[3844] レンダーファームを使ってみた

投稿:  著者:  読了時間:20分(本文:約9,900文字)


《イタリア訛りのMANGA言語とかね》

■ローマでMANGA[84]
 MANGAの制作システム=現実的合理性+α
 midori

■グラフィック薄氷大魔王[420]
 レンダーファームを使ってみた
 吉井 宏



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ローマでMANGA[84]
MANGAの制作システム=現実的合理性+α

midori
< http://bn.dgcr.com/archives/20150204140200.html >
───────────────────────────────────
90年代に講談社のモーニングが、海外の作家の書き下ろし作品をのせるという前代未聞の企画を遂行していたときにローマで「海外支局ローマ支部」を請け負って、そのときのことを当時のファックスをスキャンしつつ、それをもとに書いているシリーズです。

イタリアのマンガ雑誌「linus(リヌス)」1995年6月号の、我らがイゴルトとヨリの特集記事を紹介してから、その中からお二人の意見で「これは」と思うものを取り上げてMANGAとマンガ(日本のMANGA以外のコミックス)の違いを掘り下げようと試みている。

●イゴルトが「NOooo!!」と言ったわけ

インタビューの最後に、イゴルトは編集者に言及した。

「東洋ではエゴ(個)は西洋ほど重要ではない。僕はアシスタントに命令しないように気をつけている。...(中略)...僕らの編集者である堤さんは『GON』の編集者でもある。『GON』はガツガツした小さなディノサウルスだ。この作品をまったくの無声でやる、と決定するのに、それはたくさんの試作をした。考えうる限りの仮定を観想してみるのはぜひやらねばならない。

僕がスゥォッチのためにデザインした『ユーリ』の権利を買うと決定すると、分析し、背景についてサジェスチョンをしてきた。アーチストの決定に介入してくる。彼らの投資は大きいものだから。が、絶対に独裁的なやり方はしない。

ここでもう少しいいものができるのではありませんか? それに応えるかどうかはアーチストによる。ぼくは自分の意見を変えなかったこともあるし、判断が誠実で的確だと思った時には変えた。ユーリについては気に入ってもらっている。

否、選ばれたものと言っても言い。だからこそ重箱の隅をつつくような分析を続けている。編集者は絶対ではない。が、豊かな経験を持っている。そしてアーチストのみが間違いを犯すというヨーロッパの概念は通用しない...」

この中で触れている『GON』とは田中政志氏のMANGAで、ディノサウルスのような恐竜のキャラクターでイゴルトが講談社に関わっていた時にモーニングに掲載されていた。
< http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B4%E3%83%B3_%28%E6%BC%AB%E7%94%BB%29 >

田中さんの担当も堤さんで、まだあまり売れてない田中さんの作品『FLASH』に登場した謎の恐竜の子供が原型で、堤さんがこれおもしろいんじゃない? と推したらしい。

「この作品をまったくの無声でやる、と決定するのに、それはたくさんの試作をした」というのは、堤さんから無声の決定をするまでに田中さんが提案してきたネームを80回ボツにした、というエピソードを言っているのだ。

この話を聞いた時、イゴルトは身を反らせて「NOooo!!」と苦痛の表情をした。自身も作家であるから、苦心して作ったストーリーボードを屑籠に入れる気持ちがわかるのだ。それも80回!! そして、同時に80回もめげずに提案した田中氏に対する賞賛だ。

そしてこのことに言及した理由はふたつ。まず、編集者が作家とその作品の誕生に積極的に関与するというあり方が目新しいからだ。イゴルトが感じたのは目新しいというほんわかしたものではなくて、「えっ?! そういうことアリなの??!」という驚きだ。ヨーロッパでは編集部と作家が作品の誕生に口を出すことは考えられない。

次に、これ! と思うものが誕生するまで何度でも推敲を重ねていくあり方のため。もちろん、編集者と作家のコンビ全部が80回もネームを作るわけではないけれど。

納得が行くまでとことん掘り下げる、ということはイゴルトの制作態度なので共感できたのだろう。我が意を得たり、という感じだろうか。その作業を作家一人ではなく、編集者という協力者と一緒にやっていくという状況は理想的な姿に映ったようだ。

●「同じ釜の飯を食う」のがMANGA

次の、「僕がスゥォッチのためにデザインした『ユーリ』の権利を買うと決定すると、分析し、背景についてサジェスチョンをしてきた。アーチストの決定に介入してくる。彼らの投資は大きいものだから。が、絶対に独裁的なやり方はしない」というのは、編集者がいかに作品の誕生に介入してくるのかを、そのやり方をしないヨーロッパにいるLINUS読者に語っている。

ヨーロッパのやり方だったら、イゴルトがメインキャラである「YURI」の作画を見せ、おおまかな筋を伝え、大筋でギャラの合意に至れば後は作家の個人作業になり、締め切りに間に合うように黙々と作業を続けるのみだ。

だから、イゴルトがユーリをモーニングに見せ、モーニングが掲載を決め、担当編集者がやって来て「ユーリ」という作品の全体像やら一回のページ数やらを次々とサジェスチョンをしてきた時に、ぶったまげたのだ。だから「アーチストの決定に介入してくる」という言い方になった。

そう、ヨーロッパでは漫画家はアーチストなのだ。どの漫画家(作画家)もそのような意識で仕事をしている。国民全員がそう認めているわけではないけれど。例えば、知り合いの漫画家さん、ちゃんとプロとしてマンガだけで食べていけてる人なのだど、そのお父さんは「いつになったらまともな仕事につくんだ」と心配してるそうだ。

堤さんは「YURI」に惚れ込んで、なにか新しい形態で世に出したいと考え、イゴルトから送られたカラーコピーの試し描きや参考画を使って、絵本のような形を提案してきたことは以前に書いた。ちゃんと紙を中央で折ってホチキスで止めて簡単に製本して、イゴルトと私に宅配便で送ってきたのだ。

ここまで突っ込んでサジェスチョンするようなやり方はヨーロッパではない。「彼らの投資は大きいものだから」と、現実的、合理的な考え方のイタリア人らしく分析する。

逆に言うと、日本の仕事の仕方は現実的合理性に+αがあるような気がする。自分の仕事のプロ意識とか、完璧さを求める、というのもそうだけど、私が感じているのは、読者サービス...かな。制作している作品の向こう側にいる人への配慮、サービス精神とでも言えるもの。「お・も・て・な・し」精神かもしれない。

「絶対に独裁的なやり方はしない。ここでもう少しいいものができるのではありませんか?」

堤さんの対応は常に(ほぼ)丁寧だった。これはイゴルトがプロとしてもう何年も仕事をしているベテラン作家であるから、敬意を払っていたせいでもある。駆け出しにはきつい言い方をすることもあると思う。理由を言わずにボツとか。

作家の作品に介入してくる、という権威的なやり方をする状況だったら、その言い方は上から目線でなされる...というのがイタリア的感覚だ。それが下出に出てくるのでイゴルトは新鮮に感じたらしい。

突如、無関係と思える逸話を思い出した。日本の自衛隊がイラクの復興援助のために出動した時の話だ。他のヨーロッパの軍隊は上から目線で「復興してやる」という態度で、現地のイラク人に対してもそのような言動であったらしい。イラク人作業者に命じて彼らだけ働かせる。

ところが自衛隊は、イラクの土木関係者と同等の立場でミーティングをし、隊長以下、士官も土にまみれて働いたそうだ。外国の作業場では3時、4時になるとイラク人作業者は帰ってしまうのだが、日本のところでは夕方になってもまだイラク人作業者が働いているので、見学に来る外国の軍人がびっくりしたそうだ。
< http://www2s.biglobe.ne.jp/nippon/jogbd_h17/jog378.html >

この自衛隊の現地に対する態度が出てくる基になるものに共通していると思う。「同じ釜の飯を食う」という感触かな?

●ヨーロッパの概念は通用しないMANGA

最後の「編集者は絶対ではない。が、豊かな経験を持っている。そしてアーチストのみが間違いを犯すという、ヨーロッパの概念は通用しない...」。

ヨーロッパでは出版社のOKが出たら、孤独な作業で作品を仕上げていくので、作品がうまく行かなかったら作者のせいだ。日本の出版社では、少なくも当時の講談社モーニングでは、掲載した作品がうまく行かなかったら編集部の責任と考えていた。それもイゴルトには新鮮に映り、好感を持って受け止めた。

実際、海外作家描きおろし企画が終わった時、企画考案者であり、編集長だった栗原さんは「海外作家の作品の人気が出なかったのは、ひとえに編集部と編集部員の力不足のせいです」とおっしゃっていた。

MANGA言語を外国人に、特にメンタリティがすごく違う西洋人に理解してもらうのは至難の技だ。これは、身にしみてわかっている。ローマのマンガ学校でセミナーをして10年以上経つが、未だにこのうえなく難しい。

最近、そして外国人作家にMANGA言語100%で描いてもらう意義はあるのか? という疑問も出てきた。

もっとも、100%理解してもらえないので、どっちにしても100%にはならないから、微妙な言語が出きてちょうどいいのかも。イタリア訛りのMANGA言語とかね。

次回から、この企画に参加した三人目の作家の登場になります。

【Midori/マンガ家/MANGA構築法講師】midorigo@mac.com

ISISをイスラム国と呼ぶのをやめよう、という説に大いに賛成だ。国と言ってるのは、テロ組織自身であってどこも国とは認めていない。じゃ、私が自分の庭を「国だ!」と言ってまかり通るの?

イスラム国と言ってしまうとイスラム教の国みたいに見えてしまう。他のちゃんとしたイスラム教の人々、イスラム教を国教とする国々に失礼です。

2ちゃんなどの提言で一番気に入ったのは「イスイス団」。どうせ悪い奴らなんだし、仮面ライダーの敵みたいな、ちょっと小馬鹿にした感じで小気味いい。

Twitterで「クソコラグランプリ」なるものが盛り上がった。「イスイス団」がアップした人質の映像をアホっぽくコラしたもの。人の命がかかってるのに不謹慎、という批判も出ている。

でも、テロは恐怖を与えて混乱させるもの。それを怖がらずにおちょくるというのは、今までなかった恐るべき(テロ組織にとって)対抗方法なんじゃなかろうか。それで人質が解放されるわけではないけれど。

よくわからないのは、「クソコラグランプリ」に何枚か、イスイス団も自分たちのコラをアップしてきたり、日本のTwittersとやりとりしたりしてること。ちょっと真面目にテロしないでいいの? という気持ちになっちゃいます。アルカイダとは全く別の性格を持った組織なんだと思う。

1月28日、クルド人勢力がイスイス団からコバニを奪還したそうで、こうした勢力が増していくといいなと願う。

< http://www.kurdishquestion.com/index.php/kurdistan/west-kurdistan/ypg-press-statement-on-kobane-victory.html >

MangaBox 縦スクロールマンガ 「私の小さな家」
< https://www-indies.mangabox.me/episode/18803/ >

「イタリアで新しい漫画を作る大冒険」
< http://p.booklog.jp/book/77255/read >

主に料理の写真を載せたブログを書いてます。
< http://midoroma.blog87.fc2.com/ >


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■グラフィック薄氷大魔王[420]
レンダーファームを使ってみた

吉井 宏
< http://bn.dgcr.com/archives/20150204140100.html >
───────────────────────────────────
昨年10月の第406回で、MODOで使えるレンダーファームの存在を知ったことを書いた。

「ネットを通して何百台のマシンでレンダリングを請け負うレンダーファーム。知り合いのMODOユーザーが普通に使っていて、急に興味がわいた。数年前に調べたときけっこうコストが高く、よほど緊急でないと使えないなあと思ってた。調べてみたら、安くてびっくり。」

しかし、アカウント作成やアプリのインストール、あと有料なのもハードルになっていて、試すところまでは行かなかった。先週、ようやく実際に使ってみたレポートです。

●Mac Proをどうにかやめたいw

ずっと「MacBook Proだけで仕事したい!」とか「 持ち運べないのはパソコンじゃない」って言ってた僕にとってのMac Proの存在意義は、「デュアルXeonがそこそこ速い」ってことだけ。あとは「デカい」「重い」「ジャマ」「作動音がする」等々、マイナス点しかない。それでもタワー型Macを使い続けてきたのは、いざという時のレンダリングの速さ故。

そもそも、ほとんどの仕事はMacBook Proでも十分すぎるのに、年に数回しかしない巨大サイズのレンダリングや、せいぜい数百フレームのアニメーションレンダリングのために、Mac Proを保有し続けるムダ感。

1月に机を新調したこともあって、床置きのMac Proとのたうつケーブル類がにわかにウザく感じられるようになった。そうだ! レンダーファームが本当に仕事に使えるかどうか試してみよう!

●RebusFarmをお試しで使ってみた

使ってみたのはRebusFarm。「レンダリング専用のXeon(CPU)を3000台をご用意」だそう。MODOはもちろん代表的な3Dソフトに対応している。サイトは日本語も選べるのでわかりやすい。
< https://www.rebusfarm.net/ja/ >

アカウント作成とアプリの設定を済ませ、MODOからレンダーファームを使うテストをやってみた。お試しポイントが使えるのでまだ無料。MODOからRebusFarmを選ぶとRebusManagerへファイルが転送される。

複数のフレームをレンダリングしようとすると、「frame to frame mode enbled」という警告が出る。MODOのIrradiance Cashingをオフにするとその警告は出なくなるけど、今度は「Bruteforce mode enbled」という警告が出る。

これをどうやってもオフにできない〜。とりあえず、そのままでレンダリングしてみた。Irradiance Cashingがオフなので、ザラザラにレンダリングされちゃう。

お試し記念画像 < http://t.co/Lzq4OrKANO >

今度は警告を無視してそのままレンダリングしてみたら、ありゃ? 普通にレンダリングできちゃった。警告は設定を再確認させるためのもので、レンダリングできないってわけじゃないらしい。

[1000pixel正方形30フレームのアニメーション]をレンダリングしてみた。ファイルアップロードしてスタートボタンクリック。すぐにレンダリングが始まり、30フレームが1分かからず終了。画像のダウンロードのほうが時間かかる。合計5分くらい。tgaのFinal color outputと、同じくtgaのalphaがそれぞれ30枚出力された。

[11000pixel正方形の静止画]1枚のレンダリングにも成功! レンダリングは一瞬でも、レンダリングが終わってからダウンロード終了まで15分くらいかかった。MacBook Proだけでレンダリングすれば1時間程度はかかるので、まあ、マシでしょう。

もう大丈夫。使える!!

レンダーファームの混み具合によって待ち時間が発生すると聞いてたけど、安い「エコノミー」設定でもほとんど待たなくて済んだ。っていうか、実は「8500フレーム待ち」って表示があったので「うわ〜何時間も待つのか〜」と思ったら、あっさりレンダリングスタート。

お試しで「速いじゃん!」って思わせて有料に導く作戦かもw 待ち行列に入っちゃうとイライラするんだろうけど、ちょっと高めの「ビジネス」設定を選ぶと順位が優先されるのだ。

●有料で使ってみた!

RebusFarm、お試しを卒業し、ちゃんとポイントを購入して[1200pixelで10フレームのアニメーション]のレンダリングをしてみた。「エコノミー」設定だけど待ち時間はほとんどなく、レンダリングは一瞬。でもやはり、ダウンロードに時間がかかる。この程度だとマシン内でレンダリングするほうがぜんぜん速い。

続けて、[2400pixel角の10フレームのアニメーション]のレンダリング。う〜ん、やはりダウンロードに時間かかるなあ。100フレーム以上になればレンダーファームのありがたみがはっきりと出てくるかな?

レンダーファームを活用すれば、フレーム数が多かったり大きい重いレンダリングが気持ちの大きな壁になるのは防げる。MacBook ProやAirでも十分。

ところが逆に、速いMac Proで「レンダーファームに転送する手間無しに直接レンダリングできちゃう」ってのが便利に思えてくるのも確かw 少なくとも自分でマシン複数台用意して、ネットワークレンダリングするよりは遙かに速くてカンタンだけど。

奥の手というか切り札というか伝家の宝刀的に、いざというときに利用するのでもいいんだろうな。「オレにはRebusFarmという強い助っ人がいる」的な。

●レンダリングコスト安っ!

1ポイントが1ユーロ。さっきのレンダリング[2400pixel正方形を10フレームのアニメーション]はエコノミー設定で、0.2ポイント=26円くらい。100ポイント購入したので同じレンダリングがあと499回できる計算。[11000pixel正方形の静止画]のコストは57円。安い!

「2400pixel正方形を10フレーム=0.2ポイント」とすると、100ユーロ(100ポイント)でレンダリングできるはずの5000フレームの合計面積は、今までレンダリングしたアニメーション全部をも上回るのは確実。最高スペックのマシンを何台も用意する代わりに、ポイントを買う方がめちゃくちゃお得と思われるw

●無尽蔵のパワーがこの手に!

XeonのCPUが2個搭載されたMac Pro1台をジャマとか文句言ってたのが今までの僕。これからは、どんなヘボいノートパソコンからもXeonが3000個使い放題になるのだ!

ゴツい双発機から三千発機のセスナに乗り換え。いや例えがちがうな。二頭立ての馬車から三千頭立てに。これも違う。強力なエンジンのダンプカーがせいぜいだったのが、乗り換えた軽自動車にサターンV型のロケットエンジンを取り付けたみたいなもんだ。

う〜ん、ピンと来ないw ......要するに、ちょっと前のピクサーやドリームワークスの自前のレンダーファームを格安で使えるようなもの。

「I've got the POWER!!!」って雄たけびを上げたい気分w

っていうか、SNSでレンダーファームについて書いてたら、アドバイスしてくれる人が多い! こんなすごいサービスがあるのを知らなかったのは僕だけだった。

補足。ネットを通して無尽蔵のパワーとはいえ、3Dの作業はプレビュー表示の速さやグラフィックの性能にも依存するので、最低のパソコンで十分ってわけじゃないです。あと、レンダーファームとファイルをやりとりしてる最中はMacBook Proのファンがシューシュー回りっぱなしになるくらい負荷がかかる。それなりの環境は必要。

【吉井 宏/イラストレーター】
HP < http://www.yoshii.com >
Blog < http://yoshii-blog.blogspot.com/ >

「インスタントコーヒーはまず水で溶かすと10倍おいしい」だそう。試してみたくなって、インスタントコーヒー買ってきてやってみた。水で溶かしたのとお湯で普通に溶かしたものを別々に用意した。味は......「どちらも同じ」でした! 買ってきたのはセブンイレブンの「いつものコーヒー」。製造業者UCCでフリーズドライ法の製品。スプレードライ法ならその方法でおいしくなるのかもしれんけどね。

・rinkakインタビュー記事
『キャラクターは、ギリギリの要素で見せたい』吉井宏さん
< https://www.rinkak.com/creatorsvoice/hiroshiyoshii >
・ハイウェイ島の大冒険 < http://kids.e-nexco.co.jp >
・INTER-CULTUREさんの3Dプリント作品販売
< http://inter-culture.jp/Buy/products/list.php?category_id=63 >


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編集後記(02/04)

●椎名誠「ぼくは眠れない」を読んだ(新潮新書、2014)。「35年間、不眠症。一部始終を初めて告白」と帯にある。椎名の作品はずいぶんたくさん読んだが、体育会系の極めて健康な男というイメージだったから、不眠症でこんなに悩んでいたとは意外なかんじだ。わたしが椎名を敬遠するようになったのは、監督した映画「白い馬」を辛辣に批判されて激怒し一騒動になった件からだ。こんなに小さい男だったのかとガッカリした記憶がある。この本を読んで、なるほど、豪放磊落な見かけと違って精神的には決して強くはなかったのだと納得し、また椎名誠の好感度が戻ってきた。

業界紙の優秀な編集者であった椎名が、外の執筆仕事で売れっ子になってしまう。サラリーマン稼業に専念したかったが、マスコミがそうはさせてくれなかった。このままサラリーマンを続けるか、フリーのモノカキになるか、岐路に立って激しく迷う。妻と二人の子がいるのに、何の保障もないフリーになるのは冒険に過ぎる。思い悩み、不安のスパイラルに巻き込まれ、それが真夜中の突然の覚醒になり、不眠症の世界にさまよい出た。36歳で15年勤めた会社をやめた。迷いから脱出したのだから不眠は治るだろうという希望があったが、元通りにはならなかった。後にわかるが、不眠に酒は相反するものだ。

数年間は深夜の孤独を回避するため睡眠薬をお守りにし、なんとか騙し騙しあぶなっかしい夜を乗り越えてきたが、「本格的な不眠症」に陥る事件が起きる。精神疾患を負った女ストーカーの出現が、椎名を本格的に苦しめる蓄積ストレスの頂点にたった。痛ましい。しかし、専門医によると椎名の不眠症は軽度のものだそうだ。日によって軽重があるという「いいかげんな不眠者」だ。それでも、真夜中に一人起きているのは辛いので、不眠を打開し解消するという本をたくさん読んできたが、ただの一冊も有効でなかった。夥しい数の精神病理にからむ本まで読んできたが、難解なだけで何も分からなかったという。

ほぼ二年間の研究で「眠り」の普遍的メカニズムを理解したが、「不眠症とのタタカイは、テキの弱みのようなものとか、防護壁の薄そうなところを少し発見できたぐらい、という程度のもので、このぼくの深夜の孤独なタタカイは実際のところなんら沈静化の気配もなく、むしろ泥沼化している気配さえある」という状態だという。「不眠症状」というものを薬など使わず根本から正常睡眠に戻していこうなどという方針は捨てた。それでいいんじゃないだろうか。じつに規則的な毎日を送っているわたしには、眠れない恐怖はピンとこない。午後は決まって昼寝し、10分前後ですっきり目覚める幸せ者だ。(柴田)


●hammer.mule の編集後記はしばらくお休みします