあるし、「成功の大きさ」は売上げなのか、影響力なのか、仕事の質なのか、自身の満足感なのか、人によって考えが違うだろう。

フィナーレでは、前回まで審査員だったジェニファー・ロペスも歌っていて、新人世代と中堅世代、ベテラン世代のそれぞれの歌手たちの立場や実力のバトルもバチバチあったようだ。

ショービジネスに携わる人たちは、まずは他人と比較され、売れた後はピーク時の自分と比較される。ベテラン歌手がまだまだイケるステージを見せれば、テレビ前で焦っているベテラン歌手もいるのだろう。皆そうやって刺激し合って生きて行くのかな。

審査員の場合ももちろんコメントの質を比較される。今回新しく加わったニッキーやマライアも次シーズンで去るらしいし、価値はあるけれど負担の大きい仕事であることも確かだ。

オーディション番組もそう簡単に視聴率を取れなくなってきたというし、質の高い番組を今後も期待している。

【武田瑛夢/たけだえいむ】eimu@eimu.com
装飾アートの総本山WEBサイト"デコラティブマウンテン"
< http://www.eimu.com/ >

数ある物産展の中でも「北海道展」はキングの位置づけだと言う。実は私も大好きだけれど、九州とか大阪とか、北海道と関係ない物産展でも、客寄せ効果のためか北海道のものを売る一角が用意されているのがせつない。北海道コーナーがいつもあると、北海道の物へのありがたみが薄れてしちゃう。ハッ、だから他県にとってはそれでいいとか?