Otaku ワールドへようこそ![190]無謀なイベント企画:『セーラー服おじさんとインパクトおじさんたち』/GrowHair

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書いてる時点では未来のことなのに、読まれる時点では過去のことになっているという、たいへん困ったタイミングである。まあ、著名人の死亡記事なんかは、あらかじめ書いてあるという噂もあることだし、すっとぼけて過去形で書いてみるというのも手なのだが。

しかし、「お客さんの入りがショボかったらどうしようかと頭がハゲそうなほど心配していたのだが、大入りでほっとした」なんて書いちゃっといて、実際ショボかったりしたら、どうにも形がつかんわけだし。

未来形で書いたら書いたで、終わった試合の予想みたくなって、なんだか間抜けな感じだし。ただ、ひとついいのは、しゃべろうと思っている内容を先に書いちゃったとしても、読まれるのは後だから、ネタバレにはならないってことぐらい。


●無謀な企画だろ

「118名着席可能」なイベントスペースで、メインのゲストは私で、トークショーやります、って、しかも2,000円プラスドリンク代を申し受けます、って。

事態を客観的に鑑みて、もし私が一般の人だったらどうだろう。奇矯な格好して街を闊歩することで、ネットに画像が出回ったりして、笑えるネタとしてちょっと前から話題になってるおっさんがいる、と。いちおう気にはなっていた。そのおっさんが同類を集めてトークイベントをやります、と。『セーラー服おじさんとインパクトおじさんたち』というタイトルで、と。

ほぅ、なんかすごそうな企画だね。レアな催しって点は、面白そうだ。しかしいったい何を話すの? なんか笑える話をしてくれるんだろうけど、聞いてすぐに自分の生活の役に立つような内容とも思えないしなぁ。

どっかに行くついでに立ち寄れるくらい便利なとこでやってて、しかもタダだったら行くんだけどなぁ。お台場で、有料だろ。まあ、パスでいいかなぁ。

いやいやそこをぜひ来てください。って懇願してみたところで、これが読まれる時点ではイベント終わってるわけだしなぁ。

『セーラー服おじさんとインパクトおじさん』。4月6日(日)に開催。会場は、お台場にある @nifty のイベントスペース「東京カルチャーカルチャー」。

企画したのは北村ヂン氏。「日刊サイゾー」でキャンディ・H・ミルキィ氏との対談記事を書いてくださった方だ。去年の6月13日(木)、渋谷で対談したときにお会いしている。
< http://www.cyzo.com/2013/07/post_13776.html >

季節は移ろい、11/6(水)の夕方、会社帰りに新宿のカラオケボックスでセーラー服に着替えて「オカオカハウス」に向かっているとき、代々木八幡駅前で、ばったりとヂンさんに再会した。目立つっていうのはいいことだね。

何やらトークイベントみたいなことを構想しているところへ偶然本人が通りかかったとのことで。お調子者の私は「ほぅ、面白そうですね」とか何とか言ったような...。

翌日にはメールが来て、もう少し具体的な構想が書いてあって、どうですか、と。前日、ヂンさんと会った後、ちょうどトークをやったところだった。ニコニコ生放送の『にしくんの、発浸!日本を変える奇変人』という番組。「奇変人」のひとりとして、ゲスト出演していたのであった。自分としては、まあまあやれてた感触。

すっかり気をよくしていたタイミングでのメールだったもんだから、あ、トークですか、はいはいできますよ、ぐらいの軽〜いノリの返信をしていた。以前、6月11日(火)に新宿の「ロフトプラスワン」でもしゃべっていて、割と好評の感触であった。ヂンさんの企画は、それに近そうなんで、同じようにやればいいんでしょ。

懸念はあった。ロフトのときは、多数の豪華ゲストにまぎれ込んでの出演だったため、集客についてはまったく考えなくてよかったのだが、今度のは私がメインのゲストとあっては、お金を払ってまで見に来てくれる人がどれほどいるだろうか。

舞い上がっている時期にあっても、いちおう冷静にこの懸念は返信の中で投げかけている。ところが、ヂンさんは、今までどれだけ修羅場を切り抜けてきているのか知らないけれど、デンと肝の座った人で、普通は心配するだろって場面にあっても心がふらとも揺らがないのである。

ヂンさんからの返信では、こちらの懸念表明はまるでなかったかのごとくまったく触れられておらず、「じゃあ、年明け1〜3月くらい開催を目指して動いていきましょう」と。

いちおう11月19日(火)に会って打合せをしている。こっちからいくら懸念を投げかけても、さらっと一言で返され、なんか、できるような気になってきていた。

会場となる「東京カルチャーカルチャー」は、実は存在すら知らなかった。事前に一度は見ておかなくてはなるまい。年内に、ちょうどいいイベントがあった。『「デイリーポータルZ」と「オモコロ」のバカ記事大賞 2013』。12月14日(土)。ヂンさんも行くという。

以前に取材してくださった、ヨッピー氏が出る。去年の3月27日(水)、アイドルのイベントが始まる前、大塚にあるライブハウスに来て、セーラー服姿で取材していただいたのだった。この記事。
< http://togech.jp/2013/03/31/834 >

この年末イベントがめっちゃ面白くて、私はその場でヂンさんに「私がやったとしても、こんなに面白くはできません」ときっぱり言ったのだが、ヂンさん「じゃ、よろしくお願いします」と。人の話、聞いてる?

それからぱったり連絡が来なくなり、年が明け、3月になり、あの話は立ち消えになったのかな、と思っていた。実は会場がしっかり押さえられていたことを知ったのは3月4日(火)になってからであった。しかも、Ladybeard氏の写真を撮っている立花奈央子氏からたまたま。どうやら、出演依頼と会場予約は、しっかり手を回してくれてたようで。やるならやるって、こっちにも言ってよー!

●気がついたら目前に

その翌日、3月5日(水)に、久々にヂンさんからメールが来た。告知文を書いたので、チェックしてください、と。4月6日(日)にやること自体は当然の前提のように書いてあるけど、聞いてたっけ?

3月27日(木)の夜9時から1時間、ニフティの「デイリーポータルZ」×「東京カルチャーカルチャー」のニコ生の番組『カルチャークラブZ』でイベントの告知をするという。

前日の26日(水)にヂンさんと会って打合せをした。じゃあ、ニコ生の番組では、イベントの出演者の紹介をしましょう。

少し前、3月18日(火)に、とあるセミナーの会場で、「トウモロコシおじさん」こと長沼真彦氏に偶然会っている。4月のトークイベントに聞きに来てくれると言っていた。あれ? 出演者じゃなかったっけ?

打合せのときヂンさんに聞いてみると、連絡がつかなかったので、長沼氏には声をかけてないという。いやいやつきますって。その日の夜遅くに帰って長沼氏にこちらから連絡をとって聞いてみると、出演OKとのことだったので、翌日の出演者紹介では、長沼氏のこともしゃべることにした。

27日(木)は悪夢だった。夢の中であせって走るけれどもちっとも前に進んでいかなくていっそうあせることがあるけど、まさにそんな感じ。9:00pmから放送開始で、8:00pmちょっと前に入ればよいことになっていた。

仕事帰り、新宿の漫画喫茶で着替えたら遅くなってしまい、タクシーで向かったが、ビルの下に着いたのが8:15pm。8:00pmを過ぎると正面玄関から入れなくなることは聞いていた。

横の守衛所のところを通ろうとすると、面会相手に連絡をとって、降りて来てもらってくださいと言う。守衛所から連絡してくれるわけではない。ケータイを持っていないので、公衆電話はありませんか、と聞くと、角にあるという。出てみたが、ない。角ってどこの角だよ?

青梅街道沿いに歩いていけば、どっかにはあるだろう。歩けども歩けども、ない。神田川を渡ったところであきらめて引き返す。一本道なので迷いようがないはずなのだが、いつまで経っても元のビルに戻れない。実は、そのビルのすぐ手前で、職安通りから延長された新しい道に、なぜか入り込んでいた。

目前に中央線のガードが見えてきて、めちゃめちゃあせった。新宿じゃん。再びタクシーで元のビルへ。着いたのが8:45pm。電話の問題は解決していない。再び守衛所で聞いてみると「このビルにはありません」という答え。さっきと違うじゃん。じゃ、どこにあんだよ?

埒が明かないので、今度は青梅街道を反対方向へ歩く。西新宿駅への階段を下りると、改札口の脇にあった。やっとかけられたのが8:50pm。ビルまで走って戻って3分。会場入りしたのが8:55pm。

ヂンさんは落ち着いた調子で、あ、着きましたね、と。こっちはもう泣きそうだったっちゅうのに。そこまで悠然と構えられると、なんでもないことのように思えてくるから不思議だ。トイレに行って戻ったら、すぐ放送開始。事前打合せする時間がまったくなかった。

まあ、そんな状況にあっても、なんとか乗り切った。「東京カルチャーカルチャー」の店長を務める横山シンスケ氏から「面白かった」と言っていただけた。

4月6日(日)の告知ページ。
< http://tcc.nifty.com/cs/catalog/tcc_schedule/catalog_140307204523_1.htm >

●インパクトおじさんたち

出演するのは、キャンディ・H・ミルキィ氏、長沼真彦氏、Ladybeard氏、豊田冴香、ヨッピー氏、北村ヂン氏、GrowHairの7名。

キャンディ氏は、真っ赤なワンピースドレスに真っ赤なランドセルを背負ってバイクで疾走する姿がよく目撃されている。地方の観光地などを訪れ、きれいな背景で写真を撮ってきたりしている。

アマチュア女装同人誌『ひまわり』の編集長をされていて、1983年から2005年まで76巻発行している。押しも押されもせぬ女装界の大御所と言える。

私有するキャンディ・キャンディ関連グッズを展示するコレクション展をもう10回も開いている。ミュージアムを建てることが夢。

私よりも10年以上早くから、公の場で女装して歩くという活動をされており、時代の空気が違っていた当時の人々の反応は、やはり今とは違うのだろうか、ってあたりが聞いてみたいところ。

長沼氏は、トウモロコシやタワシなどをペットとして散歩させている姿があちこちで目撃されている。その一点以外は立派な紳士然としているのだが。「過去を引きずるくらいなら、野菜でも引きずっておけ」というフレーズがかっこいい。

去年の夏、出身校である埼玉県立所沢高校の学園祭に姿を現すというので、会いに行った。それ以来、たまに偶然会う。11月16日(土)には、原宿の竹下通りを散歩していてばったり会い、当時原宿に会ったニコ生本社へ行き、即席でライブ放送してきた。

つい最近、3月18日(火)には「元気ジャパン」代表の通称ナベケン氏こと、渡邉賢一氏の公演を聞きに行ったところ、そこでもばったりと。目立つっていうのはいいことだ。

Ladybeard氏は、オーストラリア出身のプロレスラーであり、ヘヴィメタシンガーである。去年の 10月に日本に移り住んで、人気急上昇中。筋骨隆々の体躯、ツインテールにまとめた長い髪、密度の濃いヒゲ、ひらっひらの女装という、ワイルドでキュートな姿がウケている。近々、テレビ出演の予定もあるそうだ。

主に台湾で活動していたが、2011年に日本に来て公演をやり、すっかり気に入って、活動拠点をこっちにしようと決意。いったんオーストラリアに帰って、2年間みっちり日本語を勉強してから、こっちへ移り住んでいる。

2月19日(水)に初めてお会いして、原宿を散歩している。そのときの画像がまたたく間にネットを駆け巡り、その日の夕方には、2つ3つのニュースサイトで話題に上がっていた。

それを見た早稲田塾の中の人がピンと来て、YouTubeのCMの第2弾に出演させてくれた。プロレスラーとプロレスごっこ。

3月29日(土)、新宿「風林会館」で毎月開催されている女装イベント「プロパガンダ」に出演している。300人ほど集まる大きなイベントなのだが、この回はやけに女性が多かった。人に性別を聞くのもどうかと思いつつ聞いてみると、Ladybeard氏のファンで、ステージを見に来たっていう正真正銘の女性がけっこう多かったのである。

女性に乗っ取られそうな女装イベント。Ladybeard氏のステージパフォーマンスが始まると、ステージ前には数十人のファンたちがどっと固まり、頭を激しく振って髪をぶんぶん振り回して応援する。すげー。インパクトおじさんのイベントのことも告知させてもらえたので、これで何人かは来てくれそう。

豊田冴香はいつもつるんでいるアイドル。この春、地元長野の中学を晴れて卒業した。私と一緒に所属していた女子中学生アイドルグループを去年の8月に同時に抜けている。それまでは、毎週末、夜行バスで長野から東京に出てきて、ライブのステージに立っていた。

この春からは、東京に移ってきていて、本格的にアイドルを目指す。高校は通信制のとこで。通信制にも入試はちゃんとある。4月3日(木)に一校、4月4日(金)に一校、受験している。

サエは、国語は得意なので心配ない。英語もまあまあ。落ちるとしたら数学が原因なのは間違いない。受験の前日、4月2日(水)に、まさに一夜漬けで数学の特訓を施した。3日(木)に受けるほうは、都内の通信制の最難関で、競争率は2倍だそうで。合格発表は、「インパクトおじさん」のイベント当日の朝。はてさてどうなることやら...。

私の心配事は、イベントで閑古鳥が鳴いたりしないかってことだ。100人入る会場で、3人しか来てなくて、しかも親しい知り合いばっかりだったらどうしよう。

もうひとつ、どんな話をしようか、っていうのも。ロフトのとき、客層は知的な人が多いのではないかと読んでいた。退屈しのぎに馬鹿馬鹿しいお笑いやドタバタ劇を見たいんじゃなくて、風変りで独創的でありながら、身のある話が聞けたほうが満足感が高いんじゃないかと。

その読みに基づいて、まるで大学の講義のように文化論などを交えつつ、フランスに行った話をしたところ、狙いが大当たりで非常にウケがよかった。この話を使い回せればラクなのだが、そのとき来てくれた人が今度のイベントにも来てくれるというので、同じ話はできない。

1月28日(火)にここに書いた幸福論をベースにして話を組立てよう。やっぱり大学の講義よろしく、社会評論のようなカタ〜い話にしちゃうのだ。

しかししかし。セーラー服姿で街をうろつく変態のおっさんが百人規模のイベント開催なんて、どう考えたって無謀だ。もう心配事が多くて頭ハゲそう。

と言いつつ、このあたりを書いているのは、実は事後。いつの間にか未来形と過去形が逆転している。

【GrowHair】GrowHair@yahoo.co.jp
セーラー服仙人カメコ。アイデンティティ拡散。
< http://www.growhair-jk.com/ >

で、どうなったか。朝は、豊田冴香の吉報で始まった。サクラサク。競争率2倍の第一志望に合格。イベントは満杯の入り。仙台から夜行バスで来たという方もいた。セーラー服風のオリジナルデザインの衣装を自作して着てきた方もいた。私の「幸せ概論」も興味をもって静聴していただけた。みんなのトークや歌もよく、非常にいいムードのイベントになった。

下の「ZEPP 東京」ではleadのライブで若い女性が数百人集まっていたが、イベント前に降りて行ったら、ヂンさんにツイッターでツッコまれていた。

・ZEPPの客を奪おうと、セーラー服おじさんとトウモロコシおじさんが攻め込んでいったけど、さすがに無謀すぎる戦い!

それはともかく、以下は、お客さんたちからのツイート。ほらほら、幸福論、ちゃんと聞いてもらえてる!

・おふざけイベントでは決してなく、まじめな話あり、ライヴあり、撮影タイムありと、盛りだくさんで楽しかった。次回も絶対に行く。

・マズローの欲求階層説で幸せのプレゼンするセーラー服おじさん何者だよ

・セーラー服おじさんの幸福論的なスライドが素敵だったなぁ。

・セーラー服おじさん喋るとまとも。意外といい声だし英語の発音も良かった。

・お笑いトークライブなのに幸せプレゼンされてる

・セーラー服おじさんの幸福学概論なう

・セーラー服おじさん、マズローの欲求図から自殺率、システム化などのスライド、お坊さんに聞いた幸せ観など、幸福についての講義中。「人々はシステムに隷属する、代替可能なコモディティに陥りやすい」。…大学!

・セーラー服おじさんの幸せについての講義と北村ヂンさんの真顔

・ 幸せとは何かについてプレゼン中のセーラー服おじさん

・セーラー服おじさんとLadybeardが近くにいるなんて胸熱すぎて涙出そう( ;∀;)

・セーラー服おじさんによる「幸せとは?」というお話しやレディビアちゃんのライブ見れて、最後は撮影会もあって、とても満足度の高いイベントだったなあ

・キャンディさんのオモチャは壊れてこそオモチャ的なお話やセーラー服おじさんの幸福論やタワシ散歩させてる長沼さんの過去を引きずるくらいなら野菜でも引きずっておけ等、為になるお話が聞けたし生歌も聴けたしお得なイベントでした。2000円安い。

イベント後、新宿のホコ天ででテレビの取材を受けた。まあ、テレビは収録してからもボツることがよくあるので、あまり期待せずに放送を待ってます。

この日、ツイッターでかき集めた写真はこちら。
< http://picasaweb.google.com/107971446412217280378/Town140406 >