装飾山イバラ道[139]ヒーローとお姫様の婚活事情
── 武田瑛夢 ──

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今久しぶりに映画のハリー・ポッターシリーズを見直しているところだ。ハリー・ポッターシリーズはたぶん映画館でほとんど見ているのだけれど、本を読んでいないせいか、ストーリーはかなり忘れてしまっていた。

第一作目の「賢者の石」を見たら、魔法学校の世界のことはだいたい蘇って来た。この映画はなにしろハリー・ポッター役のダニエル・ラドクリフ君の可愛さが絶頂なので、見ていてとても楽しい。

赤い髪のロンと髪の毛爆発のハーマイオニーの三人の取り合わせは、奇跡のようなキャラクターのぶつかりあいで、今見てもほんとに素晴らしい。このあとは「秘密の部屋」と「炎のゴブレット」を見る予定。

魔法ものというと、私の世代だと「魔法使いサリー」や「魔女っこメグちゃん」「ひみつのアッコちゃん」などが王道。女の子は皆魔法を使える特別な子というのに憧れて、いろいろとマネをして遊んでいた。あとはやっぱりお姫様。お姫様の絵の練習こそが、私の絵の鍛錬の始まりだと思う。

男の子は「ウルトラマン」や「仮面ライダー」など、ヒーロー物のマネで遊んでいたのが定番。ベルトをつけて変身ポーズを決めて、強くなったつもりの男の子のそばに寄ると蹴られかねないので怖かった。変身した後のヤツらはたちが悪い。

私が最初に買ったレコードが「キューティー・ハニー」と「レインボー・マン」なので、女の子用と男の子用のどちらの番組も見ていたと思う。だから男の子の世界がまるまる理解できない訳ではない。「キャシャーン」も大好きだし。でもやっぱり今の歳になっても、ファンタジーの好みの男女差については考えてしまうことがある。




●積極的なお姫様

「アナと雪の女王」は大ヒットしたけれど、私が思うに映画もカラオケも多くのリピーターによってカウントが回っていたんだと思う。ミュージカル映画って何度でも聞きたくなる映画なので、音響の整った映画館で映像と共に楽しむチャンスは絶大なものなのだ。

ディズニーのファンタジーはやはり女の子用の話が多いので、男性に良さを伝えるのが難しいと感じることも多い。

魔法を使える雪の女王のエルサが自分を「ありのまま」に解放するのが素敵な話なのだけれど、私は妹役のアナの気持ちの方に心惹かれてしまう。実際に私が妹だからなのかもしれない。

アナの「生まれてはじめて」の曲にあるようにカッチカチの家を出て、すべてを変えたいと思うような気持ちは、女性にはきっと共感できるのだと思う。これは婚活の歌だと言ってもいいかもしれない。

自分を変えるのには誰かとの出会いが必要で、その誰かに出会うにはまず大勢の人に出会わなければ始まらないのがわかっている、アナの気持ちが溢れている歌だ。

もしかすると、カッチカチの家の男性の心にも訴えることがあるかもしれないので、男女とはっきり線を引くのも違うのかも。なにか特別なことをしようとしているわけではなくて、「出会う」ってことにこれだけ意欲的な歌は珍しいのだ。

●お姫様とヒーローは縁遠い

ディズニーのお姫様映画は「美女と野獣」「眠れる森の美女」「白雪姫」「人魚姫(リトル・マーメイド)」など数多くあって、そのどれもが王子様が出て来る婚活映画でもある。そして、妬み嫉みからくる意地悪や、呪いを跳ね返してくれるのが頼もしい王子様だった。

ただ、お姫様映画に出て来る王子様はここぞとばかり活躍はするけれど、メインが姫であることには間違いがなく、姫がいかに幸せになるかがテーマなのだ。王子と結ばれなきゃお姫様映画でもなくなってしまうし。

だから王子様ももちろんヒーローなのだけれど、男の子はここで出て来る王子様には決して憧れてない気がする。縁日でも王子様のお面は売っていなくて、男の子には仮面ライダーのお面が売れていた。

たぶんその頃の男の子は女に興味がなくて(笑)、助ける対象よりも強い自分が好きだからかもしれない。男の子受けするヒーローは、みんなを救ってサッと去るのがカッコいいのだ。

子供時代に見ていたファンタジーは男女どちらも、「自分中心の夢」であるということがわかっちゃった気がする。だからヒーローが救いたいのは姫ではないし、姫はヒーローとは結ばれない。

ハリウッド映画ではヒロインとヒーローがちゃんと結ばれるものも多いけれど、リア充すぎてアホくさい気持ちになる人も多いんじゃないだろうか(笑)。

スパイダーマンは幸せになりそうな数少ないヒーローの一人だけれど、スパイダーマンの彼女は心配事が多そうでやっぱり憧れない。カップル共々人形が売れてるヒーロー&ヒロインが思い当たらないのはしょうがないものなのかもしれない。

【武田瑛夢/たけだえいむ】eimu@eimu.com
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最近ハリー・ポッターの原作者が、ハーマイオニーはロンではなくてハリーと結婚すべきだったと打ち明けているというニュースが出たけれど、もしそうなっていたら面白かったし、一作目の出会いのシーンの見方も全然変わるような気がする。

何年経ってもいろいろな可能性が語られることは、キャラクターたちが人の心に生きているからだ。物語を作る人が持っている責任は大きいものだけれど、価値ある責任だと思う。