[3574] 親愛なるデザイナーのみなさまへ

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《ファックスで取りこぼしゼロ》

■アナログステージ[106]
 見てくれないあのヒトに読んでもらうための心理技術
 べちおサマンサ

■シックスセンスを求めて[09]
 親愛なるデザイナーのみなさまへ
 若林健一 / kwaka1208

■ローマでMANGA[68]
 初めてつくった契約書
 midori




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■アナログステージ[106]
見てくれないあのヒトに読んでもらうための心理技術

べちおサマンサ
< https://bn.dgcr.com/archives/20131029140300.html
>
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皆さんコンニチハ。あと60日ちょっと寝るとお正月です。おしょうがつ。和尚が二人のことではないですよ。お正月がきたら、餅を食って凧をあげないといけないんです。つい先日までクーラーをガンガンつけて「ひー、アチー、アチー」って騒いでいたのに、丹前を着てコタツに入ってミカンを食べないといけないんです。なんでしょうね、この時間の早さ。

ということで、尻切れトンボになってしまった前回の続きです。

●言葉と手書きの魔法

「パソコンがないと、なにも仕事ができましぇーん」という、デジタル廃墟の住人に近い埋れっぷりだったのが、アナログ色が強い空間に転換というよりも、昭和に戻った作業空間。その相乗効果はかなり高く、もう「デジタルガジェットなんていらねーわ」となりそうなくらいの、心地良い快適さ。

心地良いというよりも、コンピュータから発しているであろう、見えない脅迫概念がなくなってきているのだ。そういえば、「見えない敵から発している電波で脳が腐る」と、部下ちゃんが半狂乱状態になったことがあったが、あれもコンピュータ怪人の仕業だったのだろうと、いまになって思ったり。

携帯電話のメールやEメールのように、明日から出社拒否をしたくなる納期短縮依頼の連絡、来世は人間ではなく、光合成で生きていける植物として生まれ変わりたくなるようなクレーム報告や、なぜドラえもんはオイラのところへ来てくれなかったのだろう......といった、どんな辛辣な内容でも、手書きから伝わる温もりというのは素晴らしい。

これが、愛を伝える手書きのラブレターなら、どれほどの感銘を受けることだろう。中学、高校生と、数人の女子からラブレターを頂戴したことがあるが、帰宅して、頬を赤らめながら読んでいるときの心の甘酸っぱさといったら、もう、なんて言っていいのやら。

ホットアドショットトールバニラローファットライトホットフォーミーウィズホイップウィズチョコレートソースアドチップキャラメルマキアート、もしくは、大ブタダブルヤサイマシマシカラメニンニクチョモランマといったところが、近い表現かもしれない。もう一回、あのドキドキを味わってみたい。

・スタバコール:毎回ドッキドキのあの呪文のようなオーダー・・・これさえあればもう怖くない!無料 - たのしいiPhone![AppBank]
< http://www.appbank.net/2012/08/31/iphone-application/458585.php
>

・アブラナシヤサイカラメマシニンニクスクナメ:ラーメン二郎の"呪文"をすらすら言える! 初心者のための注文ジェネレータ[ねとらぼ]
< http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1111/18/news041.html
>

余談になるけど、オイラが高校生のころ、なぜか男子にもモテた時期があった。通っている高校だけではなく、他校の男子にもだ。男子は、女子のように手紙というアイテムは使わず、ズバりと口頭で想いを伝えてくる。

「べちお、おまえって、なんか変だけどカッコいいよな」
「え?」
「おまえ、彼女とかいるの?」
「へ?」
「オレ、おまえみたいなヤツみていると、なんか放っておけなくてさ。なぁ、今度一緒に風呂でも行こうぜ! やっぱり男同士、裸の付合いは大切だしな、いつ行こうか」
「アーッ!」

といった具合である。もちろん、オイラはそっちの気は持ち合わせていないので、「その日はバイトで忙しいからゴメン」と、定番のお断りで逃げまくっておりましたが、ある日、「いつもバイトで忙しいみたいだから、今度おまえの家に泊まりに行ってもいい?」ときた。

さすがに、これはもう逃げられないかもしれないと、目の前が紫から黒に変色してきていたところ、その直前に、彼は新しい彼氏(?)を見つけたようで、貞操は無事に守られたのだった。本当に余談でした。

●気持ちを伝えるなら、手書きで心を射抜く

どんな内容であろうが、電子的にモニタに表示される、同じフォントで綴られている文章を読むのは、本当に味気ない。そう云うとデジクリも同じようなこになってしまうが、小説や新聞のように、不特定のヒトに読まれるものは、デジタルなフォントでも、インクの香り漂う写植でも構わないと思うのはワガママだろうか。特定のヒトへ送る場合は、やはり手書きの文章に敵うものはない。

さっきのラブレターの話ではないが、「あなたのためなら、深海まで素潜りしてダイオウイカを捕まえてくるわ(ハート)」と、彼女から手書きの手紙が送られてきたら、「彼女はボクのことを本当に深く愛してくれているんだ」と感動すること間違いなしであろう。

しかし、これが携帯メールで配信されてきたとすると、「なにいってんだコイツ、オマエはマッコウクジラかっつーのw」と、まったく相手にしないどころか、相手の精神状態を疑ってしまうおそれがある。もしくは、「なんだ? 新しい出会い系業者か?」とゴミ箱へ直行してしまうおそれも生じてしまう。

すでに前回の内容から大幅に脱線してしまっているので軌道修正。メールを極力減らし、ファックスで内容を送信してもらうことで、作業(案件と用件)の取りこぼしがゼロになったわけですが、ファックスだと画像が欲しい時に困る。

相手がパソコンからカラー送信してくれる分には、こちらはカラーファックスなので問題ないけど、モノクロファックスでカラーの画像を送信すると、知ってのとおり、ほぼ真っ黒。たまに「念写したのかこれ?」という感じの、うっすらと見てはいけない何かが写っているような、そんな怖いものもあったりするけど。

実際にメールのやりとりで、プライベートなメールならまだしも、オイラの場合、仕事上で画像を必要になるケースは少なかったりする。基本内容部分はファックスで送ってもらい、画像がどうしても必要ときは、相手側に「画像をメールで送ってちょんまげ」と、こちらから要求する。

PDFに纏めてあるものも、トナーと用紙のムダになってしまうが、そのままファックスで送ってもらっている。そうすると、必然と目を通すんですよね。いずれ必要になってプリントアウトするから、トナーと用紙のムダということはないか。書類下げ(紐に洗濯バサミを通して書類をぶら下げている)にクリップしておくので、期日の見逃しもなくなる。

正式リリースする書類は、こちらで(誰かが)必ず作成してサーバに保管するので、後からデータを追いかけることに不自由はしない。一番困るというより、問題なのが『メールを見逃してしまい、これによって業務に支障がでる』ことで、その問題の中心人物な存在だったオイラが、自ら改善しようと試みたものでした。

皆さんのまわりでも、メール送ってもぜーんぜん返事が来なかったりするヒトはいませんか? そんなモヤモヤしながら時間を過ごすのは、精神衛生がよろしくありませんので、ぜひ、そんな相手に手書きの手紙(ファックス)をどうぞ。効果ありますぜ!

オイラは暫くというより、もうこのスタイルでいいや。

【べちおサマンサ】pipelinehot@yokohama.email.ne.jp
NDA拘束員であり、本当の横浜を探しているヒト。ぶら撮り散歩師。
Twitterはコチラ→< http://twitter.com/bachiosamansa
>
まとめはコチラ→< http://start.io/bachio
>

△▼過酒雑記──今日の酒は明日の肥し▼△

●ウィズの経過報告。Lv.43 覚醒魔道士3段まで上がりました。
< http://t.co/6rjN5PTXB7
>

問題の正解率はなんとか維持しているけれど、相変わらず芸能ジャンルが弱い。デッキ構成というか、手持ちカードのバランスとゲームの進行がバラバラになってきたので、トーナメントは一時ストップ。手持ちカードが弱っちいのに先に進みすぎてしまった。

ゲームのシステムというか「ほぇほぇ、なるほど、そういう仕組みなのね」といった具合にゲームバランスを把握してきました(いまさらかよ! って声も聞こえてきそうですけどw)。そして遂に......課金しちゃいましたー☆ だって、手詰まりしてサクサクと先に進めなくなったんだもん。これでムスコにデカい顔ができなくなってしまいました。

天下一魔道杯いうイベントが開催されていて、なにも気にせずに参加したのが大間違いだった。これがよくできたシステムというか、運営手腕を誉めるべきといううか、トーナメント上位に入るためには、クリスタルを大量に投資しなければいけないという罠が潜んでおりました。ゲンナリ。

イベントというか、新キャラの追加が途切れなく続いており、貪欲金儲け丸出し運営が滑稽に映るんだよなぁ。

●最近ということでもないけど、ムスコ&ムスメコンビが聴いている、マキシマム ザ ホルモンを愛聴しております。グラインドコア中心の音楽生活に、新しいスパイスを投入! と行きたいところですが、ジャンルとしてあまり差がないので、スパイスにはならないのかな。

でも、ところどころに流れてくるキャッチーなメロディ、耳に残るフレーズ、たくさんの音楽を聴いている人たちなんだなぁ... というのが良く分かる。オイラも中二病を拗らせているのかしらw


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■シックスセンスを求めて[09]
親愛なるデザイナーのみなさまへ

若林健一 / kwaka1208
< https://bn.dgcr.com/archives/20131029140200.html
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前回からの流れで、というわけではないのですが、ソフトウェアやWebの世界でユーザーインターフェースが重視されるようになり、以前に比べるとデザイナーとエンジニアが一緒に仕事をする機会が増えてきました。

一部には、「デザインもプログラミング両方やるよ」というスーパーマンみたいな方もいらっしゃいますが、大抵は一つのプロジェクトにデザイナーとエンジニアが別々に居るケースがほとんどで、たびたび衝突するのが実態です。

立場、モノの見方、重視する点が違うから対立するのですが、そうだと分かっていてもお互いに相手を受け入れることが難しく、ついつい感情的になってしまうものです。

というわけで、自分がエンジニアなので一方的ではありますが、デザイナーのみなさんに理解していただきたいことを三つだけ、この場をお借りして伝えさせていただきます!

●ビルド回数はできるだけ減らしたいのです

ソースコードを一切変更しなかったとしても、ビルドし直すとそのプログラムは別ものになるのです。つまり、ビルドすれば最低限の動作検証が必要になります。

アイコンを変える、背景画像を変える、ボタンのイメージを変える、これだけでも新たにビルドすることになり、最低限の動作検証が必要、というわけです。

一方で、バグのないソフトウェアは存在しません。バグは常に存在するのですが、たまたまみつかっていないやつがいるだけなのです。

そういうやっかいな奴は、ソースコードを変更していない時に限って出くわします。そして、見なかったことにするわけにはいかないのです。

ソフトウェアの品質は、評価時間と発見バグ数の関係によって算出される「収束率」で評価されます。もし、リリースの直前にバグが発見されると「収束率」が下がってしまうので、相応の時間の評価作業が新たに必要になるのです。

もちろん、バグを出す方が悪いのは分かっています。でも、お願いですからリリース直前の素材変更は避けていただきたいのです。

●●数値化してくれると嬉しいです

デザイナーさんが作った画面デザインを実装する時、そこに描かれているものを数値に置き換えてソフトウェアに載せるのが、エンジニアの仕事のひとつです。表示するオブジェクトの高さ、幅、左隅から右へ何ピクセル、下へ何ピクセルの場所に置くのか、もしくは隣のオブジェクトから何ピクセル離れたところなのか。

もしかしたらデザイナーさんは、画面デザインをする時そういったことを考えていませんか? 画面全体がこの大きさだから、どういう比率で配置しようか、各要素の感覚は何ピクセルにしようか。そういう情報をデザイン画像とは別にいただけるとエンジニアは幸せです。

ひとつひとつ要素の座標をデータ化してくれとはいいません。このデザインはこういう考え方で配置を決めている、そんなメモをちょっと付けておいてくれると、エンジニアの退社時刻はもう少し早くなること間違いありません。

●●●エンジニアにも好き嫌いがあります

エンジニアは、自分がデザインの専門家でないことは自覚しています。でも、デザイナーさんが作ったデザインを見て、ちょっと残念そうな表情を浮かべることがあるかもしれません。エンジニアもひとりの人間、好き嫌いはありますから、自分の好みでなければうっかりそんな顔をしてしまうかもしれません。もしかすると、余計な一言を口走ってしまうかもしれません。

しかし、デザインを決めるのはあなたですからそんなこと気にしなくていいんです。「これが最高のデザインだ!」という意気込みでいてください。エンジニアはそれを頑張って実装していきます。

でも、ちょっとだけエンジニアの声も聞いて貰えると嬉しいかもしれません...。

勝手なこと言ってゴメンナサイ

以上、エンジニア視点の一方的な意見でした。デザイナーさんにはデザイナーさんの意見があるのは承知しております。エンジニアもデザイナーさんの気持ちを尊重したいと思っています。現場で一緒に仕事するもの同士、お互いの理解を一層深めて、より良いものを産み出して行きましょう!

【若林健一 / kwaka1208】 kwaka1208@pote2.net
< http://kwaka1208.net/
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< http://pote2.net/kenichi/
>

高校一年になる娘の数学のテストの見直しを一緒にやりました。二週間ほど前に仕事で必要だった数学の勉強をしたせいか、すっかり数学頭になっていたようで、思った以上にスムーズに理解できて見直しができました。やっぱり、頭は使わないとダメ、使うことで本来の能力を発揮できるものですね!


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■ローマでMANGA[68]
初めてつくった契約書

midori
< https://bn.dgcr.com/archives/20131029140100.html
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講談社のモーニング編集部が日本人以外の作家を起用して、描き下ろしを掲載するという、前代未聞の企画を進行した時に、イタリア人作家と編集部の仲介をするという嬉し楽し仕事をしていました。その時の記録の意味を込めて書いているシリーズです。

今は、「幸運が服を着て歩いている」楽天的なヨーリとの関わりを書いてます。

●契約書事始め

1992年の7月に話が出てから三か月を経てヨーリと編集部で掲載作品の詰めがドンドン進み、ネームのOKが出始めるようになった。

前回、「欧米では契約が基本。カトリックでは生まれて洗礼式、10歳頃に聖体拝受の式、14歳で堅信の式を経てキリスト者となるけれど、神様との契約のようなものだ。結婚の宣誓も神様との契約だ。だから離婚は契約違反となり、離婚した人はミサの終わりに行われる聖体拝受(キリストの肉を象徴するパン。これを口にすることで神と一体になる)をできないし、再婚の場合は教会で式が挙げられない。で、編集部は慣れない契約作成という作業にはいり、11月から12月半ばまでは契約書作成に関するFAXが主な内容だった。」と終えた。

「12月半ばまでは契約書作成に関するFAXが主な内容だった。」としたけれど、その後、翌年1993年の1月のFAXを、ブィーーン、ブィーンとスキャンしたところ、ほとんどが契約書に関することだった。

2月はまだ二日分の3枚しかスキャンしてない。1日と19日で、日が開いてるのはその間、病院で出産し、子どもに黄疸が出て入院が長引いていたのだった。記憶が一気に山の中の病院の病室やら、小さく丸まっていた息子の面影に飛び移ったが、ヨーリの契約書には関係ない。

私も人並みに日本で社員になったことがある。でも、その時に会社と契約書を交わした覚えはない。50人ほどの規模の会社で社長と面接して採用になり、月々の給料の額とボーナスは夏と冬に一か月づつは最低保証する。会社の景気が良ければプラスがあり得る、と口頭で伝えられた。そしてそれはそのとおりに履行され、2年間勤めたうち、一回ボーナスに約束の一か月分+上乗せになったことがあった。

このシリーズの最中、エッセイ漫画を同じモーニング誌に描いていたけれど、それに関しても原稿料その他の契約書を交わさずにいた。口頭で伝えられた原稿料はちゃんと払ってくれた。

今、長年イタリアにいて契約書なしで仕事をするなんて信じられなくなってる。なんだか、今は日本でも契約書を作るよね? 作るでしょ? と考えてしまう。信頼が基盤の社会ってすごいと思うけど、これもまた別の話だ。

なにが言いたかったかと言うと、編集部ではこの海外作家の企画を通して初めて契約書を作ることになったということだ。ヨーリの前に仕事を始めたイゴルトとも契約書を作ったはずだけれど、この頃一斉に契約書を作ることにしたのかもしれない。私に対しても契約書を作ってくれた。

初めてのお仕事だからモデルがいる。当時国際室と呼ばれていた国際版権の部署の助けを借りて、英語でできたさる作家との契約書を基本にすることにした。

●初めてお目にかかった契約書

正式契約書は英語で作り、日本語訳とイタリア語訳をそれぞれ内容把握のために持つことをパリ会談で決めていた。

イタリア語訳は私が担当した。日本語の契約書なんてお目にかかるのは初めてだ。イタリア語では、例えば電気や電話の契約に契約書が付くので見たことがある。あ、大事な契約書といえば家を購入した時、何枚にも渡る契約書を見てサインすらした。

でも内容を事細かく読んだわけではない。イタリア人の旦那が読んでOKしたのだから大丈夫だろうと絶対的信頼を置いていた。日本にいたときは被扶養家族だったから、電気やガスの契約などは親が担当していてそうしたことには関わっていない。

だから法律用語なんて日本語でも知らないのに、イタリア語訳には大いに頭を悩ませた。眉間のシワが深まったのはこのせいに違いない。ググるなんてことができない時代の話ですよー。それでも、むしろこうした用語のほうが辞書に文例として出ていたことが多かったような記憶がある。英語版も送ってくれていたので、これも参考にした。英語の70%はラテン語起源だそうなので、確かに学問用語などはむしろイタリア語に似てたりする。

話は横道にそれるけれど、こういう作業をすると、意味を表す漢字と音を表すひらがな・カタカナ併記の日本語ってすごいな、と思う。読み流すだけでも大体何が書いてあるかわかる。漢字が目に入るだけで意味がわかるからだ。ひらがなと混ざっていてキーワードは漢字だから、漢字の意味が判れば文の内容がおおよそわかる。

ヨーロッパ語の場合は全部アルファベット。全文ひらがなかカタカナだけで書いてあるものを想像してもらえばわかる。音声だけを示しているのだから、ぱっと見ても意味はわからない。

時々、ローマのコミックスフェアでワークショップ等やらせてもらう時、解説文のメモはイタリア語と日本語を併記しておく。喋りながらチラッとメモを見れば、日本語の漢字ですぐに目指す項目を見つける事ができる。そしてその横に配置したイタリア語を見る。

ざっと(「ざっと」と言う言葉が醸し出す素早さとは程遠い)訳した後、旦那にも見せてイタリア語としておかしくないようにしてもらった。

契約書は早い話が責任と義務と権利を具体的に明文化することだ。作家の責任と義務は作品を提供すること。出版権を講談社に与えること。報酬を得る権利を有すること。

出版社の方は、作品を刊行すること、受け取った生原稿を保管し、作家から要請があったときにすみやかに返還すること。これはデジタルでやりとりできる今だったら心配のない事項だ。

出版社のほうで明確にしておかなくてはならないのは、宣伝などに使用する場合にさらなる報酬を発生させないこと(二次使用とは別)。雑誌内の掲載予告を含む宣伝で作家に報酬が発生すると制作費がかさんでしまう。

それと掲載の都合によってセリフの変更などをする場合、それを作家が許諾すること。日本とイタリア(ヨーロッパ)では社会事情や習慣、メンタリティが違うからそのまま訳しては意味が通りにくいこともあるし、言葉遊びをしてもらっても訳しきれなかったりする。

もう一つは、出版後に他者と権利関係のいざこざが起きないこと。作家に、提出された作品がパクリではないことを保証してもらう項目は絶対に必要だ。

さらに、出版社が対価を払って、つまり投資をして作品を制作するわけだから、なるべく出版社に得になるような権利関係を築く。著作権はあくまでも作家にあるけれど、日本国内外の出版に関しての権利を主張しておく。

後は、具体的な作品タイトル、作家と出版社の正式名称と住所、対価の具体的価格、対価の受け渡し時期とその方法、そして銀行のデータが銘記される。

と、要約してしまうと実に簡単だ。それでも英語をもとに編集部が制作した日本語版を私が訳し、作家に見せて、気になる箇所をあげてもらい、編集部と折り合いをつけ、それをまた日本語版にして、それをイタリア語に訳して、正式に英語版を国際室に作ってもらって、無事に提出にこぎつけるまで実に3か月かかった。

次回はまた作品制作に戻る。ヨーリの大冒険が進む。

【みどり】midorigo@mac.com

こちらはお小遣い稼ぎ大冒険だ。アフィリエイトは稼げるかもしれないけど、稼ぐためのプログラム購入が必要とわかったので断念した。

「家でできる仕事」などと適当にキーワードを入れて検索してて「ウエブライター」なるものの存在を知った。それで見つけたのがこれ。「女性の美学」。web企画というところが出しているサイトだ。
< http://josei-bigaku.jp/writerrec/
>

顔出しできること、100文字55円からで、1000文字から1800文字程度の記事を書くこと。少なくも週に15時間は作業時間が取れること、という条件だった。すべてクリアできるので、すぐに応募要項に記入し、テスト記事を書いて送った。審査の結果が来て採用を見送るとのこと。理由は社外秘だそうで教えてもらえない。「バーさんだからだめ」ということかもしれないと憤慨しつつ、別のウエブライター募集を見つけた。

「たった数分でお小遣い稼ぎができる」まぁ、なんと魅惑的なキャッチ。
< https://www.blogrepo.net/
>

早速登録して4つほど記事を書いて送った。募集テーマがいろいろあって選べるけれど、自分の知識の範囲が狭いのとキーワード二つだけ(例えば「wifi」と「世界」)で500文字をでっちあげるって、簡単そうで難しくてテーマを選ぶのに悩みまくり。これも審査があって二週間くらいかかりますということだけど、まだ音沙汰がない。

もう一件手を出したのは電子書籍だ。いろいろ電子書籍に関する電子書籍を買って読んだりしたところ「電子書籍で儲けようと思ってるならそれは無理」らしい。でも昔から出版には興味が大有りなので、手を付けずにいられない。

とりあえず、「長く書けるテーマで解説本」が売上を狙えるとのことなので、ここで書いていることを下地にパブーで本を作り始めた。まともな量になったらPDFかePUBにして(どうやるのかまだわからない)アマゾンで売るつもり。これは月一の更新(予定)。

「イタリアで新しい漫画を作る大冒険」
< http://p.booklog.jp/book/77255/read
>

で、結局お金にならないのにやることだけを増やすというドツボにはまっていくのだった......。

これもそのひとつ↓
主に料理の写真を載せたブログを書いてます。
< http://midoroma.blog87.fc2.com/
>


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編集後記(10/29)

●適菜収「バカを治す」を読む(フォレスト2545新書、2012)。この新書、すぐ使える・役に立つ、面白い・読みやすいをコンセプトに、25〜45歳向けにまとめたシリーズだという。ピンクの表紙が下品で、本文の下のアキに小さな写真や解説を詰め込んだ体裁が見苦しい。それはともかく、適菜収はじつにおもしろい。「ゲーテの警告 日本を滅ぼす『B層』の研究」(講談社プラスアルファ新書)の物言いは快感だったが、さらに踏み込んで、「B層」から抜け出す方法=バカを治す方法が書かれているので実用的(?)だ。

B層とは「マスコミ報道に流されやすい、比較的IQが低い人たち」で、主婦層、若年層、シルバー層などに多い。素人が圧倒的自信をもって社会の前面に出て行く、こうした社会の主人公がB層。改革、革命、維新といったキーワードに根なし草のように流されて行くのがB層。権威を嫌う一方で権威に弱く、テレビや新聞の報道、有名人の言葉を鵜呑みにし、躍らされ、騙されたと憤慨し、その後も永遠に騙されつづける存在がB層。かつて小泉首相を支持し、いま橋下徹を支持しているのが典型的なB層。......だという。うん、確かにバカだ。

わたし自身は「B層」ではないと思っている。だが、「バカは自分の知っていることを確認するために本を読みます。バカは自分の世界観を堅固にするために情報を集めます。よって、バカはより洗練されたバカになる傾向があります」といわれると、わたしもそのお仲間かと自信が揺らぐ。この本は「バカの本質を掴んで自分の内部に存在する『バカ』を克服することが大切」だという。他人の「バカさ加減」をあげつらっている暇があるなら(それは面白いんだけど)、自分の「バカさ加減」を自覚し、自己を克服し、自分の仕事に専念せよと説く。

テレビは見ない。二度と読む予定のない蔵書を捨てる。新聞を解約する。ネットも止めてもいい。ケータイを解約する。ここまで徹底すればバカ情報はあまり入って来なくなる。「バカを治したい人は、新しい情報を得るための努力をやめるべきです。最先端の情報は追わなくていい」って極端なことを......。バカを治すには、知識ではなく教養が必要になる。教養とは歴史や世界に対する態度である。過去の偉大な精神に接近せよ。故に、ゲーテに学べ。

「ゲーテに学ぶ」とは、ゲーテの言葉を知識として身につけることではなく、「ゲーテだったらいま自分が抱えている問題にどう向き合うんだろう?」と考え、徹底的にゲーテの真似をすることが大事だという。ゲーテが考えたのと同じように考えよという。う〜ん。承りますが、正直そういう方向にいくのはしんどい。そもそもゲーテをきちんと学んだことがない。たまたま吉崎せいむの漫画「鞄図書館」を読んだら、鞄キャラクターはしょっちゅう「ゲーテ格言集」からの引用を口にする。すごくよく理解できる。このへんからゲーテに親しむか。ちょっと情けないか。(柴田)

< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4894518724/dgcrcom-22/
>
適菜収「バカを治す」
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4488024483/dgcrcom-22/
>
芳崎せいむ「鞄図書館」


●私もFAXがいいな。/人のデザインをコーディングする際、ピクセル情報があるとどれだけいいだろうと思うことがある。デザイナーさんは最適と思われる場所に素材を置いているわけだから、こちらは37ピクセルとか、41ピクセルなんてのにも対応してて、最後の最後に、あっ、適当でいいからと言われた時の脱力感。そのために時間かかってるのに〜。/ヨーリ〜!

続き。友人と話す。運転手が案内しないといけない少人数制のこと、改札に並ぶ人の列を考えると話を聞くのも迷惑であること、こちらにとってはイレギュラーでも、毎日その手の話ばかりを聞いているのであろうこと、自動改札をすり抜ける人が増えているのだろう、嘘をつく人も増えているのかもしれない、と。

大阪駅に戻ったら、いちおう聞いてみようか、いや宝塚駅で電話した方がいいかも、と話しつつ、宝塚駅へ。彼女はいなかった。終日って言ったやん! JRって労働時間長いのねぇ、とも友人と話していたよ。19時頃だったから、勤務時間が終わったんだろう。そりゃそうだ。

で、改札にいた駅員さんに、いちおう彼女がいるかどうか確かめた。私が嘘を言っていないことを再度念押ししたかった。そのぐらい気分を害したのよ。嘘を平気で言う人に見えたってことだから。

いやまぁ『風と共に去りぬ』での、戦死した人の話とか、娼婦への差別とか見て、切符ぐらいで小さいわ、とか話していて、もうほとんどどうでもいいことになってはいたけど。

と、その駅員さんが「切符を落とした人ですか?」と。「(おお、彼女は申し送りしてくれていたのだ、感心)はい。そうです」「聞いてますよ」続く。(hammer.mule)