[3848] 標準化のジレンマ

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《アホナビと駐車場トラップと》

■アナログステージ[129]
 巡礼から得る新しい空気と心
 べちおサマンサ

■Take IT Easy![43]
 標準化のジレンマ
 若林健一 / kwaka1208



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■アナログステージ[129]
巡礼から得る新しい空気と心

べちおサマンサ
< https://bn.dgcr.com/archives/20150210140200.html
>
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コンニチハ。菜の花が、スーパーの野菜売り場に並び始めて、ニコニコなべちおです。葉の花のおひたしを食べると、春が目の前で準備しているようで、寒波な夜も心はポカポカ。

菜の花といえば、定番のカラシあえも美味しいですが、軽くボイルした菜の花と、縦に切ったエリンギを豚ロースの薄切りに巻いて、軽く蒸し焼きにして、ポン酢につけて食べるのも美味しいです。

さてさて今回は、昨年から後記の駄文で綴っている『懺悔道中膝栗毛』を、ツアー最終日のレポートということで、メインにもってきました。興味ないかたには、まったく面白くもなんともないネタです。

内容が少しコアなのと、デジクリの趣旨から遠く離れているネタなので、メインにもってくるのもどうかと悩んだのですが...。というのも、メインよりも後記のほうがボリューミーになってしまったという、裏事情もあるんですけどね。

そのコアなネタというのは、昨年の11月に満願(結願)した、関東三十六不動尊霊場巡りという、不動明王さまオンリーの巡礼の旅を、数回に渡ってレポートしているものです。

今回掲載予定だったネタは、次回にスライドさせるとして、今回のレポートをお読みになる前に、再度、注意点を記載しておきます(特別にデリケートな話でもないのですが、念のため)。

寺社巡りを始めた所以は、以前のコラムをチラっとご参照いただくとして、道中記というよりは、「こんなお寺(神社)でした」と、軽めの雑記でございます。熱く語ることもありませんし、笑いをとるようなネタでもありません。

・アナログステージ[119]デジタルから離れて懺悔と健康を祈る
< https://bn.dgcr.com/archives/20140826140200.html
>

お寺を紹介するときは、山号と寺号(院号)、仏像マニアなゆえ、いつもはご本尊さまだけ記載しておりますが、今回は、不動明王さまオンリーなので、あえて記載しておりません。宗派や諸々の札所番なども省略しております。

・関東三十六不動霊場会・公式ホームページ:
< http://tobifudo.jp/36fudo/index.html
>

●懺悔道中膝栗毛 ─ 十編(ツアーファイナル)

ではでは、11月1日から3日までの、関東三十六不動尊ツアー、最終日です。

・高幡山 明王院 金剛寺(高幡不動尊)

お寺さんの内容は以前に書いておりますが、軽くおさらい。高幡不動は、関東三大不動のひとつと数えられており、土方歳三の菩提寺としても有名です。宿泊した宿からお寺まで、歩いて数分なので、チェックアウトを済ます前に参してきました。

二度寝をしたものの(前話参照)、8時半ころにはお寺さんに到着し、山門の目の前にある不動堂では、タイミング良く朝の護摩供が始まっておりました。

朝は、地元の参拝者が多いようで、地域に密着したお寺さんだと、改めて認識。ちょうど菊の展覧会も開催されており、珍しい菊がたくさん並んでおりました(花には詳しくないので、見た目のままで)。

・田無山 総持寺(田無不動尊)

今回のツアーで何回目になるか分からないのですが、またもや駐車場トラップに嵌ってしまい、お寺さんの周りをグルグル。やっと駐車所の入り口を見つけて車を停めると、なにやら法事の準備でバタバタと慌しい。「タイミングが悪いときに来てしまったか」と躊躇うも、ここ数日で身につけた図々しさを発揮し、勤行を済ませて庫裏へ。

本堂右後ろに佇む、妙見堂。その堂に祀られているのは、初めて目にする『妙見菩薩』のお名前が。若い住職さんにご朱印をいただき、妙見菩薩さまについて尋ねると、いろいろ丁寧に教えてくださいました。まだまだ知らない仏さまがいるんだなぁ。

・亀頂山 密乗院 三寶寺(石神井不動尊)

アホなカーナビに誘導されて到着したものの、地元民しか通らないような道をくねくねと走ってきました。なんなの、このカーナビ。普段は殆ど使うことがないから鈍っているのか。

ナビの愚痴はどうでもいいとして、着いたお寺さんはとても重厚感があふれ、「天台のお寺さんなのかな?」って思うも、真言系のお寺さんでした。

単にオイラの内での比較になるんですけど、天台のお寺さんは、とてもシックな佇まい。余分な装飾はせず、「必要であるもの」だけが存在しているような。

本堂で勤行を済ませ、観音霊場用の札を持っていたので、観音堂で納札。大師堂へ向かう道すがら、お砂踏みがあったので、お参りしてきました。

・寶勝山 蓮光寺 南蔵院(志村不動尊)

アホナビに誘導されながら到着したものの、またもや駐車場トラップ。なんなの。着いたのは、どうみても檀家さん専用に用意してある駐車場。ただの参拝者だが、檀家さん用の駐車場を拝借して、お寺へ。お寺さんの雰囲気は、とてもコンパクトに纏まった印象があるものの、なにか入り難い感バッチリ。

そんなことを気にしていたら進まないので、まずは本堂でお参り。不動堂では護摩が終わったばかりなのか、お片づけをしておりました。勤行を済ませ、ご朱印をいただきたくも、ご朱印の受付が庫裏なのか寺務所なのか、どこなのか分からない。

フラフラして「もしかしてここが庫裏かも」と本堂に隣接している建物へ。ビンゴ。奥からでてきた奥さんから、「あなた何者ですか?」くらいの視線とご朱印をいただいて、無事にお勤め終了。まぁ、格好が黒い作務衣に雪駄姿ですし、なんか、すみません。

・神霊山 慈眼寺 金乗院(目白不動尊)

この日は本当にカーナビのナビ運に恵まれておらず、違うお寺さんに到着。到着早々、絶対におかしいと直感したので、とりあえず車から降りてお寺さんを確認すると、やっぱり違うお寺さんでした。ごめんなさいして、オイラに備わっている野生の感を頼りに、到着。

「今日は定休日なのか?!」ってくらいに静まりかえっている境内。不動堂で勤行を済ますも、「もしかしたら、不在でご朱印をいただけないかも!」と不安が過ぎりながらも、恐る恐る庫裏の扉をあける。

まだ若い小僧さんが「よくぞいらっしゃいました!」ってくらいの満面な笑みで迎えてくれ、無事にご朱印をいただきました。

・大聖山 東朝院 南谷寺(目赤不動尊)

ついに、この日最大のアホっぷりをカーナビが発揮。「どう考えても道路じゃないだろコレ!」というような道に入り込んでしまうも、クソナビに表示されている順路は正解通路。民家と民家の間を走るも、車幅ピッタリの隙間しかなく、サイドミラーをたたみながら進む。

ハンドル操作と車幅間隔を少しでも誤れば、民家の壁に激突確定。こんなところで運転の技術検定をさせられるとは。

車の運転には自信があるオイラでも、さすがに冷や汗タラタラ。進入していったはいいが、もう絶対にバックで戻れないくらいの狭さで、路地を曲がるのも、10回くらい切りかえして、なんとか検定試験を修了。

そんなエキサイティングなアトラクションが終われば、目的のお寺はすぐそこに! とはいかなかった。本日三回目の駐車場トラップ。また技術検定させたれるのも面倒なので、近くにあったコインパーキングに停めてお寺さんへ。

先に参拝へ来ていた女性が、ご朱印用の掛け軸を持っており、「オイラもいつかは掛け軸を持って巡礼したい」と次への抱負をたてる。

そういえば、目黒、目白、目赤、目青、目黄、いわゆる、『五色不動(五眼不動)』と呼ばれるお寺さんは、天台のお寺さんで構成されているとばかり思っていたのですが、目白不動さんだけ、真言系のお寺さんだったのですね。

東京では、目黒や目白(駅)などの地名としても定着しており、その所縁を紐解いていくのも、また興味深いものがあります。

・明王山 聖無動院 宝仙寺(中野不動尊)

いよいよ、連休を利用した関東三十六不動尊ツアーも、最後のお寺となりました。アホナビはというと、さっきのアホっぷりを猛省したのか、すんなりと目的のお寺さんまでナビゲートしてくれました。

着いた時間が、閉門ギリギリだったので、本堂まで駆け足。寺務所が閉まってしまいそうだったので、先にご朱印をいただいてから勤行を済ますことに。当然ながら本堂は閉まっており、堂前でこの日最後の勤行を済ませ、3日間の巡礼を終えました。

──以下余談──

高幡不動から田無不動の移動中、時計をみると、時間的にもまだ余裕があったので、寄り道して、調布不動尊(成田山)と、深大寺(浮岳山)を参拝してきました。ちょうどお昼時間手前だったので、深大寺でお蕎麦を愉しむ。前回参拝したときには、お蕎麦を食べてこなかったので、本場の深大寺そばを満喫。

テラス席でお蕎麦を待つ間に、ヒューマンウォッチ。これがまたツボに入るくらい面白く、この話だけでネタ1本書ける勢いだけど、内容がディープになり、クレームのお便りがたくさん届きそうなので、お披露目することができないのが残念。

調布不動さんは、いつ行っても隅々までお手入れが行き届いており、本当に気持ちの良いお寺さんです。以前に参拝したときには気がつかなかったのですが、薬師堂が本堂って書いてあったので、アタマの中にクエスチョンマークが浮かびます。

ご本尊さまは不動明王さまではなく、薬師如来さまだったのですね。前回は薬師如来さまのご朱印をいただいていたので、不動明王さまのご朱印をいただいてきました。

初日の大雨からスタートした関東三十六不動尊ツアーですが、事故も怪我もなく、無事に巡ることができました。『巡礼』というきっかけがなければ、絶対に訪れることはないだろう地域に足を運び、普段から見慣れきった風景とは違う新鮮さに、風の匂いもまた格別でした。

狭い狭いと云われる日本ですが、視線を変えるだけで、こんなにも広いところなんだと実感します。オイラは僧侶ではないので、巡礼は修行ではなく、趣味の一環という色が強いのですが、季節から生まれてくるたくさんの産物を、素直な心で受け入れられる楽しみや、自然という、懐の広い優しさを体感できるなど、お寺巡りの良さかなと感じております。

次回の『懺悔道中膝栗毛』は、関東三十六不動尊巡礼編ラスト! 満願までの最終話です。興味を持たれたかた、ぜひ読んでくださいね(^^

【べちおサマンサ】pipelinehot@yokohama.email.ne.jp

NDA拘束員であり、本当の横浜を探しているヒト。ぶら撮り散歩師。愛機はD90とGRD4。全国寺社巡りで、過去の懺悔道中をしております。

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※ボチボチTwitterに出没してます(2015年2月現在)


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■Take IT Easy![43]
標準化のジレンマ

若林健一 / kwaka1208
< https://bn.dgcr.com/archives/20150210140100.html
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先週、「機能のデバイスを組み合わせてひとつの機能を実現する」といった機器について取り上げ、これらを実現する上で「単機能の複数のデバイスを連携する機器間インターフェースの標準化」が重要になると述べました。

これまでにも機器と機器をつなぐ「標準インターフェース」はいくつか存在するのですが、その多くは遅くて操作が複雑なものとなっています。その理由のひとつが、規格を標準化する際に生まれる冗長性にあります。

例えば、「HDDレコーダーに録画された番組を、Wi-Fi接続されたタブレットで観る」といった機能を実現する「DLNA」という「機器間標準インターフェース規格」があります。

この規格に対応した機器同士であれば、HDDレコーダーとタブレットがそれぞれ異なるメーカーであっても連携して、「HDDレコーダーに録画された番組を、Wi-Fi接続されたタブレットで観る」ことができます。

一方、同様の機能を提供するメーカー独自の規格に、Appleの「AirPlay」があります。これも、ある機器の中の動画をWi-Fiで接続された別の機器で再生できるインターフェース仕様ですが、こちらはApple独自のためApple製品もしくは、Appleからライセンスを受けた製品でなければ利用することができません(現実には独自に解析してサポートしている機器もありますが、それらの動作は保証されていません)。

このふたつの規格、最終的にできることはほぼ同じなのですが、以下の点において「AirPlay」の方が使いやすいものになっています。

1)機器同士が繋がって、再生できるようになるまでの時間が短い

「AirPlay」は接続可能な機器が限定されているため、ネットワーク上に存在する目的の機器をすぐに見つけられる。

「DLNA」は接続可能な機器の性能が異なる可能性を考慮しているため、機器探索に時間がかかる。

2)再生できる動画が探しやすい

「AirPlay」は動画などのコンテンツが機器内のどこに入っているかまで決めているため、機器が繋がればすぐに動画のリストを利用者に提示できる。

「DLNA」は、ほとんどの機器でコンテンツの置き場所は統一されているものの、機器によって異なる場合があるため、利用者が自分で機器内を探して表示しなければならない。

このように、一般的に規格を標準化すると冗長性が生じ、速度や使い勝手の面で悪い影響が現れます。

冗長性の少ない規格で標準化すれば解決するのですが、そうすると規格通りのことしかできなくなり、どのメーカーが作っても同じもの、つまり各メーカーの特長が出せなくなってしまうという作り手のデメリットが生じます。

規格の標準化には、このような「ジレンマ」があり、これを解決できなければ「単機能の複数のデバイスを連携する機器間インターフェースの標準化」は進まないかもしれません。

そして、このジレンマを破るのは大企業ではなく、ユニークな単機能のデバイスを作る小さな企業かもしれません。

これまで大企業からの出向者で構成された「業界団体」が「規格の標準化」を推進し、そういった企業がジレンマに陥っていること、現在は小回りのきく小さな企業が増えていることを考えれば、小さな企業同士が連携してものづくりをし「既成事実」的に標準化が進んでいくかもしれない、そうなれば面白いなと考えています。

【若林健一 / kwaka1208】 kwaka1208@pote2.net
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編集後記(02/10)

●山本弘「翼を持つ少女 BISビブリオバトル部」を読んだ(東京創元社、2014)。目次の次に登場人物がアニメ調のイラスト(萌え絵)入りで紹介される。表紙からいって、どうもラノベくさい。しかし本文中にはイラストはないし、420ページを超える大冊で1900円もするのだからラノベの定義からははずれる。読み始めたら、やっぱりラノベみたいな構成で、この感覚にはついていけないかも。SF小説が大好きな15歳の少女・伏木空は、ノンフィクションしか読まない同級生・埋火武人に誘われ、BIS(中高一貫・美心国際学園)ビブリオバトル部に入部する。この二人が交互に語り手になる展開で、なんか微妙。

お互いが相手を変な奴と思っているが、そのうち恋心を持つようになる、というのはお約束。前半はビブリオバトル部の個性的な部員たちの紹介を兼ねたような、正直どうでもいいような内容で、もう投げだそうかと思ったところでスリリングな展開になる。双子沢高校の社会学研がビブリオバトルの他流試合を申し込んでくるのだ。その部長は卑劣な差別主義者で、ビブリオバトルを悪用しようとしていた。県内ナンバーワンのBISに勝てば評判になり、社会学研の宣伝と政治的プロパガンダに使える、という目論見だ。BISに勝つために不正を働く可能性がある。間違いなくサクラを仕込むなどの工作をするだろう。

ビブリオバトルは公式ルールに則って行われる。基本的に性善説に基づいて作られたルールだ。「ルールは必要最小限、細かいことはルールに縛らず、参加者の良識に任されている。それは素晴らしいことだが、逆に悪意に対する明確なストッパーがないことを意味する。つまりこうした問題は、個々のバトルの主催者や参加者が、個別に対応しなければならない」のだ。「普段は勝ち負けにはこだわらないが、今回だけは別だ、こいつらに勝たせるわけにはいかない」という部長〈双面の話者〉は、正々堂々、全力で叩きつぶす方法を考える。この人、まだ17歳のはずだが、ものすごく頭がいい。スーパー出木杉くんだ。

相手の意図を打ち砕く最良の方法は、正しいビブリオバトルをみんなに見せて、相手を負かすことだ。参加者に「BISの方が面白い」と思わせることだ。スリリングなビブリオバトルが始まった......。面白い! この小説はフィクションである。本物のビブリオバトルをそのまま描いても小説にはならないので、フィクション的な誇張が入っているそうだ。筆者がこのラノベ風の小説を書くために参考にした資料は130を越え、その一覧も巻末にある。SFを読んでいない人に、SFの魅力をどう伝えればいいのか、筆者なりの答えがここにある。卓球やテニスのように言葉や考えを打ち合えるビブリオバトル、いいね!(柴田)


●hammer.mule の編集後記はしばらくお休みします