[3571] 新しい3Dプリンタがやってきた。ヤア!ヤア!ヤア!

投稿:  著者:  読了時間:20分(本文:約9,700文字)


《使い回しするなパスワード》

■私症説[51]
 道雄の不安
 永吉克之

■3Dプリンタ奮闘記[21]
 新しい3Dプリンタがやってきた。ヤア!ヤア!ヤア!
 織田隆治

■エンドユーザー大変記[56]
 油断大敵、パスワードの思わぬ罠
 ジョニー・タカ




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■私症説[51]
道雄の不安

永吉克之
< http://bn.dgcr.com/archives/20131024140300.html >
───────────────────────────────────
週末の夜、道雄は婚約したばかりの則子と横浜のカフェにいた。

ライトアップされたベイブリッジが遠くに浮かび上がっているのが見える大きな窓のそばのテーブルを前に、椅子をくっつけ合って寄り添い、この女性が僕の妻になるのか、この男性がわたしの夫になるのね、と何だか不思議な気持で互いの横顔を盗み見ながら、二人はカクテルを傾けて会話を楽しんでいた。新居の場所や子供の育て方まで、話題は尽きなかった。

そして、新婚旅行はどこにしようかという話になった。道雄がまず、スイスにスキーをしに行くというのはどうだいと切り出すと、則子は困った顔で答えた。

「うーん、寒いところには行きたくないな。だって、9月からアラスカに住むんだもん」
「......え?」

「大学時代につき合ってた人がアラスカに住んでて、仕事手伝ってくれないかって。それで一緒に住まないかって」

話が飲み込めない道雄だったが、どうやら放っておける話でもなさそうなので、問いただした。

「どういうこと? まさかその人と結婚するなんて言うんじゃないよね?」

「するのよ」

「......するのよって、じゃ僕との結婚はどうなるの?」

道雄はどんな表情をしたらいいのか判らず、困り笑いをしながら尋ねた。それを聞いて則子は首をかしげた。

「何言ってんのよ? わたしたちの結婚と何の関係があるの?」

「関係ない? ......よね、そうだよね。いや、ひょっとして婚約を解消するって言われるのかと思っちゃってさ」

「どうしてそんな風に思ったの?」

「だってアラスカがどうのこうの......まあいいや」

アラスカの話は一体何だったんだろう。道雄は気になっていたが、せっかくのいい雰囲気をこれ以上乱したくなかったので蒸し返さずにいた。きっと彼女の友達の話をしたのだろう、女の会話って、突然、関係のない話題に飛ぶことがあるからな、ということで納得した。

そして、結婚式の日取りに話が及んだ。

「式は、お互いの仕事の都合を考えると、10月あたりがいいんじゃないか?」

「10月はだめよ。9月に入る前がいいわ」

「どうして?」

「だから、9月にアラスカで結婚するって言ったじゃない。道雄との式はその前に挙げておきたいのよ」

「うん、それは聞いたけどさ、アラスカで結婚って、則子の友達かなんかの話だろ?」

「ううん、私のことよ」

椅子の背に深くもたれかかって、道雄はしばらく黙って天井を眺めた。そして体を起こして則子の方に向かい、彼女の眼を見つめながら冷静に尋ねた。

「僕と結婚する気はあるの?」

「また変なこと言う。当たり前でしょ? だからさっきからその話をしてるんじゃない。なぜ今頃になってそんなこと聞くの? ねえ」

則子は道雄の不可解な態度にすっかり困惑した様子で、しきりに瞬きをくり返した。

「ひょっとしたら僕の聞き違いかもしれないけど、さっき、則子が・アラスカに移住して・現地で・学生時代の恋人と結婚する、というようなことを言ったように聞こえたんだよ」

「そう言ったわよ」

「な、な、だろ。言っただろ。じゃ、僕はほとんど則子とは会えなくなるわけだよな、そうだろ」

道雄の声のボリュームが上がり始めた。

「ほとんどというより、二度と会えないかも......永住するつもりだから」

「いや、だからさ、それは僕と別れるということじゃないか。僕と結婚はできないということじゃないか!」

突っかかってくる道雄に、則子も少し反抗的な口調になった。

「どうしたのよ? どうしてわたしがアラスカで結婚したら、道雄と別れなきゃいけないの? それを何かの口実にしてるの? わたしと婚約したこと後悔してるの? そうなの?」

「ちがうちがう、全然ちがうよ!」

道雄は何と言えばいいのか判らなくなって、質問を変えた。

「そのアラスカの彼氏と僕と、どっちを愛してるの?」

「アラスカの彼氏よ」
「そ......」


引導を渡されたと感じた道雄は投げやりに言った。

「ああそうかい、やっぱりな。じゃ、なんだってオレと結婚するんだよ?」

いい雰囲気を乱したくないという気持はすでに跡形もなくなっていた。むしろこの苛立ちを彼女にぶつけてやりたかった。

粗野な言葉遣いに則子は萎縮し、眼から涙が溢れそうになっていた。

「どうして結婚するのかって、なんで今さらそんなこと聞くの? わたしたち
 がつき合って来たのは、そのためじゃなかったの?」

則子は左手の五指をいっぱいに広げて甲の側を道雄の顔の前に突き出しながら、涙声で言った。

「ほら婚約指輪...道雄が指にはめてくれた時から一度もはずしてないのよ......」

そして両手で顔を覆って、すすり泣きを始めた。

「あ、いや......悪かった」

道雄は、なにがなんだかさっぱり分らなかったが、則子が可哀想になってきたので、とにかく謝ってその場を収めた。

しかし突然、なにやら異世界に迷い込んだような恐怖感に襲われて、道男は気分が悪くなってきた。動悸が早くなり目眩がしてきた。早くこの場から離れないと、とんでもない状態に陥りそうな予感がしたので、すぐに店を出て徒歩で桜木町駅に向かった。則子もその後を追うようにして出た。

ふたりは駅まで来た。則子は道雄の様子がおかしいのを心配して、自分の家が近いから泊まって行くように言ったが、道雄はタクシーで帰るからと断って別れた。とにかく則子から離れたかったのだ。

その10分後、道雄は死んだ。

【則子の告白】

則子「あんなことになるとは思ってもみませんでした。道雄さんに、少し意地悪をしたかっただけなんです。あの頃、彼の異常なまでの嫉妬心を煩わしく思っていた私は、その嫉妬心を利用して彼を発狂させてやろうと思ったんです。

たとえば彼は、私の携帯に連絡が入るたびに、誰からだとか、どういう関係だとか、いちいち真顔で聞くのです。会社の同僚と飲みに行って、そのなかに男性がいたことをうっかりにでも口にしたら大変です。年齢から名前から容貌から性格から、もう根掘り葉掘り聞いた挙げ句、膨れっ面して口をきこうともしないのですから。

そんな彼のことだから、もし自分の婚約者が他の男性と、しかも遠い外国で結婚することになれば、嫉妬のあまり発狂するかもしれない、そうなったらいい気味だと思ったんです。だから私はアラスカにいた、かつての恋人の水口秀秋さんと結婚することを決心しました。道雄さんには、水口さんが私を誘ったように言いましたが、実は私が水口さんに国際電話でプロポーズしたんです。

でもあと一歩で道雄さんを発狂させることができるというときに、家に帰るなんて言い出すものだから、なにやら無性に腹が立って、タクシー乗り場まで送って行くのが悔しいから駅前で別れたんです。送って行っていれば彼も死なずにすんだかもしれません」

木村「なるほど、それで桜木町で別れる際に、うちで泊まるようにと道雄さんに言ったときの則子さんの態度が妙に白々しかったんですね?」

則子「それもあります。でもそれより、彼に冷たくされたのが辛かったんです。店を出てから桜木町まで歩いている間、いつもなら必ず腕を組んでくれるのに、あのときは、彼が黙ってさっさと先を歩いて行くんです。婚約者になって最初のデートだというのに、こんな気持にさせられるなんてと思うと、それが惨めで......」

木村「則子さんのご両親とお話になっているときの道雄さんは、とても爽やかで、そんなに扱いにくい人には見えませんでしたけど」

則子「外面がいい、って言うんでしょうか......」

木村「道雄さんの死は事故だったのか自殺だったのか、今でもはっきりしていません。実際私も、それが何かに気を取られての過った行動だったようにも見えたし、ある意志をもっての行動だったようにも見えました。則子さんはどちらだとお考えですか?」

則子「今ではどうでもいいことです。もし彼が生きていたら、私はきっとその執拗な猜疑心に縛り上げられて、牢獄のような結婚生活を送っていたでしょう。そう考えると事故でも自殺でも、とにかく死んでくれてよかったんだと、肯定的に考えられるようになりましたから」

【ながよしかつゆき/フリーターランス】thereisaship@yahoo.co.jp
今回のテキストは、2007年にブログに掲載したものです。
『怒りのブドウ球菌』電子版 前後編 Kindleストアにて販売中!

Kindleストア< http://amzn.to/ZoEP8e >
無名藝人< http://blog.goo.ne.jp/nagayoshi_katz >


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■3Dプリンタ奮闘記[21]
新しい3Dプリンタがやってきた。ヤア!ヤア!ヤア!

織田隆治
< http://bn.dgcr.com/archives/20131024140200.html >
───────────────────────────────────
さて、今回はちょっと私事について書いてみます。実は、先週に事務所の引っ越しをしたのですが、そこに新しい3Dプリンタがやってきたのである。

「3Dプリンタがやってきた。ヤア!ヤア!ヤア!」てな感じ。

これまでは、熱溶解型の3Dプリンタ「BFB 3D TOUCH」を酷使してきた訳ですが、今回の3Dプリンタはちょっと違う。

機種はStratasysの「objet24」である。これは、3DプリンタのEDENシリーズのデスクトップ型となり、EDENと同じくインクジェット式の紫外線硬化型の3Dプリンタとなる。

このプリンタの特徴は、UV(紫外線)で硬化する液体樹脂を、インクジェットの方式でヘッドから噴射し、それを紫外線ランプを照射して固めて積層するタイプとなる。

この紫外線硬化型の3Dプリンタは、メイン材と補助となるサポート材を同時に噴射、プリントすることができ、別の紫外線硬化型の3Dプリンタであるプロジェクターで、断面を液体UV硬化樹脂に照射して固める3Dプリンタより効率良くプリント作業が行える。

積層ピッチは28ミクロン。
造形サイズは(X)234mm×(Y)192.6mm×(Z)148.6mm
造形の解像度は、X軸:600dpi/ Y軸:600dpi/Z軸:900 dpi
となる。

つまり、上記のスペックから見ても、熱溶解型の3Dプリンタ「BFB 3D TOUCH」より、遥かに精度の高い造形物を製作することができる。

サポート材も、ウォータージェットで除去できるジェル状硬化の樹脂サポート材だ。これは、羊羹のような質感で、毛の固い刃ブラシなんかでゴシゴシしても除去できる優れものだ。

搬入の日。重たい荷物、しかも、本体サイズが(W)825mm×(D)620mm×(H)590mmとなり、デスクトップとは言え、かなりデカイ。

事務所のエレベータを見た担当者さんが、「入るかなぁ......ちょっと不安ではありますが、やってみます」という言葉にビビらされながらも、なんとかギリギリでエレベーターに載ったようで、事務所にやってきた。重さも93kgという、僕よりもはるかに(?)重いヘビー級だ。

とにもかくにも、なんとか事務所に招き入れることが出来た。セッティングに半日以上をかけたobjet24は、神々しくもあった。

テスト造形をやって頂き、前もってサンプルを見て知ってはいたものの、その精度にまた驚かされる。

objet24は、ランク上のobjet30、objet30Proとは違い、白色の樹脂でしか造形できませんが、基本色違い、クリアの造形ができないということだけなので、僕のように原型やモックに使う分には何も問題はありません。

これで、今後のモック製作や模型製作は、確実にレベルアップできる。

UV硬化の樹脂は、その耐久性が問題になるわけだが、シリコンで型を取り、レジン等の樹脂に置換えることにより、その辺りはカバーできる。この樹脂は切削性も良く、ヤスリを当てると比較的簡単に、よりなめらかな表面にすることができる。原型制作にはピッタリだ。

もちろん、モック製作に至っては、精度が良いこともあり、ほぼ製品に近い状態でテストできる。樹脂の強度等は、これからすこしずつテストして行くつもりだ。

そこで、以前から使用している熱溶解型の3Dプリンター「BFB 3D TOUCH」はどうなる? いやいや、これはまた全然アプローチが違う。大きな物、そのまま長期に渡って使用する物については「BFB 3D TOUCH」の方に旗が上がる。

これは、使用する樹脂がABSやPLAといった、劣化に強い樹脂である点。そして、素材の単価がobjetに比べてかなり安い点にある。「BFB 3D TOUCH」はまだまだ酷使していくつもりだ。まだまだ頑張ってもらわないといけない。

いくら高価で精度の出るプリンタがあっても、その仕様による使い分けが必須となる、ということだ。高けりゃいいってものでもない。3Dプリンタを生かすも殺すも、そのプリンタの特性を理解し、うまく使い分けていくことにかかっているのだと思う今日この頃である。

今後、関西ではあまりない、3Dプリント出力サービスなるものも、このobjetで検討している。しかしながら、まだまだ樹脂の単価が高額なことから、一般に普及するというか、B to B、もしくは、フィギュア製作のデジタル原型をプリントするサービスから始めていこうかと思う。

【織田隆治】FULL DIMENSIONS STUDIO(フル ディメンションズ スタジオ)
< http://www.f-d-studio.jp >

本当、凄いですわ。これ。でも、実際素材が高価なので、プリントするには、データ製作にはかなりの考慮とトライ&エラーしてからです(笑)


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■エンドユーザー大変記[56]
油断大敵、パスワードの思わぬ罠

ジョニー・タカ
< http://bn.dgcr.com/archives/20131024140100.html >
───────────────────────────────────
えー、デジクリ10/7の森さんの「10/4の悲しいトラブル体験記」に続いて、私もやられてしまいました、アドビに......。みごとに1/290万のひとりになってしまいました。

10/5の深夜、ちょうどこれからアニメ見るというタイミングでアドビからメール。「なんだよこんな時間に......」と思ったら件(くだん)のメールが。

しかも英語で、リンクをクリックしたら多言語でズラズラ並んでて、日本語は相当下の方......。私の場合、幸いクレジットカード登録をしてない以前に、クレジットカードすら持ってないのでその点は良かったものの、アニメ見終わった後に、使いまわしているパスワードをまず変更。

......これでアニメ自体がちっとも楽しめませんでした。それ以前に、「使いまわしするな」ですがねw

だけど他にパスワードを設定しても、まったく使っていない、あるいは放置してるサイトもあるので、それをひとつずつ変えていくのも大変な作業。結局、この作業というのは堂々巡りなのか、と思いました。

実は今回のアドビに限ったことではなく、3月にEvernoteでも不正アクセスがあり、こちらは対応が素早く、不正アクセス発生後すぐに全ユーザーのパスワードリセットを行いました。

◆Evernoteもハッキング攻撃を受け、全ユーザーパスワードをリセット(ITmedia エンタープライズ)
< http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1303/03/news004.html >

◆セキュリティ関連のお知らせ:Evernoteでのパスワード再設定のお願い
< http://blog.evernote.com/jp/2013/03/03/12428 >

結局、該当ユーザーを探しだしても時間がかかるわけです。Evernoteみたいに、事前通知してから全ユーザーのパスワードリセットの方が一番問題ないし、手っ取り早いわけです。

......しかしまぁ、敵失で該当するなんて夢にも思いませんでした。こんなことは初めてです。

......ホントはこの一件にかこつけて、他にも書きたいことがあったのですが、その一件に追われている時に風邪を引いてしまいまして、見事に二週間はダウン......。

食欲があったのはせめてもの救いでしたが、熱が出てる故に汗はかきまくるわ、苦い顆粒の葛根湯と格闘しなきゃいけないわ(でも良薬は口に苦しというように、葛根湯は効きます)でした......今年は寒暖差が激しい故に、皆様もお気をつけ下さい。そして台風も。

【ジョニー・タカ】johnnytaka32(a)gmail.com

1976年、横浜・関内で生まれ、上州と越後の風を受けて育ち、来世でもFUNKを踊り続けるフリーランサー。ヴァーチャル・キャラクターに曲を付けて選曲を展開する"コンピレーション"を1998年から行っている(といっても勝手にやってるだけです。それを続けて15年目)。
< http://music.ap.teacup.com/cafedejohnny/ >
ツイッター < http://www.twitter.com/johnnytaka1962/ >
tumblr < http://johnnytaka.tumblr.com/ >

○今これを書いている数時間後にアップルのイベントが行われます。おそらく目玉はiPadで、iPhone以外の全プロダクトが変わるでしょう。(Mac Proは既に発表済み)

◆アップルイベント開催目前--発表が予想される7つのこと(Cnet JAPAN)
< http://japan.cnet.com/news/commentary/35038696/ >

そして明けたらiPad Airの薄さに驚愕。ここまで薄く出来るのか! と驚くと同時に、そこはかとなく漂う地雷臭......少なくとも、iPad mini Retinaの方が堅実であろうと思った次第。

◆ねっと部:「笑っていいとも!」終了にPC-9801を思い出す(ITmedia)
< http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1310/22/news130.html >

ついに長寿番組の幕が下りることになりました。なんか、唐突に発表するのもタモリらしいなぁ、と。まぁ、当時"密室芸人"がウリだったタモリを起用した横澤彪さんの慧眼というべきなのか......しかもギネスブックに載るくらいの歴史になるなんて......。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編集後記(10/24)

●昨日の読売新聞に「『婚外子』法改正 自民に慎重論」という記事があった。9月4日の最高裁大法廷のスタンドプレーを真に受けて、国会が早くも法改正を論じているらしい。政府は民法改正案の臨時国会提出を目指し、公明党も野党も早期改正を求める声をあげている。ほんとかよ、××学会のご婦人方も、正妻側の"踏んだり蹴ったりの地獄"の出現や、不倫の勧めを容認しているのか。与党、野党の婦人議員たちもそう思っているのか。にわかには信じ難い、とんでもない情勢になって来た。

自民党の保守系議員から「法改正で(法律での婚姻を尊重する)結婚制度や戸籍制度が壊れかねない」「婚外子への格差をなくせば、法律婚を軽視する風潮が生まれかねない」という慎重論があがり、充分な法案審査を求めたのは当然である。ところが、弁護士資格を持つ議員らから「最高裁の違憲判断を尊重するのは国家の仕組みだ。早々に処理すべきだ」という、立法府の国会議員のくせに思考停止した声もあがったというから情けない。なぜ改正を急ぐのか、なぜもっと議論を深めないのか。推進派議員にどこかからご褒美でも出るのだろうか。

昭和22年に合理性のある「半分規定」が制定され、平成7年の合憲判定があり、いま平成25年、この66年間に何が変わったのか。この度の決定理由の骨子に「遅くとも平成13年7月当時、半分規定の合理性は失われていた。よって、当時の半分規定は平等原則に違反していた」とある。平成7年以降、半分規定の合理性を失わせるような急激な社会環境の変化があった、と大法廷はいう。それが違憲判断の根拠らしい。具体的にどんな変化があったのか、そこには書かれていない。

平成7年以降24年まで、内閣府の世論調査によれば三度とも「現状維持」が「規定廃止」を20ポイント以上うわ回っている。非嫡子は年間出生子の2%である。3年前のフランスの56%、イギリスの47%、アメリカの41%、イタリアの23%という数字と拮抗するなら「急激な社会環境の変化があった」と認めよう。わずか2%を根拠に持ち出すのは珍妙である。要するに、違憲判断の根拠はないに等しい。また「子にとって自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されない」という、一見もっともらしい文言もよく考えるとそうとうおバカである。

子は親を選んで生まれることはできない。どんな環境の下に生まれる子なのか、分かっているのは親だけだ(だから婚外子も親に責任がある)。子は生まれながらに不平等なのだ。それが許されない、平等にしろって......ファンタジーかい。相続なんて人権問題ではない。こんなところで平等原則は御門違いだ。それにしても、14人の最高裁裁判官、いままで最高に頭のいい人揃いだと思っていたが、全然そうじゃないことが分かってしまった。この問題も、素人の裁判員に判断を委ねた方がマシではないのか。(柴田)


●JRには「昼間特割きっぷ」というものがある。特定区間のみで、土日祝と平日10〜17時に利用できる。有効期限は3か月で12枚セット。切り離し式になっておらず、見た目は普通の切符と同じ。

宝塚には大阪(梅田)から、阪急だと270円で33分、JRだと320円で25分。昼間特割だと197円。とはいえ3か月に12枚も使わないのだが、宝塚に行く頻度の高い友人が代表して買ってくれていて、時短節約。

先日のこと。友人から切符をもらい、改札を入った。ホームへのエスカレーターに向かうためUターン。普段はiPhoneカバーに入れているPiTaPaというポストペイ方式の交通系ICカード(全国相互利用可)を使っているため、切符に慣れず、どこにしまったか忘れることしばしば。なので、改札後すぐに友人に預けることにしていた。

エスカレーターに乗ってすぐ、「切符は?」と聞かれ、無意識のうちにポケットにしまったと探すが出てこない。入れた時の手つきは覚えてる。改札からエスカレーターまでは3メートルほど。Uターンしているからエスカレーターからは見えない。発車時刻が迫っていたため、改めて探そうと飛び乗った。続く。(hammer.mule)

< http://tickets.jr-odekake.net/shohindb/view/consumer/tokutoku/detail.html?shnId=111000751 >
昼間特割きっぷ