スキルを維持する困難さ
── 福間晴耕 ──

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長年CGデザイナーの仕事をしてきたが、最近3DCGソフトのスキルを維持するのが困難になってきている。多くの道具やソフトに依存する仕事同様に、3DCGもソフトやパソコンがなければ話にならないのだが、ソフトを維持するのが金銭的に辛くなって来ているのだ。

この業界の定番ソフトといえば、AutoDesk社から出ているMAYAとMAXが筆頭だが、どちらも50万から100万円近くするソフトで、とても個人では手が出ない。

それでも、これまでは何とか金額を捻出して手元に置いてあったのだが、コンピュータ側のOSのバージョンが上がると動かなくなってしまうのだ。もちろん、アップグレード料を払ってバージョンアップすればいいのだが、バージョンアップ代ですら20〜30万もするのでそう簡単には払えない。



設備投資といえば、カメラマンなどもかなり掛かる。とはいえ、少なくともカメラは放っておいても使えなくなることは、故障でもしない限りないが、ソフトの場合はそうはいかない。

パソコンやOSも古いものを使い続けるなら使い得ないことはないのだが、数年単位で新しい技術が出てくる上に、放っておくとコンピュータウィルスの危険まで増えていくコンピュータ業界において、古いソフトやハードを使い続けるというのは事実上不可能といってもいいだろう。

それでも、企業所属のデザイナーや、作風が売りの個人作家ならまだ何とか出来る道がある。サラリーマンなら会社でソフトやハードを買ってくれるし、作家なら「何で作ったか」ではなく「何を作ったか」が売りになるからだ。

しかし悲しいかな、自分のようなフリーランスで、企業と契約してプロジェクトを受ける仕事(しかもゲーム系)では、クライアントが使っているソフトを熟知していることが必須条件になってくる。

しかも、3DCGソフトはバージョンが上がる毎に見た目や使い方まで激変するので、常にキャッチアップしなくてはいけないのだ。

幸か不幸か、今の仕事では映像制作ソフトのAfterEffectsや、2Dのphotoshop、Illustratorが中心なのでこちらは何とか維持しているが、これもエフェクトや映画などの高画質映像を作っていないから言えることで、実はAfterEffects本体はともかく特殊効果用の別売のプラグインソフトを買っていくと、とんでもない金額がかかるのだ。

しかも、これも協力会社やクライアントがこうしたプラグインを使っていたら、共同制作をしている限り買わざる負えないから大変だ。

そして、DTPならDTPでこんどはフォントの問題が発生する。昔、泣く泣くモリサワのフォントセットを買ったデザイナーは多いのではないだろうか。

最近では、AdobeのCCモデルなど、高価なソフトを一括で買うのではなく月極のライセンス料を払うかわりに、決められた台数のマシンで自由にソフトが使えるという新しい方法が現れた。

これはこれで、毎月お金を払い続けなければならなかったり、お金が切れたらライセンスを失ってしまうという別の問題があって、本当にデザイナーに優しい仕組みなのか判らないが、少なくとも一つの解決案ではあるだろう。

ただ問題は、3Dソフトではまだこうした方法をとってるものはなく、Adobeのソフトであってもプラグインの問題は解決しない。

ネットでこの話題になった時、多くのデザイナーが同じ悩みを抱えているのを知ったが、残念ながら上手い解決方法は見つかってないようだ。

そんな訳で、正直なところ、3DCGを何とか維持するか、それとも切り捨てるか、いま微妙な段階になっている。


【福間晴耕/デザイナー】
フリーランスのCG及びテクニカルライター/フォトグラファー/Webデザイナー
< http://fukuma.way-nifty.com/
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HOBBY:Computerによるアニメーションと絵描き、写真(主にモノクローム)を撮ることと見ること(あと暗室作業も好きです)、おいしい酒(主に日本酒)を飲みおいしい食事をすること。もう仕事ではなくなったのでインテリアを見たりするのも好きかもしれない。