[3710] デジタル造形とアナログ造形

投稿:  著者:  読了時間:16分(本文:約7,700文字)


《9月3日から宮崎県立美術館にて開催》

■わが逃走[141]
 道程青年団の巻
 齋藤 浩

■3Dプリンター奮闘記[38]
 デジタル造形とアナログ造形
 織田隆治

■公募案内
 ASIAGRAPH 2014年度 CGアートギャラリー公募展示部門 作品募集中




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■わが逃走[141]
道程青年団の巻

齋藤 浩
< http://bn.dgcr.com/archives/20140612140300.html >
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写真家・小河孝浩とは10年ほど前に知り合った。お互い Creators Channel にホームページを間借りしており、私の仕事と日記を面白がってくれた彼がメッセージを送ってくれたのがきっかけだった。何度かメールでのやりとりがあったのだが、その後 Creators Channel 閉鎖に伴い疎遠となってしまった。

もともと彼はコマーシャルフォトの第一線で活躍、東京・南青山に事務所とスタジオを構えブイブイ言わせてたのだが、ある時「なんか違う!」と思い立って、宮崎県西米良村へ帰郷。

生まれ育った村の人々と自然をテーマとした作品の発表をはじめ、多方面で活躍。いまや宮崎を代表する写真家なのである。

そんな彼と一昨年、Facebookで約8年ぶりに再会した。お互いの写真に惹かれるものがあり、コメントのやりとりをしているうちにノリが良くなってきた。いずれもごく普通の道端スナップなのだが、このヒトの写真はなんか違うぞ! と思わせるものがあったようだ。

「あの風景を撮りたい! と出かけたものの、たまたま途中に立ち寄った街のスナップの方がはるかに面白かった、なんてことあるよね」
「あるある!」

などと語り合っているうちに、そもそもモノゴトって奴はすべてその行程だったり過程にこそ醍醐味があるんじゃないか? なんて話になった。

一枚の写真はひとつの"結果"かもしれないが、なぜその構図で、なぜその被写体と対峙したのか。それを見る者にわかりやすく伝えて"道程"を共有できたら面白いよね。

ふたりのテンションは上がりまくり、よし!『道程青年団』結成だ!! ということになった。我ながら良いネーミングである。

その後、小河孝浩と初めて対面する。日記を確認したら6月13日。ちょうど一年前だ。信じられないことに、私はそれまで実物の小河孝浩とは会ったことがなかったのだ。インターネットのおかげといえばそうかもしれないが、なんとも不思議な感じだ。

で、実際に会ってみたら、ますます子供の頃からの長い付き合いのような気がしてきた、というか私も彼の故郷である西米良村で育ったような気になってくるのだから面白い。ガキ大将タカヒロくんに率いられ、村の子供達と一緒に川で遊んだ記憶が私の脳内で捏造されていく。

その日は夕方5時頃に私の事務所で"ご対面"してから近所の超ハイクオリティ居酒屋へ場所を移し、結局閉店まで語り合ったと記憶している。

業界の話、カメラの話、構図の話、鉄橋の錆びたボルトが美しいといった狭く深い話、そして故郷の話。

まったくそのとおり! だったり、真逆の意見もあったりする訳だが、対比と調和とでも言うべき充実した時間だった。

私は小河孝浩と、まだ行ったことのない西米良という村が大好きになった。そして、盛り上がりまくりの『道程青年団』結成式は、一気に展覧会企画へと上り詰めたのだった。

「展覧会を開くならまず宮崎でやろう。俺、帰ったらすぐ県立美術館のギャラリー予約するから」。
「えー! 小河さんてばすごい行動力だな」。

でも、ホントにそのとおりになっちゃった。数日後、提出された書類のコピーが送られてきた。

『小河孝浩×齋藤浩 写真展  旅の途中 〜出会いこそ人生の醍醐味〜』。
会期は一年後、2014年の9月3日から7日まで。
つまり今年の9月だ!!!!!

それから私の西米良訪問も含め、何度か打合せがあり(このあたりはいずれきちんと書きたいと思う)、今プレスリリースを作っている。

そもそも、そんなもの作ったことないので、まあ我流でいく。構成としては、ご挨拶、展覧会詳細情報、展示予定作品の紹介、作家紹介、といったところか。いい感じにまとまってきたところで、小河孝浩より注文が入った。

「すまん! 道程青年団というネーミングをあまり前面に出さないでくれ!!うっかり地元のTVやラジオで紹介された場合、音として入った情報があらぬ誤解を招く!!!」。

えー? どうせなら誤解招こうよ〜。そうは思ったが、どうにも心の叫びっぽい。東京とは異なる文化圏、しかも人口1200の村でクリエイターとして暮らすには、首都圏で暮らす我々には計り知れない並々ならぬ苦労があることもよくわかる。

よござんす。受け入れましょう。という訳で、以下のような序文を書いた。

フォトグラファー小河孝浩とデザイナー齋藤浩。目的地の異なる2人が旅先で出会い意気投合、「では途中までご一緒しましょう」といった具合に結成されたフォトグラフィ・ユニット"道程青年団(ザ・ディスタンス)"。

その第一回展覧会を2014年9月3日から宮崎県立美術館にて開催いたします。写真家と図案家の視点の違いを楽しみつつ、少年時代に遊んだ秘密基地に迷い込むような高揚感を、我々とともに味わっていただければ幸いです。

< http://www.miyazaki-archive.jp/bijutsu/box/gallery.html >

ザ・ディスタンス! 乞うご期待! つづく!!

【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
< http://tongpoographics.jp/ >

1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。


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■3Dプリンター奮闘記[38]
デジタル造形とアナログ造形

織田隆治
< http://bn.dgcr.com/archives/20140612140200.html >
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僕がこんな事書くのもおかしな話なんですけど、このデジタル全盛の時代、アナログによる造形が、かなり蔑ろにされている感じがするんですよね。

僕の場合は、昔からアナログで設計、制作をしていた事もあり、学校でも色々と筆と鉛筆で絵を描いていたので、そんなに気にならなかったんですが、最近では、いきなりデジタルで描いたり、造形したりする人が増えています。

まあ、時代と言っちゃえば、そういう時代なんですけどね......。

でも、このアナログでの手作業ってのは、凄く大切な事なんです。そういった基礎があってから、デジタルに移行すると、かなりの認識力が生まれてくる訳です。

フィギュアの原型とかでも、元々アナログでパテと戦っていた人がデジタルに移行すると、造形の基礎なんかが出来ている訳なので、素晴しい造形物が出来上がる可能性が高いです。

空間認識力とでも言う方が良いのかもしれないけど、やっぱりそういう体で覚えた事って忘れないんですよね。

昔クラブでやってたスポーツや、バンドなんかでギターひいてたりすると、暫くやってなくても体が覚えているでしょ?

そういうふうに、カラダに叩き込まれた動きってのは、なかなか忘れないもの。

僕の場合は、昔水泳なんかやってたり、ちょっとの間だけどバンドでギターひいてたりしてたので、かなりやってなかった時期が長かったりしても、少し練習すれば思い出すものです。

それと同じで、手の感覚で覚えた造形や立体認識ってのは、デジタルな場合でも凄く役立つ。

最近、若い人に造形を教える事が増えてきたんですが、もうバリバリのデジタル世代な訳ですよ。僕みたいなオッチャンには想像もつかないくらい(笑)

で、僕の場合は、デジタルとアナログを同時進行でやってもらう事にしています。やっぱり、立体ってのは、アナログでの知識が大事なんですよね。

絵を描くのも、やっぱり始めは紙と鉛筆。これ、最強。

造形も、いきなりPCの前でマウスやタブレットではなく、粘土こねたりする事。これ、最強。

って思ってます。古いのかなぁ...(´・_・`)

「とりあえず、絵、描いてみて?」

と言うと、始めはなかなか描けないみたいなんですが、描き出すと面白くなるみたい。なんでも初めての頃ってのは下手なもんです。

それを繰り返す事で、どんどん知識や経験が上がって行く。そういう地味な繰り返しが、将来のコヤシになるんですよね。

コピペの出来ない世界。それがアナログ。。。

僕自身ですら、アナログで作業している時に、「あ〜。これ、コマンド+Zとかコピペ出来たらいいなぁ...」な〜んて思っちゃう事が多い訳ですが、そこはグッとこらえて地道にやる訳です。

もちろん、デジタルの素晴しい事は分かってますよね。3Dプリンターなんてのを使って仕事している訳ですし。

3Dプリンターにしても、最近は色々な種類のプリンターが出て来ています。今は基本「ニュルニュル式」がコンシューマ機では主流なんですが、今年から来年にかけて、UV(紫外線)硬化タイプのプリンターの特許なんかが切れてくるとの事で、そういった精度の高い3Dプリンターも諸々コンシューマ機が出て来ると予想されてます。

実際、ネット上では、このUV硬化式の3Dプリンターの新しい機種も発表されてくるようになりました。楽しみですねぇ...。

今は、B9クリエイターを使っていますが、今後どんなものが出て来るんでしょう。まだ、素材自体も高価なので、そこを安く作れるようになって初めて、コンシューマ向きのUV硬化式の3Dプリンターが普及する鍵になるんでしょうね。

まだまだ素材自体の扱いが難しかったり、造形物のデータの並べ方なんてのもコツを覚えないといけない、ハードルの高いもの。そこを、どうやってコンシューマ向けに持ってくるかがキモですね。

最近では、大型家電量販店でも、かなりの数の3Dプリンターを置くところが増えて来ました。一般の人の目に触れる機会が増えてはいますが、その性能や特徴を、ちゃんとお客さんに伝える知識と経験を持ち合わせた売り場担当がいるかどうか、まだそこが「どうなの?」だと思います。

そういった人材育成なんかも、これから力いれてやっていかないとですね。付け焼き刃的な知識より、やっぱり経験ですよね。

そうそう。最近B9クリエイターでの造形をする事が増えて来て、僕なりにもようやくコツみたいな物が分かるようになってきました。やはり、頭では分かっているつもりでも、使ってみないと分からない事が多いです。

さて、今日もこれから色々と出力の準備な訳です。UV硬化式、ニュルニュル式、その用途によって使いこなして行かないと......。

【織田隆治】FULL DIMENSIONS STUDIO(フル ディメンションズ スタジオ)
< http://www.f-d-studio.jp >

とうとう梅雨かぁ...。湿気ってあんまり模型製作には良くないんだよなぁ......
また、その辺りは今後書きます。


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■公募案内
ASIAGRAPH 2014年度 CGアートギャラリー公募展示部門 作品募集中

< http://bn.dgcr.com/archives/20140612140100.html >
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ASIAGRAPHでは、優秀なCG作家と作品が国を越えて交流し、新たな創造と産業がアジアから生れ出ることを目指し、作品展示の場として「CGアートギャラリー」を開催して参りました。今年度も、以下六部門の公募展示を行います。
< http://www.asiagraph.jp/invite/index.html >

■ASIAGRAPH 2014年度 CGアートギャラリー公募展示部門 募集要項

第一部門 CGアート作品公募部門「CGアートギャラリー」
     アジア地域で出生、居住もしくは国籍を保有する者・団体。プロ、
     アマ、学生不問。CGが主要な表現手法となっているオリジナルのア
     ート作品。(静止画のみ)

第二部門 動画(アニメーション)作品公募部門「CGアニメーションシアター」
     アジア地域で出生、居住もしくは国籍を保有する者・団体。プロ、
     アマ、学生不問。オリジナルのCGアニメーション作品(ただし、実
     写編集中心の映像作品は対象外)。

第三部門 学生(25歳以下)アニメーション作品公募部門
     日本に在住、もしくは日本国籍を保有する学生及び卒業生で、応募
     時の年齢が25歳以下の者(大学院、大学、専門学校生が主な対象。
     高校生以下も応募可)。オリジナルのCGアニメーション作品(ただ
     し、実写編集中心の映像作品は対象外)

第四部門 こどもCGコンテスト部門 7月21日より作品募集開始予定

特別公募部門◎REALLUSION AWARD 2014
     REALLUSION社の iClone を使って制作した、オリジナルアニメーシ
     ョン作品を募集。各国の予選を勝ち抜いたチームを台湾に招き、ラ
     イブコンテストでグランプリを決定。

特別公募部門◎ウルトラ怪獣デザイン(モデリング)コンテスト
     円谷プロダクション並びに、株式会社DMM.comの協賛で、新たな
     「怪獣」デザインを求め、モデリングコンテストを開催。賞金30万
     円と3Dプリントフィギュアが賞品。

ASIAGRAPH の作品公募部門は、従来のコンペティションとは異なり「アジア独自のCG表現」を積極的に評価します。ただしこれはモチーフやテーマが「アジア的」なものを指しているのではなく、既存のアートや映像産業の評価対象にはならないような表現でも「独創的」で「視覚的な美しさ」を備えているならば積極的に評価する。ということを意味します。

募集期間 2014年5月20日(火)〜7月20日(日)
※特別公募部門につきましては、各募集期間をご確認ください。

課題:自由
応募料:無料
入選:ASIAGRAPH CGアートギャラリーにて、作品が展示・上映されます。

応募方法:それぞれの応募部門ページから、Web上で応募手続きを行っていただきます。その後画面の指示に従い、作品や提出資料のアップロードや送付作業をお願いします。

ASIAGRAPH 2014 in TOKYO
会期:2014年10月23日〜10月26日(予定)
会場:日本科学未来館
< http://www.asiagraph.jp/index.html >


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編集後記(06/12)

●図書館から借りた古い映画DVDを見る。トップに新作情報がないから、すぐ本編に入れるのがいい。なによりも、無料であることがいい。今回は「ナイアガラ」と「荒野の決闘」である。「ナイアガラ」はマリリン・モンローが出ているからセレクト。この女優の出ている映画をいままで見たことがなかったバチアタリだ(10年以上前にWOWOWで見たかもしれないが忘れた)。事前に一切の情報もなしに見るので、劇中で見せる「モンロー・ウォーク」が話題になったと後から知った。セクシーと讃えるべきなのに、妙な歩き方だと思っていたのだから、野暮な男である。モンローを売り出すために製作されたという、悪女もののサスペンス映画だが、物語上では主役とはいえない。

本当の主役は扱いの大きいジーン・ピーターズ(新妻役:すてきな美人)であるが、ナイアガラの滝が主役であるといってもいいくらい、その迫力ある描写がすばらしい。テクニカラーの画面も美しい。滝とくればアレがなくては。期待通りのスリリングなシーンが最後にある。セックス・シンボルとされるモンロー様を拝むために見た映画だったが、期待が大き過ぎたのか、カリスマ性が足りないというか、意外に淡白というか、モンローの魅力全開とは思えなかった。せめて「モンロー・ウォーク」を見直そうと思ったのは、すでにDVDを返却した後であった。

「荒野の決闘」は、ジョン・フォード監督作品の西部劇映画の中でも「駅馬車」と並ぶ傑作だという。この作品はかつて見たような気がした。ワイアット・アープやドク・ホリディ、OK牧場のストーリーを知っていたからだ。でも、見終わったとき記憶に残ったふたつの発見から、これは初見だと確定した。舞台となる町の様子や周囲の荒野がリアルだったのは、モニュメントバレーの荒野に町を建設して、長期ロケに臨んだからだと知った。主演はヘンリー・フォンダ。最初の発見は、彼にまったく生彩がないシーンがあること。ドク・ホリディ出現前の酒場でのポーカー、このときのワイアット・アープの輝きのなさ、存在感のなさ、表情の平凡さはひどいものだった。ポーカーフェイスにしても華がなさすぎで、主役の片鱗もない。それも演出なのか?

二つ目の発見は、馬はこんなに早いのか、こんなに激しく走るのかという驚きのシーンだ。ドクの駆る馬車を、アープが空馬を引いて乗馬で追うシーンの迫力、スピード感といったら半端ではない。これが西部劇か! 感動した。末の弟を殺され、牛の群れを奪われたアープ兄弟が町の保安官になるが、犯人探しをしないのはなぜだ。わたしはとっくにホシを確定している(見ている人はみんなそうだよ)。怒りがないのか。復讐心がないのか。緊張感さえない。これで最後の決戦にうまくつながるのか心配になる。予想通り盛り上がらないOK牧場。美し過ぎるクレメンタインが出てきたから、まあいいでしょう。映画はやっぱり女優ですよ。とくに古い映画においては。(柴田)

< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00EJIRS0O/dgcrcom-22/ >
「ナイアガラ」

< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00I8GR6RI/dgcrcom-22/ >
「荒野の決闘」


●道程青年団 結成おめでとうございます!

利き腕の肘が痛む。曲げ伸ばしの時だけ痛むので、まぁ大丈夫だろうと気にせずにいたら、包丁を引く動作すら痛くなってきて、料理ができなくなった。

卓球のように、上半身ごとひねればいける。これダイエットにいいんじゃ? などと能天気なことを考えはじめたが、痛みはひどくなる一方。

キーボードを打つ時は痛みはほとんどないが、マウスの移動で痛みを感じるようになってヤバイと。月末で急ぎ仕事がいくつか差し込まれていたからだ。ディスプレイの端から端まで3〜4cmで移動できるし、ゆっくり動かしているにもかかわらず痛い。

これ以上痛むとまずい。長引くと仕事が進まない。実は今年に入ってから、手足の指に違和感があって、それの関係ならどうしようかと。(hammer.mule)