歌う田舎者[51]2013年の暮れに文句を言う
── もみのこゆきと ──

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♪きっと君は来ない〜
♪ひとりきりのクリスマス・イブ〜

腹立たしい。毎年毎年何を言っとるんだ、この歌は。あぁ、確かに君は来ねぇよ。何年たっても不惑を過ぎても、いつまでたっても来やしねえ。どーゆーことだよ。もうそろそろわたしの前にいい男が姿を現してもいい頃じゃねーのか。

だいたいな、占いによると、わたしゃ今年結婚してるはずだったんだ。西洋占星術師も手相占い師も、日本人もインド人も、みんなそう言ったんだぞ。それなのに、貧乏暇なし男なし。無い無い尽くし、無い尽くし。今年の流行語大賞はもちろん「お・も・て・な・し」じゃなくて「お・か・ね・な・し」。なんなら「お・と・こ・な・し」でもいいぞ。たった二文字しか違わないのに、この悲壮感は何なんだ。

あぁ、もう誰のことも信じられない。わたしがいったい何をした?! 思い起こせば2013年は、わたしの人生の中で3本指に入る不幸せな年だった。ちきしょー! 腹立ち紛れに文句を垂れ流してやる! 今年の文句、今年のうちに。クイックルワイパー!


●政治家に文句を言う

12月になると流れてくる食傷気味の歌を聞きながら、一人腹を立てているわたくしですが、皆さまいかがお過ごしですか? 先週から我が薩摩藩の者が日本中を騒がせておりまして、誠に申し訳ないことにござります。徳洲会でございますよ、徳洲会。

まだ日本が中選挙区制の頃、唯一の小選挙区制になっていた奄美群島区では、渦中の人物、徳田虎雄センセイが保岡興治センセイを相手に、保徳戦争と呼ばれる熾烈な選挙抗争を繰り広げておりました。保徳戦争に関して、日本の選挙区制度の問題点などに鋭く切り込んだ論説をここで展開したいわけでございますが、ちょうどお時間となりました。それでは皆さん、ごきげんよう。

というわけにも参りませんので一言だけ言及いたしますと、なぜ猪瀬知事に5000万円を渡したのか、けしからんと思うわけでございます。そんな金があれば、今すぐわたしに貢ぎなさい。地元の有権者をなおざりにして、関門海峡を越えた先の人間に貢ぐとは、なんたることでありますか。猪瀬知事は男でございますよ。あなたもしかして「アッーーー!」の世界の方ですか。

衆議院選挙のときも毎回実弾攻撃で名を馳せた虎雄センセイであるのに、わたくしのところに実弾が飛んできたことなど一度もございません。まことにもって失敬千万。これからでも遅くはありません。心を入れ替えて、このわたくしに実弾攻撃をなさいませ。隣の選挙区だから投票できないけどな。

今年は、薩摩藩の知事が上海との定期国際線を維持するために、税金丸抱えで公務員の皆さま方を中国研修旅行にご招待という、これまたけしからん出来事もございましたが、まっこと薩摩の政治家というものは落ちぶれたものでございます。明治維新の元勲たちが草葉の陰で泣いておりましょうぞ。

●リクナビ・マイナビに文句を言う
わたくし、何を隠そう前を隠そう、転職市場専門家でございます。7年ほど前にIT企業を辞めた頃から登録している転職サイトは星の数ほど。リクナビ、マイナビ、インテリジェンスDODA、イーキャリア……これでも随分整理したほうなのでございます。

個別にエージェントが担当として付くサービスもございますが、わたくしのように棺桶に片足突っ込んだような年齢の美魔女が登録しても、「エントリー時にいただきました情報をもとに、該当求人をお探ししましたところ、誠に残念ですが現時点ではご紹介できるものがございませんでした。今後のご検討をお祈り申し上げます」というお祈りメールが届くのみでございますので、エージェントサービスは中高生……いや、中高年の皆さまにはおすすめいたしません。

しかしながら、中高生と中高年は一文字しか違わないのに、中高年に対する世の中の冷たさはなんでしょう。凍てつく師走の風が身に沁みます。お祈りメールが来るたびに心筋梗塞を起こしそうになる中高年の気持ちを考えてもみてください。エージェントという方々は鬼畜かなにかですか。お祈りメールは30代以下に使うもの。今のわたしには、いっそ、いっそ死ねとおっしゃってくださいな。よよよよよ……。

しかしながら、たまにこんなメールが届きます。

「リクナビNEXTをご利用いただきありがとうございます。あなたに【オープンオファー】が届きました! リクナビNEXTにログインして、お早めにオファー内容をご確認ください。」


んまぁ、このわたくしにオファーだなんて、いったいどんな奇特な会社でございましょう。給料はおいくら? その日届いたオープンオファーの会社データを見てみますと、完全週休2日制、月給40万以上と書いてございます……ぬわんだとう!? 月給40万以上? するする、応募する!

あぁ、毎月40万も給料があったら何に使いましょう。週に一本買っている500円以下のワインを、2000円くらいにアップグレードしても罰は当たりませんわよね。iPadとかKindleも買えますわ。毎月3万ずつ貯金したら、パスポート持ってボリビアのウユニ塩湖にも旅立てます。いざ行かん。早速詳細情報を確認ですわよっ!
ぐりぐりっと画面をスクロールして社名を見ると、「原子力規制委員会」と書いてございます。な、なぬ? 死語ですいません。もとい、原子力規制委員会とな? 対象となる方の項目には、こう書いてございます。

大卒以上(理学もしくは工学学科修了者)
【具体的には】
 ◎理学または工学の博士課程修了者(研究機関での研究業務経験者)
 ◎原子力施設の設計、建設、保修、検査、運転等に関する事務経験者


ガビーーーン! ふたたび死語ですいません。いや、もう全く当てはまってませんけど。おおかた、原発のある都道府県在住者とかで選択クエリかけて、全員に送っているのでございましょう。

しかも数日後に「あなたのレジュメに興味を持った企業が追加されました」の更新リストに、原子力規制委員会が入っているのでございます。これもおそらくは、詳細情報にアクセスした登録者に一斉送信しているのでありましょう。あぁ、心が寒い。財布も寒い。うたかたと消えた月収40万円の夢。

ほかによく来るオープンオファーに、大○建託や東○コーポレーションなどの建築営業がございます。未経験者可で、入社一年目の年収例が1000万、2年目で1890万と、すごい金額です。しかしながら、ここまですごい金額だと、いったいどんな罠が仕掛けられているのか恐ろしくて応募できませぬ。

もしや実態は、蟹工船に乗せられてシベリアに抑留され、足抜き図れぬ女郎部屋暮らしになるのではありますまいか。あな恐ろしや、なまんだぶなまんだぶ。思わせぶりなリクナビ・マイナビの流し目は、老い先短い中高年にはむごい仕打ちでございます。

●心のこもった人に文句を言う

細々とWEBの原稿編集などをしつつ糊口をしのいでいる今日この頃。さすがに手書き原稿を持ってこられる方はほぼいなくなりましたが、印刷した紙で持ってこられる方がたまにいらっしゃいます。このような場合、データでの提供をお願いするわけですが、ときに「印刷したからデータは消しました」とお答えになる方がいるのでございます。

先日もA4で10枚ほどの紙原稿を持ってきた方がいらっしゃいました。
「元原稿のデータはいかがなされたのでしょう?」
「あ、消しちゃいました」
「なっ、なんと申されました?」
「だって恥ずかしいですし。それにデータで渡すって心がこもってないから……」

……ギターの唸りが爆音で聞こえてきましたわっ!
♪火事起きて〜町燃える〜 女の炎は空までとどく〜
♪嘘だと思ったが女の叫びが聞こえる〜
♪燃えろ〜!
ええい、燃えろ! 世界などみな燃えてしまえ!

……すいません。心がこもってなくてもいいですから、データでお渡しいただけないでしょうか。恥ずかしがる必要なんてないんだぜ、ベイビー。はじめてかい? 俺にすべてまかせておきな。

そう、リクナビ・マイナビ続きじゃございませんが、求人に応募するときの履歴書も、ハロワから出そうとすると、たいてい手書きをすすめられます。デジタルだと「心がこもっていない」「熱意が足りない」と判断され、中を読んでもらえないというのです。

デジタルクリエイターズとは、心が冷たくて、やる気がない人の集まりなのですよ。皆さま、ご存じでしたか。

●旧友に文句を言う

「もみーちゃん、久しぶり。元気だった? 何年ぶりかな。なつかしいねえ。ところでちょっと折り入って話があるの。うちに昼ごはんでも食べに来ない?」

たいして仲良くしていた友だちではございません。しかしながら、長い時間を経て、わざわざわたくしのことを思い出し、連絡をくれた旧友を袖にすることなどできましょうや。何か困ったことが起こったのかもしれませぬ。貧乏暇なしのわたくしですが、なんとか時間をやりくりして駆けつけました。

「わざわざごめんねー。来てくれてありがとう」

かいがいしく食事の支度をする旧友は、茹で野菜や唐揚、煮ものなど、温かみあふれる手作りメニューで歓待してくれます。あぁ、たいして仲良くしていた友だちではないなどと、ひどいことを言ったわたくしをお許しください。恥じ入りましてございます。

「デザートも準備してあるの。蒸しケーキだけど、結構おいしいから食べてみてね」

ふんわり黄金色に焼きあがった蒸しケーキは、やさしい甘さで気持を和ませます。さぁ、そろそろ折り入った話を聞いてあげなければいけない時間ですわね。

「それでどうなさいましたの? 折り入ったお話って……」
「今日のご飯を作ったのね、全部この鍋なのよ」
あぁ、きっと旧友はまだ話しだす勇気が出ないのかもしれません。

「困ったことでもございました?」
「蒸しケーキもね、この鍋なの」
よほど言いにくい話なのかもしれません。

「旦那さんのこと?」
「旦那もときどき料理することあるの。これ、使いやすいんだよ」

そんなに切り出しにくい話なのでしょうか。仕方がありません。彼女が心を開いて話をする気になれるまで待つことといたしましょう。

♪わたし待〜つ〜わ いつまでも待〜つ〜わ〜♪いつまでも待ったあげく、鍋の押し売りでした。15万だそうでございます。くわっ! おいっ。誰にモノ言ってんだ。冒頭で言っただろ。あたしゃ「お・か・ね・な・し」なんだよ。バカ言ってんじゃねえや。

今年は、これ以外にも旧友より「金を貸せ」の連絡がございました。隠しきれない高貴な雰囲気を醸し出しているわたくしですから無理もないのですが、ええ加減にせえよ、おまえら。

長らく音沙汰なしの旧友からの連絡など、
♪大嫌いだぜ大嫌いだぜ ろくなもんじゃねえ〜。

※「クリスマス・イブ JR東海CMクリスマスエクスプレス全編」山下達郎
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※「深紫伝説」王様(燃えろ!(BURN)は2:16付近より)
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※「待つわ」あみん
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※「ろくなもんじゃねえ」長渕剛
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【もみのこ ゆきと】qkjgq410(a)yahoo.co.jp

先月の誕生日から、良いことがなーーーんにもない。悪いことばかりが怒涛のように押し寄せてくる。去年出雲大社にお参りした御利益はまだか。もう一年が過ぎてしまったではないか。厄落としだ、マジで厄落としに行かなあかん。こういうのを駆け込み需要ならぬ、駆け込み不幸とでも言うのだろうか。

それはさておき、最近、魚肉ソーセージ、通称ギョニソに取り憑かれてしまったワタクシである。ギョニソといえば、さくら水産だ。しかし、トーゼンさくら水産など薩摩藩にはない。

[魚肉ソーセージ100人前]Daily Portal Z
< http://portal.nifty.com/2007/01/16/c/
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大阪にはギョニソの親戚、ポールウインナーなるものがあると聞き、数年前に大阪出張したときにコンビニで購入し、嬉々として食べたのだが、もうすっかり味を忘れてしまった。製造元の伊藤ハム広報室によると、ポールウインナーはセロハンのまま茹でると、豚の旨味が増すらしい。
< http://nikkan-spa.jp/6021
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そんな記事を読んでいたら、今度は猛烈にポールウインナーが食べたくなってきた。しかし、もちろん薩摩藩には売っていないのだった。ぐぬぬ。