わが逃走[130]宮崎・橋めぐり の巻/齋藤 浩

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私は子供の頃から橋が好きだ。

橋とは対岸へ渡るための解決策である。「向こう岸に行きたい。なので橋をかける。ほら、渡れた」というストーリーがプロダクトから明快に伝わるのがポイント。起・承・結が込められた、ひとコマ漫画的構造物とでも言おうか。

同じ解決策でもトンネルが土の中にあるのに対し、橋は太陽光の下、その姿を見ることができる。まああたり前なんだけど、そのへんのわかりやすさが好きなんだな。

先月の末、訳あって宮崎県の山の中にある人口1200人の小さな村、西米良に滞在したのだが、そのときにいろいろな橋と出会ってちょっと嬉しかったので、ここに報告いたす次第。

かりこぼうず大橋
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宮崎県産杉集成材を使用したキングポストトラス橋。日本一の木造道路橋とのことで、開通時は大変な人だかりだったそうな。

3連トラスは米良三山をモチーフとしていると言うが、なんか装飾的な印象がして不自然。やはり橋は機能美で魅せるべき。

木造と言ってるけどホントかなあ。ガワに木を貼ってるだけなのでは? という印象を持つオレはひねくれ者。すぐ脇にある『川の駅』のソフトクリームがたいへん美味。

村所橋
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ベーシックなトラス型鉄橋。ごく普通の橋だが、味わいがある。村のランドマーク的存在。昭和30年頃の竣工だったかな。

以来、朝日を受け夕陽を反射していた結果、風景ととても馴染んでいる。橋に性格があるとすれば、地道な努力家といった印象。村の特産品のゆずとほおずきをモチーフとしたメルヘンな橋に架け替え、とか絶対しないでね。

吊り橋(名称不明)
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村所橋から川をずんずんさかのぼると、上米良あたり(?)だったかに、ひっそりとかかる風流な吊り橋がある。

下流の橋ができる前は自動車もここを通っていたらしい。木造の橋ってだけでも貴重なのに、吊り橋で、さらに組まれた板の隙間から川面が見えるというツボをおさえたつくり。

メンテはそれなりに大変だとは思うけど、こういう物件こそ大切に、飾らず普通に使い続けてほしいと思う。

小さなダムにかかる小さな橋
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人ひとり歩ける程度の幅しかない。シンプルな構造美。渡ったときは穏やかな天気だったのだが、翌日は台風の影響でダムが放流していて、すごい音&水しぶきでコワくて渡れなかった。

つり橋の遺構
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椎葉村役場付近の"吊り橋のあった場所"。その頃は対岸の小学校まで渡って通えたのだろう。そんな当時の姿を想像してみる。

美郷町付近だったか
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実に記号的なトラス型鉄橋があったので撮影。山々と人工物との対比がイイ。しばし眺める。

酷道沿いの橋桁
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国道388と平行している、おそらく旧道の遺構。

私はうっかり何も知らずにこの国道388号『大河内越〜椎葉村平』に入ってしまったのだが、かろうじて舗装されてはいるものの、かなり急なアップダウンの連続、しかも落石注意のブラインドコーナーだらけ、峠道ゆえ昼間でも暗い、対向車が来たらヤバイ、しかも天気は台風通過直後の雨で、すぐ脇を流れる川は濁流。

こんな道を20キロ近くも走ってしまい、とてもコワイ思いをしたのだった。国道だから安全、との思い込みは禁物。とくに大雨の後にここを通るのは絶対に危険。

棚田の脇の橋
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流れの上に石を渡しただけ。しかしまぎれもなく橋である。極めてシンプル。記号的な美しさを持つ"解決策"。無作為の美の極み。

尾鈴橋
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昭和25年竣工。ダム湖にかかる中路式ブレーストリブタイドアーチ橋(トラス組みアーチ部分の中央を道路が通るタイプの橋)で、とくにこの尾鈴橋は独自の曲線美を持つことで知る人ぞ知る存在となっている。

橋を支えるコンクリートの土台の形状も独特。ここに突っ張るような形で橋が架かっている。

周辺は怖いくらい静かで、山々の緑と橋の赤との色彩の対比も美しい。現地で30分ほど眺めていたのだが、その間ツーリングのバイクが行ったきりで、あとはまったく一切誰も通らず。

鳥も鳴かず、波も立たず、静寂。無音。

いつの間にかあの世に行ってしまったのではないかと背筋が寒くなるも、その美しさに見入る齋藤浩であった。

【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
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1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。