わが逃走[159]飛行機の歴史と「飛」という字を考えるの巻/齋藤 浩

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「飛」という字って、ホントに飛んでるみたいだなあと思ったので、その成り立ちを調べてみた。やはり飛ぶ鳥の姿をモチーフとしているらしい。

甲骨文字などに見られる極初期の「飛」は、
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ナスカの地上絵に見られる『鳥』にそっくりだ。

何かを伝えるための省略表現というものは、世界中に共通するものがあって面白い。




で、これがライト兄弟前夜の有人飛行用に設計された凧の形状によく似ているのだ。この形にフレームを組んでキャンバスを張れば、ホントに飛ぶことができるんじゃないかと思い、描いてみた。
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たしかにこれは飛びそうだ。しかしそれっぽい見た目だとは思うが、使い方がよくわからない。

ナウシカに登場するグライダー『メーヴェ』のように、人がぶら下がって使うのだろうか。しかし、うっかり手をすべらせたらと思うとコワくなる。

まあ、どんなものでも実用化以前の試作品は、トンデモな形状のものが多い。試行錯誤を経て、そのスタイリングも洗練されてゆくのは、文字もプロダクトも同じといったところか。

次に、この図をご覧いただきたい。
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我々が現在使っている字にかなり近づいてきているのがわかる。

じっと見ていると、凧からライト兄弟のフライヤー号を経て、複葉機が実用化されたあたりのデザインと共通するように思えてきた。

上下二枚の翼、そして四画目、五画目あたりが車輪のフェンダーと"そり"に見えてくる。

ほら、なんだかそれっぽいでしょ!
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ここで飛行機の歴史を思いかえしてみる。

ライト兄弟が初の有人飛行を成功させてから、ロケットが月に着陸するまでわずか60年ほど。

スペースシャトルが飛んだと思ったらすでに退役、いまや無人偵察ヘリが通販で買える時代となった。

そんな時代の「飛」の字は、もはや活字のように手で触れるものですらなく、概念を数値に置き換え、その数値すら"クラウド"とかいう雲の上に存在するという、訳のわからない存在になってしまった。
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さて、航空機の歴史を踏まえた上であらためてこの「飛」の字を見ていると、なにかと話題のオスプレイや『帰ってきたウルトラマン』に登場したマットジャイロに見えてくるからふしぎだ。

文字も飛行機も、現実世界のもののようでSFっぽくもある。
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コクピット下部に設けられた大きな垂直翼(カナード?)が果たして機能しているのかは私にもわからないが、時を経てさらにこの「飛」という文字がリファインされる頃には、なにかしら答えが出ているのかもしれない。


【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
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1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。