[3786] OS X Yosemiteを入れてみた

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《わざと面倒なほうを選ぶことにしています》

■ネタを訪ねて三万歩[116]
 制約があってこそアイデアが生まれる
 海津ヨシノリ

■グラフィック薄氷大魔王[408]
 OS X Yosemiteを入れてみた
 吉井 宏

■イベント案内
 ASIAGRAPH 2014 in TOKYO/シンポジウム「宇宙×アニメ×テクノロジー」


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■ネタを訪ねて三万歩[116]
制約があってこそアイデアが生まれる

海津ヨシノリ
< https://bn.dgcr.com/archives/20141022140300.html
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正直ここのところ疲れが取れません。かなり無理してプラモデル作りの時間を捻出しているからかも知れません。昔の知識が頭の引き出しからボロボロ出て来たり、新しいテクニックがスラスラと頭の中に入ったり、といった不思議な体験が毎日のように私を楽しませてくれます。

塗装は前回お話したようにブラシに徹していますが、絵筆を使うということは本当に久しぶりです。デジタル環境も決して悪くありませんし、私は嫌いではありませんが、絵の具の調合は感覚がすべてを決定してしまいます。つまり、わざと面倒なほうを選ぶことにしています。

例えば、組み立てが面倒な外国メーカーの製品や比率の小さい製品を選びます。リキテックスに拘るのも、実は必要とする特色をゼロから作りたいからなのです。作られた色を買ってきて塗ることを拒否したわけです。

バカバカしい拘りと思われるかもしれませんが、制約があってこそアイデアが生まれると信じている私にとって、これは楽しいゲームのような作業なのです。

しかし、笑ってしまったのは、プラモデル作りはやめたと封印していたお札がとれてしまったので、部屋の奥から50箱ほどの未開封の積み箱が出て来ました。

積み箱というのはモデラーに共通する癖のようなモノで、とりあえず買ってしまい、そのうち作ると決めているキットの箱が、いつの間にか溜まってしまうという癖のようなものです。



そんなわけで、本当はホドホドにしないとイケナイのですが、モノ作りはスイッチが入ると止まらなくなってしまいますね。

例えば、最近はジャム作りにも傾倒しています。もともと我が家の庭で繁っている葡萄が美味しそうなのに、酸っぱすぎて食べられない悔しさを数年間味わっていました。

その悔しい思いを、せめて写真だけでも、ということでfacebookにアップしたところ、色々な方からジャム作りを勧められ、コッソリ作ってみたところ、これが恐ろしく美味しいので病みつきになってしまった次第です。

作り方はとても簡単です。葡萄の種を取り、綺麗な水を大さじ2杯ほど入れた器に入れ、皮と実はボールに入れます。こうして好みの量の葡萄を処理したら、種の入った器の水を葡萄に加えます。

次に全体の重さの半分のグラニュー糖を加えてから、バーミックスでペースト状態にします。後は電子レンジで7分ほど加熱し、様子を見ながら1分間隔で何度も加熱して、好みの状態になったらレンジから出します。

予め用意していた煮沸した空の瓶に熱いままのジャムを入れ、蓋をしたら逆さまにして醒めるまで置きます。醒めれば完成です。逆さまにする意味は諸説あるようですが、雑菌処理のような感じだそうです。

ちなみに電子レンジを使うと時間の節約になり、アク取りも簡単という大きなメリットがあります。あまりに簡単なのでイチヂクなども試してみたいと思っています。

市販のジャムは材料の産地を明記する義務がないので、正直不気味です。今のところマーマレードも成功していますので、来年は苺も試す予定です。



そんなこんなで相変わらず馬鹿なことに没頭している私に、素敵なプレゼントが届いたのは先月の終わりでした。教え子が揃って海外に進出という嬉しい知らせです。

全く異なる学校での教え子二人の出国が、偶然重なったわけです。暫くは会えなくなるので、ディナーで昔話に花を咲かせました。もっとも、昔話といっても数年前のことです。

なお、二人は面識がないので、個別にディナーをしました。ちなみに二人とも女性です。声を掛けてくれたことがとても嬉しく、それだけで疲れは吹き飛んでしまいました。「授業のプリントは今も大切にもっています」と言われ、記憶に残っていてくれる嬉しさは本当に格別です。

ところで二人が向かうのは親日の国なのも素敵です。そのうちの一人には、交友のある現地のアーティストを紹介しました。

彼女達とは、ちょっとしたボタンの掛け違いが発生していたら、永遠に関わることのなかったことも嬉しさに繋がってきます。人の出会いと繋がりは本当に不思議で面白いものです。

数年後に帰国した彼女達とのディナーが今からとても楽しみです。正に「縁は異なもの味なもの」ですね。これか英語だと "Marriage goes by destiny" となるのがとてもユニーク。



さて、ここで話を少し戻すと、私はもともとパッケージデザインなどでアナログ時代はダミーの手作りに費やす時間が、かなりの比重を占めていました。つまり、毎日が工作のような感じだったのです。

そこでの感覚はまさに模型作り。ある意味それはとても楽しい時間でした。それがデジタル化されたことで、いつしか並行しておこなっていたプラモデル作りをやめてしまったのかもしれません。やめてしまった理由が思い出せません。

とにかく、やめてしまうと感覚は鈍るモノです。鈍った感覚は数をこなすことで取り戻すしかありません。これはデジタルの世界でも同じですね。

理屈で分かっていても作品は作れません。思い描くイメージを形にする難しさは言葉では説明できないのです。とにかく体を動かすこと。その延長上に作品が輝くのだと常に感じています。

セミナーなどで、Tipsと銘打っている私が言うのは変な話ですが、Tipsは、本来は人から貰うモノではなく自分で見付けるモノであり、それは必要から生まれるはずなのです。

つまり、数をこなさなければTipsは見付けられないわけです。禅問答のようですが、それが理解できないとテクニックにばかり走ってしまう、残念な結果に終わってしまうでしょう。

誰もが永遠に初心者であり、そして初めから達人であるということを理解しましょう。うさんくさいものに振り回されず、自分を信じて仕事をこなすことがすべての解決に繋がるような気がしています。

テクニック本は捨てて、物作りの趣味を持ちましょう。趣味を持ったら、同じ趣味の人と繋がりましょう。同じ業界の人達と四六時中同じ話題で盛り上がっていることは、自分のスキルを退化させることでしかないように感じています。もちろんこれらは極論ですけれどね。

◎今月のお気に入りミュージックと映画

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[My Love]by Paul McCartney & Wings in 1973(U.K)
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アルバム『レッド・ローズ・スピードウェイ』から唯一のシングル・カットされている曲で、この曲が聴きたくてアルバムを買ったことを思い出しました。シングルカットは不経済ですから。

最近、facebookで繋がっている友人の多くが、YouTubeで公開されているお気に入りの曲を紹介してくれる中で思い出しました。当時のLPの多くはCD版も再購入していましたが、これは購入漏れでした。何か忘れていた青春の一部分が戻ってきたような思いに駆られています。私はジョンではなくてポール派だったからかもしれません。

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[Lone Survivor]by Peter Berg in U.S.A
< http://lonesurvivor.jp/
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邦題『ローン・サバイバー』は2013年の作品。アフガニスタンにて、アメリカが誇る精鋭特殊部隊ネイビー・シールズ史上最大の悲劇といわれる、レッド・ウィング作戦の映画化。

平時では誰もが取る行動により数十人の命が奪われる緊迫した流れと、唯一生き残ることができた兵士は、何故生き残れたかが重くのし掛かってきます。そして、これが実話であると言うこと。

主演のマーク・ウォールバーグは「ザ・シューター/極大射程」での、アメリカ海兵隊武装偵察部隊所属の前哨狙撃兵のイメージが少し強すぎたかも知れませんが(私だけなのかもしれませんね)、とてもよい作品だと思います。もちろん、戦争映画ですのでリアルな殺戮シーンがありますが……。

【海津ヨシノリ】グラフィックデザイナー/イラストレーター/写真家/
怪しいお菓子研究家

yoshinori@kaizu.com
< http://www.kaizu.com
>
< http://kaizu-blog.blogspot.com
>
< https://www.facebook.com/yoshinori.kaizu
>

絶対にあり得なかった、2013年制作の「Epic」という大好きな3Dアニメーションが「メアリーと秘密の王国」として公開されることが、最近では一番ユニークな事件かも知れません。

どうやら「アナと雪の女王/Frozen」の流れに乗りたいという思惑のようですね。もちろんこれは私の推測に過ぎませんが。ちなみに私は作品の完成度と娯楽性などを総合的に整理すると"Epic"の方が断然気に入っています。"Frozen"は何か見終わってしっくりこないのです。

その理由をなんとなく分析してみました。まずキャラクターの造形に違和感があったからかもしれません。最近のディズニーによる3Dアニメーション作品のキャラクター、とりわけ女性の造形は逆三角形の頭に大きな目、小さな口という流れのようですが、私には爬虫類にみえてしまうのです。

また、ミュージカルという形態をとっていたからかもしれません。そんなこともあり、要するに私にとって漠然とし過ぎてしまった感じでした。
その点 "Epic" はキャラクターの造形も違和感がなく、ハラハラドキドキのシーンもあり、適度な物語の起伏とエンディングの心地よさが際立っていると感じました。

特に主人公のメアリーの造形は自然でとてもかわいらしく鑑賞者が感情を共有しやすいのではないかと感じましたが、もちろんこれは私と一部の学生との意見に過ぎません。
< http://www.foxmovies-jp.com/mary-himitsu/
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■グラフィック薄氷大魔王[408]
OS X Yosemiteを入れてみた

吉井 宏
< https://bn.dgcr.com/archives/20141022140200.html
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東京デザイナーズウイーク2014に出展します。クリエイティブライフ展「ブース番号-CL033」です。昨年から作っていた大型立体作品を一挙に展示します。

っていうか、立体を作り始めたのは2006年からなのに、今まで一度もまともに展示したことがなかったのでした。というわけで、「立体造形作家デビューw」でよろしくお願いします。

10月25日(土)〜11月3日(月)明治神宮外苑絵画館前 詳しくは↓
東京デザイナーズウイーク2014 < http://www.tdwa.com/
>
クリエイティブライフ展 < http://www.tdwa.com/2014/join/creative_life.html
>

●Yosemite、入れてみた

iOS8の阿鼻叫喚の直後じゃちょっとコワイ。インストールは半日待とうってことで「不具合・バグまとめ」を見た上でしばらく待ってみたけど、それほど派手な報告は出てこない。MacBook Proにインストールしてみた。

アイコンの彩度が上がってiOS っぽいけど軽薄な感じの画面になったなあ。あちこちいじりつつ、半日使って大丈夫だったのでMacBook Airにもインストール。メインマシンのMac Proに入れる勇気はさすがにないw

●期待のプレビュー.app……だったが

Yosemiteで最も期待してたのが「プレビュー.appのPDFの右開き対応」だった。ベータプログラムに参加してる人にキャプチャを見せてもらったけど、確かに右開きに対応していたはず。なのに、対応してない模様。えええ?

自炊書籍PDFを開いて見開き表示にし、矢印キーでページめくりしようとすると、落ちる。MBPとMBAの両方で何度やっても落ちる。まったく使えない。どうなってるんだこりゃ? ただし、落ちるのは自炊書籍PDFのみ。ページ数が多いからなのか、AcrobatからのPDF書き出し設定に問題があるのか。

しかし、Twitterで「プレビュー.app、右開き」で検索すると、2010年からの大半が僕のツイートw 「右開きできない」ってそんなにマイナーな問題なのかと不安になる。

●日本語IM

従来のことえりに代わって新しく搭載された「日本語IM」。ネーミングが風流じゃないw 「ことえり」の意味と語感は、パソコン関連の日本語ネーミングの最高峰と思っていたので残念。中身が変わっても名前は引き継いでほしかった。ことえり、かわせみ、ATOK……「日本語IM」じゃ語呂が悪いしw

使ってみた。ことえりの基本機能に不満はなかったけど、日付変換だけは搭載してほしかった。できるようになってる! 「きょう」「おととい」「あさって」から日付に変換できる(曜日からはできない)。郵便番号変換もできるね。

じゃあ、日本語IMにATOKのユーザー辞書を読み込もうかな(かわせみ経由でできるらしい)と、とりあえず書き出してJeditで眺めてみたら、ほとんどが偶然取り込まれたような学習結果ばかり9000語。自分で登録したのは以前ことえりに書き出しした300語くらいじゃないかなあ。無理に辞書読み込みしなくていいや。

2日間にわたって長文を書いてみたけど、日本語IMでぜんぜん大丈夫。ATOKユーザー辞書も読み込み不要。固有名詞の変換候補は弱いけど、不便ってほどじゃない。ことえりっぽく反応が早いのが心地いい。もう、完全乗り換えでいいかも。

ところで、Jeditで書いてるこの原稿がなぜか「日本語(MacOS)エンコーディング」で保存できない。調べたところ、「日本語IM」で出る「●」と、従来使ってた「●」は別物だった。ちゃんと変換候補の横に注意が出てますね。

●Finder右はみ出し問題解決

どうも僕だけが騒いでたらしい「MavericksのFinderウインドウのリスト表示で右から項目がはみ出す問題」、どうやら修正された模様。それでもやはりタグの小丸は見にくいので、旧ラベル復活のXtraFinderは重宝する。もうPathfinderは使わないかも。

●各種アプリやドライバやYosemite対応問題

WACOMタブレットドライバが未対応とのことだけど、最新版をインストールして問題なく使えてます。

Parallels Desktop for Mac 9は一応使えてますが、10にアプグレするほうが確実だろうな。

Canonのレーザープリンタのドライバ、僕が使ってるプリンタのドライバが未対応。試してみたけど、確かにプリントできない。11月に対応ドライバが出てくるので、メインマシンにYosemiteを入れるのはガマン。

●その他Yosemite雑感

日本語IMも合わせてなんとなくシャキシャキしたYosemiteの使用感はなかなか
良い。

iOS的なフラットデザイン化が進んで見づらくなってる部分もあるけど、彩度の高いブルーのフォルダが新鮮。

iCloud Driveがサイドバーに追加されてる。Dropbox的に他マシンとファイル同期できて便利。

カラーパレットのクレヨンの輪郭線がなくなってて気持ち悪いw

Mail.appのアカウント情報のメッセージリストのソートができなかったのが直った。「何月以前のメールを全部削除」や「同じタイトルのスパムの一括削除」とかできなくて不便だったのだ。

Mail.app本文右上のアルファベットのついたグレーの丸は何だろうと思ったら、差出人の頭文字かw 変なの。

液晶ディスプレイに変な影が出てる! 寿命か? と思ったらYosemiteのウインドウが透けて後の壁紙が見えてるだけだった。

●おまけ1「Acrobatさん、ごめんなさい」

PDFの矢印キー押しっぱなしページめくり速度の比較を、Acrobat Pro11と同一PDFファイルで試してみた。MavericksのMac Proで26秒、YosemiteのMacBook Proで8秒。あれ? YosemiteだとAcrobatが速くなるのか?

MacBook AirのMavericksで確認してみたところ、同じく速い。どういうことだ? なぜかMac Proだけめちゃくちゃ遅い。また例の「Mac Pro 2012でだけ出る謎の不具合」なのか?

じゃあ、じゃあ……、今まで「Acrobatは重いから電子書籍PDFビュアーとして不向き」とか「プレビュー.app右開きに期待」とか言ってたこと、全部なしってことでw

●おまけ2 「その他の新製品の感想」

iMac 5K……すごいな。これで電子書籍の雑誌や作品集とか見たい。4GHzクアッドコアCore i7! しかし、カスタマイズするとiMacとは思えない値段に。いや、最高級ディスプレイ込みのメインマシンとしては安いのかな。

iPad Air 2もiPad mini 3も、12.9インチのiPadを期待してた僕的にはスルー。ひょっとすると、噂されてるように12.9インチiPadは本格的なタブレットMacとして出てくるのかもね。

Mac mini、あれ? デュアルコアのみになってる。クアッドコアを選べなくなった?

4Kっていうか5Kのシネマディスプレイが来ないじゃないかー。黒筒Mac Proの人たちはその点で宝の持ち腐れ的な。

【吉井 宏/イラストレーター】
HP < http://www.yoshii.com
>
Blog < http://yoshii-blog.blogspot.com/
>

東京デザイナーズウイークが済むまで、しばらくショートバージョンでいきま
すとか書いてたのになあ……。ところで、先週の日刊デジクリで神田敏晶さん
と誕生日が1年と1日違いなことが判明w

・rinkakインタビュー記事
『キャラクターは、ギリギリの要素で見せたい』吉井宏さん
< https://www.rinkak.com/creatorsvoice/hiroshiyoshii
>
・ハイウェイ島の大冒険 < http://kids.e-nexco.co.jp
>
・INTER-CULTUREさんの3Dプリント作品販売
< http://inter-culture.jp/Buy/products/list.php?category_id=63
>


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■イベント案内
ASIAGRAPH 2014 in TOKYO/シンポジウム「宇宙×アニメ×テクノロジー」
< http://www.asiagraph.jp/
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< https://bn.dgcr.com/archives/20141022140100.html
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名称:ASIAGRAPH 2014 in Tokyo アジアグラフ2014東京
会期:2014年10月23日(木)〜26日(日)入場無料
会場:日本科学未来館 < http://www.miraikan.jst.go.jp/guide/route/
>
主催:ASIAGRAPH2014は、経済産業省と財団法人デジタルコンテンツ協会が
   主催する「デジタルコンテンツEXPO2014」の一環として開催されます。
内容:ASIAGRAPH CGアートギャラリー CGアニメーションシアター
   CGアートギャラリー公募展示部門
< http://www.asiagraph.jp/
>

●ASIAGRAPH セミナー・シンポジウム
ASIAGRAPH 2014 匠(たくみ)賞・創(つむぎ)賞 授賞記念シンポジウム
「宇宙×アニメ×テクノロジー」
日時:10月25日(土)13:00〜14:30 開場12:50
会場:日本科学未来館 1F センターステージ
出演:匠賞・山崎直子 創賞・石川光久 モデレーター・河口洋一郎
< http://www.dcexpo.jp/6627
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編集後記(10/22)

●藤岡利充「泡沫候補 彼らはなぜ立候補するのか」を読んだ(ポプラ新書、2014)。ドキュメンタリー「立候補」の監督が、映画での取材をもとにして迫る泡沫候補者たちの真実だとか。Wikipediaは泡沫候補を「当選する見込みが極めて薄い選挙候補者。特殊候補、インディーズ候補とも呼ばれる」と定義する。当選する見込みはないとわかっていながら、なぜ彼らは100%没収される供託金を積んでまでして立候補し、独自の戦いを繰り広げるのか(繰り広げない人のほうが多いが)。金持ちの道楽かと思うと、そうでもないようだ。いったい彼らは何者なのか、なにを目指しているのか、興味津々のテーマである。

筆者は2011年大阪知事・市長W選挙で、スマイル党・マック赤坂を密着取材している。映画の取材である。文字によるドキュメンタリーも面白いが、映像も見たい(こわいものみたさで)。マック赤坂の選挙運動は、自由気ままに行動して、歌って踊ってナンパするだけだ。政見放送の全文と、それをテレビで見ているマック赤坂の実況を、同時進行で7ページにわたって記録している(YouTubeにその民放版があった)。あまり笑えない。見ているこっちが居心地が悪い。その後もマック赤坂の暴走を追っているが、彼のメチャクチャぶりは笑える。本当にはた迷惑な人である。

泡沫候補には、現状を良くしようとする歯車改革派と、現状をとにかくひっくり返したい石コロ革命派がいると筆者はいう。前者が羽柴誠三秀吉、後者がマック赤坂と外山恒一なのだろう。この3人のインタビューでは、羽柴、外山が意外にまともだ。マック赤坂は外山から「あれはデンパ(荒唐無稽な妄想や主張を周囲に向かって公言すること)ですからね、と酷評されている。さらに泡沫三銃士(岸田修、高橋正明、中村勝)をインタビューしているが、3人とも勝てないのは承知の立候補だ。動機はいまひとつ理解しがたいが、それでもマック赤坂よりもまともに語る。

迷走するマック赤坂って何者? 京大出て、伊藤忠で営業やって、いまは(財)スマイルセラピー協会会長だ。優れたビジネスマンであり、政治の知識や能力は他の候補者よりはるかに優れているようだ。しかし、選挙のときだけその能力をわざと隠して変な人を演ずるのはなぜか。結局、彼らはなぜ立候補するのかの答えはみつからない。それでいい。この本では橋下徹も何度か登場し、キレ者ぶりを発揮している。だが、20日に行われた橋下市長・桜井在特会会長との面談はなんだ。まるで子供の喧嘩で、両者ともに評価を下げたと思うが、橋下の公職にあるまじき下品さには驚いたな。お里が知れる……。(柴田)

< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4591141241/dgcrcom-22/
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「泡沫候補 彼らはなぜ立候補するのか」

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マック赤坂 2011年大阪知事・市長W選挙 政見放送

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外山恒一 2007年東京都知事選 政見放送 いま見ても感動的w


●『ベイマックス』が気になる〜。/Yosemiteは様子見。ことえりじゃなくなったのか! ことえりってきれいな単語だったのに〜。復活しないだろうか。OSは無料でアップグレードできるのに、VMware Fusionは8,000円近くかかる。parallelsの10にしてみようかなぁ。

小柳奈穂子さんのインタビュー第二回目続き。

採用試験の課題に「男女の三角関係の話」があり、「ほぼ全員が書くのが、男2人が女1人を取り合う話」だろうから「試験で目立つだろう」と「男と女がもう1人の男を取り合う話」にした。
「『自分が何を望んでいるか』ではなく、『相手が何を望んでいるか』の中に」答えがあると感じ、入団後は他の演出家との差別化のため「テーマ」よりも乙女ゲームにヒントを得た「方法論」を模索。たどり着いたテーマは「お客さまにきゃーきゃー言っていただくことだ!」と。

「宝塚歌劇団に入ったのは自己表現のためではなく、仕事をしたいから。そんな自分の原点に気付くことで、商売として通用するコンテンツをいかに作るかに、興味の照準を合わせるように」。

話法まで変わり、「はい、がんばります」から「どういう意図で、どのようにしたいですか」「劇団としては何を一番見せたいですか」と「ポイントをきちんと決めて、話し合うように」。(hammer.mule)

< http://www.disney.co.jp/movie/baymax.html
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ベイマックス