Otakuワールドへようこそ![204]街コスは悪か
── GrowHair ──

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乗ると世界観ががらっと変わる魔法のエスカレータがここにある。会議棟6階に続く長いエスカレータ。ゆったりゆったり昇っていると、隣り合わせに平行に配置されている下りエスカレータをゆったりゆったり降りてくる何10人もの人たちとすれ違う。

7割方が女性。着飾ってけっこうかわいかったりする。キュンキュンである。しかし、昇っていくのは全員が男性である。上では魔法が起きているに違いない。まあ、上にあるのは男子更衣室なんだが。

12月28日(日)〜30日(火)に東京ビッグサイトで開催されたコミケの初日、私は初めて更衣室を利用した。むくつけきおっさんが清純無垢な女の子に変身していく過程がつぶさに観察できてしまう。たとえて言うなら、うっかり毒キノコを食べてしまい、恐ろしい幻覚がが現れ、やーしまった、えらい扉を開けちまったという感覚である。幻覚キノコを実際に食ったことはないけれど。

自分だって同類ではないか、とお思いかもしれない。いやいや、違う。私はフェティッシュ系の女装であって、元のおっさんの痕跡を残しまくりでも、ただ着たいだけなのである。普通に歩いていてもバレないレベルの完璧なりきり系とはカテゴリが別なのである。




●ルール的にはセーフだった

今回、わざわざ面倒な思いをして更衣室を利用したのにはわけがある。結果的にはその必要はなかったのかもしれないが、しかし、一度はっきりさせておくという意味ではちょうどいい機会だった。

コミケにはコスプレ来場禁止のルールがある。なぜそのようなルールが設けられているのかは、よく知らない。まあしかし、一日あたり20万人近くの人が来場するイベントであるからして、その多くが漫画やアニメのキャラに扮して来場したら、公共の道や乗り物でえらく異様な光景が展開するに違いない。

事情を知らない一般ピープルがそれを見たら、狂信的なカルト教団による同時多発テロが勃発したのかと勘違いして、恐怖を感じるかもしれない。苦情がコミケに持ち込まれたら、今後の運営に支障をきたしかねない。余計なことをして一般ピープルを刺激するのは得策ではない、という知恵なのかもしれない。

ところで私がセーラー服を着てコミケに行くことは、このルールに反するのか、という疑問が前々からあった。実にキワキワでややこしい問題ではあるのだが、私はいちおう、ルール違反にはあたらないであろうと考え、実行してきた。

その根拠は三つある。第一に、コミケのウェブサイトに、コスプレの定義について、下記のような記述がある。

・その行為がコスプレであるかどうかは、コスプレをする本人がそのキャラクターや作品を好きだという気持ちの「表現する意志」があるかどうかによって決まります。

これに照らして考えると、私は作品に登場するキャラクターに扮しているわけではなく、架空の学校の制服を着て歩いているにすぎない。仕事がオフのときに着る普段着であって、コスプレとは認識していない。これは言い逃れのための屁理屈ではなく、実際に普段着て歩いていることはすでに多くの人の知るところであるから、嘘はついていない。

第二に、一般参加の入場の際には、待機列に2時間ほど並んで入ったことがある。当然、スタッフの目にさんざん触れているが、一度も注意されることはなかった。ということは、ルール違反とはみなされていない、と解釈できるであろう。

第三に、出場時に呼び止められたことが二度ほどあるけれど、その際も、コスプレではない旨を説明したらすぐに笑って許してもらえた。私としては、着替えがないので仕方がなく黙認されたという解釈ではなく、ルール違反ではないと納得してもらえたと解釈している。

ならば、堂々としていればいいのであって、わざわざ面倒な思いして、セーラー服とローファー靴とスクールバッグをスーツケースに入れてごろごろと転がしていき、現地の更衣室で着替えるなどということは必要がない理屈である。

用心深いサークル主さんから懇願されてしまったのである。今回は、私にとって初のサークル参加であった。実際にはサークルの運営にはぜんぜん関わっていないのだが、私の撮った写真と書いた文章が同人誌に掲載されたよしみで、1サークルあたり3枚配布されるサークルチケットのうちの1枚をサークル主さんからもらっていたのである。

サークル「おとめし」のねこさん氏の企画により、11月3日(月・祝)、マウスプロモーションに所属する新人声優・水間友美さんとお互いに写真を撮りっこした。このときの写真と感想文が掲載された同人誌がめでたく完成の運びとなり、冬コミで販売されたのである。
< http://blog.livedoor.jp/otomeshi/archives/41984747.html
>

水間さんと、同じ声優事務所の中村桜さんが売り子として立ってくれることになっている。私がウチからセーラー服を着ていくことはルール違反ではない可能性が高いにせよ、万が一、トラブったりしたら、次回からサークル参加できなくなっても困るし事務所に迷惑が及んでも困る。そういうわけで、今回ばかりはB面で来て現地で着替えてくれませんか、と懇願されてしまったのである。

まあ、そういうことならいいでしょう。更衣室を初めて使ってみるのもいい経験になるに違いないし。その結果が毒キノコである。いや、まあ、面白い経験ではあった。

また、収穫として、ルール違反かどうかの問題に決着がついた。更衣室に詰めているスタッフさんに見解を聞いてみたのである。それによると、まず、ルール違反には当たらないとのこと。ただし、更衣室を使って着替えることをお勧めします、とのことであった。

この格好で来場することをよく思わない人たちもいるかもしれない。そのとき、ちゃんと更衣室で着替えていれば、この人はちゃんとしています、とコミケスタッフが護ることができる。しかし、勝手にセーラー服で来場した場合には、来場者どうしのトラブルについてはスタッフとしては手出しせず、本人どうしで解決する以外にない。

つまり、誰かからイチャモンをつけられたときには、ルール違反ではない旨を自分でちゃんと説明して解決すればいいってことだね。

●コスプレ外歩きもけっこう叩かれる

コスプレ来場禁止はコミケのルールなので、コミケに行く人は守らなくてはならないのは仕方ないとして、コミケでも何でもない日に、キャラに扮して往来を闊歩したり電車に乗ったりするのはどうだろうか。これもなぜか、けっこう叩かれる。

オタクのオタク叩きは恐ろしい。あのオタクもこのオタクも実際には大した違いはないのだが、ほんの毛筋ほどの違いを大神殿のごとく強調して、あいつと俺は違う、とやる。オタクの掟をひとたび破ったりしようものなら、オタクの魂を悪魔に売り飛ばした裏切り者のごとく断罪される。くわばらくわばら。

かつて、オタクは一般ピープルからよくみられていなかった。よくてせいぜい珍獣扱いであり、悪くすれば犯罪者予備軍扱いである。ゲームなどのバーチャルな世界に没入することにより、現実とフィクションの区別がつかなくなり、ゲーム感覚で犯罪に走るのだ、などとまことしやかに言われた。

「東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件」の犯人・宮崎勤が検挙された1990年前後、特にひどかった。犯人の部屋から大量のロリコンビデオが出てきたことをもって、あれはオタク全体による犯罪であるかのごとく言われた。

自分らの身を守るためには、地下にもぐる以外になかった。自分がオタクであることを親にもバレないようにひた隠しにし、同人誌販売やコスプレのイベントは一般人から決して気づかれない閉鎖空間で開くものと決まっていた。別に悪いことをしているわけではないので、堂々としていればいいようなもんだが、あの魔女狩りのムードにおいてはそうもいかなかった。

オタクどうしの間で、キャラのコスをして外を歩かないという申し合わせがあった。そういうことをすると目立つし、奇異であるから、一般人から侮蔑的な目でみられる材料を与えることになる。その人個人が馬鹿にされるだけで済めばいいが、オタク全体の評判を下げることにつながりかねない。

そうすると、その一員たるわれわれも迷惑をこうむることになる。野球選手が悪さをはたらけば、そのチーム全体、あるいは野球全体の評判低下につながるという連帯責任の考え方である。じゃあ、埼玉県民が犯罪をはたらいたら埼玉県全体の評判低下につながるかといえば、そうとも言い切れず、カテゴリ化による連帯責任の妥当性がどこまで有効かは微妙なところではある。

ともあれ、一般人からのバッシングがひどかっただけに、その反動で、オタクどうしの結束は非常に堅いものがあった。コス歩きをすると、ネットの掲示板などでえらいバッシングにあうのはかつても同じであったが、その前提には、オタクどうしの結束を乱すから悪いという暗黙の了解のムードがあったように思う。

最近は、どうも雰囲気が変わってきた。一般人からのバッシングが緩んできたことに伴って、オタクどうしの結束も緩んできていて、掟破りに対するオタクによるオタク叩きは、決して分かり合えない他人に対する冷徹な糾弾の様相を呈してきている。

何もしない人間が余計なことをする人間を叩くことで、優越性を主張する議論にはなにか不毛なものが感じられる。オタクに対する私の敬意もだんだん薄れてきた。

●ロケ地が減っていったという切実な問題

コスプレイベントの開催地が拡大されたり、ロケ地の許可を取って個人撮影するのが流行りはじめたころがある。2005年ごろだったか。

それまでのコスプレイベントは、一般人をシャットアウトした閉鎖空間で開催されるのが常で、開催地はごく限られていた。東京ビッグサイトとか、TFTとか、大田区産業プラザPiOとか。

ところが人々はだんだん飽き足らなくなってきた。開催地が限られていただけに、写真の背景をみればどこで撮ったかが一目で分かってしまう。完成度の高いコスプレイヤーを単なる記録としてきれいに撮っておきたいのであればそれでもいいのだが、背景も含めて元作品の設定や世界観を反映した、写真として全体的に完成度の高いものを残したいという指向が高まってきた。

『テニスの王子様』ならテニスコートで撮りたいし、平安時代を舞台にした乙女ゲーム『遙かなる時空の中で』なら実際の寺院や日本庭園で撮りたいものである。

日本庭園やバラ園などの許可をとってのコスプレ個人撮影は、私が始めたようなものである。それまでそのような撮影をしたいと申し出る者がいなかったため、庭園側もコスプレがどういうものか分かっておらず、まあ害になりそうもないからいいか、と許可を出していたようなところがある。

撮影のマナーには非常に気をつかった。許可をとったとはいえ、一般の来場者が優先であることは庭園側からも釘を刺されており、撮影者とコスプレイヤーがお互いの後ろ側を見ていて、人が通ろうとしたらよけるようにした。

また、いぶかしげな目でじーっと見ている人があれば、これはゲームのキャラクタに扮しているのです、と説明してあげることで、安心してもらえる。一般の人々からは「面白いことをしている」と概して評判がよかった。

また、一般の来場者の中には、通りすがりに無断で写真を撮っていく人もいた。これはコスプレイヤーやカメコの間ではご法度なのだけど、そのオタクルールを一般人にまで主張できるかというと微妙なところがあり、黙認することにしていた。

また、こういうとき、コスプレイヤーたちははしゃぎ過ぎる傾向があり、あまりうるさくならないように、抑えて、抑えて、と注意したりもした。

かくて、私が個人撮影する分には何の問題も起きず、いつも平和的に事が進行
したし、二度目、三度目でも、また場所を使わせてもらえた。

コスプレイベントも、遊園地などで、一般の来場者と混ざって開催することが多くなってきた。「よみうりランド」とか、「としまえん」とか、浅草「花やしき」とか、茨城の「ポティロンの森」とか、和歌山の「ポルト・ヨーロッパ」とか、鳥取の中国庭園「燕趙園」とか。

ところが、ある時期から、コス撮影に使えるロケ地がだんだん減ってくるということが起こった。群馬のロックハート城とか、愛知の明治村とか、何回かコスプレイベントを開催していたのに、ある時点からもう許可が下りなくなった。

どうやらマナーの悪いコスプレイヤーが、一般の来場者とトラブルを起こしたらしいといううわさが立った。真偽のほどは分からないのだけれど、小道具の武器をもって子供を威嚇しちゃったとか、景観スポットを長時間占拠しちゃったとか。

もしかすると、そんなことはなかったのかもしれない。それまで、遊園地や庭園でコス撮影できないものと思い込んでいたのが、誰かがやることによって問題なくできると分かったとたん、みんなが殺到しちゃって、対応が面倒くさくなっただけなのかもしれない。

いずれにせよ、そのころから特高警察のごとく、コスプレイヤーがマナーの悪いコスプレイヤーに目を光らせ、迷惑者を容赦なく叩くというムードになっていったように思う。

●人を不快にさせることは迷惑か

キャラに扮しての外歩きを叩く側の理屈として、マナーに反するというのがある。見て不快に思う人がいるので、それを尊重して慎むべきである、と。

洋食屋でずずずと音を立ててスープを飲むのはマナー違反である。銭湯で、からだに湯をかけずに湯船に直行するのはマナー違反である。それと同類だ、と。

スープや銭湯の場合は、不快に感じる側にある種の正当性があるように思われる。何をもって不快と感じるかについては時代や地域によって異なるので、一概に論じることはできないが、しかし、スープや銭湯の場合には、そりゃ不快になるわな、とある程度納得性があるように思える。

公共の場でのキャラコスはどうだろうか。まあ、見て不快に感じる人はいるにはいるであろう。その気持ちを慮って、自主的に回避するという「自分ルール」を自分に適用するのは、それはそれで立派なこころがけと言える。

しかしながら、その自分ルールを他人にまで適用しようとするならば、なんらかの論理的な根拠がほしいところである。私がネットの議論を読みまわった限りにおいては、そのような論拠を見つけることはできず、コスプレイヤーたちの間での感覚と多数派を頼みにしているようにみえた。

つまり、公共の場でのキャラコスはマナー違反である、という意見が論拠を示されることなしに次から次へと挙げられ、それが正論みたいなムードになっている。

法律に反しないからいいと思ってマナー違反を平気でやってのけるような人とは決して分かり合えないので、もう放っておくしかない、という意見も多数出ている。まあ、放っておいてくれるならそれはそれで平和でいいのだけれど、言外には、自分たちが絶対的に正しいので、そういう人たちは思いっきり侮蔑してよい、というムードが漂っている。ああめんどくさいめんどくさいめんどくさい。

たとえば、同性愛はどうだろうか。同性どうしで手をつないで表を歩いた場合、それを見て不快に思う人は確実にいるであろう。だが、それをもってそのような行為を慎むべきである、と他人に対して言うことに正当性はあるのだろうか。

私は、個人的にはそっちの趣味はなく、仮にそういうカップルを街で見かけたら、多少は心がざわつくであろう。しかしながら、理解できないからといって、そのような人たちを糾弾する権利は私にはないと考えている。たとえ理解できなかろうと、多少不快であろうと、他人の趣味は趣味として、それを個人の自由という基本的人権として、全力で擁護したい。それが個人主義の考え方ってもんである。

自分に厳しいルールを課すのは立派な心がけとして、それを他人にまで強要しようとし、それに 従わない人間を侮蔑してもいいと考えるのは、いくぶんか心が狭いのではなかろうかと感じてしまう。

こういうところは、あいまいにしておいていいのではあるまいか。どうせ時代が下がれば、人々の受け入れ方も変わってくるであろうし。日本文化には、あえて結論まで突き詰めずにあいまいさを残したまま平和的に共存するという美徳がある。

クリスマスをキリスト教式で祝い、正月は神道式で、葬式は仏教式なんてヘンといえばヘンなのだけれど、そこをとやかく言わずにあいまいに受け入れている。何事につけ、真剣に突き詰めて議論を戦わせれば、もう相互理解は不可能なんじゃないかというくらい意見が相違する人はいる。しかし、それはそれとして、特に大紛争が起きるわけでもなく、平和的に共存している。日本文化のいいところだと思っている。

おっさんがセーラー服を着て表を歩いていたら、そりゃ不快に思う人はきっといるでしょう。ところが、そういう人たちは何も言ってこない。なので、感性においては相容れないものがあっても、表面的には平和的に共存している。

結果、私としても、「差別反対〜!」なんてシュプレッヒコールを上げる必要が生じない。多少は不快に思いながらもスルーしてくれる大多数の人々には大いに感謝している。それはとりもなおさず日本の民度の高さを示しているわけで、それは日本文化のたいへんありがたいところで、日本人であることを誇らしくも思う。

海外、特に欧米諸国だと、同性愛者が手をつないで歩くのも、奇矯な格好をして歩くのも、基本的人権として法的には擁護されてはいるものの、それを実際に行使しようとなると、いちいち政治運動のように喧嘩腰の大声で権利主張しないとならない面倒くささがあるというイメージがある。

日本のスルー力のおかげで平和共存が保たれているのであるから、それに感謝こそすれ、なお敵対を煽るように「差別反対〜!」などと声を挙げるのは筋ではないと考えている。そのあたり、うっかり態度がデカくならないように注意せねば、と思っている。

公共の場所でのキャラコスは迷惑行為なので自粛すべき、というのがコスプレイヤーたちの間で共通認識になっているようだが、大いに結構じゃないか、という立場から反論を書いてみようかと思っていたら、すでにきっちりやってくれている人がいた。それだよ、それそれ。全面的に賛成。非常に論理的に書かれていて、説得力がある。

「野良コスプレの心得」(1)〜(6)
< http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n74893
>
< http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n74895
>
< http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n74896
>
< http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n74897
>
< http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n74925
>
< http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n81913
>

ところで、10月31日(金)、ハロウィンの日の夜の渋谷や新宿、ものすごかったね。初音ミクやらアナ雪やら、キャラが大量発生して街にあふれた。ハロウィンとはキャラのコスプレをするのが許される日ではない、その由来も知らずにはしゃぐのは軽薄である、などと正論を吐く人もいるにはいたが、もはや多勢に無勢で、負け犬の遠吠えみたいになっていて、小気味よかった。

時代が下るにつれて人々の価値観や許容性も変化していくので、あんまりかたくなに自己の主張に固着していると、気がついたときには、時代から置いてけぼりになってた、ってなことになりかねない。私の場合は、そろそろ時代が追いついてきた感じなので、もっと最先端へ逃げていかなくてはならないのか。

【GrowHair】GrowHair@yahoo.co.jp
セーラー服仙人カメコ。アイデンティティ拡散。
< http://www.growhair-jk.com/
>

元旦には、わたらせ渓谷鐵道に乗って終点の間藤まで行ってきた。一両編成の茶色いディーゼルカーが、渡良瀬川沿いの原生林の急坂を全力でのろのろと登っていく。ブゥオーーーン。

私は、大回り乗車で一日中列車に乗って読書することがある。気にいっているのは中野 〜 八王子 〜 高麗川 〜 高崎 〜 小山 〜 新宿のコースである。もっと時間があるときは、友部まで行って常磐線で帰ってくることもある。

あるとき、高崎から桐生止まりの両毛線に乗って、終点桐生で次の電車を待って過ごしたことがある。そこで、同じホームの反対側から出るわたらせ渓谷鐵道を発見した。

乗りたいなぁ、と指を咥えて眺めていた。そしたら、いったん発車した列車がすぐに止まった。あれ? 運転手さんが窓から首を出して振り返り「乗りますかぁ」。

「いえいえいえいえ、いいですいいです。眺めてただけです」。いやぁ、なんて素朴なんだ。いつかぜったいに乗りに来るぞぉ。

それが元旦に実現した。列車は両毛線の軌道を高崎方向に走り、渡良瀬川を渡ったところで分岐して、川沿いにずんずんずんずん登っていく。途中は、人の手がまったくついていない原生林。何でもないところで急にブレーキを引くので、何だろうと思って見てみると、かなり前方の線路をタヌキがのそのそと横切っている。

横切り終わったのを確認して、発車オーライ。まあ、タヌキ様じゃ、仕方ないよね。

足尾 〜 間藤間は、宮脇俊三氏が国鉄全線を乗りつぶした際の最後の一区間である。

間藤に到着すると、そこは極寒だった。寒暖計はマイナス4度を示している。ミニスカ、生足ではちとキツかった。ホームにはクリスマスのような飾りつけが施され、イルミネーションがピカピカと光っている。

歓迎の意を示してくれているようでありがたいのだけれど、いかんせん人っこひとりいない極寒のホームで、見る人もなくピカピカ光っているのはかえって寒々しくもある。周辺をちょこっと歩いてみたが、やっぱり人がいない。

あまりに寒いので早々に列車に戻って発車を待った。下りるにつれて寒さは緩和されていき、桐生に着いたらたいして寒くなかった。

まるで非現実の空間に迷い込んだような幻想的な旅であった。暖かくなってきたころにまた乗りにいこう。

1月10日(土)は、まったくの偶然なのだが、さいたまスーパーアリーナにふたつの用事ができて行った。このイベント会場は客席が可動式になっており、全体をひとつの会場として使うこともできるし、縮めて使うこともできるようになっている。縮めた場合には、余白の部分を別のイベントに使える。

余談だが、さいたまスーパーアリーナは「玉アリ」と略すようである。「玉アリ」とか「竿アリ」とかってニューハーフ用語かと思ってたら、ググってみるとイベント会場のほうが圧倒的に多くヒットする。「ベルばら」は「ベルサール秋葉原」よりもまだまだ「ベルサイユのばら」のほうが圧倒的に多いけど。

「パイスラ」はかつては「パイロンスラローム」の略で、並べたパイロンを左右に縫って走ることを表すバイク用語だったはずなのだけど。今ググってみると、上位100件にその意味のはひとつも出てこない。

肩掛けカバンをたすき掛けにしたときに、胸の隆起が強調される現象を指していう「おっぱいスラッシュ」。「π/」とも表記する。話が逸れた。なので、縮めた隙間にできた三日月形の会場の略称は「隙アリ」でいいんじゃないかと。

で、その隙アリのほうで、埼玉商工会議所が主催するクールジャパンのイベントが開催された。9組のコスプレイヤーが立ち回りやダンスなどのパフォーマンスを披露する90分間のセクションの中で、なぜか私にも出演オファーが来た。登壇して軽くしゃべってくれないか、と。

その日はBABYMETALのライブを見にいくので無理です、といったんは断ったんだけど、それって同じ会場じゃん、と主催者側が気がついた。わーい両方行けるぞ、と。

隙アリのイベントは入場無料だったため、BABYMETALのライブを見に来た人がそうとう入ってくれて、観客の数がすごかった。数百人はいたか。

その翌日は、同じ隙アリで学研が主催のイベントだった。小中学生向けのファッション&キャラ雑誌「ピチレモン」と「キラピチ」のモデルのショー。その後に、前日と同様の90分間が設けられ、また出てきた。隣のアリーナでは何のイベントも開催していなかったので、観客の数は前日ほどではなかったけど。

1月12日(月・祝)、『BAR 嫌われ野菜』の野菜アイドルであるトマトちゃんとデートしてきた。『BAR 嫌われ野菜』とは、都内某所にあって、嫌われがちな野菜が集まる会員制バー。日頃のストレスを抱えた嫌われがちな野菜たちが癒しを求め、今宵もバーで酒を嗜む。メンバーには、セロリ、パセリ、ナス、トマト、ゴーヤがいる。KADOKAWAの4コマ漫画。
< http://kiraware-yasai.com/
>

ComicWalker にて無料配信されている。
< http://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_IP00000001010000_68/
>

1月19日(月)より2週にわたりセーラー服おじさんとのコラボ漫画が配信されるという企画。それでトマトちゃんと会ってきたというわけだ。渋谷でカラオケの後、原宿を散歩。その模様は2月上旬にcharamafでレポートされる予定。
< http://charamaf.com/
>

写真はこちら。
< https://picasaweb.google.com/107971446412217280378/Tomato150112
>