[3906] 腕時計の帰還

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《自分だったらどう対応するか?》

■腕時計百科事典[01]
 腕時計の帰還
 吉田貴之

■クリエイター手抜きプロジェクト[426]イベント編
 CSS Nite in SHINSHU vol.2 - IllustratorとPhotoshop
 古籏一浩

■LIFE is 日々一歩(11)[コラム]
 セミナー講師は「授業中に泣き出す赤ちゃん」にどう対応すべきか?
 森 和恵

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■腕時計百科事典[01]
腕時計の帰還

吉田貴之
< https://bn.dgcr.com/archives/20150518140300.html
>
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初めまして。吉田貴之と申します。兵庫県神戸市でWebのお仕事をしています。このような機会をいただき嬉しい反面、読んでいただくための文章を書くことに不安も覚えています。できる限りわかりやすく、読んでいて心地のよい文章を書くことを心がけますので、どうぞよろしくお願い致します。

●Apple Watchの衝撃

さて、今回から連載させていただくコラムですが、「腕時計百科事典」と銘打って、腕時計の魅力についてお話しさせていただくつもりです。

いまさら腕時計って......という反応が予想されますが、2015年は腕時計業界にとって、また腕時計の歴史において重要な一年になりそうなのです。勘の良い方はお気づきだと思いますが、「Apple Watch」の販売開始がその理由です。

すでに、実際に手にした方の様々な反応をSNSやブログでみることもできます。この「Apple Watch」が、腕時計にどのようにな影響を与えるのでしょうか。

●腕時計の起源

そもそも腕時計が普及するまで、携帯用時計と言えば「懐中時計」が一般的でした。ポケットから懐中時計を取り出して、さりげなく時間を確認する、というのが紳士の定番の仕草だったようです。

そんな懐中時計ですが、戦場のような一分一秒を争う場面で、すばやく時刻を確認するのには不向きでした。そこで、現場の兵士のアイデアで、懐中時計を腕に巻き付けて使ったのが、腕時計の起源であるといわれています。

腕時計が製品として登場したのは、飛行機を趣味にしている大金持ちが腕に着けられる時計を作らせ、それをベースに開発したものが最初のようです。

ところで、女性が時計を身につけるようになったのは、男性に比べるとかなり後になってからです。機械の小型化がすすみ、女性が身につけるにふさわしいサイズと重量になった頃、女性用の腕時計が登場します。

女性が身につける時計は、懐中時計ではなく腕時計からスタートしたようです。女性は身につけるものにはアクセサリー的要素を求めたために、時計部分が小さく、華やかな装飾の腕時計が人気を集めました。

●腕時計業界の変化

腕時計用の小さな機械は精度の追求が難しかったのですが、その便利さから男性用の腕時計も一般的となっていきます。そして、1950年代から1960年代に機械式腕時計は全盛期を迎えます。

数多の時計メーカーがしのぎを削るなかで、クロノグラフ(ストップウオッチ機能)のような複雑な機構を持った時計が登場したり、薄型化/小型化/高精度化も限界まで進み、国を支える産業の一つとして成長します。

日本でも進学や就職のお祝いとして腕時計を贈ったり、腕時計をみるとその人の収入がわかる、といわれていたのはこの頃です。

それに冷や水をかける形となったのが、セイコー社が開発したクオーツ時計でした。それまでの機械式時計に比べて、圧倒的に高精度のクオーツ時計が登場することで、多くの時計会社が倒産に追い込まれ、時計業界の勢力図は大きく塗りかえられました。クオーツ時計は大量生産にも向いており、腕時計の低価格化と普及が加速します。

●腕時計の衰退

一旦クオーツ時計の普及が進むと、今度は価格やデザイン、付加機能での競争が始まりました。デジタル表示の腕時計や、電池交換不要の腕時計、防水や耐衝撃を売りにする腕時計も現れて、腕時計のバリエーションは一気に広がりました。

細々と経営を続けていた機械式時計メーカーも経営統合したり、自社の時計をブランド化するなどの努力により力を付けてきたのもこの時期です。腕時計は実用的なものとステイタスシンボルとに二極化しました。

しかし1990年代になると、予想外の刺客が腕時計業界に切り込みをかけます。携帯電話です。この流れは現在も続いており、腕時計を着けない理由の一つが「携帯やスマホがあるから」であることは、疑う余地のない事実でしょう。また、もう一つの主な理由は「腕に何かを着けるのが煩わしいから」のようです。

●腕時計の復権なるか

スマホの普及が一段落したところで、登場したのが各種ウェアラブルデバイスです。いろいろな形態が模索されていますが、やはり「腕に着ける」というのが一番しっくりくるようです。

現在のウェアラブルデバイスは、あくまでスマホありきで設計されているため、腕時計型デバイスだけになるのはもう少し先かも知れませんが、「ポケットから出して使う」スタイルが「腕に着けたデバイスを使う」スタイルに変化していくのは、まるで懐中時計が腕時計に移行していく様子を再現しているようで興味深いです。

「iPhone」がスマホを普及させたように、「Apple Watch」もウェアラブルコンピューターを普及させる原動力となるのでは、と期待されています。

この波に乗り遅れまいと、独自の腕時計型デバイスやブレスレットなどの周辺機器を開発している腕時計メーカーも少なくないでしょう。何よりも、腕に何かを着けるのをやめた人たちがもう一度それをしようとしていることに大きな期待を寄せているはずです。

「Apple Watch」が既存の腕時計のシェアを奪うのか、腕時計と共存するのか、それとも腕時計が復権するのか。注目です。

【吉田貴之】info@nowebnolife.com

兵庫県神戸市在住。Webサイトの企画や制作、運営を生業としながら、情報の整理や表現について研究しています。

イディア:情報デザインと情報アーキテクチャ
< http://www.idia.jp/
>


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■クリエイター手抜きプロジェクト[426]イベント編
CSS Nite in SHINSHU vol.2 - IllustratorとPhotoshop

古籏一浩
< https://bn.dgcr.com/archives/20150518140200.html
>
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例によって、イベントというかセミナーに行ってきましたので、そのレポートです。が、今回は小規模な催しで、IllustratorとPhotoshopのお勉強といったところです。

・CSS Nite in SHINSHU vol.2
< http://cssnite.jp/x10ai/matsumoto.html
>

名前に「CSS Nite」とあるように、まあ有名どころの主催となってます。講師は鷹野雅弘さんで「10倍ラクするIllustrator仕事術」執筆者の一人です。この本を持ってイベント会場に行くとキャッシュバックということで、表紙だけ偽装して持っていきました。

さすがに、本の表紙だけで判定しており中身のチェックは行われないようです。......と書きましたが、もちろん本物を持っていきました、はい。

・鷹野雅弘
< http://www.amazon.co.jp/鷹野-雅弘/e/B0046W2K9C/
>

・10倍ラクするIllustrator仕事術
< http://www.amazon.co.jp/dp/4774167967/
>

例によってリアルタイムに入力しているので、途中で挫折してしまうかもしれませんが、何か役立つセミナーのはずなので、ちょろちょろとレポートしていきます。

まずは、ジャンケンで勝った人がAdobe特製ノート(2冊)をGET。続いて主催者の紹介。書籍は28冊も書いているとのこと。

次はIllustratorの歴史っぽい説明から始まり、Illustrator CC 2014のバージョン番号はいくつか? という質問。というところで、会場内でツイートしていたら、Twitterでしかやりとりしたことがない人と出会うという、思わぬ出来事がありました。偶然と言えば偶然なんですが。(その後、Ingressでポータルを二人で破壊しながら帰宅という感じで)

講座は進んでファイルの互換性の問題が取り上げられました。なんて、やっている時につけていたApple Watchの通知がピンポン! ピンポン! と鳴るというなんともな状態に......。

さすがに、注意うけたのですが音の切り方が分からず......。おやすみモードにすればよさそうだけど、いやはや何とも。手軽にアラーム音が切れないのは、ちょっと困りました。iPhoneならすぐにできるのに。

次はIllustrator CC 2014までのスプラッシュ画面の経緯とかの説明。ボッチチェリのビーナスをもとにしている云々。ビーナスよりボーナスの方がいいけど......。

ここまでが前振り。ようやく本番。まずは、滅多に使われないというか知られていないライブカラーの説明から。2007年からある機能だけど、とにかく知られていない機能のひとつ。参加した人の半数の方が、知らないと手を挙げてました。

ライブカラーの次はパターンの説明。パターンの位置を変更したい場合はどうするか。各種ツールのオブジェクト変形のチェックを入れたりすることで対処できるとのこと。

続いてフォントの話。文字の先端や角が尖っているフォントもあれば、まるくなっているフォントもある(墨だまりというのだそうで)。Noto Sansの Notoは今の朝の連ドラの舞台の能登ではなく、Not 豆腐(□)の意味だそうで。

その後、商品のキャッチコピーを作る時に便利な、文字タッチ機能。これはIllustrator CCから搭載された機能ですが、これまで水平比率やベースラインなど手作業で入力していたのを、直感的にできるようにするものです。

また、通常、文字を選択して色を変更すると選択を示すために色が反転してしまいますが、文字タッチツールを使えば反転しなくても済むそうです。ちなみにCommand (Mac) / Control (Windows) + Hのキーコンビネーションを使っても、選択範囲の反転を見えないようにすることもできます。

次にIllustrator CC以降で追加されたテキストエリア、ポイントテキストについての説明。テキストエリアの自動サイズ調整をあらかじめオンにしておくには、環境設定で行えるとのこと。まあ、多用すると重くなるそうです。

その後、スクリプトの話になり、便利なスクリプトがいろいろあるということで、いくつかのサイトが紹介されました。例えば、選択したテキストを書き出すものなどです。

ちょっと余裕があったので、講師がしゃべっている間に同じ機能を持つスクリプトが作成できるか、というアホなことをやってました。作ったのは以下のコード。まだ、それなりに命令などは暗記しているので、一応話している最中に動作するプログラムは作成できました。まだ、ボケてないようで一安心。

// テキスト書き出し
function writeText(){
  var selObj = app.activeDocument.selection[0];
  var fileObj = File.saveDialog("保存ファイル名を指定してください", "sample.txt");
  if (!fileObj){ return; }
  var text = selObj.contents;
  // $.writeln(text);
  var flag = fileObj.open("w");
  if (!flag){ return; }
  fileObj.writeln(text);
  fileObj.close();
}
writeText();

スクリプトネタの後はカレンダーの制作。なぜか最初にUNIXのcalコマンドが紹介されました。が、さすがにUNIXコマンドは敷居が高いので、エクセルを利用する方法の解説になりました。エクセルからコピペする方が、楽と言えば楽です。

カレンダーの体裁を整える際に、長方形グリッドツールとスレッドテキストを使うと、うまくいかないとのこと。これは、長方形グリッドのテキストのフローの順番がぐちゃぐちゃ(順不同)になってしまうためです。まあ、これはIllustratorのアプリケーション本体のプログラムが駄目な気がしますが。

ここで休憩になりました。が、開催地が松本なせいか沈黙の時間が......。さすがに沈黙すぎて耐えられない状態。ということで、短めの休憩も終わって次の講座が始まりました。まずはDTPでなくWebでのイラレ講座。ピクセルプレビューの基本的なところからボタンの制作へ。

アピアランスを使って金額に×をつける方法。変形などを利用してやることで、桁数に関係なく×がつくという便利なものです。詳しくは本に載っているとのこと。確かに本読みながらでないと、ちょっと分からない。

次は内側描画と画像の配置などの説明。複数配置時にカーソルキーを使って配置する画像を選択することができます。Illustrator 24時間イベントの時にも内側描画を利用したお絵かきの方法が紹介されてましたが、人によっては便利なはず。

これでIllustratorの講座が終了しました。で、まだまだ講座が続きます。Illustratorの次はPhotoshop。まずは、角度補正から。昔はものさしツールで角度を水平にしていたけど、今はツールバー上にある角度補正ボタンでOK。

また、切り抜きツールを使って補正することもできるとのこと。余白を切り抜きたい場合は、角度補正して切り抜きを選択すれば楽だそうです。

切り抜きツールで「境界線を調整」してスマート半径などを調整すれば、まあうまく切り抜くことができるとの事。うまく切り抜けない、切り抜きすぎたという場合は、「境界線を調整」にあるブラシ・消しゴムツールを使って調整したりできると。フリンジの削除も「境界線を調整」ダイアログで行うことができるそうで。

変数・データセットを利用して、スクリプトを使わずに半自動化することもできるという説明もありましたが、周囲を見ると割と固まってる人が多い感じ。さすがに変数とか出てくると分かりにくいのかも。

ちなみにIllustrator/PhotoshopのJavaScriptリファレンスにも、この変数まわりの機能があるのですが、まあ使ったことはありません。

その後、画像アセットの説明。一枚のPSDファイルから、まとめてJPEGやPNG形式に書き出せるとのことで歓声が。でも、これも前々からある機能だそうで。結構知らない機能が多い......。IllustratorでもCC以降はLayer Exporterのエクステンションを入れればできるとのこと。

次に、撮影時にぶれてしまった写真や、ピンぼけ画像を鮮明にする方法が紹介されました。これはフィルタのぶれの軽減で簡単に修正できるとのこと。

次に、カメラで撮影された写真のゆがみ(画像の四隅などレンズが歪んでしまう)を手軽に補正する方法が紹介されました。これは画像をスマートオブジェクトにした後に、カメラRawフィルタを使って歪みを補正するとのこと。

最後は丸いものにぼかしをかける方法で、スピンぼかしを利用する方法が紹介されました。他にもパスぼかしを使って処理する方法もあるとのこと。

質問タイムはFireworksを使っていくべきか、Photoshopに移行するかという、なかなか難しい質問。Photoshop CC 2014以降は、まあ機能が向上はしているけど......。

Webも変わってきているので、これまでFireworksやPhotoshopを使って画像として部品を作ってきたけど、CSSやWebFontを使ってやった方がよいだろうと。時代はどんどん変わっていくので、それに合わせていくというのがよいのかなあ、と。MacならSketchを使うという方向に行く人もいるとのこと。

と、こんな感じで「CSS Nite in SHINSHU vol.2」は終了しました。にしても、他の人がどういうIllustrator/Photoshopの使い方をしているのか......すごく謎です。

【古籏一浩】openspc@alpha.ocn.ne.jp
< http://www.openspc2.org/
>

本を持って行ったのでサインしてもらいました。何かあったら「何でも鑑定団に出して云々」......と思ったら、そういうことをする人への対処として、送り先(相手)の名前を書くという技によって半分ブロックされました。本に送り先の相手の名前があると価値がさがるという。

さて、Apple Watchですが、あまりにアプリが少ないのとイマイチ使えないので、アプリを自作したらどうなんだろうということで、以下のページで開発のカテゴリを作って、アプリを作る手順を説明してます。

まあ、センサーとかデジタルクラウンとかの値も取得できず、本当にiPhoneのサブ画面扱い。以前から何もできない、という噂があったんですが面白いことは現時点ではほとんど実現不可能か、無理矢理どうにかやらないといけない(やってもできない)感じです。

今のところアイデア一発かなあ、と思ったり。ただ、すでにiPhone/iPadのアプリを作った人にとっては、すぐにアプリが作れるという(ノウハウあまりいらないので)メリットもあります。

・Apple Watch(アップルウォッチ)使い方辞典
< http://www.openspc2.org/reibun/AppleWatch/2015/
>

・Photoshop自動化基本編
< http://www.amazon.co.jp/dp/B00W952JQW/
>

・Illustrator自動化基本編
< http://www.amazon.co.jp/dp/B00R5MZ1PA
>

・Adobe JavaScriptリファレンス
< http://www.amazon.co.jp/dp/B00FZEK6J6/
>

・ExtendScript Toolkit(ESTK)基本編
< http://www.amazon.co.jp/dp/B00JUBQKKY/
>

・データビジュアライゼーションのためのD3.js徹底入門
< http://www.amazon.co.jp/dp/4797368861
>

・4K/ハイビジョン映像素材集
< http://www.openspc2.org/HDTV/
>

・クリエイター手抜きプロジェクト
< http://www.openspc2.org/projectX/
>


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■LIFE is 日々一歩(11)[コラム]
セミナー講師は「授業中に泣き出す赤ちゃん」にどう対応すべきか?

森 和恵
< https://bn.dgcr.com/archives/20150518140100.html
>
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こんにちは。森和恵です。GWが終わると一気に梅雨が来そうな気配ですね。今年は平年より一週間ぐらい早くくるだろうという予想だそうです。湿気シーズンがくる前に、衣替え・お部屋の掃除などをすませておきたいものですね。

さて今回は、とある記事を読みまして、思うところをつらつらとまとめたいと思います。

●私なら「授業中に泣き出す赤ちゃん」にこう対応する

先日、友達があちこちで「いいね!」や「シェア」していたとある記事がありました。

赤ちゃんを連れて大学の講義を受けていたお母さん。授業中に子供が泣き出してしまいました。授業の妨げにならないようにと外へ出ようとした彼女をエンゲルベルク教授は制止し、赤ちゃんをあやして泣き止ませたそうです。

・「授業中に泣き出す赤ちゃん」立ち去ろうとする母親への先生の行動に拍手!
< http://feely.jp/20862/
>

この記事に対して「素晴らしい対応をする教授である」と賞賛の声が多く寄せられています。「子供がいるからといって教育をあきらめる理由にはならない」ということでした。

でも私は、「いい話だけど、立場が違うときっと評価が別れるだろうな」と感じました。私は、セミナー講師を仕事にしているので、どうしても授業の舵取りをする教授の立場で考えてしまうのです。

次に考えたことは、自分だったらどう対応するか? ということでした。

『まずは、休憩時間に運営スタッフから彼女に声をかけてもらって退席をお願いする。講師という立場で自分が直接対応すると、彼女が必要以上に気にしてしまうだろうし、授業だって時間をロスしちゃうだろうから。加えて、彼女がどのタイミングで退出したのかを覚えておいて、後から時間の許す限りフォローをする。

後日、スタッフと相談して次回から同様のことが起こらないように対応を考える。託児付の日を設ける・子供の同席を認めないことをあらかじめ通達しておく・近くの託児施設を紹介する...など、現実的にできる限りの対策をし、スクールとしての全体意見をまとめておく』

といったところでしょうか。

さて。これを冷たい対応だと思われますか? あなた自身がお金を払って受講している授業だとしたらどうでしょうか?

●セミナー講師は、コンテンツを伝える演者足るべき

なぜ私がエンゲルベルク教授と同じ対応をしないのかというと、講師には授業を受けている全員に対して、平等にサービスを提供する責任があると考えているからです。

この問題の正解はひとつではないはずです。エンゲルベルク教授も私も間違ってはいない。それは、教育をする場によりけりということだと思います。

一年にわたってクラス編成される大学では、教え子を育てるために時間をかけてじっくりと取り組む授業を行います。クラスのメンバーは、目標を同じくして長い時間を共にする仲間です。

仲間なら「みんなで一緒に学び歩もう!」という空気が自然で、クラスメートが困っているなら助け合おうという意識になってしかるべきだと思うのです。これが、今回のエンゲルベルク教授の対応のすばらしさにつながるのでしょう。

一方、私が担当するセミナー形式では、一日・数時間で完結する授業を行います。受講生のは、いろんなところからばらまらに集まってきた他人同士でしかありません。受講生は学びたいことが明確にあり、そのためにコンテンツを聞きに来た『観客』なのです。

そして講師は、学ぶために必要なコンテンツを準備します。効果的に知識を習得するための台本を書き、表現を工夫する『演者』なのです。

と考えると、セミナー形式の授業は『演劇』に近い形といえます。そういう場だと考えれば、授業を妨げる音(騒音)を出す原因を速やかに排除しなくてはなりません。快適にコンテンツを届ける義務があるのです。

●セミナーでの教室コミュニケーションは劇場型で

一年をかけて生徒と向き合える学校の先生は、年単位でのコミュニケーションを育んでいく必要があると思います。ちょうど、ドラマの金八先生のような。

でも、短時間で終わってしまうセミナーは、劇場型で進める方がよいと考えています。講師と受講生のコミュニケーションに瞬発力が必要だと思います。短い時間で心に残してもらうために、スタートからコンテンツを受け入れやすい場を作っていく工夫が必要です。

最初の挨拶から、思いっきりの笑顔で始めます。くつろいで受けてほしいから、教室の空気を演出するためにの最初の気を配りが大事です。

「授業はこうやって進めますよ。今日の目標はココだから頑張ろうね。質問のタイミングはこうしますね。休憩時間は何時です。携帯電話はOFFにしてね。配布物は揃ってる? 画面は見やすい? 教室の暑い寒いはない?」......冒頭の挨拶はこんな感じです。

始まってから5分間が勝負です。この時点で「この人から話を聞こう」と思ってもらえるように努力します。だって、いやな人から話を聞く気にはならないですよね。

授業が始まったら、基本的には台本通り進めます。目標を達成するために練られたストーリーだから、忠実に時間も守って。思わぬ質問が入ったら、本題からずれないようにアドリブで組み入れます。

質問が多いから、操作が遅れるから、といって特定の受講生を贔屓することはしません。使える時間はみんな平等ですから。むずかしいですが、そこは気をつけてフォローしていきます。

セミナーの終わりまで、みんなが学ぶ目標に向かって一番いいコースが進めるようにお手伝いをしていく仕事が講師の仕事だと思っています。

どんなできごとがあっても、迷いません。私が迷えば、クラス全員が迷子になってしまいますし。普段は優柔不断でフラフラしている私も、授業中だけは先導する者としてキリリとしています。たぶん(苦笑)

●担当セミナーへの思いは......

Web制作の現場で、仕事を円滑に進めるために、何かしらのお手伝いになるセミナーを提供したいと思って進めてきました。

なにせ、新しい技術や手法が次々に生まれては消えていく業界ですから、独学ですべてを網羅するのはしんどいはずなのです。そういう人の手助けになればいいと思っています。

「何か」をぎゅぎゅっと短時間で吸収できるセミナーを常に模索しています。

そのためには、私自身がいろいろなことを学びます。そして、それを勉強したときにどうだったか? をきちんと記録しながら進みます。実際に使ってみて何を知ってないといけないのか? ということを考え、そしてそれを授業の脚本にします。

普段私が担当するセミナーは、入門・基礎・実践編までで、応用や上級編はありません。私のセミナーは、リピートで受けてくれる方が多いので、「応用や上級も開催して欲しい」というお声はよくいただきます。

が、初級〜中級までしか実施しないのには理由があります。応用や上級になると、受講生の方のお仕事や環境によって求めるものが細分化されてくるからです。そうなってしまうと、個別指導がふさわしいでしょう。集団研修には不向きなのです。

なので、初級〜中級と誰もが学ぶときに通る道を進みながら、受けた人がこれから独学で上級までスキルアップするための力をつけさせてあげたいなと思いながら授業をしています。

......さて、今回はここまで。冒頭の記事を読んで、どうしても書きたくなってこうなりました。

次回は......新しく勉強を始めたことを書こうかな。乞うご期待。ではまた!

【 森和恵 r360studio 〜 Web系インストラクター 〜 】
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> < Twitter: http://twitter.com/r360studio
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7月までの担当講座を発表しました。Web制作をステップアップしたい方へ、ぜひ。モバイルフレンドリー・Illustrator・PHP......など盛りだくさんです。

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編集後記(05/18)

●沢木耕太郎「銀の街から」「銀の森へ」を読む(朝日新聞出版、2015)。朝日新聞で毎月一回の連載を続けた映画エッセイが、180回に達して二冊の単行本になった。最初のページがタイトルだけ、3ページにわたってエッセイ、文末に簡単なデータという構成で、それぞれに90本の映画エッセイが掲載されている。この180本もの映画タイトルのうち、知っているのはせいぜい20本であり、見たことあるのはわずか13本だ。メジャーなのは「猿の惑星:創世記」だけだろうか。とにかく知らない映画ばっかりである。知らない映画についてのエッセイなんて面白いのか。そう思って読み始めたら、これが......面白い。

「この連載が、その発端から宿命づけられていたのは、私の友人たちを含めた多くの読者に、『その作品を見てみたい』と思わせるものにすることだった」「自分が面白いと思った作品を、どのような点が面白かったのかに焦点をあてて書く。そのためにはいくぶんストーリーに踏み込まざるをえないだろうが、それでも、まだ見ていない読者には見たいと思わせ、すでに見た読者にはなるほどそういう見方があったのかと思ってもらえるようなものにしたい」。そういうあとがきを読むと、これは大変なことではないか。エッセイを書くために、普通以上にしっかり映画を見て、さまざまに考えを巡らせる必要がある。

しかも、文字数は毎回同じである。映画の評論としては短いと思う。そこにピタッと収める技量はさすがにみごとなものだ。しかも、当然だが、いわゆるネタバレはない。わたしが見たことのある映画については、わたしの気づかなかった重要な点が鮮やかに示されていて、わたしはホントに映画を見る能力がないのではないかと落胆する。なるほどそういう見方があったのか! この二冊の本を読んで、どうしても見たくなった映画が日本映画で11本、外国映画で26本あった。また、既に見た映画も見直したくなった。ラッキーなことに図書館の棚で「ローマの休日」を見つけた。

沢木はスクリーンで二度、テレビやビデオで繰り返し見ており、細部まで知悉していたが、三度目のスクリーンでも映画として充分に楽しめたという。そして、どこかに展開の不備はないか目を凝らしてみたが、最後まで欠陥を見つけることができなかった。すべてについて過不足なく説明されていて完璧だという。映画の出来と本質的な関係はないが、と断りたったひとつ、スペイン階段のシーンの時計のミスを指摘する。さすがだ! と思ったらWikipediaでもその指摘の詳細があり、デジタルリマスターされた時に修正されたそうだ。わたしは、王女が化粧セットを持っていないところに違和感があったが。(柴田)

< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/402251132X/dgcrcom-22/
>
銀の街から

< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4022512733/dgcrcom-22/
>
銀の森へ


●吉田貴之さん、ありがとうございます!

「大阪市における特別区の設置についての投票」。これが正式名称。天下分け目の決戦みたいな報道やら運動やらが行われていたけれど、大阪市を解体して特別区にすることで、ここいらの区を湾岸区、ここいらの区を北区にするで、どうする? という投票だったはずだ。

橋下市長が進退を賭けてしまったがために、焦点はぼけてしまった。支持不支持投票みたいになってるし、報道もそうなっていた。おかしくない? 第一それ去年やったよね、市長選挙で。あれも都構想の是非が争点で、反対派は対案や対立候補が出せず、都構想自体は推進になったよね。

基本的には橋下市長支持(すべてを支持しているわけではない)、無党派、都構想賛成、改革賛成、でも市の解体や特別区の設置に反対の私は悩みに悩んだ。なぜ都構想や二重行政解消にこの方法しかないのよ? 政令指定都市のメリットを捨てる必要あった?

今の府と市はどちらも維新なのに、どうして仲良くできないとかの話になるの? 堺市を都構想に巻き込めないだろうけど、どうするの? 堺市が政令指定都市になった時(2006年)の騒ぎは記憶に新しいよ。大阪市が解体されて終わり? 疑問符だらけ。

今回の接戦だと、改革に積極的な人だけが賛成なのと(よくわからない人、迷っている人は反対に入れる。戻せないから)、70代以上だけが反対多数なので、結果的には都構想賛成多数、橋下支持多数ってことじゃないかと思う。

若い人の投票率が上がっていればひっくり返っただろうな。あほやな若い人。橋下のやることは若い人、未来ある子供らのための改革が多いのに。既得権益を潰すものなのに。今まで何も考えなくて済むところにメスが入る、はだかの王様に子供が指さすようなものなのに。

あとは昔から住んでいる人の多い地域は反対多数、流動性の高い地域は賛成多数なんだと思う。区の名前がなくなり、平凡な名前になるのにも抵抗はある。それまでの区の名前をつけてもいいよ、これは特別区になってから考えますって、確定違うんかい! とも。

反対派のやり方にはうんざりした。下品なものがあった。そのぐらい脅威だったんだろう。なりふり構わず。投票所に向かう人、帰る人は、いままでのどの選挙よりも多かったと思った。テレビでの投票率(66.83%)を見て納得した。誰に入れていいかわからない選挙より、賛成か反対かだけで、即反映されるのって大きい。スコットランド独立投票を思い出した。

私はというと、鉛筆を持った時点でも迷っていて、「これは特別区設置の是非なんだから」と結局反対に入れた。「一回やらせよう」で国民が盛り上がり、国政が大変だった記憶もある。でも橋下さんには、まだやめて欲しくなかった。もう一期やってもらいたかった。特別区にはしないけど、前回選挙の市民の考えをくんでの都構想は続けてもいいんじゃないの?

嫌われても忙しくても大阪のためにと頑張ってきたのに、支持されなかったのだと、市民は馬鹿なんだと、失望したというか愛想がつきて吹っ切れたんだろうなぁ、あの笑顔。これからは家族サービスできるし、テレビや講演会で稼げるし、支持が多いから何でもできるだろうし。でも支持されなかったら引退、政治に身を捧げてくれないんだなという不安は反対票に反映されたと思う。

10年後にやったら、いや再度やったら賛成多数だったろうと思う。争点を別にしたら、順番を変えていたら、都構想策を細かく出せていたら可決されたはずだ。改革を進めてくれる人が出馬してくれるのを期待。一回目はあかんねん、何でも。野球とかそうだったもん。言い出しっぺは叩かれるけど、二人目は反発されにくい。

速報を見ながら、ワクワクした。接戦でどんなドラマよりも面白い。反対に入れたことを後悔しはじめた。否決となって、なーーーーーんにも変わらないのだと思うとがっかりした(笑)。可決となったら、めんどくさいこと、しんどいこと、そして新しいことが起きたのになぁ。もちろん可決したからってバラ色の未来はなく、市民のデメリットは大きかっただろうけど。新態勢が安定するまで20年はかかるだろうし。けれど、上が変わらないからと落胆独立していった人たちがやった脱藩とか明治維新とかも連想したわ。だから反対で良かったのよ。そう思いたい。 (hammer.mule)

< http://www.sankei.com/west/news/150518/wst1505180039-n1.html
>
賢いな。「『今の大阪市に満足していない人が相当数いる』と語った。」橋下市長も語ってたけど、府や市がちゃんとしてたら、彼の登板はなかったはずなのよね。時機もあるし。株価戻ってきているもんね。