まにまにころころ[48] Web屋さんが意識しておきたい法律の話
── 川合和史@コロ。 Kawai Kazuhito ──

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こんにちわん、コロこと川合です。あっという間に今年最後の登板、早いものですね。昨年の今頃、年賀状に四苦八苦していて、2013年は早めに準備をして年を越せるようにしようと心に決めたのですが、まるで昨日のことのように、はっきりと思い出せます。ええ、昨日のことであってほしいです。

さてそんな話はさておき、唐突ですが今回は法律の話。ちょっと本業の絡みで、「Web制作する上で知っておきたい法律って、どんなものがあるか」と、改めて考える機会があり、それが想像以上にあれこれ色々とあったので、その一端をご紹介しようと思い立った次第です(以下、日本の法律についてです)。


◎──知的財産権

まずはやっぱり、知財関係。知的財産権とは何か、知的財産とは何か。定義は「知的財産基本法」の第二条第1項、第2項に記されています。

“第二条 この法律で「知的財産」とは、発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの(発見又は解明がされた自然の法則又は現象であって、産業上の利用可能性があるものを含む。)、商標、商号その他事業活動に用いられる商品又は役務を表示するもの及び営業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報をいう。

2 この法律で「知的財産権」とは、特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、著作権、商標権その他の知的財産に関して法令により定められた権利又は法律上保護される利益に係る権利をいう。”

ちょっと長いし漢字多いしで難しい印象を受けますが、要するに「人が考えたもので、金になるもの」ってとこでしょうか。列記されている「○○権」で、Web制作にあたって特に意識しておきたいのは、著作権と商標権ですかね。

商標というのは、商品名やロゴマークといった、その商品やサービスの出自を示すもの。商標を独占的に使用する権利(商標権)は特許庁に出願し登録することで発生します。「トレードマーク」って言葉がありますが、「TM」記号は、商品の商標を示すマークです。

著作権については、どんなものかの説明は今さら過ぎますよね。TPP関係でまた最近も色々と話題になっていますし。まあ改めてちょっと条文をみてみると、著作権法の第一条には「この法律は(中略)これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする」と記されています。つまり著作権法の目的は「文化の発展に寄与すること」なんですね。

その目的に対して、「文化的所産の公正な利用に留意」しつつ「著作権者等の権利の保護を図る」となっています。文化というのは通常、先人の生み出したものに新たな創意工夫を加えて発展させていくもので、突如発生するものではありません。その意味では著作物も、文化発展のためには人類の共有財産とすることが望ましい、と。

でも、だからといって、著作物に対して著作者の権利が存在しなければ、そもそも創作する動機づけが難しい。著作権法は、権利の保護を図ると同時に保護期間を定めるなど、「公正な利用」と「権利の保護」のバランスを取って、文化を発展させようぜって法律です。そりゃ難しいし、色々と問題も出てきますよね。

WebやITの周辺では、著作権法の枠組みと、実情とのギャップを埋めるように、クリエイティブ・コモンズのような工夫が色々と生まれています。その話は長くなるのでまたそのうちに。

◎──特商法

ECサイトに関わったことがあれば必ず目にしているのが、特商法(特定商取引に関する法律)という名前。法律自体は広範な商取引について消費者保護のため設けられたものですが、Webサイトに関係してくる点としては主に、通信販売事業者として表示義務がある項目です。なお対象は「通信販売」の「広告」であるため、Webサイトだけでなくメールの場合も含まれるので注意。

・消費者庁「消費生活安心ガイド」より
< http://www.no-trouble.go.jp/search/what/P0204003.html
>

◎──景表法

景表法(不当景品類及び不当表示防止法)は、「不当景品」と名前が付くのでプレゼントキャンペーンなどを行う際に気をつけておきたい法律だとは認識されていると思いますが、「不当表示」についても関係する法律ですので、多くのWebサイトに関わってくる法律です。今年話題になった、ホテルレストランのメニュー偽装事件で対象になったのもこの景表法です。

同法では、「景品」とは、「顧客を誘引するための手段として、(中略)事業者が自己の供給する商品又は役務の取引に付随して相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益」、「表示」とは、「顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について行う広告その他の表示」と規定していて、景品については最高額や総額の制限をしたり、表示については実際のものよりも著しく優良に見せかける表示を禁じるなど、「不当な顧客の誘因(消費者を惑わせる行為)」を規制する内容になっています。バナメイエビ、美味しいです。

◎──薬事法・医師法など

医療関係は、ものがものだけに地雷がいっぱいです。医薬品等や、健康食品、健康グッズなどの広告・販売を扱う場合、薬事法ほか関連する法律について注意が必要。薬事法ならびに厚生労働省(旧厚生省)の通知では、医薬品等の広告表現について厳しく制限を設けていまして、例えば医薬品としての承認を受けていないものについて、医薬品的な効能効果があるような表現は、たとえその効果が事実であったとしても用いちゃダメです。

またWebサイトやアプリを通じて診断・診療を行うようなコンテンツは、医師法違反になる恐れがあります。健康にまつわるコンテンツはその辺りの各種法規に要注意。初期から法務チェック入れてった方が無難です。

◎──まっだまだ色々あります

Webって様々なシーンで利用されるため、用途によってその先々で色々な法律が関係してきます。ここで挙げたほかにも、選挙関連では公職選挙法、経済・金融関連では金融商品取引法などというような具合で。特にECサイトの場合は、その商品を扱うために許認可が必要なものも多くあったりしますし、お客さんの情報を扱う上で個人情報保護法だったり、宣伝にあたって特定電子メール法だったりと、あれもこれもと法律が関係してきます。

制作者として、全ての法律に精通しておくことは難しいですが、制作の都度、その分野周辺の法律にまつわるリスクがあることを意識することが大切。発注者から受け取った原稿の時点で法に触れている場合もあります。そういった場合に責を負わない契約を交わしておくという手も取りつつ、最低限のチェックはプロとして心がけたいところですね。

【川合和史@コロ。】koro@cap-ut.co.jp
合同会社かぷっと代表
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>

法律の条文ってもう少し読みやすい日本語にできないんですかねぇ……