[3830] そうだ謝りに行こう

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《"休んでない自慢"とかに思われそうなんですが》

■ショート・ストーリーのKUNI[166]
 そうだ謝りに行こう
 ヤマシタクニコ

■3Dプリンター奮闘記[51]
 今後は光硬化式のプリンターが熱い
 織田隆治




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■ショート・ストーリーのKUNI[166]
そうだ謝りに行こう

ヤマシタクニコ
< http://bn.dgcr.com/archives/20150115140200.html >
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人間、年を取ると謙虚になるものである。毛呂山三郎の場合もそのようで、ある日ふと彼は妻に話しかけた。

「よし子、私は謝りに行こうと思う」

「えっ、誰に何を謝るんですか」

「私も今年55歳だ。年のせいか最近むかしのことをいろいろ思い出す。そして謝りたい気持ちが日に日に増してくるのだ。おまえには想像もつかないだろうが、この私もけっこうひとに迷惑をかけてきた。

むかしスカートをめくって女の子を泣かせたのに友だちの山田くんのせいにしたこととか、タマネギ嫌いの同級生の給食のシチューにタマネギを山盛りにしてそれがきっかけでその同級生は一か月登校拒否になったのにそれを大林くんのせいにしたこととか、高岡くんの弁当のかまぼこと消しゴムをこっそり入れ替えて、発覚するとそれを小林くんのせいにしたこととか」

「なにそれ。どんだけ性格が悪いの」

「すまん。想像もできないだろうが」

「いえ、だいたいそんなことと思ってましたわ。で、謝りたいと」

「ああ。考え出すと一日も早く謝りたい。謝りたい謝りたい謝りたいと、毎日そればかり考えている。いまにものどから『謝りたい』があふれそうだ」

「まあ。それでゆうべもミックスジュースを5杯も飲んだのね」

「そうだ。私は自暴自棄になっている。やけ酒を飲みたい気分だが、下戸なのでね」

「身体によくないわ。お願いだからやけミックスジュースだけはお辞めになってね」

「心配かけてすまない。そういうわけで私は今後、余暇を謝りに行くことにあてるつもりだ」

「すばらしいことよ。あなたも人間がまるくなってきたということね。歳月の贈り物とでもいうのかしら」

「ひまを見つけては『謝りリスト』もひそかに作っておいた。エクセルでね。ほら、sheet1から3まである。美しいだろ」

「まあすてき、さすが仕事のできる人はちがうわ。でも、これ...全部で462件もあるようですけど」

「そうなのだ。これでは一生かかっても謝りきれない。私は途方に暮れた。そこで、この中からセレクトして絞り込んでいこうと思う。たとえば、子どものころカエルの皮をはいでおもちゃにしたことがある。今となってはほんとに残虐なことをしたなと思ってカエルに謝りたいが、もう生きてないだろう」

「あたりまえですわ」

「だからあれは同級生の吉川がやったことだと思うようにする。それから、よそのお宅の庭にそれはそれはきれいに咲いていたチューリップを全部、花の部分だけちぎったことがある。でもチューリップも生きてないだろう」

「その家の方に謝ればいいのでは」

「それでは筋が通らないから、これはその家の息子がやったことだと思うことにする」

「あなたってほんとに便利な性格なのね」

「そんなふうに絞り込んでいくとかなり減るが、それでも200件くらいになりそうだ。ああ、気が急く。こうしてはいられない。『謝りたい』が煮詰まって水蒸気になって鼻から出そうだ。おなかもごろごろしてきた」

「だからやけミックスジュースはやめてと」

「とにかく私は出かける」

「待って、あなた! 私も一緒に行きます」

「何だって」

「夫婦ですもの、当然じゃないの。ちょっと待って。支度します。あら、それより手みやげは。まさか手ぶらで行くつもりじゃなかったわよね」

「ええっ。そんなこと考えてなかった。何を持っていけばいいんだ」

「ちょっと待ってくださいな。ネットで調べます。えーっと、ほら、同じような質問がありましたわ。『年のせいかむかしのことを思い出し、迷惑をかけた人のところに謝りに行きたくなりました。何を手みやげに持っていけばいいでしょう』と」

「あるのかそんな質問。そ、それで回答は」

「『先方の好みそうなものならなんでもいいでしょう』というのがベストアンサーですけど、『件数が多いならタオルや台所洗剤でもいいでしょう』『クッキーの小箱』『私は乾麺にしました』『紅茶のティーバッグ』というのもありますわ」

「なんだそりゃ。引っ越しの挨拶か。まあ、それじゃそうしよう。駅前のデパートで何か買おう。早く支度しろ」

「待って! こういうとき妻はどんな服装をしていけばいいのかしら。ちょっと調べますわ」

「えーっ」

「あったわ。『年のせいかむかしのことを思い出し、迷惑をかけた人のところに謝りに行きたくなった夫に同行します。どんな服装で行けばいいでしょう』という質問が。探せばあるものですわね」

「で、回答はどうなんだ」

「『服装には気持ちが現れるものです。あなたがこれが一番のおしゃれだと思う服装でいいでしょう』というのがベストアンサーですけど『明るい色のフォーマルスーツにコサージュ程度で十分でしょう』『私は訪問着にしました』という回答も。

あら、『通販で買ったスーツにしましたが、先方で同じように謝りに来られたご夫妻と鉢合わせして、奥様のスーツとかぶってしまい、顔から火が出るようでした。確かに、"迷惑をかけた人のところに謝りに行きたくなった夫に同行するときにぴったりのスーツ"と書いてあったし、口コミレビューも良かったので決めたのですが、まさかかぶるとは。みなさんはそんなことのないように』という回答もありますわ。

まあいやだ。じゃあ私は3年前にあなたが買ってくれたフォーマルスーツにしますわ。一点ものということだから、かぶることもないわね」

「いや、あれはその...あの...ま、だいじょうぶだろ」

「何をぶつぶつおっしゃってるの。これから着替えるのでお待ちになって。あ、そうだ。髪型はどうすればいいのかしら。ちょっと調べます」

「いい加減にしろ!」

そういうわけで、毛呂山三郎は今しもフォーマルスーツにコサージュとネックレスで装い、髪は美容院で品よくセットしてもらった妻のよし子と並んで歩いていた。

手に提げた紙バッグには無地熨斗を巻いたクッキーの小箱がいっぱい入っている。最初の目的地は小松原幸男宅。とりあえずエクセルデータのsheet1の真ん中のデータを選んだ。

「小松原幸男さんにはどんなことをしたんですの」

「彼は中学校の同級生でね。社会科のテストの前に一生懸命暗記をしていたのでわざとそのそばで『蒸し芋そなえる大化の改新...』『蒸し芋そなえる大化の改新...』と繰り返しながら通り過ぎた」

「『蒸し米そなえる大化の改新』でしょ」

「そうだ。するとテストにばっちり『大化の改新は何年か』と出て、小松原幸男は641年と書いたのだ。ぷーっ。あんなに簡単にひっかかるとは。わははは」

「あなた、ほんとに謝る気があるんですか」

「あ、あるさ。おほん。悪いことをした。反省している。許してくれるかな。私とは対照的な、おとなしくて気弱そうなやつだったが。なんだかどきどきしてきた」

「だいじょうぶよ。お互いいい年になって、すっかり丸く、おだやかになってるはず。あなたみたいな性格の悪いひとがこうやって謝ろうとするくらいですもの。これを機会に新しいおつきあいが始まるのよ」

「まったくだ。よし子、おまえはよくできた妻だ」

と言ってるうちに小松原幸男宅に着いた。

ピンポーン。

「はい」

「すいません、小松原幸男さんのお宅ですね。むかし中学校で同級生だった毛呂山三郎ですが」

「なんだと!」

バタン! とドアが開き、見るからに性悪な形相の男が顔を出した。

「同級生の毛呂山三郎が何の用だ! おれは最近昔のことをあれこれ思い出すたびに腹が立って腹が立って、いてもたってもいられないから、これからひとりひとり怒鳴り込みに行くところなんだ! そこをどけ!」

人間、年をとると丸くなるケースばかりではないのであった。

【ヤマシタクニコ】koo@midtan.net
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というわけで今年も相変わらずの感じですが、よろしくお願いいたします。今日(1月14日)、たまたま京都の錦天満宮に立ち寄る機会があり、コインを入れると獅子が運んでくれるというおみくじを試してみたところ「大吉」でした。信じることにします。


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■3Dプリンター奮闘記[51]
今後は光硬化式のプリンターが熱い

織田隆治
< http://bn.dgcr.com/archives/20150115140100.html >
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あけましておめでとうございます。みなさん、良いお正月をお迎えになりましたでしょうか?

僕? 僕はさんざんなお正月でした...。"休んでない自慢"とかに思われそうなんですが、ありがたいことに本当に休みなしです...。

そろそろ新しい3Dプリンターを入れないと、業務が押しまくりになってきましたよ。というわけで、新しい3Dプリンターを導入することになりました。年末にお願いして、今週末に届くのです!!!! 

本来なら、レビューなんかを書いてみたいところなんですが、間に合いませんでした。残念。実はまだプレスリリース前の機体ですので、詳細は書けないんです。楽しみですが、それはプレスリリースが発表された後ほど...。

今回導入したのは、熱で素材を溶かしながら積層するタイプのプリンターです。低価格化が進んでおり、安いものは5〜6万から、高いものはまあ、それなりに...という価格帯になってきましたね。

さて、熱溶解積層型の3Dプリンターですが、最近では週刊で送られて来る組み立てキットが発売される等、どんどん身近なものになってきました。

これ、完成するのは何か月後になると思いますが、この手のプリンターの進歩は日進月歩なので、完成した際には少し古いものになっているかと思います。

しかし、僕が今メインで使っている熱溶解積層型の3Dプリンターは、もうすでに3年以上前の物。それでも、メンテナンスをしながら、現在でも第一線で活躍しています。

色々新しい機種を見ていますが、精度が上がったり、スピードが上がったり、支持軸が3点支持になったものが出て来ている感じで、根本的なシステムに変化はありません。

まあ、これは3Dプリンターの原理から見ると当たり前なことなんですけどね。ですが、この「速度と精度」って凄い進歩なんですよね〜。後は、どれだけプリンターに特化した良いデータを作るか、ということでしょうね。

そういえば、フルカラー熱溶解積層型の3Dプリンターメーカーが買収された、という話も聞こえてきましたが、僕これ、どうかな...って思います。

この手のプリンターは、インクジェットのプリンターと同じで、基本色の素材のリールを、ヘッド内部で混合して溶かしながら絞り出す機構になっていると思います。

ですから、色の切り替え部分は、必ずグラテーションになってしまうんですね。つまり、キッチリとした色の切り替えが困難ということ。

フルカラーの3Dプリンターといえば、粉末をインクジェット印刷方式でフルカラーにして固めて行くタイプという認識が定着しているので、フィギュアなんかが印刷できると思われがち。

ですが、僕が思うに、この熱溶解積層型の3Dプリンターのフルカラーは、フィギュア等をフルカラーでプリントするものではなく、グラテーションで色々な色が出せるプリンター、という認識です。

ですが、もしかしたら、もっと凄いのが出て来る可能性もありますよね。このヘッド内部の切り替えが凄くて、本当にフルカラーで出力できる熱溶解積層型の3Dプリンターなんて、出て来たら即導入したいものです。

熱溶解積層型の3Dプリンターも熱いですが、今年から来年にかかっては、光硬化式のプリンターが熱いと思っております。

この数年でその光硬化式プリンターの特許等が切れて行きます。もうすでに色々動きがあるようですが、ここ一、二年の熱溶解積層型の3Dプリンターの進歩と同じくらい、色々なプリンターが出て来ると思います。

熱溶解積層型の3Dプリンターは良い感じになってきましたので、今後は光硬化式のプリンターに注目ですね。

今まで、光硬化式のプリンター本体は結構高価、しかも素材も高価、といった感じでしたから、これも高機能で低価格なものが出て来る可能性が高いです。そういった光硬化式のプリンターが出て来ることにより、素材自体の価格も下がって来ると思います。

熱溶解積層型の3Dプリンターの素材も、二、三年前までは1kg1万円ほどしたのですが、今では2000〜3000円くらいまで落ち込みました。需要が増えると生産量も増え、当然価格も下がって来る図式ですね。

光硬化式のプリンターの素材は、今のところ1kg2万円〜6万円くらいします。これが、これからどこまで下がるかにも期待したいところです。

あと、これが一番難しいんですが、光硬化式のプリンターの場合、どうしてもその構造上から、造形サイズが小さくなってしまいます。これも、もっと凄い技術や素材が出て来て、造形サイズの大型化が進んで欲しいものです。

まあ、デカイものを出力するってことは、それだけ素材も必要になってくるので、素材が高いとどうしても躊躇しちゃうんですよね。失敗したらかなりの衝撃ですし...。

光硬化式のプリンターの難しいところは、出力時に失敗することが結構ある、ということなんです。まあ、これも今のところって感じで、今後どう進歩して行くかってことも期待しています。

今、こういう感じに色々とめまぐるしい進展があるわけですが、最近のマスコミでは、一時期よりあまり取り上げられなくなりました。報道って、珍しいからとか、銃作って捕まったとか、野次馬根性が発端になってるんだな〜とつくづく実感します。

本当の実力はこれからで、今本当は取り上げないといけない時期に来ているんだと思います。特に、「モノ作りニッポン」を取り戻すにはね。そこんとこ、どうなのかな〜なんて思っちゃう今日この頃です。

さて、次回は新しいプリンターのレビューでもしてみますよ〜! 今回はちょっと短めですみません。次回はジックリと!

【___FULL_DIMENSIONS_STUDIO_____ 織田隆治】
oda@f-d-studio.jp
< http://www.f-d-studio.jp >


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編集後記(01/15)

●この年末年始に古い映画DVDを10本見た。その中に黒澤明監督作品が2本あった。「まあだだよ」と「蜘蛛巣城」である。前者は予想通り、たいして面白くなかったが、後者は予想以上のみごとな映画だった。「まあだだよ」は1993年公開。黒澤明の監督生活50周年・通算30作目の記念作品として大きな期待を集めたが、興行的には失敗し、結局この作品が半世紀以上の監督生活を全うした黒澤の遺作となった。先生(内田百けん=門構えに月)と、彼を慕う門下生の交流を描いたものだが、おそろしく退屈で、とくに前半は忍耐が必要だった。この映画を見て泣く男が少なくないようだが、わたしにはわからない。

先生は門下生から超絶に尊敬されている。尊敬される理由を示すエピソードは、冒頭の教室における寛大さぐらいで、どうしてこうも敬愛の限りを尽くされる存在なのかはわからない。主たる世話役の三人も先生に傾倒しきっており、金銭面の援助から、いなくなった猫捜しまで全身全霊で尽くすのだから、昔の話にしてもこんなお目出度い人ばかりでいいのかと思う。愛猫がいなくなって取り乱し泣く先生を見て、ああ百けんがモデルなのかとやっとわかった。だったらもっと癖のある愛すべきクソ爺であったほうがいい。松村達雄、香川京子はさすがにうまい。自然に演じているらしい所ジョージができ過ぎだ。

「蜘蛛巣城」は1957年の作品で、シェイクスピアの「マクベス」を日本の戦国時代に置き換えて映画化したことで知られる。恥ずかしながら「マクベス」を正確には知らないので、みごとな翻案といわれてもわからない。そんなことはどうでもいい(わけない)が、ただならぬ面白さである。知らないから展開が読めず、かえって面白かったのかもしれない。冒頭の「戦況報告」シーンでは兵が何を言っているのかわからない。すぐさま字幕を出して見続けたが、台詞の格調高さに驚いた。武将・鷲津(三船敏郎)の物の怪との出会い、主君殺し、親友殺し、そして自らの心が壊れていくまでの経過はよく理解できる。

妻の浅茅を演じるのが山田五十鈴。能面のような表情と美しく正しい言葉で、理路整然と(完璧だ!)主君殺しをそそのかす。そのみごとな立ち振る舞いは、もはや神(妖怪か)の域に達した凄みを感じる。最後にはゾッとする狂気のシーンもある。そして矢ぶすまの中の三船、このクライマックスシーンはもちろんトリックだと思ったら、実際に矢を射かけているのだという。本物の矢が次々に飛んできて、三船の身体すれすれで板壁に激しく突き刺さる。三船の恐怖の表情は本物だったのだ。蜘蛛巣城のセットのみごとさに加え、乗馬シーン、群集シーンなどにも隙がない。CGのなかった時代の映画制作の凄さに圧倒される。最近の映画のうすっぺらさ、嘘くささはCG依存が元凶なのか。(柴田)

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「まあだだよ」

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「蜘蛛巣城」


●眠い。まだ寝られない。仮眠でいいからしたい。今日の夜は寝られるはずだ。なぜこんなことに......。 (hammer.mule)