もじもじトーク[01]デジタルフォントが豊富に手に入る時代/関口浩之

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こんにちは、はじめまして。関口といいます。フォントや活字にまつわる記事や小ばなしを投稿させていただきます。よろしくお願いいたします。

わたくし、現在、フォントの仕事に携わっています。日本語Webフォントサービス「FONTPLUS」を立ち上げて苦節3年。表示が遅いとか、文字詰めできないなどの問題を、いろいろと改良しつづけ、今年やっと市民権を得られつつある状況になりました。

毎週、全国各地でWeb関連のセミナーやイベントで、日本語Webフォントのエバンジェリング活動してますので(地方巡業ってやつですね)、どこかでお会いしているかもしれませんね。

趣味といえば、ベランダで天体観測したり、家電やオーディオをいじくったりするのが大好きです。小中学校の頃、真空管やトランジスターを集めたり、天体写真を自分で現像したり紙焼きしたり(モノクロ写真です)、ややマニアックな一面もあります。

社会人なり、日本語DTPシステムやプリンタ・プロッタの仕事に10年間従事した後、インターネット検索サイトやプロバイダーの立ち上げに携わり、それからはインターネット関連の仕事一筋20年間です。

小さい頃からポスターや看板を見るのが好きでした。また、ガリ版で学校新聞を作ったり、彫刻刀で木版画やサツマイモ版画を作成したり、タイプライターや手書きレタリングで、カセットテープのインデックスを作成することもお気に入りでしたね。

いつも電車内の広告、コンビニやファストフードPOPやポスター、街中の看板などを観察していますが、けっこう楽しいんですよね。職業病なのかなと思ったけれど、小さい頃から文字とかデザインが単に好きなだけのようです。

デジクリ初デビューなので、勝手に自己紹介させていただきました。




●文字の情報伝達力

人間は言葉と文字で情報を伝えることができる稀有な生き物です。人間は自分の感情を誰かに伝えたいとき、教えてもらったことや自分で発見したことを他人に伝えたいとき、言葉か文字を活用してコミュニケーションします。言葉は音声なので、抑揚や音量、音質などで感情や情報の重みの違いが伝わりやすいですね。

一方、文字の場合はどうでしょうか? 紙媒体やディスプレイ越しに視覚で情報伝達するわけですが、感情や情報の重みを書体、つまり、字形で表現していると思います。

テレビのテロップを観察してみましょう。ニュース番組は正確性や公平性を重視しているので、あまり感情が表にでない読みやすいゴシック体や明朝体が使用されています。一方、バラエティ番組などはどうでしょうか?

いろんな書体(=字形)が使用されていますよね。例えば、怪談話ではおどろおどろした文字、女子力をアピールするときはかわいらしい文字、愛嬌のある動物には...、ポップで個性的な...、などなど。

実際に、"コミックミステリ"、"マティスえれがんと"、"くろかね"、"ラグランパンチ"で検索してみてください。書体が変わると、伝わるニュとアンスが変化する思います。例えば、"コミックミステリ"という書体で「女子力を向上しましょう!」とテロップを流したら、大変なことが起きそうですw

僕の好きな書体のひとつに"丸明オールド"という書体があります。ゴシック体には丸ゴシックがあるのに、明朝体には丸明朝ってあまり耳にしないですよね。この書体、トメやハライ、ハネも丸っぽいんです。えっ〜、明朝体が丸っぽいってどういうこと?

でもね、どこかで必ず目にしたことのある書体です。有名企業のキャッチコピー、広告、製品ロゴなどで広く利用されています。

よくよく考えてみると、DTP時代以前の広告やポスターって、手書き職人がキャッチコピーや映画のタイトルとかを書いていたんですよね。職人が、商品イメージやコンテンツに見合った書体を手で描く、まさに手の動かし方で情報伝達の量や質が決まるということです。すごい!

昔の看板は、写真と商品名とキャッチコピーだったりするので、書体がデザインに占める割合って非常に高いんです。

日本語は漢字が何万文字もあって、さらに、ひらがな、カタカナがあり、アルファベットも駆使する、ある意味、情報伝達をする上で、恵まれた環境で育っていると言えますね!

●デジタルフォント化によって広がる表現力

活版印刷や写植で本を印刷していた時代、デザイン書体はあまり使用されていなかったと思います。なぜならば、活版印刷の場合、文字の大きや書体毎に鋳造活字を用意しなければなりません。写真植字においても、写植文字盤を書体の種類だけ揃える必要がありました。

MacとDPTソフトの普及に伴い、1990年代からデジタルフォントが徐々に普及しはじめ、今では、デジタルフォントの書体バリエーションはすごく豊富になりましたね。

商用デザインとしてフォントを使用する場合、年間ライセンス型や買切型のフォントを使用することが多いと思いますが、個人利用ではフリーフォントや、年賀状ソフト等におまけでついてくるフォントなども利用できます。そもそも、OSにも初めからいろんなフォントが入ってますね。

ところで、自分のパソコンにインストールされているフォントって、どんな書体が入っているでしょうか?

欧文書体がやたらに多いので、どれが日本語フォントなのか、まずは頭の整理が必要なのかもしれませんね。おまけに、MacとWindowsでは収録されているフォントは違います。デジタルフォントが豊富に手に入る時代になったので、書体選択が重要になりますね。

プレゼンテーション資料も、デフォルト設定のシステムフォントだけでなく、いろいろな書体を試すといいと思います。これを使うといいですよという万能な書体はなかないので、実際にいろいろと書体変更して試してみて下さい。また、センスの良いプレゼンテーション資料には書体選択のヒントがたくさん隠れていますので、SlideShareなどで観察すると参考になると思います。

フォントって、デザイナーや文字オタクの世界ではよく話題になりますが、実はもっと身近な存在で、コミュニケーションを円滑に行うための、みんなの重要なアートだと思います。まずは、テレビのテロップや街中のポスターなどを、じっくり観察すると新しい発見があるかもしれませんね。

そして、パソコンの中に入っているフォント一覧を確認してみたり、販売されている有料フォントやフリーフォントの文字見本帖なども、一度、じっくり観察すると、ビジネスシーンで使用するための書体の引き出しの幅が広がるのではないでしょうか。

【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com

Webフォント エバンジェリスト
< http://fontplus.jp/ >

1960年生まれ。群馬県桐生市出身。電子機器メーカーにて日本語DTPシステムやプリンタ、プロッタの仕事に10年間従事した後、1995年にインターネット関連企業へ転じる。
1996年、大手インターネット検索サービスの立ち上げプロジェクトのコンテンツプロデューサを担当。

その後、ECサイトのシステム構築やコンサルタント、インターネット決済事業の立ち上げプロジェクトなどに従事。
現在は、日本語Webフォントサービス「FONTPLUS(フォントプラス)」の普及のため、日本全国を飛び回っている。

小さい頃から電子機器やオーディオの組み立て(真空管やトランジスタの時代から)や天体観測などが大好き。パソコンは漢字トークやMS-DOS、パソコン通信の時代から勤しむ。家電オタク。テニスフリーク。