3Dプリンタ奮闘記[13]造形の基礎と応用 その1 モノ作りの基礎の基礎/織田隆治

投稿:  著者:  読了時間:5分(本文:約2,100文字)


これまで3Dプリンタの基礎や実製作での工程、使用するにあたっての色々なトラブルについて書いて来たが、今回から数回は、立体造形について初歩的な事から、実際の造形について述べて行く。多少3Dプリンタとは逸れる話が続くかもしれないが、ご容赦頂きたい。

大きな意味での立体造形とは、形を作り出す事である。

よく、モノ作りや絵作りにも「デッサンが大事!」なんて堂々巡りの論議が繰り返される事が多い。デッサンというのは、本当に基礎の基礎になってくるのは揺るぎない事実だ。

デッサンというのは、立体を把握する力を養う事である。立体を把握している人が描いた図面、イラストやマンガは、その人の頭の中に無意識であっても立体把握や空間把握が出来ているため、どの角度から描いても説得力のある絵になる。裏側が感じられる絵だ。

それは、見える所だけでなく、その線や面がどのように繋がって立体になっているか、という事を把握出来ている為だと思われる。

普段、そういった事を意識していない一般の人でも、実はその立体把握の能力は無意識に脳内で把握出来ていると思う。だから、立体的に不自然な絵を見ると違和感を覚えるのだ。

誰が見ても自然に入って行く絵は、ちゃんとした立体把握の上に出来上がっている。




そのいい例が人の顔や体である。普段意識していなくても、実はその形状は脳に自然にインプットされていて、イラストや絵画等を見た時に俗に言う「パースがおかしい」と感じるのはその為だと思う。

その違和感を分かった上で使用して、アート作品にしている作家もいる。絵に説得力のある人は、造形を練習する事によって、結構早い段階で才能を発揮する場合も多いと思われる。

大事な事は、立体を見て、図面やイラストに置換える想像力。逆に、図面やイラストを見て、立体を想像出来る力だ。

この能力は、工業デザイン、建築デザイン、インテリアデザイン等はもちろんの事、POP等のセールスプロモーション用のグラフィックデザインにも必須な力と言える。モノ作りの基礎の基礎となるはずだ。

鉛筆や木炭を使ってのデッサンはもちろんだが、粘土造形によって立体を把握する事もかなり役立つ。これは、実際に自分の手の感覚で立体を把握出来るというメリットがある。

頭で考えるより、体感的に立体を把握出来る。どちらかと言うと、鉛筆や木炭を使ってのデッサンより、私はこの粘土デッサンの方が有効だと思っている。

プラモデル等を作る事も、とても重要な基礎になる。どのパーツがどのように組み合わせてあるのか。どういった製作手順を踏めば、効率の良い設計になるのか。そういった事が自然に身に付く。

そういった立体の把握が出来ていれば、設計に入るのにもかなりスムーズだ。

よく、図面をクライアントに渡して確認して頂く事があるのだが、なかなか完成品を予想してもらえない場合が多い。

その為、初期の段階で完成を把握して頂くために、簡単でも良いので必ずパース画(完成予想図)を立ち上げる。それは、手描きの場合もあれば、CGの場合もある。

機械設計や模型設計、工業製品の場合はCG。フィギュア等の場合は手描きのイラストになる。これは、双方同じ見識や完成予想等の情報を共有していくのに必ず役立つ。立体の把握をしやすくする、昔から使われている手法だ。

これを共有出来ていないと、実製作に支障をきたす。スムーズな製作進行は、良いモノ作りをしていく為には重要な要素になる。

作り手は立体を把握していないと、良い設計は出来ない。この部分が立体的にどのように他の部品や基礎に関わっているのか。こう動くと他の部品等はどう動くか、と言った具合だ。

では、モノ作りを始めるためには、もしくはそういった立体把握が出来るようになるには、どうしたら良いだろう。

まずは、「興味のある物を作る」。これに尽きる。それは、人であったり、車や飛行機であったり、動物や植物、アニメのキャラクターやロボットでも何でも良い。

なぜなら、「飽きない」からだ。興味のないものでいくら練習した所で、身が入らずに終ってしまう事が多い。石膏像のデッサンを永遠と繰り返すのはつまらないではないか。

好きな物に関しては、集中して飽きずに眺める事が出来る。まあ、当たり前の話ではあるが。

そこで立体デッサンを充分に行う事で、自然にその能力が身に付く。その能力が身に付く事により、他の立体物を設計したり、製作する時には、自分でもびっくりするくらい頭の中で想像出来る事に気がつくはずだ。

あえて言いたい。設計、デザイン、造形、そう言った仕事に着く際は、まずは
「好きな物作ろう」
「粘土こねよう」
「プラモデル作ろう」
「ペーパークラフト作ろう」

デザインや製作の仕事をする人は、当然嫌いじゃないはずだ。自分がどれが好きか分からない人は、まずは色々やってみよう。基本は立体。これから外れなければ、上達は間違いない。

好きな事から始めよう! 必ず役立つ。

【織田隆治】
FULL DIMENSIONS STUDIO(フル ディメンションズ スタジオ)
< http://www.f-d-studio.jp >

立体は楽しい。CGも面白いが、実際に目の前にある存在感。触れる説得力。これは他の何にも換えられない事実ですね。