グラフィック薄氷大魔王[367]大型作品集中制作、秋編
── 吉井 宏 ──

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10月6日〜11月5日、実家で大型作品集中制作の続きをやってきました。完成まではたどり着けなかったけど、未塗装は目だけに。峠は越した感じ。年内に仕上げと発送作業をしに、もう一度実家に行く予定。

8月の制作はクソ暑くて大変だった。10月になって涼しくなったらまた制作に行こうってことで出かけたんだけど、10月前半は暑かった! 東海地方の10月は史上最高気温だったそうでw

それでも、一挙一動すべてに気合いを入れないと体が動かない夏とちがって、秋の制作は快適。虫もほとんど来ない。ただ、日が短くて夕方5時には外での作業を切り上げなきゃいけないのはキツかった。

Flickrに写真を追加アップしました。
< http://bit.ly/17p6ADF
>

Twitterで制作実況中継はしなかったけど、Facebookには割と頻繁に書いてました。ブログにも転載しました。

Yoshii-Blog「立体造形」カテゴリ
< http://bit.ly/1fst75O
>

で、夏に続いて、また作業中のトラブルや考え方の変化などいろいろありましたので、ランダムに書きます。




●Cintiq Companion Hyblidを一か月使ってみた感想

実家制作中に普通の仕事をするために、前回の8月後半実家作業ではMacBook Airとintuos4のSサイズを持って行った。

不便に感じたのは、MBA13インチの画面が狭すぎることと、ラフスケッチの作業にはやはり液タブを使いたいなってこと。とりあえず鉛筆でいいやとスキャナ(複合プリンタ)を買ったし、画面の狭さは安いフルHD液晶ディスプレイをそのうち買おうと思ってた。

今回は購入したばかりのWACOM Cintiq Companion Hyblid(とMBA)を持参。13インチとはいえフルHD、メガネをはずして画面に顔を近づければ立派な大画面。仕事する上で不足はぜんぜんない。そりゃ物理的に小さいので多少せせこましい感じにはなるけどさ。

っていうか、実家から帰ってきてから仕事してると、一か月間ほぼCintiq Companion Hyblid(とMBA)だけで仕事してたせいか、板タブintuosとシネマディスプレイでまどろっこしさを感じるほど。

13インチの液タブは、カーソルをほとんど意識しなくても操作できるけど、板タブだと狙った箇所にカーソルを動かさなくちゃならない感じ。また、13インチだと手を動かす距離が短くて済むから非常にラク。15インチあったらいいなあとは思うけど、22インチCintiqではこの距離感とダイレクト感はまったくない。13インチの没入感はなかなか。

ただ、板タブはUSB一本どころか無線でも接続できるけど、液タブだと電源2本に接続ケーブルウジャウジャになるのがなあ。その意味で、WIndows入りのCintiq Companionはスッキリ使えていいのかもねえ。外部PCに繋げないとしても、一台で完結ってのは魅力。それでもキーボードがスッキリ使えない問題は残るけど。

●電気が焦げる臭いがする

夏の制作時から、制作中の部屋で電気が焦げるような臭いがしていた。いつもではなく、ほんの時々。停車中の地下鉄でときたま感じるあのイヤな臭い。コンセントかな? 天井の蛍光灯かな? と、そこら中をくんくん鼻を近づけて嗅ぎまわっても、どこから臭うかわからない。僕は鼻がかなりイイほうなんだけど。

1975年に建て増ししてから蛍光灯から何からずっとそのまま使ってる部屋。もしかして漏電でもしてたらヤバい。先日、仕事関係でお話した北海道のデザイナーさんが、コンセントからの出火でマンションの部屋を全焼したと聞いたばかりなので、よけいにコワイ。

8月末に東京に戻るとき、親父に「電気点検しておいたほうがいいよ」とは言ったんだけど、10月に制作再開で帰ってみると、やはり点検してなかった。しばらく部屋で作業すると、やはり電気が焦げる臭いがする!! マズい! しかたないので、近所のホームセンターで電気設備点検の予約したけど、数日後になるとのこと。

再び、部屋中をくんくんと嗅ぎまわってたところ、机の下に置いてあった段ボールがどうも怪しい。漢方薬の煎じ器の空き箱。鼻をくっつけて嗅ぐと、漢方薬の臭いがする。こんな弱い臭いを電気が焦げる臭いと勘違いするはずないよなあ。

念のため、段ボールを廊下に移動してしばらく部屋で作業すると、臭わない。廊下に出ると、臭う! あ〜〜〜! これだったのか〜〜〜! がっくし。夏からほとんど恐怖症みたいになってたのに〜。

数日後、電気点検の人に一応何か所か点検してもらったけど、異常なし。煎じ器の箱の臭いを嗅いでもらったら、「あー、確かに電気が焦げる臭いにちょっと似てますね」だってw

●作品の強度

制作中の破損事故が2回。一つは、FRPでしっかり強化したうちの一つを外で洗浄中にコンクリートの壁に思いっきりぶつけてしまい、7センチくらいかすかにヒビが入った。修復するため彫刻刀で切り開いたところ、厚みが3mmくらいの薄い箇所だった。とはいえ、ガラス繊維もちゃんと入ってる部分。やっぱ割れるんだなあ。

もう一つは、FRPなしバージョンをスチロール樹脂塗り中、でかいパーツを机から落っことし、床に置いてあった箱の角に当たってベコッと大きな凹み。他数カ所も割れた。薄い樹脂だけなので強度はなく、割れるのは当然。

で、思ったのは、やはりFRPとはいえ、丈夫さと引き替えに重くなってるから落っことしたらタダじゃすまない。強度がない樹脂だけの作品と同じく破損する。じゃあ、FRPするのムダじゃん。陶器の作品だって落としたら割れる。木彫だって銅像だって壊れる。だから、注意して取り扱うわけで。絵だって表面に傷つけないように気を使うでしょ。

作品の強度に必要以上に気を使うのはあんまり意味ないなと思った。海に浮かべるわけでも空を飛ばすわけでも砂漠を走るわけでもないんだから。仮に未来の超複合素材とか絶対に壊れない素材で作ったとしても、落としたら塗料の表面が無傷じゃ済まないんだし。

後半、FRPなしで発泡スチロール用樹脂を厚く塗っただけの比較的小型作品を2個作ったけど、FRPと硬いパテの作業がない分、作業がどんどん進んで楽しかった。楽しさは重要! 次からそうしようっと。

【吉井 宏/イラストレーター】
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東京に戻ってきて数日は、実家制作中の脇目も振らず超集中のクセがついたままで、びっくりするような勢いで細かい仕事やToDoをこなしてたのになあ。一週間もたつと、以前のペースにもどってしまう。キッチンタイマーPomodoroを発動しなきゃ。

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