挑んで死にたい、ダンボールアーティストとして[04]ダンボールアートとの出会い
── いわい ともひさ ──

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●海外ニュースをきっかけにダンボールでアイアンマン作り

ブログを開始してからは、情報収集することが習慣になりました。毎日更新するという義務を自らに課したわけですが、そのためには情報を入れ続ける必要があります。

仕事ではなく、誰かと約束をしたわけでもないので、毎日ブログを書くことなどいつ止めてもまったく問題はなかったわけですが、途中で止めると自分に負けた気がして、それは嫌だと思って続けていました(笑)。

ブログ開始から三か月後、とあるウェブサイトで面白い記事を見つけました。海外の人がダンボールでアイアンマンを作ったというのです。




アイアンマンはアメコミ(アメリカの漫画)のキャラクター。巨大軍事企業の社長が設計した鋼鉄のスーツで、音速で空を飛ぶことができ、手からビームを出し、肩や腕にはミサイルを搭載した最強の兵器という設定。近年映画化もされて人気になっています。

ウェブサイトに掲載されたダンボール製のアイアンマンを見て、ほとんどの人は「すごい!」「いいね!」ぐらいで終わってしまうと思いますが、なぜか私は「作りたい!」と考え、ネットに設計図が公開されていないか、探し回りました。

最初は、こういうものは海外のウェブサイトに公開されているだろうと考えて、「Ironman Blueprint」など英語で検索をかけていました。海外にダンボールではなく、樹脂を使った本物さながらのアイアンマンを作っている人がいて、そのウェブサイトに「Pepakura」の設計図を参考にしたと書かれていました。

「Pepakura」とは「ペーパークラフト」のことでした。もしかして、灯台下暗し? と思いつつ、今度は日本語で検索を開始。そしてついに、アイアンマン(顔の部分)の設計図を発見!

多摩ソフトウェアという会社が「ペパクラデザイナー」というソフトを開発していて、その会社のウェブサイトでアイアンマンのデータがダウンロードできました。今でも、同社のウェブサイトからダウンロードできます(記事執筆時点の情報)。A4サイズで数枚の設計図がPDFで配布されています。

< http://www.tamasoft.co.jp/pepakura/
>

ダンボール以外には「グルーガン」というものが必要でした。グルーガンは熱で棒状ののりを溶かして、ノズルから押し出すだけの非常に単純な構造の道具です。

冷えた状態ではプラスチックのように硬いのりは、熱を加えると粘度の高い液体になり、冷えるとまた元の通りに固まります。ダンボールの接着にこれを使います。

ダンボールは自宅にいくらでもありましたが、通販で送られてきた箱は質も悪く、折り目などもついているので新品のものを購入することにしました。

クラフト用品といえば東京ハンズというイメージがあり、足を運んだところ、グルーガンと「板ダンボール」なるものがありました。読んで字の如しですが、梱包用のダンボールとは違い、大きな板状のダンボールがクラフト用に販売されていました。

他にはダンボールを切るときに敷くシートや、アート用のカッターを購入。全部合わせても、3,000円程度でした。

印刷した設計図をダンボールの上に置いて、設計図通りにひたすらダンボールを切って下準備。その後は折り目をつけ、グルーガンで接着して完成。

手間がかかる作業でしたが、元の設計図が非常に良くできていて、完成したアイアンマンも見栄えの良いものでした。制作過程をブログで公開したところ、ちょっとした反響があり、飲み会でお披露目したときは人気者になりました。(笑)

●長年の趣味だったCGがダンボールアートとつながった

初めて作ったダンボールアートは、他の人が作った設計図を元に部品を切って組み立てただけでしたが、周りの反応の良さに驚きました。

何がそんなに面白かったのかを考えてみましたが、ダンボールという身近な素材で精巧なものを作ったというギャップや、実際に作ったものに触れられるのが良かったのかなと思います。

また、かぶれるものだったので皆でワイワイ遊べることや、写真に撮ってシェアしてネタにできるという、今の時流にちょうど合ったものだったことが大きかったかもしれません。

アイアンマンを含め、これまで作った作品はブログで公開しているので、ご興味がある方は是非ご覧ください。

< http://iwaimotors.com/blog/cardboard/
>

アイアンマンの設計図はペパクラデザイナーというソフトで作られていましたが、ペパクラデザイナーは3DCGのデータから展開図を作るソフトで、元となる立体は3DCGソフトで作っているとわかりました。

3DCGは、10年以上前から趣味で細々と続けていました。3DCGソフトは多機能で、写真と見紛うようなフォトリアルなものから、手描きアニメのようなタッチまで実に幅広い表現ができます。

ただ、品質の高いものを作ろうと思うと高い造形能力、美術的な感覚、3DCGソフトの操作能力など、高度なものが要求される上、機材も一昔前に比べたら格段に安くなったとはいえ、ある程度のお金がかかります。

作るからには人に見せて評価されたいものですが、いまや一般の人達も世界中から集結したトップアーティストを擁する、ディズニーやピクサーのような大手が作った映画に慣れてしまっていて、目が肥えています。それらと並ぶぐらいの品質でないと、中々、良い反応を得られません。

それに対してダンボールアートはもの珍しさも手伝ってか、とても良い反応が得られ、作り手としては非常にやる気が出ます。3DCGの制作にかかる時間と比較すれば、圧倒的に短い時間で形にできるのも嬉しいところです。そのような理由から、すぐにダンボールアートにのめり込んで行きました。

●3DCGソフトでダンボールアートを設計

3DCGとして作品を作る場合、モデリング(形を作る)、テクスチャリング(表面の模様作り)、質感設定、照明、構図など、様々な工程があります。一方、ダンボールアートの設計図作りに3DCGソフトを使う場合は、モデリングとなるため、作業時間は比較的短くなります。

実際には、最終的にダンボールで形を作るときに無理のないように、部品を細かくしすぎないよう、加工が難しい形にならないようにしたりと配慮は必要ですが、経験とともに勘所がわかってきます。

手始めに一番最初に作ったアイアンマンを真似て、別の型式のアイアンマンを3DCGソフトで作ってみました。画家は模写することが非常に良い訓練になると言いますが、3DCGも同じです。設計者の人の技術やセンスの高さが良くわかりました。

その後は、スターウォーズのキャラクターやオリジナルのガスマスクなどを作ってはイベントに持って行ったり、ブログで公開したりしていました。会社勤めの傍ら、合間を見つけては楽しみながら作っていきました。

●ダンボールアートをブログの個性にしてブランディング

セルフブランディングを標榜しながらも、これといって個性のなかったブログですが、ダンボールアートのことをプロブロガーのごりゅごさんが面白いと評価してくださり、「ダンボールアートをブログの個性にするといいよ」との助言をいただきました。

最初は正直言ってピンときませんでした。ネタとしては面白いと思うし、自分自身も長年の趣味とつながったことで大いに楽しみながら取り組んでいたものの、ダンボールアートを個性にしたブログに将来性はあるのかと疑問に思ったのです。

とはいえ、没個性的なブログのままでは見てくれた人の記憶に残りません。数か月運用してみてわかったことですが、私のブログは検索サイトからの流入が8割以上になっていました。今は誰もが検索サイトを使って情報を探し、ウェブサイトやブログを訪問します。

入口となるトップページを作っても、そこから入ってくる人よりも、検索サイトから探している情報が掲載されているページにいきなり入ってくる人の方が多いのです。

検索サイト経由でウェブサイトを閲覧し、必要な情報を得たら直帰してしまう人も多いため、一期一会となることが大半です。そのわずかな機会に印象付けて、リピーターになってもらうためにもブログの個性は重要なわけです。

まさか、ダンボールアートをブログの個性にした結果、後に人生を変える出来事が立て続けに起きるとは、このときは夢にも思いませんでした。

次回はブログ開始から一年後に起こった、驚きの出来事についてお伝えします。


【いわい ともひさ/ダンボールアーティスト】
Blog < http://iwaimotors.com/blog/
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今週の一言:花粉症に効くと聞いてヤクルトを飲み始めました。腸内環境を整えることが良いんだとか。ただし、効果が出るのは来シーズン。飲み続けねば。