ところのほんとのところ[104]嘘の記憶の世界だらけじゃつまらない/所 幸則 Tokoro Yukinori

投稿:  著者:  読了時間:5分(本文:約2,000文字)


さて、前回書いた怒濤のスケジュールのまっただ中に[ところ]はいます。現時点では無事に11月1日から、写真家・所幸則の写真展【本当は秘密の写真家の目】が始まっています。11月31日まで。詳しくはこちら。
< https://www.facebook.com/cafe.sousou?rf=164041880318522 >
< http://sou-sou.info/ >

これもギリギリの展開の中、プリントのセレクトもギリギリで。プリントをそろえて、額装して展示するのもギリギリでした。もう体が保たないなと思いながらのこの個展、高松の沢山の方の手助けのおかげでなんとか実現できたので、[ところ]はとても満足です。

作品を展示してみて、この作品展に対する思いが説明されていてないことに気がついて、いま急いで書いています。書いているうちにそうか、こういう意味の展示だったのかと[ところ]の思いがわかりました。

この個展の作品は、日常の中で、特に栗林公園近くの自宅の中で撮ったものでほぼ占められています。室内で発見した素敵な光と影、色の素敵なバランスなどですが、写真に撮る人はまだまだ少ないと思います。




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僕は写真家です。ですからなおのこと、テーマとなる被写体以外と対する時間は、普通の人よりも少なかったかもしれません。少し前までは。

渋谷の街を美しく残そうと思いたち、時間の流れを捕獲するというコンセプトを持って撮り続けていました。時間と季節の変化による街の美を捉えるために、歩く人、走る車や電車等に神経を集中していました。僕は家ではあまりカメラを手にとることはありませんでした。

ですが、渋谷と高松を行き来する生活になってから、渋谷のことを考えない時間も生まれ、ある日気がついてしまったのです。日々の生活の中にも、渋谷と高松を往復するその時にも「美」があることに。

最初は進化する携帯のカメラで撮ってみていたのですが、ある日気がついてしまったのです。自分が見た物をあまりに誇張する効果がついた写真を。撮った写真を保存したくなくなるようなアプリが無数に存在することを。自分の記憶をカメラに書き替えられていることを。

考えてみれば、印象が強く美しいと思った物は、確かにより美化するクセは人間にはありますが、それは自分の頭や心の中でするべきことだと思うのです。

世界に誇るカメラメーカーが研究に研究を重ね、良い色をだそうとすることは否定されるものではありません。ですが、一方ではちゃんと素直なデータもメモリーカードに残せるようにもなっています。RAWデータというのがそれです。

ですが、今のところ携帯のカメラではそういうデータは残せません。それどころか、アプリを開発する優秀な技術者達の努力の成果で、どんなものでも雰囲気よくも、鮮やかにも、ノスタルジックにも、写真という名の記憶媒体は何でも美しく書き替えられていくのです。

みんな現実から離れ幸せになりましょう〜♪ という、僕からするととても気持ちが悪くお手軽な幸せの記憶。

ですが、僕はそんなものを使わなくても、自分の目で見た美をそのまま残せるんだよという証明に、一度こういう個展を開いてみたかったのです。

写真を撮ることに技術はいらない、そういう時代がすぐそこに迫っています。だけど、嘘の記憶の世界だらけじゃつまらないじゃないですか。アプリを使わないで、自分の見たものに感動が残る、それでいいんじゃないかな。

まあ僕がこんなことを書いたり、こういう個展をする機会はもうないかもしれません。いろいろなことが迷走している今の時代だから、こういうことも考えたのでしょう。なんといってもこの50年は、人類史上稀に見る価値観の変貌の時代が続いているからだと思いますから。まだ当分は続くのでしょうね。

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このテキストがネットに流れる頃に、[ところ]は兵庫県の「Mt.ROKKO INTERNATIONAL PHOTOGRAPHY FESTIVAL 2013」に向かっているころでしょう。
< http://rokkophotofestival.com/index.html >

アルペンローゼにて「東京画」写真展を開催しているからです。RAIECのコミッティーのメンバー太田菜穂子さんのキュレーションで「東京画」の4名の写真家、大西みつぐ、古賀絵里子、鋤田正義、所幸則にフォーカスを当てた写真展です。[ところ]も会場近辺にいます。一日中ってことはないけど、FBのメッセンジャーで会いたいと言ってくれれば会場に行きます。
< http://rokkophotofestival.com/2013/tokyoga.html >

そして、12月14日からはニューヨークです。

【ところ・ゆきのり】写真家
CHIAROSCUARO所幸則 < http://tokoroyukinori.seesaa.net/ >
所幸則公式サイト  < http://tokoroyukinori.com/ >