[3756] パルス波のような瞬間的流行と沈静……氷水のにわか雨

投稿:  著者:  読了時間:27分(本文:約13,300文字)


《映画俳優、はじめました。ってわけじゃないけど。》

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パルス波のような瞬間的流行と沈静……氷水のにわか雨

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まるで真夏の夕立のようだった。突然やってきて、激烈な降水をもたらし、またたく間に去っていった。そして、そんな豪雨はもともとなかったかのごとく、後に残る静けさ。この話題をほじくり返すのは、もはや歴史学者の仕事なのかもしれない。

アイス・バケツ・チャレンジ。私のところにもお鉢、というかバケツが回ってきた。拝受して、氷水をかぶるにはかぶった。しかし、そのタイミングはまさに嵐の去り際、話題が急速に沈静化していく潮目の変わり時だった。

YouTubeに上げた動画は、再生回数、わずか175回。まるで、誰もいない森で倒れた樹の発した音のごとく、存在自体がこころもとない。
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●難病治療支援祭り

アイス・バケツ・チャレンジ(Ice Bucket Challenge)は、難病のひとつである筋萎縮性側索硬化症(ALS)の研究を支援するため、バケツに入った氷水を頭からかぶるか、またはアメリカALS協会に寄付をする運動である。

下記のルールのもとに行われる。

(1)指名された人物は、チャレンジを受ける場合、氷水をかぶる、または100ドルをALS協会に寄付する、あるいはその両方を行うのいずれかを24時間以内に選択する

(2)氷水をかぶる場合、バケツに入った氷水を頭からかぶり、この様子を動画撮影し、FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアで公開する

(3)次にこのチャレンジを受けてもらいたい人物を2〜3人程度指名する

ただし、氷水かぶりや寄付は強制ではなく、日本ALS協会も公式サイトや報道を通じて「無理はしないように」と要請している。

米ALS協会は7月29日(火)からの3週間で1,330万ドルの寄付金を集めた。前年同時期の同協会への寄付額は32,000ドルだった。日本ALS協会には8月18日(月)から31日(日)までの2週間で、2,747万円の募金を集めた。前年1年間では、約400万円だった。

慈善運動のための資金調達の方法として氷水をかぶるという運動は以前より行われており、起源については諸説あり、はっきりしていない。

ALSに特化する運動として始まったのは、今年の7月のことである。7月15日(火)、ゴルファーのChris Kennedy氏が友人の指名を受けて氷水をかぶり、米ALS協会を寄付先に選び、ALS患者を夫にもつ彼の従姉妹を次に氷水をかぶる人物として指名した。
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親戚にALS患者がいたことで、認知度を上げて支援を呼びかけたいというクリスの思いに仲間たちが共感して次々に実行し、運動が広まっていった。

8月になって、政界や財界やスポーツ界や芸能界の大物たちが指名を受けて続々と氷水をかぶってみせたことで、一気に話題が高まった。テレビでの取り上げ方は、海外でも日本でも、お祭り騒ぎの様相を呈していた。

まず、各界のセレブたちが氷水をかぶる様子を映し出し、番組の中でも、集まった大勢の人々がいっせいに氷水をかぶるといった調子。みんな大はしゃぎだ。

8月18日(月)の時点で、Facebookでの投稿やコメントなどを通してキャンペーンに参加した人は2,800万人以上、シェアされたビデオは240万本に達する。この数字をみると、海外では、有名人だけでなく、一般人の間でも氷水チャレンジの輪が広がっていたとみてとれる。

ところが日本では、チャレンジの指名を受けた武井壮氏がこれを拒否し、8月23日(土)、自身のツイッターで理由を「ALSは確かに大変な難病だけど公費対象になっている事、他にも難病だけれども対象にならず苦労している方がいらっしゃる事、多くの国で生活に利用できる衛生的な水が手に入らない方々がいる事、以前から寄付行為は勧誘やキャンペーンで行わないと決めていた事など」と述べ、多くの人々から賞賛を浴びて、ムードが変わった。

それまでのお祭り騒ぎが嘘のように引き潮になり、運動への批判的な見方がネットでは支配的になり、一気に熱が冷めていった。

下記のリストは、各界の著名人が氷水をかぶる動画がYouTubeに上がった日付と、8月30日(土)の時点での再生回数を示している。ただし、もともとは本人が別のメディアに上げた動画を第三者がYouTubeに上げなおしたものもあるようで、再生回数の数字はあんまり当てにならないかもしれない。また、リストは私が作成したもので、人物選択は網羅的ではなく、かなり適当です。

 動画アップ日   再生回数

2014年7月15日(火)   65,135 Chris Kennedy (ゴルファー)

2014年8月12日(火) 8,188,280 Paul Bissonnette (アイスホッケー選手)

2014年8月13日(水) 1,952,260 Mark Zuckerberg (「Facebook」開設者)

2014年8月15日(金) 18,565,887 Bill Gates

2014年8月16日(土) 2,078,857 Steven Spielberg

2014年8月17日(日)  132,343 山中伸弥(医学者)
2014年8月17日(日)   54,034 ネイマール

2014年8月18日(月)  267,444 Lady Gaga
2014年8月18日(月)   45,189 堀江貴文

2014年8月19日(火) 2,245,646 Tom Cruise and Chris McQuarrie
2014年8月19日(火)  116,093 孫正義

2014年8月20日(水) 4,962,806 Kermit the Frog
2014年8月20日(水) 3,900,100 George W. Bush
2014年8月20日(水)  867,655 秋元康&渡辺麻友
2014年8月20日(水)  271,058 浜崎あゆみ
2014年8月20日(水)  158,189 John Travolta
2014年8月20日(水)  103,551 笑福亭鶴瓶
2014年8月20日(水)   11,413 はあちゅう
2014年8月20日(水)   6,874 三木谷浩史 (楽天社長)

2014年8月21日(木) 3,615,439 Barack Obama
2014年8月21日(木)  188,371 綾小路翔(氣志團)
2014年8月21日(木)   40,143 郷ひろみ
2014年8月21日(木)   31,523 田中将大(第三者による再投稿動画らしい)
2014年8月21日(木)   24,575 亀山千広(フジテレビ社長)

2014年8月22日(金)  176,520 くまモン
2014年8月22日(金)   82,450 仙石みなみ(アップアップガールズ(仮))
2014年8月22日(金)   61,320 森進一
2014年8月22日(金)   52,683 ももクロ
2014年8月22日(金)   35,874 ラモス瑠偉
2014年8月22日(金)   27,354 三浦知良
2014年8月22日(金)   5,650 堀義貴(ホリプロ社長)

2014年8月23日(土)   47,194 羽生結弦
2014年8月23日(土)   10,329 高須克弥(高須クリニック)

2014年8月25日(月)   46,675 栗原類
2014年8月25日(月)    165 セーラー服おじさんとたわしおじさん

2014年8月27日(水)    125 浅田真央

●違和感やら、違和感への違和感やら

この運動については、SNSやネット上の掲示板などでさまざまな意見が飛び交っているだけでなく、ネット上のニュースやコラムで有識者たちが思うところを述べている。

ダイヤモンド・オンラインは、2014年8月25日(月)掲載の記事『ネット上では賛否両論まで飛び出す「ALS アイスバケツチャレンジ」の伝播力』において、チャリティの意義は認めつつも、多くの人が言葉では言い表しがたい「違和感」があるのはなぜだろうか、と疑問を呈している。
< http://diamond.jp/articles/-/58061/ >

「売名行為の臭いを感じる」といったありきたりの批判ではなく、難病の治療方法の研究開発の本質的な困難性に焦点を当てている。それは、患者数が少ないために、新薬や治療法の開発が市場原理に乗りにくい点にあると指摘する。

ALSの場合は、世界で約12万人、日本には9000人弱の患者がいるとみられる。新薬の開発には100億円から1000億円かかると言われる中で、製薬メーカーにすれば、患者数の少ない(市場場規模の小さい)分野に、多くの資金や開発者を投入することは難しいという。

寄付金も多少の助けになるには違いないが、それだけではまかないきれず、持続的な関心と本質的な解決に向けた長期的な取り組みが必要な社会課題である。だれが氷水をかぶったのかぶらなかったので大騒ぎして、議論が広がりと深まりを欠くのは、報道メディアの姿勢にも問題があるという。

小田嶋隆氏は、「日経ビジネス ONLINE」の連載コラム『小田嶋 隆のア・ピース・オブ・警句』の8月29日(金)掲載回「バケツリレーの違和感」において、観客の目を意識して振舞うセレブたちのウケを狙った衒いの態度が見えてしまい、居心地の悪さを感じると述べている。
< http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20140828/270519/ >

あれは、セレブ限定のお祭りであって、一般ピープルは見物席に座らされ、置いていかれた感覚をもっているという。祭りに参加できる特権者たちの「選ばれし者の恍惚と不安と二つ我にあり」とでも言いたげな、みごとにいけ好かない自我狂ぶりに、いやみったらしさを感じ取っている。

違和感、違和感と言われる中で、その違和感に違和感を呈する記事が出た。8月28日(木)、LITERAに『アイスバケツ、有名人に広がる“違和感表明”ブームに感じる違和感』と題する記事が掲載された。
< http://lite-ra.com/2014/08/post-410.html >

難病支援とは関係なく、ただ世界的なイベントにはしゃいでいるだけにみえるセレブたちの姿に、皮肉のひとつも言いたくなる気持ちは分かるという。また、多くの人が「善」としていることに対して最初に異を唱えた武井氏の勇気は認めるという。

しかしながら、難病に苦しむ人たちに救いの手を差し伸べたいという思いやりの動機からではなく、単なるお祭り騒ぎとして参加するセレブたちの偽善性をあげつらって、運動の意義を根底から否定しようとするのはいかがなものかという。一過性でも、自己満足でも、売名行為でもいいじゃないかと唱える。

「三日坊主のススメ」。何もしないよりは、その瞬間だけでもやってみるほうが、ずっといいはずだ。

「自己満足のススメ」。「ボランティア=自己犠牲」と考えていると、他人のためにやってあげているのに感謝されないというストレスが溜まり、「自分はがんばっている」と主張すれば、まわりは引いていくばかりだ。逆に、「ボランティア=自己満足」と捉えれば、生き生きとやりがいを感じられ、人が集まってくる。アイスバケツも、ゲーム性があって楽しそうだったからこそ、ここまで爆発的に広まったのだ。

「売名行為のススメ」。とかく日本では、ボランティアやチャリティを“名前を明かさず”行うことが美談として語られがちだ。だが、仮に「売名行為」だったとしても、活動の意志や目的が力をもっていれば、そんな「私欲」は飲み込まれて消えてしまい、結局は活動の精神だけが残る。売名行為でもいい、“自分を使って”伝えている、と考えればいい。

“いいこと”なら、ブームに躍っても大いに結構と説く。ただ、一度冷や水をかけられたお祭りムードが再燃しそうな気配は生じていない。

●実行した時点で空気はつかんでいた

私が指名を受けて氷水かぶりを実行した時期は、まことに微妙だった。ネットのムードが怪しくなりかけていることを、私自身、感じ取っていた。

指名してきたのは、西晃平氏。彼は、8月21日(木)に動画をYouTubeで公開し、その中で、私を含む3人をしっかり名指してきている。
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その時点では、祭りの真っ盛りだった。各界のビッグネームたちがざぶざぶと氷水をかぶって話題を振りまいていた。

おそらくそれから、普通のタレント、あんまり売れてないタレント、ネットで話題の人や地下アイドルなどの限定的な有名人、そして一般の人々と、指名が降りてきて、日本全国お祭り騒ぎに広がっていくのであろうと私は思っていた。

意外と早い時期に私のところへ回って来たな。西氏と彼から指名を受けた3人は、お互いに知り合いで、何回も会っている。どうせなら、みんなで一緒にやりましょうか。西さん、思い切ってぶっかけちゃってください。

4人の都合を合わせたら、実行するのは8月24日(日)と決まった。さて、私からは誰を指名しようか。指名された人は、拒否してもよいので、この人にぜひやってもらいたいという人を一方的に指名すればよいのだが、半ば強制みたいな変なプレッシャーになってもよくないから、喜んでやってくれそうな人に、あらかじめ根回ししておこう。

社会の階層において雲の上におわしましまする偉〜い面々が豪快に氷水をかぶれば、あんな人がこんなことまでやってくれたんだ、と、見るほうにとってはたいへん愉快で、概して好印象を呈する。

それほどメジャーじゃないあたりでタレント活動をしている人々に回してあげれば、それでもやっぱりイメージアップにはなるであろうから、喜んでもらえるのではなかろうか。

実は、そうでもなかった。8月23日(土)には、ネットの雲行きが怪しくなっていた。賛否両論、侃侃諤諤、喧喧囂囂。大多数の人は、性急な行動に走らず、自制しながら空気の動きを見守っている。

この運動に対して、各個人がどう向き合うか、現実性は脇に置いておいて、可能性だけで挙げていけば、その姿勢はざっと次のように分類できるであろう。

まず、賛成・反対の立場について。

(A1)運動に賛成している
(A2)運動に対してあまり関心がなく、したがって深い知識や考えをもたない
(A3)運動に対して多少は関心があって知識があるが、賛成か反対かの姿勢が決まっているわけではない
(A4)運動に対して反対意見をもっていたり、疑問を抱いたりしている
(A5)その他

もし指名を受けたら、どういう行動に出るかについて。

(B1)指名を受けたら実行する
(B2)指名を受けても実行しない
(B3)指名を受けたらどうするかは、指名を受けてから、諸事情を考慮に入れつつ、自分で考えて決める
(B4)指名を受けたらどうするかは、自分の意志は特になく、空気を読んで、そのときの趨勢にしたがう
(B5)その他

組み合わせるると、場合の数は、掛け算で効いてくる。しかしながら、実際問題、大勢がどうあろうとも自分の確たるポリシーを貫く、なんて人はそうめったにいるものではなく、(A3)─(B4)の組み合わせの人が圧倒的に多いように感じる。つまりは、日和見。

結果として、イワシの大群みたいなことになる。誰か一人の動きが全体の動きに直結する。あっちだ、わさっ、こっちだ、わさっ。

芸能事務所の多くは、複数のタレントを抱えている。売れっ子もいれば、それほどでもないっ子もいる。それほどでもないっ子が、なんかやらかしちゃったとしよう。「とある、それほど活躍してないタレントがこれこれのことをやらかしました」じゃ、「誰それ?」ってな反応になって、ネタとしての面白みに欠ける。

「あの大物タレントを抱えた事務所に所属する某が」って扱いにしたほうが、人々の耳目を集めやすい。まあ、芸能関係を扱うメディアの姿勢なんて、そんなもんでしょう。

とすれば、芸能事務所としては、下っ端タレントが変なことやらかして、売れっ子タレントに迷惑をかけるリスクに神経質にならざるをえない。

私は会社務めしているけれど、週末はB面からA面に切り替え、セーラー服を着て出歩いている。特にどうってことはない。ところが、芸能事務所に所属するタレントは、事務所を丸ごと巻き込んだトラブルを招く危険性があって、そういうおバカがしづらい。

サラリーマンよりも、お笑いタレントのほうが締め付けが厳しいとは、なんとも皮肉な世の中である。

タレント業とは、自分の知名度・好印象度をお金に変換する仕事であるからして、イメージアップにつながることならやるし、イメージダウンの危険性があれば避ける。人々の反発を招く危険を冒してまで、個人的な主義主張ややりたいことを優先するわけにはいかないのである。どうしたって、日和見主義になっちゃう。

きっと喜ばれるだろうと思って、数少ない芸能方面の知り合いに振ってみたら、事務所として、いまネットの空気をウォッチしているので、今はやらないでくださいと止められてます、という答えが返ってきた。

でも、それは正解だった。そのあたりから趨勢は一気に否定側に傾いていった。

●しない善より、する偽善

難病に苦しむ人への真の思いやりの情から、微力ながら自分にできることを実行することで貢献したい。純粋にその動機から、みずから進んで善行をなすのが真の善人ってもんである。

ボランティア活動に汗を流す人は尊い。大変さを身をもって分かっている。そういう人だけは、このちゃちい氷水かぶりごっこに苦言を呈する資格がある。

「週刊ポスト」(9月12日号)の記事「氷水かぶりの難病支援はうさんくさいぜ」において、ビートたけし氏は、その立場からものを言う。「水をかぶってカネ出して、あー、いいことしたなぁ」って軽いノリでぱっと飛びついてすぐ飽きる一過性の社会貢献に「そんな単純なもんじゃねぇ」と怒る。

みずから活動する余裕がなければ、指名が回って来ようと来るまいと、人知れず、そっとお金を寄付するというのもよい。その金額も、ちょっとばかり生活に支障が出るくらいがんばって、痛みを分かち合えるほどなら、なおよい。

そこへ達したら、もう神様仏様の域である。まあ、普通の人にはなかなかそこまでできないでしょう。いやいや、人知れずの善行は人に気づかれないわけで、案外みんなそうしていて、それが普通なんだったりして。私が気づいてないだけ? ごめんね。

そうだよ。ALS協会への募金は、普段の年だって、ゼロではないわけで。アイス・バケツ・チャレンジでもないのに、ただ募金してきた人たちって、神様仏様の域に達している人たちなのかもしれない。

各界の大物たちには、同情する。純粋に善人でいることは不可能だ。あの野郎、資産はたっぷり持ってるはずなのに、指名が回ってきても無視こきやがった、太てえ野郎だ、と世間の評判を下げる結果になり、まったく浮かばれない。

まあ、豪快にざぶんと氷水をかぶって、世間の許しを請う以外にない。跳ね返すことが不可能なプレッシャー。半ば、強制。しかし、やっとく価値はある。あの雲上人がこんなことまで、と印象アップにつながり、多少は報われる。

しかし、それだけでは許してもらえない。あの野郎、たっぷり持ってるはずなのに、氷水を選択することで、寄付逃れしやがった、太てえ野郎だ、と次の批判が待っている。

はいはい、寄付もしますってば。しかも、持てる側の人は、ルール通りに100ドル寄付した程度じゃ、許してもらえないでしょうな。持ってるんでしょ、もっと出しなさいよ。

しかし、寄付したことはそっとほのめかす程度にとどめておくしかなく、うっかりこれ見よがしに高らかに自慢しちゃったりなんかした日にゃ、偽善だ何だ、ってこれまた反発を招くことになる。

そこまでしても、まだ、純粋な動機からではなく、イメージアップを狙った作戦なんでしょ、この偽善者め、と言われたりなんかして。縛り縛り縛りで、いったいどーすりゃいいのさ、と。セレブにはセレブなりの苦労がありますな。

さてさて。セレブはさておき、一般ピープルなら、真の善人たることは、いちおう可能は可能である。しかしながら、煩悩というのは、しつこい油汚れみたいなもんで、社会貢献のために供した労力や費やしたお金は、自分の評判の上昇をもって報いられたいという、いやらしいスケベ心はなかなか滅却しきれるものではない。

真の善人たる領域に、そうなかなか到達しえないのだとしたら、もういいんじゃないかね、偽善者で。人間だもの。

偽善者だって、何もせずに傍観してるだけでちっとも社会貢献してない人よりは、だいぶんマシなわけで。大口たたいて偽善、偽善と他人を批判しときながら、自分では何もしない人なんていうのは、もっと下にいるわけで。そのさらに下には悪人がい るわけで。偽善者だって、階層的にはずいぶん上のほうにいるじゃんか。

ネットでは、かつて、「しない善より、する偽善」という言い回しが流行った。

偽善者の中にも二通りいる。自覚的なのと、自覚的でないのと。自覚的でない偽善者は、ちょっと恥ずかしい。自分では善人のつもりになりきってて、人々の賞賛を要求して、大得意。けど、その実、肥大した自意識をこちょこちょしてもらいたいだけの、つまらない見栄っぱりの小人物。うわっ、いやらしい、みっともない、ちょー恥ずかしい。おっさんがセーラー服着て表を徘徊するより、いっそうひどい。

自覚的な偽善者ならみっともなくな いのかと言えば、そうでもないけれど、非自覚的なみっともなさに比べれば、いくぶんかマシである。私自身としては、「自覚的な偽善者」というスタンスが、一番ちょうどいい。

その立場から、これはいちおう言っておきたい。氷水をかぶっただけじゃ、ありません。寄付もちゃんとしましたよ。これが証拠です。うわーーーっ、やらしーやらしーやらしー。
< http://www.geocities.jp/layerphotos/FigDGCR140905/ALS140826p01.gif >

【GrowHair】GrowHair@yahoo.co.jp
セーラー服仙人カメコ。アイデンティティ拡散。
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映画俳優、はじめました。ってわけじゃないけど。

なんか、よく分からない、アメリカの自主制作映画への出演依頼が来た。ドキュメンタリーで、仮の題名は「フリーダム」。なんでも、世界を旅して、いろんな人にインタビューして、「自由」について考えるのだという。

で、日本の自由はどうか、ってことで私に話を聞きたい、と。だいたい想像がつく。理由を言って断った。…つもりだったんだけど、押し切られてしまった。

「サラリーマン」という言葉は、もともと和製英語だった。けど、海外の報道機関が日本のサラリーマンを表現するのに、面白がってクォーテーション付きで使っているうちに次第に定着してきて、いまや、オックスフォードの英英辞典の見出し語になっている。意味は「(特に日本の)ホワイトカラー労働者」。

それはいいのだが、例文がひどい。「ダークスーツのサラリーマンの群が、本能で思考が麻痺したシャケの群のように、交差点を渡った」。そういうふうに見えているんだね、日本のサラリーマン。

「出る杭は打たれる」ということわざもあるし。欧米からみた日本のイメージって、だいたいそんな。ムラ社会的な封建主義の考え方から脱却できてなくて、自由が著しく抑制されている。相互監視・相互牽制の無言の同調圧力が強くて個が主張できず、世間の偏狭な「常識」への忍従が強いられ、逸脱できない。

結果として、人々は画一的で、没個性的で、創造性に欠く。ロボットの大群みたいな不気味さを呈している、と。まあ、ステレオタイプな日本人像ですな。

それに引きかえ、突飛な服装で街を闊歩する私は、さしずめ、自由を求めて世間という名の見えない巨大な敵と闘う戦士ってとこかな。そういう答えを期待してるのが見え見えで。

そんなステレオタイプなものの見方を映像で強化する浅薄なプロジェクトに私が加担するわけないじゃん。期待された答えをしっかり察知しつつ、完璧に外してやった。

「同じ格好して通勤するサラリーマンの大群をどう思う?」。「べつに」。そんなとこで個性を発揮しようとしたってしょうがないじゃん。仕事を通じてでもいいし、創造的な活動を通じてでもいいし、個性や創造性を発揮する機会なんて、いくらでもある。

「自由についてどう思う?」。「日本は自由な国で、ありがたいねぇ」。自由って、それを封じ込めようとする上から横からの大きな圧力に対して闘うことで勝ち取るものだ、って、それをやってるうちは、まだ自由でも何でもないね(その点、欧米はまだまだ遅れてるね、とまでは口に出さなかったけど)。

理想的な自由って、水や空気みたいにあたりまえのようにそこにあって、誰もわざわざ意識する必要がない状態になっていること。日本はすでにほぼその域に来ている。自由・解放を求めて闘うなんて、いまどき流行らないよ。ダサい。

監督さん、期待外れの答えにがっかりしているのがありありと見てとれた。
じゃ、そういうことで。

おそらく私の場面は丸ごとボツでしょう。ドキュメンタリー精神に則って、ちゃんと使ってくれたら、少しは見直してやってもいいけどな。

ところで。収録の最中、まわりに見物人がちらほら。収録の合間には、写真撮影を求めて近づいてくる。それはまあ予想の範囲内なんだけど。このときは、一人の例外もなく、外国人ばかりだった。不思議な現象があるものである。理由はお分かりだろうか。

答え。ロケ地が代々木公園だったから。8月31日(日)のことである。デング熱のこと、外国人にはあんまり伝わってないのか。読売新聞、朝日新聞、毎日新聞、The Japan Times、共同ニュースあたりが、国内の日々のニュースを英語で伝えているんだけどなぁ。それとも、伝わってるけど気にしてないのか。

もしかして、たかがデング熱がごときでてんやわんやしている日本人が奇異に映ってたりして。全員が全員、代々木公園を避けるって画一性は、やっぱり変なのかなぁ。あ、オレはいたけど。


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編集後記(09/05)

●[天声珍語]朝日新聞は、所長・吉田昌郎氏の命令は、第一原発構内での待機だったのに、所員は10キロ離れた第二原発に撤退している。これは命令違反行為であり、東電の社員は現場から逃げたと主張している。しかしちょっと待って欲しい。そう主張するには早計に過ぎないか。朝日新聞の真摯な姿勢が、今ひとつ伝わってこない。例えば産経新聞、読売新聞などからは、東電社員は吉田氏の指示に基づいて事故直後に踏みとどまった。第二原発に行ったのは退避すべしという吉田氏の命令によるものだという。第一の社員は逃げたと誰も思っていない。そんな指示も聞いたことはない。朝日の報道は事実を歪めている。そう主張する声もある。このような声に朝日新聞は謙虚に耳を傾けるべきではないか。▼思い出してほしい、過去にも何度も朝日新聞は捏造記事を掲載して批判を浴びたことを。確かに産経新聞、読売新聞には吉田氏の感情に焦点をあてすぎ、都合のいい解釈をしているという問題もある。だが、心配のしすぎではないか。朝日新聞の主張は一見一理あるように聞こえる。しかし、だからといって本当に東電の社員は現場から逃げたと主張できるのであろうか? それはいかがなものか。的はずれというほかない。▼事の本質はそうではない。その前にすべきことがあるのではないか。朝日新聞は、未来を担う一員として責任があることを忘れてはならない。朝日新聞の主張には危険なにおいがする。各方面の声に耳を傾けてほしい。朝日新聞に疑問を抱くのは私達だけだろうか。朝日の報道は事実を歪めている。そういう主張を支持する声も聞かれなくもない。朝日新聞もそれは望んでいないはず。しかし朝日新聞は吉田調書を自社に都合のいい解釈をしている。▼朝日新聞は事実を曲げてまで日本人を貶めたいのだ。日本を貶めるためならなんでもやる。その結果、この情報は世界を駆け巡って、東電と日本人の名誉を貶めてしまった。東電の社員が現場から逃げたと主張する事はあまりに乱暴だ。朝日新聞は再考すべきだろう。繰り返すが、朝日新聞は吉田調書を自社に都合のいい解釈をしている。朝日新聞が主張していることは波紋を広げそうだ。今こそ冷静な議論が求められる。

何を言っているのかわからないと評判の「天声人語」だが、あのコラムには定型パターンがあって、それに従えば誰でも書けるというという噂。「便利な!天声人語風メーカー」というプログラムに、適当な値を入力するだけで、確かに「天声人語」風なコラムができあがる。試しにつくってみたのがこれだ。脈絡のないトンデモテキストができ上がるから、後から手を入れる必要がある。朝日の常套句がばっちり入った素敵な仕上がりだと思いませんか。(柴田)

< http://taisa.tm.land.to/tensei.html >
便利な!天声人語風メーカー ver.2.2


●「アイス・バケツ・チャレンジ」にGrowHairさんが参加されていたとは! 一般人にまで十分知れ渡ったので、当初の目的は果たしたって感じだと思います、日本での鎮火。「しない善より、する偽善」に同意します。日本は自由だと思いますよ。特に宗教。同性愛に関しても寛容だと思うし。アメリカのドラマとか見てたら、外見や服装で何もかも、ステージまで決まっていて大変そうだなぁとも。

受験勉強のために、わざわざ天声人語の文庫本を読んだり、朝日新聞とったりしたんですけどね……。うちは父親が巨人ファンだったので読売派でした。

健康診断続き。誘導には不満はあるものの、看護師さんたちは素晴らしかった。無駄のない説明に動き、なのに余裕まである。次から次へとこなしていく。どの検診場所でもそうであった。惚れるわ。

ただ、お医者さんは……。最後の統括部分だけはお医者さんで、問診票を見ながら不安部分を聞いてもらうのだが、ある男性医師はめーーーっちゃ丁寧で、一人に何分かけるんだよ……とイライラさせる(たぶん10分以上)。順番待ちの列がのびていく。かと思うと、ある女性医師は「はい、はい、はいー大丈夫ですね、次の人」というように、一人に1分もかけない。

問診票に眼にはじまって、お腹のこととか、手足のこととか不安要素を書いておいたのに、チェックいれておいたのに、そのあたりはさーっとなぞった上で「大丈夫ですね、では」と言われてしまった。いや、だから大丈夫じゃないから書いておいたのに……。まぁでもそれらも検診でわかるってことなんですよね、きっと、ええ。(hammer.mule)

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