Take IT Easy![44]ハッカソンはブームで終わるのか?
── 若林健一 / kwaka1208 ──

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最近流行りの「ハッカソン」という言葉をご存知ですか?

「ハック」と「マラソン」を組み合わせた造語で、限られた時間と与えられたツールと一定のテーマに基づき、アイデアを創出して実際に動くもの(主にソフトウェア)を作る開発イベントです。

開始から発表まで24時間といった短時間でやるものや、数週間かけてじっくり開発するものまで様々で、24時間となると徹夜で開発することもあり、体力勝負なところはまさに「マラソン」そのもの。

作ったものはチームごとに発表し、審査員の評価によって優勝作品が決まり、優勝チームは、主催者からの賞金や賞品などが与えられます。

アイデアを創出する力や技術力はもちろんですが、ビジネスセンスやプレゼンテーション能力が試される場でもあります。


「ハッカソン」以外にも、アイデアのまとめまでを行う「アイデアソン」、お茶メーカーが主催する「茶ッカソン」など、IT業界では「◯◯ソン」ブームが巻き起こっています。

「ハッカソン」や「アイデアソン」を通じて、ものづくりの面白さを知り、ものづくりに参加する人口が増えることは大歓迎なのですが、一時期の流行的なものを感じることもあります。

私も何度かこういった「◯◯ソン」イベントに参加したことがありますが、私の感触ではこういったイベントで優勝するためには、いかに審査員の目を引き心を掴むかにあるような気がしていて、必ずしもそのアイデアの完成度(実現性、有用性、使いやすさなど)が評価されるわけではないと感じています。

例えば、先日参加した「アイデアソン」でも最終的に優勝に選ばれたアイデアの受賞理由として、「当社で検討していたアイデアに近かった」という主催企業の方のコメントがありました。であれば、アイデアソンでやる意味がないように感じます。

結局のところ、参加者が本当に独創的なアイデアを出しても、主催者次第でそれが生きるか埋もれてしまうかが決まってしまうような気がしていて、そういったアイデア達が「審査員に認められなかった」という理由だけで、ボツ箱行きになってしまうのは残念なことです。

また、「他人のアイデアを否定しにくい」という雰囲気も「ハッカソン」の課題のひとつです。

通常アイデア出しのプロセスとして、最初の「ブレーンストーミング」の段階では「アイデアを否定しない」というルールがありますが、ある程度まとまってきた段階では、ダメなアイデアにはとことんダメ出ししなければ、本当に良いアイデアに仕上げていくことができません。

もちろん、「ハッカソン」の限られた時間の中では、そういった議論を行う時間もなく、そもそも「ハッカソン」というのはそういう場ではないのかもしれません。

しかし、中途半端でツッコミどころ満載で既視感に満ちたアイデアが、発表時の寸劇でウケるように頑張りました的に発表されるのを見ているのが辛いのは、私だけではないと思います。

もちろん「ハッカソン」の全部がそうだとは言いませんし、「ハッカソン」を否定するつもりもありません。

イベントに参加してものづくりに加わった気持ちになるだけの「なんちゃってハッカソン」では一過性のブームで終わってしまうでしょうし、全体としての質が低下してしまうでしょう。

本気で「オープンイノベーションで世界を変える」ためのイベントとして定着するためには、主催者も参加者も真剣勝負でやりあう「ハッカソン」を続けていかなければなりません。

そのためには短期間で開発して終わるだけでなく、その後の継続性を支える仕組みとセットで考えなければならない、そう感じています。

【若林健一 / kwaka1208】 kwaka1208@pote2.net
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