腕時計百科事典[02]腕時計の分類(ムーブメント)/吉田貴之

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さて、今回から何回かに分けて「腕時計の分類」について書いてみます。

腕時計はデザインも機能もブランドも多彩なため、どんな風に探せばよいのかわからない、という声を耳にします。

これは、一つの腕時計を手にしたときに、その腕時計がどんな特徴を持っているのか、言い換えれば他の腕時計とは何が違うのかがわからないから起こる問題です。

これを解決するには、腕時計をいろいろな視点で分類するのが近道です。そこで、まずは「ムーブメント」、つまり腕時計の「機械」を切り口に分類してみようと思います。




●何が違うのか

「腕時計の機械の違い」といっても、機械として動く部分、つまりいくつかの歯車の組み合わせにより針が動き、時刻を示す、という基本部分は変わりません(もちろんLED表示などの時計は除きます)。違うのは歯車を動かす「動力」と、歯車のスピードを調整する「調速機/脱進機」の部分です。

●手巻き/自動巻

いわゆる機械式の腕時計です。2000年代においてはあまりなじみがないかもしれません。しかし、以下に説明するクオーツ時計が普及するまでは、ほぼすべての腕時計はこれらのムーブメントを採用していました。

手巻きや自動巻の腕時計はゼンマイを動力とします。しかしゼンマイは巻き上げられると一気に解けようとしますし、巻き始めと巻き終わりでは解けようとする力が異なるため、歯車に直結してしまうと上手く時刻を表示することが出来ません。

これを解決するのが「調速機/脱進機」です。ひとことで説明すれば、腕時計の中に納められた小さな「振り子」がその役目を担っていると考えてください。「振り子の等時性」を利用して、ゼンマイの力の偏りを均一なモノにしているのです。この仕組みにより、機械式時計は一日に数秒程度の誤差で動作します。

●クオーツ/電波

クオーツ式の腕時計は現在主流の腕時計です。多くの方が一度は腕に着けたこ
とがあるはずです。

動力は電池から供給される電気ですが、調速機の役割を担うのが「クオーツ」です。クオーツ(=水晶)に電圧をかけると生じる特有の周波数を取り出し、これをIC回路を通じて1秒の信号に変換することで時刻を刻んでいます。

クオーツ時計はかなり正確(月に数秒程度)ですが、このわずかに生じる誤差をより正確な原子時計で補正しようとするのが電波時計です。

●その他の仕組み

科学の実験で使う「音叉」をご存じでしょうか。音叉は特定の高さの音を出すことができますが、これを調速機として利用するのが「音叉時計」です。

手巻きや自動巻などの機械式時計よりも簡単に高精度が出せるので、いくつかのメーカーに積極的に採用されましたが、より高精度なクオーツの登場でそのポジションを失いました。

他にも、動力や調速機/脱進機に多少の工夫を凝らした腕時計がありますが、基本は「機械式」か「クオーツ式」で大別して問題ありません。

●目的によって使い分ける

クオーツ式時計の登場によって、手巻き/自動巻の腕時計は腕時計業界から姿を消しました。

しかしその技術は失われることなく、1990年代以降、高級腕時計としてブランディングされ、再びその地位を確かなモノにしています。

一度主流を退いた技術が復権するのは、効率や効果を重視する工業製品市場においてはめずらしいことであるといえるでしょう。

実用性に富んだクオーツ式の腕時計、ブランド価値やモノとしての魅力に富んだ機械式の腕時計。どちらが優れているというわけではありませんので、目的によって使い分けるのが賢い使い方ではないでしょうか。


【吉田貴之】info@nowebnolife.com

兵庫県神戸市在住。Webサイトの企画や制作、運営を生業としながら、情報の整理や表現について研究しています。

イディア:情報デザインと情報アーキテクチャ
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