3Dプリンター奮闘記[43]久しぶりにハードなFRP作業……
── 織田隆治 ──

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ここのところ、大きめなものはずっと3Dプリンターで造形していたのですけど、高さ1200mmほどの人の造形をすることになり、こんなの3Dプリンターでやってたら、予算も時間も合わないなぁ……ってことで久しぶりにFRP作業でやってみました。
FRPというのは繊維強化プラスチックのことでで、Fiber Reinforced Plasticsの頭文字を取ったものです。これは、一般的なものでいうと、遊園地の乗り物や、ヘルメット、一部バイクのカウリングやレースカー等のボディに使われています。それから、ビル屋上の防水対策にも使われたりしますね。


プラスチックだけだと重量は軽くなるんですが、強度や弾性が弱く、その補助として、ガラス繊維等で作られた織物や不織布等を混ぜ込んで強度を増して使います。プラスチック樹脂をその繊維に染み込ませることで、かなり強いボディを作れるわけです。

繊維は、ガラス繊維、ケプラー、炭素繊維など色々なものがあります。まあ、普通にはガラス繊維を使うんですけどね。最近では、ボーイング878の翼部分に、日本の開発した炭素繊維が織り込まれた炭素繊維複合材料が使われていたと思います。そういう用途に使われるほど、強度が高くなる訳です。

一般的に使われるFRPというのは、だいたいがポリエステル樹脂です。これがかなり臭い!

プラモデルを作る方にはおなじみのポリパテは、この「ポリエステル樹脂」に「タルク(滑石)」という水酸化マグネシウムとケイ酸塩石の粉を混ぜて作られています。

一般的には「ロウ石」と呼ばれる、おっさんには懐かしいもの……。道路に落書きしたあの石です。そういえば、あの「ロウ石」って、どこから入手してたのかしらん…? かなり使った記憶があるのに、どこから入手していたのか覚えてないです。

昔はオオラカだったので、よく地面に色々と落書きしたもんです。今やったら怒られますよね。しみじみ。あ、いかん。話を「昭和のオッサンの回顧録」から話を戻して……。

このポリパテって臭いですよねぇ。その樹脂をかなりの量使うわけで、そりゃもう凄いことになるんです。その上、この「ガラス繊維」ってのがなかなかの曲者で、極細のガラスの繊維で出来ているんですが、それを素手で触るとチクチク刺さる訳です。

これが絶対に体に良くない気がしますよねぇ。チクチクカイカイになります。このガラス繊維を触る際は、ゴム手袋は必須ですね。樹脂も手にベタベタ着くし。一般家庭でこんなことやったら、奥さんを凄く怒らせること必至です。

ま、説明はこんな感じで、興味のある方はググってやってくださいね。今回は、発泡スチロールの塊を、ナイフやカッター等で彫刻していきます。細かいところは、荒いサンドペーパーなどで整えます。

でもね、これがまた凄い……。発泡スチロールってのは、ご承知の通り、静電気でどこにでも着くし、凄いことになります。案の定、僕は雪山で遭難したみたいになりました(笑)後の掃除が大変。そうやって苦悩しながら、原型となる形状を削り出していきます。

FRPの造形には、この発泡スチロールの原型の上に、直接樹脂を塗り込んで行く方法と、粘土等で作った原型の型を取り、その型に内側から樹脂を塗り付けていく方法があります。今回は型を作る予算もなかったので、出来上がった発泡スチロールの上から、樹脂を塗り付けて行く方法。

ですが、この樹脂ってのが揮発性のあるシンナーみたいなもので、スチロールを溶かすわけです。で、この発泡スチロールを溶かさない樹脂ってのもありまして、それを使います。

当然、原型の上から樹脂を塗っていくので、モールドは甘くなり、繊維の凹凸などが出るので、後加工が大変なんですよね。

なんとか納品したわけですが、これを3Dプリンターでやると凄く工程が楽になります。始めに、3Dモデリングが必要なんですけど、実際のモデリングは3Dプリンターがやってくれるわけで、その間は別の作業が出来るんですよ、奥さん。

今のところ、今回のような500mm×500mm×1200mmくらいのものを出力出来るプリンターってのは、なかなかないし、素材自体もかなり高価なので、まだまだこういった分野では、FRPの手作業というのは必要のです。

こういったブツに対応するプリンターも出て来て、素材自体ももっと安くなると良いですね〜。そんなプリンターが出たら欲しい!!

【織田隆治】FULL DIMENSIONS STUDIO(フル ディメンションズ スタジオ)
< http://www.f-d-studio.jp
>

最近仕事量が激増しております。
嬉しいやら大変すぎるやら……。