ネタを訪ねて三万歩[105]大学9年生、学園祭で盛り上がる予定
── 海津ヨシノリ ──

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私が2005年から関わっている多摩美術大学造形表現学部は、今期限りで募集を停止してしまいましたので、今年入学した一年生が卒業する2017年3月で廃部となってしまいます。

そんな状況を突きつけられてからの今年の芸祭は、もしかしたら最後では? という気持が学内では強く、学生達はかなり熱く頑張っています。

もともと造形表現学部のある上野毛キャンパスは大変小さいスペースですので、規模も高校の学園祭よりも小さいといったところです。しかし、そこは勢いで年ごとに熱気が高まっていました。そんなわけで、個々の実行委員の学生とは飲み会などで色々と盛り上がっていました。

そんな矢先に、ふとしたきっかけで12名の学生(一名のみ男子学生)と、イラスト展とポストカード販売をする「芸祭イラスト展2013!」へ参加することになってしまいました。素敵な学生達の笑顔と、巧みな話術に引き寄せられたというわけです。




この展示会は例年行われており、今年が初めてではありません。思えば卒業生と、個々の作家が自由に作品を販売する企画で盛り上がってはいたのですが、なかなか実現できなかったこともあって、私の中で何かしたいという思いが少し燻っていたのかも知れません。アクションを起こしたいという欲求ですね。もちろん肩肘張らず軽いノリでの参加です。

なんといっても、一番若い学生とは親子ほどの年の差です。普通そんな学生達と一緒にイベントをするなんてことはあり得ないですからね。とにかく、この素晴らしい特権があと数年でなくなってしまうわけですから、今のうちに色々とチャレンジしてみたいという気持ちが、無意識ですが強くなっていたのかもしれません。元気をもらっているのは私の方ですからね。

不思議なコトに、どんなに忙しくてヘトヘトであっても、上野毛キャンパスの門をくぐった瞬間に疲れは吹っ飛んでしまいます。ユニークでパワフルな学生達が出迎えてくれる、私にとっての癒しの場、あるいは隠れ家的な空間なのかも知れません。

さて、学生達とのイベントでは当然ながら指導のようなことはまったくしません。学生との対等な関係での参加です。つまり、教員としては一切行動しないという意味です。

もちろん印刷のことなど、彼らが分からないことがあれば対応しますが、あくまでも先輩としての関わりであり、教員としてではありません。上野毛キャンパスは社会人学生も多く、学内には私よりも年長の学生もいますので違和感はゼロです。

なにより、ここの学生は熱心で質問も多く、講義中に寝ている者は皆無です。真面目で向学心の強い学生が多いので、必然的に学生との距離は短く、いつの間にか飲み友達のような関係になったりしてしまいます。だからこそ成立したイベントなのかもしれません。

つまり、多摩美術大学造形表現学部共通教育の非常勤講師である私は、9年生(非常勤講師歴9年)として、この楽しい企画に参加することになったわけなのです。

そこで、毎日アップしている「The Capricious Daily Work」からの選りすぐりイメージに加え、定番イラスト等もポストカードで初登場。そして、最近撮り溜めてfacebookで騒いでいる「Tiny Doll」の非売品ポストカードをお買い上げ点数に応じ、欲しい方へ差し上げるという感じを考えています。

また、当日は会場限定オリジナルグッズも用意することになりました。考えてみると、私は年賀状などを除くと15年ほど前に、いわゆる誰でもが使えるポストカードを数種類印刷したことがありましたが、その時は作品集のイメージが強かったので、今回のように販売目的とは意味が違っていました。つまり、今回は初の試みという意識です。

まっ、少し大袈裟ですが、ちょっとワクワクしています。私の学生の時も学園祭では色々と展示や手作りグッズ販売に力を入れていましたので、懐かしいという気持と、学生に戻ってという気持がバランス良く交差している感じです。

というわけで、二日間の会期中は常駐する予定でいます。実は、販売よりも、卒業生や普段あまり話をする機会のない学生との語らいが、私の本来の目的なのです。

やるからには売上を達成しなくてはという考え方もありだと思いますが、今の私は空気感を大切にしたいと思っています。「デジクリを読んだ」といっても何の特典も用意できませんが、お時間があればフラッと立ち寄ってみて下さい。

常々イベントとは、発信側に参加してこそ有意義だと学生の頃から思っていました。打合せでの意思統一や、お金の問題など面倒なことが山積みです。だから誰だって億劫になってしまうのです。

でも、この面倒で越えなければならない数々のハードルは、経験という財産として身に付きます。経験こそが財産ですからね。仕事で疲れているにもかかわらず大学で勉強を続け、更に実行委員となってかけずり回っている学生を見ると、思わず応援したくなってしまいます。もしかしたら、私の学生の頃と彼らをオーバーラップさせているのかもしれません。

とにかく、あくまでも主役は学生であり私はオマケですので、あまり目立たないようにしています。思えば、例年の芸祭での私はすべての展示を鑑賞した後に、校庭で模擬店のビールを飲んだくれていました。なにせすべての模擬店の学生と顔見知りなので、全店で購入しないとエコヒイキになってしまいますからね。

とにかくそんな状態で、突然現れる卒業生と話し込んだり、仲の良い先生と盛り上がったりしていました。ただし、今年から芸祭期間の飲酒が全面禁止となりましたので、それも適わず、どうしたものかと思っていたこともあり、今回の企画への参加はとっても嬉しい誤算でした。一日中コーヒーやお茶を飲み続けられないですから。

・多摩美術大学上野毛キャンパス芸術祭2013
会期:11月3日(日)〜11月4日(月)11:00〜20:00
< http://www.geisai-tamabi.info/
>
< https://www.facebook.com/ktamabigeisai?fref=ts
>

※多摩美術大学上野毛キャンパスとは、多摩美術大学造形表現学部のことで、学部にはデザイン学科、映像演劇学科、造形学科の3つの学科があり、小さいながらも学生達は日々パワフルに学習、研究そして活動しています。

ところで、お祭りの季節という意味では全国的に盛り上がっていますね。でも、私は一般的な町の祭りはあまり好きではありません。子供の時に体験したテキ屋での暴行事件。たまたま店の前に立っていただけで、いきなり後頭部を殴られました。店主はお客が皆無でイライラしていたそうです。

近くにいた警察官へ周りの大人が通報したことで、店主はこっぴどく叱られていました。また、親からも色々聞かされていましたので、お祭りでの飲食物は、ワタ飴とベッコウ飴、そしてハッカパイプぐらいのもので、他は今も完全に未体験です。

そして極めつけは、御神輿の担ぎ手同士の喧嘩。私は東京生まれなので、特殊な祭りをクリアしなくてはならないような状況にはありませんでしたが、それでも近所の神社ごと開催されるお祭りに関わる御神輿は花形でした。

しかし、その担ぎ手同時が、理由は分かりませんが、周りに御神輿見たさの子供が取り囲んでいるにも拘わらず、休憩時間中に酒の勢いで突然大声と共に殴り合いの大喧嘩。まったくもって開いた口が塞がりません。

結果として、幼なかった私には強烈なトラウマとなってしまい、あの装束を見ただけで条件反射的に今でも完全にダメです。深く考えたことはなかったのですが、多分それが影響しているようで、私はこの時期のお祭りといえば、ハロウィンと少し早いですがクリスマスが大好きです。お祭りというのは少々的外れではありますが、日本では完全にお祭りですからね。

■今月のお気に入りミュージックと映画

[Oblivion]by Joseph Kosinski in 2013(U.S.A)

邦題「オブリビオン」はSFスリラー映画という位置づけです。内容はネタバレになるので触れませんが、デヴィッド・ボウイの息子であるダンカン・ジョーンズの長編映画監督デビュー作品となる"Moon"(邦題:月に囚われた男)に通じるものがあります。

とにかくお気軽SF映画ではなく、近未来を考えると重い作品だと感じています。ちなみに主演のトム・クルーズもいいですが、やはり、ジュリア役のオルガ・キュリレンコが光っていますね。もちろんヴィクトリア役のアンドレア・ライズボローがあってこその二人です。

"Oblivion"
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"Moon"
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[For You Blue]by Dhani Harrison in 2013(U.S.A)

ジョージ・ハリスンの息子でミュージシャンのダーニ・ハリスンによる名曲のカバー。GAPのイメージソングとしても使われています。容姿と歌声が父親の若い時にそっくりなので違和感がなく、とても不思議な気持になります。

そういえば、2003年リリースのライブアルバム「コンサート・ジョージ」にて、同曲をポール・マッカートニーが歌っていますが、これもファン必見ですね。"Because you're sweet and lovely, girl, I love you"なんて生涯に一度でも良いから言ってみたいものです。

Dhani Harrison
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George Harrison
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【海津ヨシノリ】グラフィックデザイナー/イラストレーター/写真家/怪しいお菓子研究家

別の学校で教員をしている友人から聞いた話は衝撃的でした。講義中、半数の学生が熟睡。持ち出し禁止の教材データを、ネット経由で持ち出す学生。実習中に大声でバカ騒ぎをする学生。著作権に触れる行為であっても無頓着に、自分の作品を造っていると無勘違いしている学生。

スパムの意味も分からずにスパムをバラまいている学生。フランクを通り越し「ぶっちゃけ(私の作品)どうですか?」と、ほとんど失礼の域を通り越したような話し方で質問をしてくる学生。しかも、我慢して答えれば「へへ、参考にしま〜す」というバカにしているような上から目線。

こんな話を聞かされても、正直に言うと同じ次元、いや日本にこんな連中が生きているとは理解できないのです。もしそれが本当だとしたら、つくづく私は学生に恵まれているのだと痛感します。そして、現在私が関わっている学生と共に、一緒に盛り上がろうという気持が強くなるのです。

yoshinori@kaizu.com
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