ネタを訪ねて三万歩[106]ゲーム空間での二日間
── 海津ヨシノリ ──

投稿:  著者:


季節の変わり目は突然やってくるのに、その日がいつなのかはさっぱり分かりませんね。いつまでが秋で、いつからが冬なのか。もちろんそんなものは曖昧なボーダーラインなわけですが、子供の頃はこの事を真剣に悩んでいた時期がありました。

それは小学一年生の頃です。もっともこの疑問は今も引きずっており、自分なりに明確な答えを引き出していません。つまり、いきなり道ばたで小さい子供に質問されたらどう答えたらいいのかと。夢のある答えを見つけていない歯がゆさといったところです。夢は大切ですからね。

しかし、夢心地と厳しい現実は背中合わせですね。学生達とのイラスト展示とポストカード販売を行った多摩美術大学造形表現学部の芸祭も終わり一段落。ただし、展示販売ではちょっとした問題が勃発してしまいました。いや、問題と言うより「ポカ」をやってしまったと言うべきかも知れません。

私は都合七枚のポストカードを印刷したのですが、そのうち二種類は最初から先着200名様に無料配布と決めていましたが、残りの五枚の内の一枚にかなり汚いトーンジャンプが発生していたことが発覚。結果として、急遽「印刷ミスのため差し上げます」コーナーに転落してしまいました。このことにまったく気が付かずに当日を迎えるという、失態を仕出かしました。

そこで印刷所に確認したところ、データそのものがミスっていたようです。私が意図的にしたデザインと解釈されてしまったようです。実際、学生達はそう信じ切っていました。




これは要するにPhotoshop CS6のバグ(?)のようです。詳しく説明すると、Illustrator CS6で作成したデータを、Photoshopへスマートオブジェクトとしてペースト後に調整した結果です。うかつでした。

ちょっと困った問題ですが、これは騒いでも仕方がないこと。印刷データでグラデーションを使っている場合は、トーンカーブなどで暗くして確認した方がよさそうです。いい勉強になりました。イメージ画像を以下に公開しています。

< http://kaizu-blog.blogspot.jp/2013/11/tcdw4191.html
>

どうして今更CS6なのと突っ込まれそうですが、もちろんCCもインストール済みなのです。ところが、何故かPhotoshop CCのみカラー設定を変更するとアラートが出て正しく処理されないので、バージョンを揃えるためにCS6をメインとしているというわけです。

まったくもって意味不明&理解不能です。早いところ何とかしてもらいたいのですが、他の方で同類の症状を確認していませんので、なんとも歯切れの悪い状況が続いています。バグいえば、InDesign CS5.1でインタラクティブデータを作成すると音データが突然再生されないという問題を確認しました。しかし、CS6で書き出せば問題ないことも同時に確認......。良かったのか悪かったのか......。

さて、CCで思い出したのがVAIOにインストールしていたCCを、MacBookProに戻した時にパスワードの変更を求められたことです。もちろん変更を行いましたが、その時点でMacPro側のインストール時のパスワードと、MacBookPro側とでふたつのパスワードが成立する状況になってしまいました。

例のパスワード流出事件が起因なのでしょうが、困った問題ですね。このパスワード変更については、色々と悪質なメールが届くようになっていますので注意が必要です。特にヒツコイのが「スクウェア・エニックスアカウント──安全確認」というメール。yahoo.comから届いている時点でアウトです。他にApp Store Support(もちろん偽物)という怪しいのも届いています。皆さんも注意して下さい。

さて、話を戻し、展示販売での一番の収穫は「えっ、海津先生ってこんな絵を描くの?」でした。コンピュータ・グラフィックスのイメージが強すぎるからなのだと思いますが、それはそれで致し方ないのかも知れませんね。

でも今回の展示もSketch Book Proを使って描いたコンピュータ・グラフィックスなのです。恐らく多くの学生は3DグラフィックやPhotoshopによる合成を想像していたのでしょう。別にそれが良いとか悪いとかの話ではなく、やっぱりそんな風に感じているのかと思うと複雑な気持ちになります。

ほとんどの人は本当にやりたいことをしているわけではないですからね。私も実はそうなのですが、世の中で本当に好きなことだけを生業としていくことはちょっと難しいですからね。もちろん、多くの方が近い場所に踏ん張ってはいますが。

兎に角、人のイメージは最初に刷り込まれたモノが優先されてしまいます。そして、一度付いてしまったイメージの修正は恐ろしく難しいかもしれません。実は今年の芸祭で、私はカマコンの素材として突然登場してしまいました。

カマコンとは、Photoshopを使って男性が女装を競うバーチャル女装コンテストです。男性の時の写真と女装修正写真の両方が展示され、来客者が投票するという仕組みの恒例イベントなのです。

私は〆切二日ぐらい前に四年生の女生徒から、facebookにアップされている今年の謝恩会で学生が撮影した写真の利用許可を求められたので快諾したのですが、まさか髭付きの女性になっているとは思いもしませんでした。

事情を知らない一般来客者にとっては、かなり奇異なイメージになっていたかもしれません。しかも私が自分で作成したと思っている学生も多くて、廊下ですれ違うときにずいぶん冷やかされてしまいました。

ところで、飲酒禁止となった初めてとなった芸祭の模擬店は例年よりも少なかったのですが、お酒がなくても私は個人的に困ることもありません。逆にお酒とは無縁の出店は、二日間常駐していた私にとってはとても助かる存在となってくれました。

ホットドッグ、団子、お汁粉、おでん......しかも美味しいとは、いい意味で誤算でした。私は家での飲酒の習慣がないので、飲んでも学生などと月に一度ぐらいの頻度ですから、特になくても問題ありません。そして、毎年のお約束として、他大学へ編入してしまった学生や卒業生などが模擬店に混じっているのを見つけるのが楽しみになっています。

そんなゲームのような空間で、個人的に一番楽しかったのは楽屋でコソコソfacebookを更新していたことです。ダンボールで入り口を閉鎖した展示パネルの裏側は、本当に心地よい空間でした。

思えば子供の頃に、色々な場所に秘密基地的な小屋を作って大騒ぎしていた感覚が今も抜けていないのでしょう。木の上に木材を使った本格的な秘密基地を作ったこともありました。また、小枝だけでかまくらのような家を作ったこともありました。

あのころのエネルギーと行動力は、本当に輝いていたのかも知れません。ということで、多摩美術大学造形表現学部での芸祭はあと三回。最後までおもいっきり楽しみたいと思っています。

----------------------------------------------------------------------

■今月のお気に入り映画とミュージック

[ParaNorman]by Sam Fell in 2012(U.S.A)

邦題『パラノーマン ブライス・ホローの謎』。ストップモーションアニメーション映画としては初めて、フルカラーの3Dプリンタが使われています。実際のアニメーション制作には二年を費やしたそうです。

内容はコメディ・ホラーなのですが、登場人物達の個性的なデフォルメがとっても楽しい作品です。こんな奴いるような〜的な意味合いも含めて、すごく気に入ってしまいました。

兎に角、今の時代にあってストップモーションアニメーションというのがスゴイです。思い込みかも知れませんが、コンピュータ・グラフィックスとは違う、あたたか味のようなものをなんとなく感じてしまいます。案外3Dプリンタの普及でこのような作品が沢山見られるようになるのかも知れないと思うと、ちょっとワクワクしてしまいます。

ParaNorman | Official Theatrical Trailer
<
>

ParaNorman | Making Norman
<
>

[日付変更線]by 南佳孝 in 1991(日本)

アルバム「South Of The Border」の4曲目。作詞は松任谷由実。何かボーとしているときに聞くと心地よい曲です。南佳孝は時々無性に聞きたくなります。そういえば、南佳孝も含めて好きなアーティストのコンサートに、私は出かけた事がありません。正確に言うと小さいコンサートなら数回あるのですが、本格的な大きいコンサートはダメです。人混み酔いしてしまう私にとっては、永遠に越えられない壁かも知れません。正直ちょっと人生損しちゃっていますね。

<
>


【海津ヨシノリ】グラフィックデザイナー/イラストレーター/写真家/
怪しいお菓子研究家

yoshinori@kaizu.com
< http://www.kaizu.com
>
< http://kaizu-blog.blogspot.com
>

日本人のマナーの良さは折り紙付きなどとよく言われていますが、それって本当なんでしょうか。歩行タバコは言うに及ばず、電車の中で大きなリュクサックを背負って後ろ向きに押してくるサラリーマン。信号無視の自転車。改札機の前で立ち話をするオバサン。歩道を占拠する居酒屋帰りのサラリーマン。駅構内を全力疾走する会社員。夜中に車のエンジンを永遠と噴かしまくっている人。身動きの取れないほど混雑している電車の中で大騒ぎしている学生。泥酔し通行人へ暴言を吐きながら徘徊しているサラリーマン。

決して私は目くじらを立てて生活しているわけではないのです。きっとマナーの良さを褒められているのは、時空間の違う日本のことなのでしょうね。