[3855] 国境の長いトンネルと雪国

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《やはり私は鉄ヲタではなかった》

■Otakuワールドへようこそ![206]
 国境の長いトンネルと雪国
 GrowHair




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■Otakuワールドへようこそ![206]
国境の長いトンネルと雪国

GrowHair
< https://bn.dgcr.com/archives/20150220140100.html
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国境の長いトンネルに入る前からそれなりに雪国っぽかったが、抜けると本格的だった。列車を挟む垂直の白い壁と壁。目玉だけ突き出て睥睨する踏切の警報機。雪景色がおろしたてのパンツのように白くまぶしい。俺に文学の才能はない。

清水トンネルについて40年来勘違いしてきた。てっきり片峠だとばかり思っていたのである。トンネル内でぐるりんぐるりんと二度ループするのだが、群馬側からみて登り坂と登り坂なのだとばかり。違った。二度目のループは下り坂だったのである。

高崎から分岐して長野方面に向かう信越本線の碓氷峠はまさに片峠で、横川駅で重連の機関車を前につなげてひたすら登ると軽井沢駅であった。1997年に横川駅─軽井沢駅間が廃止されているけど。上越線も似たような地形かと思っていた。

大学の修士課程二年の夏休み、自転車で国道17号線から三国トンネルをくぐり、新潟を経由して青森まで走った。峠道の大好きな私は、ロードレース用ではなく、マウンテンバイクに乗っていた。ビアンキの。

三国トンネルはまっすぐで、緩い登り坂だったように記憶しているが、ウィキペディアによると緩い下り坂とあり、記憶違いか。Googleマップの標高表示でみると、ほぼ平坦だ。

トンネルから越後湯沢まで下り坂ではあったが、まだまだそうとうな標高だと思っていて、高原を走っているような気分でいた。目の前が開けて大平野が現れ、見渡す限りの田園風景になったとき、狐につままれた気分になった。なのに、それでも清水トンネルの勘違いは訂正されずにきた。

昼休みに鉄ヲタのK氏と話していて、ひょんなことから勘違いが明らかになり、衝撃を受けた。ここはひとつ反省をこめて、乗りに行かなくてはなるまい。

かような経緯により、2月8日(日)、トンネルに用があって出かけてきた。

●もうひとつの勘違い

こんなタイムテーブルに沿って乗ってきた。ここで私はもうひとつ、重大な勘違いをしている。

10:46 中野─11:04 東京、中央線快速東京行
11:16 東京─12:06 高崎、上越新幹線 MAX とき319号新潟行
12:22 高崎─13:27 水上、上越線水上行
13:42 水上─15:13 越後川口、上越線長岡行
15:56 越後川口─16:23 十日町、飯山線十日町行
17:34 十日町─18:53 戸狩野沢温泉、飯山線戸狩野沢温泉行
19:06 戸狩野沢温泉─20:05 長野、飯山線長野行
20:27 長野─22:12 東京、長野新幹線あさま550号東京行

気づいたのは、新清水トンネルの中だった。清水トンネルではなく。このコースだと、目的とするトンネルをくぐらないではないか。ぐるりんぐるりんがないのである。

上越線は水上駅で分断されている。大宮駅発着の臨時列車を除き、この駅を直通で走り抜ける列車はないのである。あの小説ではトンネルに入る前と抜けた後とでがらっと景色が変わったことを示唆しているので、水上駅までは雪がそんなに積もってないものと思っていた。

確かに、沼田駅あたりまでは雪なんてあっても大したことはなかった。ところが、水上駅のひとつ手前の上牧駅ではホーム上にかなり大きめの雪だるまではなく「雪ベイマックス」が作ってあった。

水上駅ではホームの屋根に30cmぐらい、どわんと積雪していた。すでに雪国っぽいぞ。まあ、あの小説は上越国境だとは一言も言ってなく、トンネルと信号所の順番も怪しいし、あくまでもフィクションなので正確を期する必要なんてぜんぜんないのだけれど。

水上駅で、アイボリーの地に濃い緑の細い帯と黄緑の太い帯とで彩られた三両編成の列車に乗り換えた。水上駅までは座れない人もいるほどだったのに、こっちはガラガラである。しばらく行くと下り線だけトンネルに入った。直後のトンネル内に湯檜曽(ゆびそ)駅があった。かつて単線だったころには信号場だったところである。

この時点では勘違いに気づいていなかった。湯檜曽駅を出るとそのままずっとトンネルで、私はどれほどの傾斜を登っているのか見るために通路から前後を見てみた。が、ぜんぜん傾斜しているようにみえない。かなりのスピードで快調に走る。あれ? おかしいぞ。登ってないじゃん。

ほどなく土合(どあい)駅に到着する。ホームはトンネル内にある。脇にぽかっと横穴が空いており、奥から上へ階段が伸びている。あれっ? しまった!

上越線が単線だったころには清水トンネルしかなかった。掘る長さを節約するために、標高の高い位置で掘り抜かれている。ふもとからの標高差を埋めるために、前後にループトンネルを設けている。

新たに新清水トンネルが掘られて複線になったが、掘削技術が進歩したため、そんな苦労をする必要なく、標高の低い位置にずばんと長いトンネルが掘り抜かれた。

土合駅の地上ホームとトンネル内ホームとの高低差は70メートルある。まっすぐな階段とその脇に、エスカレータ設置が頓挫したと思しきスロープがある。

1967年に新清水トンネルが出来てからは下り線がこれを走るようになり、古いほうの清水トンネルは上り線専用となった。私はこれを逆のように思い違いしていたのである。

これでは当初の目的が果たされていない。今日のところは予定にしたがって長野まで抜けるとして、いつか、ぜーったいに雪辱を果たしに来よう。

●北越急行、大ピンチ

北越急行ほくほく線という路線がある。電車は越後湯沢駅から出て、六日町駅で上越線から分岐し、十日町駅で飯山線と交差し、犀潟駅で信越本線と合流し、直江津駅に至る。正確に言うと六日町駅から犀潟駅までがほくほく線である。

山がちな地形なのに十日町を挟んでズバン、ズバンと一直線なのは、大部分がトンネル内を走るから。ほぼ地下鉄と言える。1997年に完成している。のどかな風景と不釣り合いなくらい立派な造りなところはつくばエクスプレスを髣髴させる。

東京から北陸方面に行くには、上越新幹線に乗って越後湯沢駅まで行き、特急はくたかに乗り継ぐのが一般的だ。特急はくたかは、ほくほく線を最高速度時速160kmで疾走し、直江津駅を経て金沢駅に至る。一時間にほぼ一本出ていて、一日13往復する。

3月14日(土)のダイヤ改正にともない、この路線の特急はくたかはすべて廃止され、その役割および名称を北陸新幹線に譲る。特急の名称は経路に対して一対一で振られるのが原則だが、はくたかはよく動いた歴史がある。

1965年から特急はくたかは上野駅から信越線回りで金沢駅まで運行した。1969年に気動車から電車に置き換えられる際に、車両の都合により上越線回りに変更された。当時は長岡駅経由だったので、かなり遠回りになった。1972年から元の経路を特急白山が走るようになった。1997年にほくほく線が開業して、現在の経路になった。

この経路は他のどの経路よりも短い。北陸新幹線は直江津駅をバイパスして上越妙高駅から糸魚川駅へと短絡する。なので、直江津駅に行くには従来ルートのほうが便利とも言われている。

特急はくたかの後継列車として、超快速「スノーラビット」がデビューする。車両の都合で最高速度は時速 110kmまで落ちるが、越後湯沢駅─直江津駅間は特急はくたかが52分だったのに対して、超快速は57分なのでそれほど大差なく、がんばっていると言える。

しかしそれも一日一往復で、路線全体の利用者数は激減するのが目に見えている。分かっていながらなぜ作ったかとの疑問もないではない。

いっそのこと、北陸新幹線をこのルートに持ってくれば、北陸はぐっと近くなる。北陸方面の利便性を本気で考えるなら、それが正解であろう。いや、新幹線は六日町で急に曲がれないので、もっといいのは北越南線ルートであろう。

ほくほく線とは、北越北線である。計画段階で対抗案として北陸南線があった。六日町駅も十日町駅も通らず、越後湯沢駅とまつだい駅とをズバッと一直線に結ぶ。どちらのルートを実現するかをめぐって、南北戦争が勃発している。まあ、沿線に人が多いほうが勝ちますわな。

地図上で北陸新幹線のルートを見てみれば、面白いぐらいにうねうねうねうねうねっている。越後湯沢駅─直江津駅間を北越南線ルートに沿って短絡させれば、気持ちのいい北陸直結ルートが引ける。

なぜ長野から延伸した? 飯山駅と上越妙高駅に新幹線を停める意味がどれほどあるんだか。そこまで曲げておいて、直江津駅を通さないってどうなんだ?
< http://www.h-shinkansen.gr.jp/route0.html
>

1997年10月、長野新幹線が長野まで開業した。翌年に長野オリンピックが開催されている。ユリ・ゲラーは超能力でスプーンを曲げたが、政治の超能力を使うと鉄道がよく曲がる。

●きっぷ購入のラビリンス

今回とった周回コースは東京駅─高崎駅間が往路と復路とで重複するので、全体を─枚の乗車券でカバーすることはできない。長野駅で分断して二枚の片道乗車券に分けるのが自然であろう。

では、前述の経路にしたがって中野駅から長野駅まで行く片道乗車券は、どのようにすれば買うことができるのか。「みどりの窓口」へ行って、人に対応してもらえば、もちろん発券してもらえる。

次に、自動券売機ではどうか。たいていの駅に普通に設置されている「きっぷ」と書かれたやつは、上部に掲げられた路線図から目的地までの値段を知り、その値段のボタンを押す方式で、しかも1,000円程度が上限の近場専用なので、これでは買えそうもない。

大きめの駅だと、その横に別なタイプの「指定席券売機」と書かれたのがある。長距離のきっぷが購入できるし、機能豊富なので、これなら買えてもおかしくはない感じがする。トップ画面のボタンは8つあり、[指定席][自由席][乗換案内から購入][乗車券]など、いろいろな指定のしかたできっぷを買うことができる。

なお、右下に[乗車券 普通回数券 買いまちがい払い戻し]というボタンがあり、つなげてすっと読むと「乗車券や普通回数券を買いまちがえたときに払い戻す」メニューなのかと思ってしまいそうだが、実際に意味するところは「乗車券を買う、または、普通回数券を買う、または、きっぷを買いまちがえたときに払い戻す」である。

いろいろなメニューから入ることができて、それぞれ指定のしかたが異なるのだが、目的地までの最後の区間で普通列車を利用する場合には、その区間内の経路は券売機側が適当に見繕ってくれるという点においてはすべてに共通する。

例えば、[乗車券]メニューから入った場合、

(1)最初に乗車する駅を指定する
(2)特急列車等を利用する場合は(3)へ、利用しない場合は(7)へ
(3)特急列車等に乗る駅を指定する
(4)特急列車等を降りる駅を指定する
(5)特急列車等を乗り継ぐ場合は(3)へ、乗り継がない場合は(6)へ すでに特急列車等を三本指定している場合は強制的に(6)へ
(6)普通列車に乗り継ぐ場合は(7)へ、この駅で降りるなら(9)へ
(7)最後に降りる駅を指定する
(8)最後に降りる駅までの経路の候補が表示されるので、そこから選択する
(9)発券して終了

という流れになる。上記(8)で、思っていた経路が表示されなければ、この券売機で購入することはできないってことらしい。

中野駅から長野駅までとだけ指定したのでは、さすがに前述のような経路は思いついてくれない。上野駅から長野駅まで長野新幹線で、という至ってまともな経路と、その亜種みたいなのが出てくるくらいである。

途中、新幹線に乗る区間を「東京駅から高崎駅まで」のように指定することができる。そうすると候補もだいぶん近づいてくる。高崎から長野までの経路として、上越線・ほくほく線・信越本線と乗り継ぐものや、上越線・ほくほく線・飯山線と乗り継ぐものが出てくる。

しかしながら、どんぴしゃりのは候補に上がってこない。越後川口駅で上越線下り線から飯山線に乗り換えるというのは、まっとうなことではないとみなされているらしい。

「どの経路にもない場合は窓口で聞いてください」とある。実際に行くときには時間がなかったので高崎まで買って、後で精算したが、気になったので、後日、みどりの窓口へ行って、買わずに聞くだけ聞いてみた。

するとやはり、経路を自由に指定する機能はなく、あまりポピュラーでない経路は候補に上がらないので、券売機では買うことができない、という答えであった。この経路の乗車券を券売機で買うのはどうやら無理ってことのようだ。

西日暮里駅から秋田駅を経由して日暮里駅に至る「片道」乗車券なんて、いっそう無理っぽくみえるが、これは買えちゃう。特急列車を三本、乗り継ぐのである。購入過程を撮影した動画がYouTubeに上がっている。

題して「指定席券売機で西日暮里〜日暮里の運賃14070円?」。2009年に上がった動画で、「寝台特急あけぼの」が廃止された今となっては無理かも。
<
> 

「えきねっと」というウェブサイトがある。JR東日本が運営している。ここからなら、中野駅─長野駅間のひねくれた経路の乗車券が買えるのである。

(1)サイトへ行く < http://www.eki-net.com/
>

(2)[きっぷ予約]ボタンを押す

(3)[会員さま向けサービス]の[きっぷ予約]ボタンを押す。すると、ログイン画面になる。

(4)IDとパスワードを入力してログインする

(5)[乗車券]ボタンを押す

(6)乗車日と人数を指定し、片道か往復か選択し、乗車駅と降車駅を指定し、さらに途中駅を三つまで指定できる

 乗車駅:中野
 降車駅:長野
 途中駅1: 東京
 途中駅2:水上
 途中駅3:下条

これで唯一の候補として、目的の経路が表示される。

 中野─(中央線)─東京─(上越新幹線)─高崎─(上越線)越後川口─(飯山線)─ 長野

(7)[以上の内容で申し込む]ボタンを押す

(8)[申込を続ける]ボタンを押す

(9)[注意事項に同意する]にチェックを入れ、[以上の内容で予約する] ボタンを押す

(10)駅に設置されている指定席券売機の[えきねっと予約の受け取り] メニューからきっぷを受け取る

これは遊べる。一枚の片道乗車券が発券されるための条件として、「同一の駅を二度通ってはならない」というのがある。つまり、経路は重複や交差のない、一筆書きになっていないとならないわけだ。

たとえば、新宿駅から塩尻駅まで、新宿 → 八王子 → 甲府 → 塩尻と行くのはごく普通のことで、中央線一本で行ける。ところが、途中駅の順序を逆にして、新宿 → 甲府 → 八王子 → 塩尻という経路を指定すると、問題として、とたんに難しくなる。同じ路線を往復してはならないのだ。これが、ちゃんと正解を返してくるのである。

新宿─(山手線渋谷・品川方面)─品川─(東海道山陽新幹線)─三島─(東海道線)─富士─(身延線)─甲府─(中央線)─西国分寺─(武蔵野線)─武蔵浦和─(埼京線)─大宮─(長野新幹線)─長野─(篠ノ井線)─塩尻

おヌシ、なかなかデキるな。ところが、問題をもっと難しくすると、解が存在するにも関わらず「経路の候補は見つかりませんでした」と返してくることがある。やっぱり、まだまだだね。

中野駅から上越方面に行こうとする場合、黙っていると、新幹線乗車駅として上野駅が候補に上がってくる。しかし、東京から乗るほうが合理的である。

(1)東京までなら中央線の快速電車一本で行けるが、上野に行くには乗換えが必要

(2)自由席を利用する場合、始発駅である東京駅から乗ったほうが座れる、あるいはいい席が取れる可能性が高くなる

(3)上野駅の新幹線ホームは地下深くにあるので、行くのが面倒上野駅で新幹線に乗るという候補を排除するために、途中駅に東京駅を指定しているのである。

乗車券一枚買うにも、パズルを解くような思考の迷宮が待ち受けてたりするわけだが、これを楽しいと思うかどうかは人によると思う。

●雪国

勘違いのせいで目的のトンネルではないほうを抜けて雪国に至った私は、くしゃくしゃくしゃっとした気分であった。しかし、想像を絶する雪の積もりっぷりを見たらそんな気分は一瞬にして吹っ飛び、もう最初っからこれを見るのが目的だったってことでいいや、と思えた。

1月に鹿児島に行ったときは菜の花やポピーが咲いていた。同じ国かいなと思っちゃうくらい景色が違う。

水上駅の積雪を見てすでに雪国っぽいと思えたのが、振り返ると可笑しい。あんなのこっちに比べれば何でもなかった。縦に長いものだけが頭を突き出している。信号とか踏切の警報器とか。長くないものは丸ごと埋もれて影も形もないってことか。下条駅の縦書きの駅名表示は「げじ」になってた。

越後川口駅では三人くらい降りた。みんな改札口を出ていき、私だけが構内に取り残された。飯山線の発車までに43分ある。上越線上り列車からは5分待ちで乗り換えられるようにダイヤが組まれているのに、下り列車からの乗り換えは想定されてないってことらしい。素直にほくほく線に乗りなさい、と。

降りたホームは上越線の上下線に挟まれている。使ってない線路の上は高さ2メートルほどの雪の壁。それを隔てて向こう側に飯山線の単線ホームがある。音の反響するコンクリートの地下通路を通ってそっちへ渡ったら、ベンチが屋外に設置されている。これ、座ったらアウトでしょ。即身成仏コース。

元のホームに戻ると四方が透明の壁の待合室がある。誰もいないが、入ってみれば暖房が効いている。ごくたま〜にマヌケなおっさんがミニスカ生足で来ちゃうことがあるので、凍死しないように対策が打ってあるわけだ。助かったよ、ありがとう。

15:47に飯山線が到着した。この駅が終点で、折り返す。三人ほど降りて、三人ほど乗った。上越線の上り列車が到着すると、どやどやっと十数人が乗り換えてきた。

十日町駅では 1時間11分待ちである。腹が減った。途中下車して改札口を出ると、大学生くらいの男女に声をかけられた。男性はエレキギターと思しき楽器のケースを背負っている。写真を撮らせてください、と。ネットで見て知ってたとのこと。

食事ができる店はないかと聞いてみると「タナカクマキチ cafe」というのがあるという。よく女子高生が入り浸っているという。あ、そういうのいいね。行ってみると、店は開いていたが、日曜は4:30pmで閉店だという。今がちょうどその時刻。だめじゃん、残念。

そば屋や居酒屋などが何軒かあるが、どれも準備中。駅の近くに「リオン・ドール(Lion D'or)」という大きなスーパーがある。ご婦人用の下着売り場などをちょこっと歩いてみる。

私はB面のときも、下着はこっそり女性用のを穿いている。そのときは柄物ではなく、綿100%の白の無地のにしている。何かの拍子にチラっと見えちゃってもバレないように。

本当は、前の真ん中に小さなリボンがついているのが欲しいのだが、ネット通販でも、あちこちのスーパーでも、どうしても見つからないのである。昔はあったはずなのに、もうどこでも製造してないのだろうかとあきらめていた。

ところが、ここにはあった。二枚組のを三セット買っちゃった。もっと買っておいてもよかったか。もう最初っからこれが目的だったってことでいいや、と思えた。とっても幸せな気分♪

「オガワヤ」というラーメン屋がスーパーの中にある。入ってみよう。「オガワ麺」というのがある。店名を冠するくらいだからきっと味に自信をもっているに違いない。これにしよう。

うん、美味かった。ふつうの五目ラーメンなんだけど。ゴマの香りのきいたとろみがよい。あったまる。キクラゲがやたらと大きい。豚肉も大きい。これはうれしくなる。

一時間があっという間に過ぎた。ぎりぎりに駅に戻る。計画性という点においてはいろいろ手抜かりがあったが、満足度においては悪くない旅であった。

さて。三日後の2月11日(水)は祝日ではないか。じゃあ、その日に清水トンネルをくぐりに行こう。

●雪国、第二幕

ついでだから上越新幹線の大清水(だいしみず)トンネルもくぐってこよう。ほくほく線にも乗っとくか。十日町にはもっと早い時間から長めに過ごそう。クマキチcafeの空いてる時間に。清水トンネルは明るい時間にくぐりたい。下の線路が見下ろせるらしいので。

それで、こんな行程になった。

6:03 中野─6:10 新宿、中央線各駅停車東京行
6:12 新宿─6:37 上野、山手線外回り
7:06 上野─8:11 越後湯沢、上越新幹線 Maxとき303号新潟行
8:24 越後湯沢─9:01 十日町、北越急行ほくほく線犀潟行
12:24 十日町─12:51 越後川口、飯山線越後川口行
13:01 越後川口─13:18 下条、飯山線戸狩野沢温泉行
13:39 下条─13:57 越後川口、飯山線越後川口行
14:10 越後川口─15:43 水上、上越線水上行
15:53 水上─16:56 高崎、上越線高崎行
17:12 高崎─19:03 新宿、湘南新宿ライン平塚行

下条駅で降りてみようという、やや無謀気味の計画。無人駅だ。改札口の外側がちょっとした待合室みたいになっていて、前後のドアを閉じることができるようになっているが、暖房は効いていない。

列車は一日に10往復する。下条駅で列車を見送ってから、次の列車が入ってくるまでの待ち時間がいちばん短くて21分である。そこを狙って行程を組んだら上記のようになった。

中野駅から十日町駅まで、今度は非常に素直なコースなので、当日、中野駅の指定席券売機で乗車券と新幹線の自由席特急券を買った。表示された候補のうち最初のをポンと選択。

出てきたきっぶを見て、やぁ、しまった! 新幹線に乗る駅が東京駅ではなくて上野駅になってるではないか。うぬぬ。

強引に東京駅まで行って、窓口で変更してもらう手はあるかもしれないけど、そこでもし人が並んでいたら大変だ。新幹線改札口を通れないので、それから上野へ行ったら乗り遅れる可能性がある。最初でつまずくと全行程が破綻する。

しょうがないから上野駅に行く。Maxときは満席に近く、1号車の下の階の三列シートの真ん中に、やっと空席を見つけた。景色が見づらい上に、見てもひたすら壁ばっか。うぬぬ。

国境の長いトンネルを抜けるとまた雪国であった。越後湯沢駅のほくほく線ホームには鉄ヲタが何人かいる。鉄ヲタは額に「鉄」と刻印されているので一目で分かる。

私は8:20発の特急はくたかの発車を見送って、8:24発の犀潟行普通列車に乗る。ここにも何人かいる。私はテツ方面の素養はまったくないのだが、列車の最前面、いわゆる「かぶりつき」をめぐって張り合う格好になってしまった。

最初はそのポジションを確保することができた。列車は二両編成で運転し、六日町駅で後ろの一両を切り離し、以降は一両編成になる。ホームに降りて切り離し作業を眺めていて、戻ってきたら、かぶりつきが取られていた。

空席がたっぷりあるにもかかわらず、そのあたりに四人ほどごちゃっと立っているあたりがいかにもテツだ。私もその中の一人ではあるのだが、私だけはテツではなく、景色を眺めたいがためである。

十日町駅のほくほく線ホームはめちゃめちゃ立派だ。高架な上に、一面二線に加えてまっすぐな通過線まである。ホームに降りると、女子高生がふたり、声をかけてきた。「ツイッター、フォローしてます」。あ。生足ではないではないか。オレ、がんばりすぎ?

飯山線ホームに降りたら、誰もいなかった。次のが出るまで二時間ある。脇から雪かき車が出てきた。豪快に雪を吹っ飛ばしながら。見るまでは、どうやって雪かきするのか不思議だった。

線路の両脇は垂直な雪の壁になっていて、場所によっては二メートル以上の高さがある。どうするとこうなるのか? 雪かき車の前部左右に鉄板が垂直に備えられ、左のは左へ右のは右へ逆ハの字に広げられるようになっている。これで左右の壁の雪をかき、線路の真ん中に落とす。

ローターで巻き込み、煙突状の筒から横へばばばばばっと豪快に吹き飛ばす。初めて見るとたいへん楽しそうにみえるが、毎日作業する人はそんなに楽しくないのかもしれない。

改札口を出て、暖房のよく効いた待合室に行くと、初老のがっしりした男性が声をかけてきた。「東京で見たことありますよ」。秋山郷で写真を撮ってきた帰りだという。あ、あの日本一の秘境。

学生時代に行ったことがある。真夏だった。新幹線リレー号で大宮駅まで行き、新幹線を越後湯沢駅で降り、バスで苗場スキー場まで行き、足で苗場山を越えた向こうが秋山郷だ。スキー場があるのは筍山で、苗場の名前は向こうの山から借りてきている。

なるほど秘境だった。特に何もないけど、温泉宿があり、くつろげた。帰りはバスで飯山線の森宮野原駅に出て、長野経由で帰ってきた。冬はさぞかしすごいんだろうなぁ、と思っていた。当時は雪で道が閉ざされ、何か月かにわたって孤立村になっていた。

撮ってきた写真をカメラの背の液晶表示で見せてもらった。おお! 道路脇に赤白に塗り分けられたポールが立っていて、それが三メートルなのだが、積雪は優に超えている。

森の木々には雪がべたべたとくっついていて、風が吹くと、ぼぼぼぼぼっと一斉に落ちる。その瞬間が捉えられている。がんばりましたなぁ。

改札口を通っていくおっちゃんを見送り、外に出る。駅前にタクシーが止まっているので、信濃川の川べりに降りられるところはないか聞いたら、ないという。まあ、ないか。駅の周辺を散歩して、開店時間の11:00amになったらクマキチcafeに向かおう。踏切から軌道に入り、線路と線路との間に腹這いになると、生足の太ももがひんやりと冷たい。

クマキチcafe。今度はちゃんと入れた。や、どうも。三日ぶりですね。私の後からもどんどんお客さんが入ってきて、たいへんにぎわっている。メニューには「クマキチ丼」というのがある。店名を冠するものは食っておくに限る。津南のポークと舞茸が乗っている。

舞茸が特に美味かったので、さらに、舞茸のソテーも注文。いろんなキノコがどっさり山盛りで出てきた。舞茸はシャッキリした食感がたまらない。幸せ感いっぱいになる。あっという間に時間が過ぎ、12:24の列車に乗るために、あわただしく店を後にした。

月曜の夜、どかっと降雪があった。飯山線が運休するほど。先日見た下条駅の「げじ」はもはや影も形もなく、掘り出そうにもどこに埋まっているのか見当もつかない。

ここでの待ち時間を短くするために、いったん越後川口駅まで行って戻ってきているのだが、結果的にはこの往復は不要だった。その分、下条駅周辺で長く過ごせばよかった。21分が非常に忙しかったのである。

十日町側の少し離れたところにある踏切まで往復したら時間切れで、駅で列車を待つ時間は三分となかった。恐れていたほど寒くなく、余裕だった。

さて、メインの目的である国境の長いトンネルは、そこに至る道のりのほうがアホみたいに長かったせいか、なんだかあっけなかった。まあ、トンネルはトンネルである。

トンネルを抜けた後、下の線路を見下ろすことができた。列車は山腹を走り、左側が山で右側が谷底である。真下から直角方向に鉄路がまっすぐ生えていて、谷川に鉄橋が渡されている。

面白い構造ではあるが。十日町のリオン・ドールのパンツほどの感動はなかった。やはり私は鉄ヲタではなかった。ただの変態ってことか。

この日撮った写真はこちら。
< http://picasaweb.google.com/Kebayashi/Town150211A
>

●雪国、第三幕

いやいや、さすがにそれはない。たぶんないと思う。ないんじゃないかな。

2月20日(金)から22日(土)まで「十日町雪まつり」が開催される。
< http://snowfes.jp/
>

けっこう大々的なイベントのようで、これに合わせて臨時列車が走る。大宮から「特急ほくほく十日町雪祭り号」が、新潟から「快速十日町雪まつり号」が、長野から「快速スノーエクスプレス十日町号」が。
< http://snowfes.jp/wp/?p=8081
>

特に、長野からのは非電化の飯山線をHB-E300系ハイブリッド気動車が走る。よく南小谷─(大糸線)─松本─(篠ノ井線)─篠ノ井(信越本線)長野の経路を走っている「快速リゾートビューふるさと」の車両を使う。二両編成で、全車指定席。

うわぁ、これ、乗りに行くべきじゃないか。「えっきねっと」で調べてみれば、日曜の復路だけ、わずかに空席がある。ついでに特急はくたかにも乗っておこうか。いや、待て待て落ち着け。三度も行ってどうする。

●おまけ:パズルを二題

第一問は、日豊本線を北上しているときに実際に信号場を見て思いついた問題。南宮崎駅に到着する前には頭の中で解けていた。

第二問は鉄ヲタのK氏との合作。原案は私で、こんなことが可能な路線は存在するか、と問うてみたところ、K氏が武蔵野線を挙げてきた。路線図を見ず、暗算で解いたという。トポロジーK氏と呼んでやろう。ウチの会社には、めちゃめちゃ優秀なのにその優秀さをもっぱら仕事以外で活用してるやつが多くて困る。

実はもう一路線あるそうだが、私は正解を知らない。

(第一問)
ある鉄道路線は単線であるが、上り列車と下り列車との擦れ違いを可能にするために、一部分が複線区間になっている(信号場という)。ある信号場では、複線区間の長さが車両一両分しか設けられていない。

いま、三両編成の上り列車と三両編成の下り列車とが、信号場に近づいてきている。二本の列車は擦れ違うことができるか。ただし、車両の切り離しおよび連結は任意にできるものとする。

(第二問)
JR 武蔵野線には、下記の五駅がこの順序で存在する。
A. 府中本町
B. 西国分寺
C. 武蔵浦和
D. 新松戸
E. 西船橋

この五駅を B → E → C → A → D の順で通る一筆書き経路を求めよ。
(条件1)JRの鉄道路線のみを使う。私鉄やバスを使ってはならない
(条件2)新幹線を使ってはならない
(条件3)同一地点に二度接触してはならない(「6の字」経路は不可)

ちなみに「えきねっと」ではお手上げだった。正解は存在します。

【GrowHair】GrowHair@yahoo.co.jp
セーラー服仙人カメコ。アイデンティティ拡散。
< http://www.growhair-jk.com/
>

株式会社グラフィティの月刊誌『Tokyo graffiti』の3月号に「セーラー服おじさん」が掲載される予定です。スクールバッグの中身を大公開しちゃいます。2月26日(木)発売予定。
< http://grfft.com/magazines/tg.html
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成田線は降りる駅のひとつ手前の駅で、名前を呼んで起こしてくれるという気のきいたサービスをしていた。いや、ただ安食駅のひとつ手前が小林駅だったってだけなんだけれども。

2月14日(土)、十年来撮らせてもらっているコスプレイヤーの柊としあきから久々に呼び出されたので、これはてっきり撮影にかこつけた愛の告白だろうと思って新しいパンツを穿いて行ったんだけど、ふつうに撮影だった。そうだオレ、カメコだったんだ。写真はこちら。
< https://picasaweb.google.com/Kebayashi/Park150214
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編集後記(02/20)

●承前。新潮新書「沖縄の不都合な真実」にあった意味深い数字。米軍基地の割合は本土77%、沖縄23%、本土には沖縄の3.4倍の基地がある。自衛隊専用基地の割合は本土99%、沖縄1%、日米を合わせた軍事基地の割合は本土83%、沖縄17%である。米軍基地のうち米軍専用基地に限ると、本土26%、沖縄74%になるが、米軍が多いからと言って基地被害が大とはいえない。沖縄の軍事基地の集中度は17%で、普天間移設を実行すれば3%減って14%になる。それでも一つの県としては負担が大きいのは事実。仮に沖縄海兵隊が撤退すれば本土95%、沖縄5%になり、県に占める面積比では10.2%から2.6%まで減る。

それでも2位の静岡1.2%の倍以上で1位のままだが、まずは本土比5%を日本全体の目標にすべきだろう。米軍基地の74%が沖縄にあるというおなじみのセールストークは、意図的に数字を選んでいるわけでペテンに近い。正しくは、米軍専用基地が、といわなければならない。もうひとつペテン的なのが、基地のそばの小学校問題である。普天間基地は終戦時の1945年に完成した。よくニュースで取り上げられる普天間第二小学校はその24年後の1969年に、宜野湾市が「危険を承知で」あの場所に建てたものだ。本土の多くの人は、小学校のそばに米軍基地を造るとはけしからんと解釈していたが、話が逆であった。

学校を移転することは宜野湾市の意志決定でできる。それができないのは、子どもたちの日々の苦悩よりも「普天間基地の県外移設が先決だ」という「正義」を貫く人々がいるからだ。この本で一番強調されているのが、「沖縄には、自分たちの現状を変えたくないという、真の意味で保守的な社会集団が存在する」ということである。その保守的な体制とは保守系政治家や財界人だけでなく、基地反対派の大部分もそれを支えている。基地容認派と反対派は、むしろ共存共栄の関係にあるといっていい。知事選で見られた「沖縄VS日本」という、不可解なスローガンは、「沖縄ナショナリズム」の表れだ。

「沖縄VS日本」なんて構図を唱える日本人がいたのには驚いた。いつから沖縄と日本は対立関係になったのか。というより、沖縄は日本ではないか。四国VS日本、埼玉VS日本なんて、なにかの冗談ではあり得るが、沖縄の一部の人は本気で「沖縄ナショナリズム」を唱え高揚していて、とても危険だ。「沖縄ナショナリズムVS日本ナショナリズム」という深刻で陰惨な事態が生じつつある。ネットを見ればとんでもないことになっているが分かる。こんな対立は日本人の誰も望んではいない。「沖縄ナショナリズム」を政治的道具として利用している沖縄の「支配層」その背後には……。考えただけで寒気がする。(柴田)

●hammer.mule の編集後記はしばらくお休みします