クリエイター手抜きプロジェクト[393]番外編 本の執筆2
── 古籏一浩 ──

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前々回は、以下の本(D3.js本)の宣伝用に書いたようなものでした。その続きで、本の執筆に関して書きます。

・データビジュアライゼーションのためのD3.js徹底入門 Webで魅せるグラフ&チャートの作り方
< http://www.amazon.co.jp/dp/4797368861
>

おかげさまで増刷されて、印税でウハウハ! 老後も安心! ということには、なってません。まあ、一般的な書籍が増刷されず終わってしまうわけで、先週6月19日の編集後記にあるような「重版出来(じゅうはんしゅったい)」という言葉を聞くこともなくて当然です。

今回出版した本は、統計的に難しいことが分かっているので紙版は増刷されず、紙版がなくなったら電子書籍でのみ購入できる、というパターンになります。こうなると紙版が一種のプレミアムになるのかもしれません。紙版の一番よいところは、購入しさえすれば手元にずっと残しておけることです。

とりあえず、Kindle版は出ることになったので、宣伝がてら書いておきます。ただ、都合により「Kindle版が出る」ということ以外、アナウンスできません。単に大人の諸事情によるものです。




今のところ電子書籍は、思った以上に紙よりも自由度が低い感じがします。紙からWeb(HTML)になった時は、紙よりも高い自由度を感じたのですが、なぜか書籍の場合は自由度がかなり低いように思います。

さて、今回はD3.js本がどのようにして作成されていったのかについて。本の執筆には「自分で企画を立てて書く」パターンと「出版社から依頼されて書く」パターン、そして両方の折衷パターンがあります。D3.js本は折衷パターンで作成された本です。

自分で企画書を作成して、原稿を出版社に持ち込むというパターンだったのは、実は最初の本だけで、以後はすべて出版社からの依頼パターン、または折衷パターンです。自分の企画で原稿を書いて持ち込む、というのが一番自由度が高く楽なのですが、出版社側から断られることもあります(最初の本は一番先に持ち込んだ出版社では断られています)。

企画持ち込みで原稿もできているならば、執筆者としては校正待ちになります。校正後は出版されるのを待ち、印税が入るのを待つだけです。シンプルで楽なパターンです。

しかし、今回のD3.js本は大変でした。まず、対象となるD3.jsについてよく知らない上に、執筆期間が約一か月しかありません。学習時間は約一か月ほどあったので、実質的には二か月です。

IT/Web関係専門のライターならば、二か月もあれば十分なのかもしれません。しかし、私の場合、日中は他の仕事で車を運転していますから、原稿を書く時間がありません。

以前、赤信号の待ち時間で原稿を書けるかと思い、何度か挑戦したことがあるのですが、かなり難しくてやめました。

昼間の仕事が終えた夜に原稿を書けばよいのでは、と思う人もいるかもしれませんが困った事に夜も仕事で、これもまた車を運転しているわけで、原稿書く時間がありません。

夜といっても深夜なので、夕方から深夜前までは時間があります。ただ、この時間帯は地域の会議などが入ってきたりして、いつでも使える時間ではありません。土日も何かの用事が入っていたり(特に3月でしたから)時間不足になるのは明かでした。

編集者もこちらの事情を知っているので、「少しでも書いたら送ってください」とのこと。結局、ひとつの章よりも細かい節(セクション)ごとに原稿を書いて送るという状態に。

細かく書いた場合、文章の言い回しや用語が不統一になってしまいます。ちゃんと用語を統一して書ける人の方が多いと思うのですが、私は駄目なのでそこらへんは編集側で処理してもらうことにしました。

細切れで原稿を送ること一か月。締め切り10日ほど前に編集部から電話がかかってきました(笑)「期限までに大丈夫ですか?」。この場合は当然「大丈夫です、もちろん」と答えるしかありません。締め切りに追われる漫画家と似たようなものです。

このような事が繰り返されるうちに、文章よりも言い訳の方が上手になります。ちなみに、企画が通ってもいつの間にか話自体が消滅してしまうこともあります。過去には二〜三冊はありました。タイミングを外してしまったり、他社から競合書がたくさん出てしまった場合は、企画自体がなくなってしまいます。書きたくない場合は、言い訳をしているうちに企画を流すことができます(?)

D3.js本は何とか締め切りまでに間に合いましたが、途中にゴールデンウィークがあったために、さらにスケジュールが過酷なものになりました。年末進行も大変ですが、ゴールデンウィークの進行も大変です。おかげで編集者は、ほぼ休めない状態に。

編集者「ゴールデンウィークをまたいでやるもんじゃないですね......」
  私「そうですね......」

無事に出版できたのでよかったのですが、あまり急いで作るのは編集者も執筆者も大変です。どうして、こうなったのかと言えば、D3.jsに関する本が多数出版されることが判明したからです。このチャンスを逃してはならぬ、という出版社の意向があるわけです。タイミングを逃すと、売れる本も売れなくなります。

そして、今回はもうひとつ、編集者が途中で交代するというオチがありました。3月は異動の時期ということで、編集者が違う部署に行ってしまい途中から別の編集者に交代しました。

途中で編集者が交代すると、あまりよい結果になりません。本のテイストが変わってしまったり、趣向が変わってしまったりすることがあるためです(私が書いた本ではありませんが、当初の企画とは全然別の本になってしまったのもあります)。幸いにして今回は、うまく引き継ぎが行われたので、大きなトラブルもなく進行することができました。

いつもは原稿をテキストエディタで書いて、PDFで校正という流れなのですが、今回は「テキスト原稿」>「ワードで校正」>「PDFで校正」という流れでした。ワードを使うのは、最初の段階で文章の校正を行う場合に便利だからです。というのは、ワードには誰がどのように文章を変更したのかを記録できる機能があるからです。一般的なテキストエディタではできない芸当です。

レイアウトした後は、PDFで校正するのが便利です。ちなみに今までワードを使って校正したのは、SoftBankとMdN/インプレスだけです。

SoftBankは今回初めてワードで処理したくらいで、あまりワードで処理することはありません。まあ、プレーンテキストならどの出版社でも99%問題ありません。残りの1%は、場合によっては特定の文字が違う文字になってしまうことがあるためです。

異体字が問題になることがありますが、プログラムの場合 \(半角バックスラッシュ)が ¥(半角円記号)になってしまうことがあります。文字コードが同じなので書体によって変わってしまうことがあり、さらにテキストファイルのエンコード(Shift JISかUTF-8か)によっても変わります。

UTF-8にしておけば基本的に大丈夫です。基本的にと書いたのは、電子書籍になる場合は問題になることがあるからです。特にKindleでは、これらの文字がトラブルになることがあります(このせいで遅れた本がありました)。テキストファイルの文字コードは注意した方がよいでしょう。

ということで、長くなったので今回はここまで。


【古籏一浩】openspc@alpha.ocn.ne.jp
< http://www.openspc2.org/
>

OS X Yosemite(ver 10.10 pr2)をインストールしてみました。アイコンがフラットで可愛い感じに。でも実際に使うメインマシンはSnow Leopard(10.6)のOSが入ったものです。Illustratorなどの関係で古いアプリを動かす必要があるためです。

いっそのこと、クラウド側にOS持ってもらって、こっちはリモート操作するだけにしてもらった方が楽でいいような気がします。この原稿もOS X Yosemiteから、Snow Leopardのマシンをリモート接続して書いてます。

さすがに、遠隔地にあるサーバーをリモートで接続し原稿を書くのは、ちょっと辛いのですがローカルエリアなら、あまり速度は気になりません。

OS X Yosemiteまだ、ちょっと最適化されていないのか、Safariとか遅い気がします。

Illustrator CCの次のバージョンはIllustrator CC 2014......。う〜ん、西暦年数を付ける事になったんでしょうか。ずっとCCかと思ってましたが、まあこれでバージョン区別するなら、それはそれで助かります。

・D3.js例文辞典
< http://www.openspc2.org/reibun/D3.js/
>

・Chromecast (クロムキャスト) 使い方辞典
http://www.openspc2.org/reibun/Chromecast/


・Swift例文辞典
< http://www.openspc2.org/reibun/Swift/1.0/
>

・データビジュアライゼーションのためのD3.js徹底入門
< http://www.amazon.co.jp/dp/4797368861
>

・ExtendScript Toolkit(ESTK)基本編
< http://www.amazon.co.jp/dp/B00JUBQKKY/
>

・4K/ハイビジョン映像素材集
< http://www.openspc2.org/HDTV/
>

・JavaScript逆引きハンドブック
< http://www.amazon.co.jp/dp/4863541082
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・Adobe JavaScriptリファレンス
< http://www.amazon.co.jp/dp/4844395955
>

・Nexus 7(アンドロイドタブレット)使い方辞典
< http://www.openspc2.org/reibun/Android/Nexus7/
>

・クリエイター手抜きプロジェクト
< http://www.openspc2.org/projectX/
>

・本の訂正ページ
< http://www.openspc2.org/book/error/
>

・Adobe Illustrator CS3 + JavaScript 自動化サンプル集
< https://www.ddc.co.jp/estore/cgi/item/start.cgi?m=DetailViewer&record_id=243
>
吉田印刷所の「印刷の泉」でも購入できるようになりました。