わが逃走[137]趣味の構造美をポスターにしてみた/齋藤 浩

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『わが逃走』において過去にも何度か語っているが、私は趣味で“構造美”を集めている。美しく機能している構造を探し、それを美しく撮影する! をテーマとしカメラ片手に散歩し続けたところ、それなりの数になってきた。

こうなると本業であるデザイナーとしての血が騒ぐ。これをポスターにしたい。のである。実は数年前からトライアルは続いていた。しかし、気に入った写真をB0サイズにレイアウトし、壁に貼ってみたところ、つまらん! なのである。何故か。


それはポスターでなく、でかい写真だったのだ。でかい写真なら写真として見せればいいのであって、なにもポスターと言い張ることはない。ポスターのタテヨコ比にあわせるため、オリジナルをトリミングしていることもツマラナくなった要因といえそうだ。

写真を撮るときを思い返してみると、ファインダー内で世界を構築するというか、余計なモノは視野枠から排除し、伝えるために必要な要素をいかに3:2(ライカ判の場合)の矩形内で無駄なく構成するかということに命をかけてるわけだ。

そうして撮った写真を吟味し、自分の納得いく色調に現像して完成、としていたものを改めて素材としてポスターにするというのは意外に、というべきか想像以上に難しい作業だった。

そもそも完成した写真自体がが最もシンプルな状態といえるので、そこからポスターにする意味って何なのよ?

などと自問自答する。そして導きだした答えが「写真を使わない」だった。写真を使いたくてポスターを作ろうとしたのに、これじゃ本末転倒じゃん。などと思うわけだが、写真を見せたきゃ写真展をやればいいだけのことなので、構造美という概念を最も明快に伝えるビジュアルを、一(いち)から構築してみることにした。

で、できたのがこれ。
< http://bn.dgcr.com/archives/2014/03/06/images/001.jpg >

ちょうど某企画展で『日本』を題材としたポスターを募集していたので、日本家屋の構造そのものをビジュアライズできんものかと制作。そのときはイイものができたと思ったが、いま見ると見た目の面白さのために端折られていった部分が気になってくる。

ということは、これ以上端折れないくらい単純化してやってみてはどうだろう。
もっとシンプルかつ強いビジュアルにできるのではないか。
部屋という同じテーマでより単純化してみる実験。
< http://bn.dgcr.com/archives/2014/03/06/images/002.jpg >

さらにつきつめて考える。構造や工法に思い切り焦点を絞ったら?
モチーフとして、以前から気になっていた建築や木工における『継手』を選び、プロトタイプを制作。これはイケそうな気がした。

しかし一点だけというのも味気ないので、対になる存在も作ってみよう。
ときたら鉄! 溶接!! 自然素材vs人工素材、タテの動きvsヨコの動き、硬いvsしなやか……などなどスジは通る。そうと決まればノリノリで制作。
< http://bn.dgcr.com/archives/2014/03/06/images/003.jpg >
< http://bn.dgcr.com/archives/2014/03/06/images/004.jpg >

なにやら正解なにおいがしてきた。

これをうまく整理すれば、建築事務所のポスターとしてプレゼンできるのではないか?? さっそく建築家のイトペン氏(カメラ散歩仲間)に売りこんでみたところ、「面白そうだから作ってくれ。気に入ったら採用する」とのこと。
で、一気に作り上げたのがこちら。
< http://bn.dgcr.com/archives/2014/03/06/images/005.jpg >
< http://bn.dgcr.com/archives/2014/03/06/images/006.jpg >

結果、めでたく採用。とはいえ駅貼りされたとか、そういうんじゃないけどね(笑)。でもこの建築構造シリーズはこれからも作れそうなので、なにやら楽しみになってきた齋藤浩です。もうすぐ春ですね。

【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
< http://tongpoographics.jp/ >

1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。