[3927] 私の履歴書:コンシューマーの世界へ

投稿:  著者:  読了時間:24分(本文:約11,700文字)


《渋谷と所さんの狂気が見えるわ》

■おかだの光画部トーク[137]
 知らないなんてもったいない!「a-blog cms ver.2.5」
 岡田陽一

■Take IT Easy![56]
 私の履歴書:コンシューマーの世界へ
 若林健一 / kwaka1208

■ところのほんとのところ[115]
 [ところ]を支えてくれる人たち
 所 幸則 Tokoro Yukinori




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■おかだの光画部トーク[137]
知らないなんてもったいない!「a-blog cms ver.2.5」

岡田陽一
< http://bn.dgcr.com/archives/20150616140300.html >
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梅雨が明けた真夏の沖縄の、「a-blog cms DAY 2015 in OKINAWA」の会場で、今このテキストを書いている。陽射しが強すぎて、きのう日中、外で活動していたときに焼けて、顔と腕が赤くなってヒリヒリ痛い。

Web制作にかかわる人、またWebを使って仕事をしている人に、[a-blog cms エバンジェリスト]のわたしから、いくつか魅力を紹介する。

・a-blog cms エバンジェリスト
< http://www.a-blogcms.jp/evangelist/ >

a-blog cmsは、名古屋のWeb制作会社、有限会社アップルップルが作っているCMSで、来週で6周年になる。アップルップルさんは、「WCAN(だぶきゃん)」というWeb制作者向けのセミナーイベントを主催していたり、名古屋駅近くで、「ベースキャンプ名古屋」というコワーキングスペースを運営していたりする、少数精鋭の会社。

・a-blog cms < http://www.a-blogcms.jp/ >
・アップルップル < http://www.appleple.com/ >
・WCAN < http://wcan.jp/ >
・ベースキャンプ名古屋 < http://basecamp-nagoya.jp/ >

4月にリリースされた最新のVer.2.5は、普段からWebサイトをビジネスで運用している人にとって、更に、顧客に対してのビジネスを加速させるさまざまなコンテンツや企画に対応できる多くの機能が搭載された。

一般にCMSとして多くの人に知られていて、実際に使われているのはWordPressだろう。

a-blog cmsのことを知らない人も多くいると思うが「知らない」のはもったいない機能が満載である。そして、それらの機能が、自分でプログラムを書かなくても100%使える。

つまり、PHPなどのプログラミングがまったくできない私でも、HTMLとCSSを知っていれば、すべての機能を使いこなすことができる、制作者にとっても、サイト運営者にとっても嬉しいCMSだ。

では、具体的に厳選していくつかの機能を紹介しよう。

◇One to One マーケティングにも活用できる

訪問者の興味や、アクセス回数、デバイスごとにコンテンツを最適化できるようになった。例えば、初めてサイトに訪問した人と、2回目、3回目に訪れた人とで、見せる内容を変えたり、その人が興味のあるコンテンツを出してあげたりできる。

One to Oneマーケティングにはこの機能が重要。よりきめ細やかなコンテンツを必要なパターン分用意しなければいけなくなるが、Webサイトを作ることが目的ではなく、サイト訪問者のためのコンテンツを企画したり制作することが、本来の仕事なはずなので、ここは力を入れていきたいところ。

◇多言語対応

ひとつの記事で管理し、別のURLで表示することができる機能。ひとつの記事に、例えば日本語と英語の入力欄が用意されることで、管理が楽になる。

日本語の記事と、英語の記事を別のURLで別々に作るのはよくあることだが、その場合、日本語版だけ変更して、英語版が古いままだったり、日本語版だけ削除して、英語版がそのまま残っていたりと運用面で、管理にかなり手間がかかってしまう。

しかし、a-blog cmsの多言語対応機能は、ひとつの記事の中で、日本語版と英語版の両方を管理できるので、そのようなミスは起こりにくい。

◇Mixpanel連携

Google Analyticsは、アクセスされた内容をざっくり調べるツールだが、Mixpanelは、もっと深く、サイト訪れた個々の人が、サイト内でどんな行動をしているかを調べるサービスである。

a-blog cmsでは、そのMixpanelと連携できるような項目が管理画面についている。サイト訪問者の行動をより綿密に調べることによって、その人に向けたきめ細かい対応ができる。

サイトに訪問した人の行動は、匿名ユーザーとして、何時、どのコンテンツをどういう経路でどれくらいの頻度で見ているか記録されていて、お問い合わせなどでフォームを使ったときに、過去の行動データがその人の情報と結びつく。

例えば、スポーツ用品サイトの場合、野球好きの人にテニス用品をオススメしても意味がなく、興味がないものをしつこくオススメしても逆効果。野球好きの人には、野球関連の商品を勧め、更にその人が好きな球団が勝った日に、メールを送るなどより効果があることが企画できる。

これら、数多くの機能のほんの三つを紹介したが、もっと詳しく聞いてみたいという方は、今回の沖縄を皮切りに、全国各地を中の人が巡る全国ツアーがあるので、近くで開催される会場に是非、足を運んで確認していただきたい。ちなみに、神戸は7月24日(金)で調整中。

2015年のa-blog cms全国ツアーのお知らせ
< http://www.a-blogcms.jp/news/event/tour2015.html >


【岡田陽一/株式会社ふわっと 代表取締役 ディレクター+フォトグラファー】
< mailto:okada@fuwhat.com > < Twitter:http://twitter.com/okada41 >

2015年、マンスリーで開催中の「CSS Nite in KOBE」。次回、Vol.10は、6月26日(金)に開催。松尾茂起さん(ウェブライダー)による「コンテンツマーケティングを加速させよう! ストーリー型Webライティング講座」

1月30日に発売され、人気の書籍となっている「沈黙のWebマーケティング─Webマーケッター ボーンの逆襲─ディレクターズ・エディション」(エムディエヌコーポレーション)の著者、松尾さんからコンテンツマーケティングを加速させるための、ストーリー型ライティングの方法を、1時間ほどのワークショップを挟み、3時間じっくり学びます。

残席わずかとなっていますので、興味のあるウェブ制作の方は是非ご参加ください。
< http://cssnite-kobe.jp/vol10/vol10list/vol10outline.html >


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■Take IT Easy![56]
私の履歴書:コンシューマーの世界へ

若林健一 / kwaka1208
< http://bn.dgcr.com/archives/20150616140200.html >
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こんにちは、若林です。先週に引き続き、私の履歴書の続編をお届けします。

●前回書き忘れていたこと

次の話へ進む前に、前回書き忘れていたことをいくつか。モノづくりに関わった方ならわかると思うのですが、自分の関わるカテゴリーの商品を街中で見かけると気になるもの。

例えば、最近でこそかなり改良されましたが、古い機種だとロールペーパー(レシート用の紙)を入れるのが難しく、店員さんが苦労していると、思わず「やりましょうか?」って言いそうになったり、どんなお店でどんな機能の機種を使っているのかとか、どんな商品分類で使っているのかといったことが気になって、支払いの時にレジスタをジロジロ見ている、完全に怪しいやつでしたね。しかし、それぐらい愛着が持てる仕事になっていた、ということだと思います。

書き出すとキリがないのですが、海外には面白い仕組みを採用しているところがたくさんあって、そのひとつが台湾。

台湾のレシートは宝くじになっています。裏に宝くじが印刷された紙を使ってレシートを発行するのですが、宝くじなので必ず一定の長さで切らなければならず、少ししか商品を買わなくても長いレシートが出たり、たくさん買うとレシートが何枚もでてくるという変わったシステムでした。あれなら、レシートを受け取らないお客さんはいないでしょうね。

さて、今日の本題です。

●コンシューマーの世界へ

入社して11年、それまでずっと同じ部門で仕事をしてきて、外の世界を一切知らなかった自分に転機がやってきます。

私が所属していた事業所(奈良県大和郡山市)の中で、新しい事業の創出をめざして三つのプロジェクトが発足しました。そのひとつのメンバーとして招集していただいたのです。30歳の時でした。

テーマは「ホームサーバー」。放送やネットのコンテンツをためておくサーバーで、好みに応じた番組やネットコンテンツ、音楽などを簡単に探して楽しむことができるもの、そういったテーマの商品でした。

業界の中に考え方としてはあったものの、商品として確立されたものではありませんので、商品像をゼロから考えていかなければなりません。

当時はどうしていいかさっぱりわからず途方に暮れていましたが、今思えばとても貴重な体験でした。それまでは既存の事業、既存の商品を担当していましたので、ある程度決まった枠組みの中で考えればいいのですが、その枠組みさえも自分で決めなければならない。

自分で決めるということがどれほど大変か、ということを思い知らされたプロジェクトだったと思います。

●チューナー付きパソコン用アプリの開発

プロジェクトが発足し、商品像の検討やプロトタイピングを行いながら、最初に商品の形になったのは「チューナー付きパソコン用テレビアプリ」でした。

2000年前後にパソコンを使っていた方なら、当時テレビが観られるチューナー内蔵パソコンが流行ったのを覚えておられるでしょう。

そのチューナー内蔵パソコン用に、オリジナルのテレビ視聴アプリを開発しました。このアプリの特長は、次の三つ。

・電子番組表(EPG)表示とEPGからの録画予約
・MPEG1形式でのタイマー録画
・普段観ている番組情報から近い将来の番組をおすすめ

今でこそ、EPGというのも当たり前になっていますが、当時はBSを含めてデジタル放送が始まる前(1999年頃)で、EPGもアナログのデータ放送で提供されていたものを使っていました。

デジタル放送のEPGは、テレビをつけた時に表示されてなくてもしばらく待てば出てきますが、アナログ放送のEPGは放送時間が決まっていて、昼間の時間帯二時間おきに一回放送されるだけでしたので、一度受信しそこなうと二時間後まで表示できません。

その二時間に一回のチャンスを逃さないようにするため、データ受信用の常駐アプリを常に起動させたり、放送開始時刻の直前にパソコンの電源オフ操作が行われると警告を表示するなど、技術的にも商品仕様的にも様々な工夫を行いました。

また、CPUパワーが非力な時代にソフトウェアエンコードで録画機能を実現していたので、録画中は他の操作ができないようにブロックしなければならず、録画が始まるとまったく触れないパソコンとせざるをえず、あちらこちらに苦労の跡が見えるアプリケーションでした。

●特許との戦い

これらの商品は、従来のテレビともITの世界とも違う新しい分野でしたので、特許との戦いの日々でもありました。

その中で最も驚いたのが「電子番組表で選択された番組の表示」に関する特許です。普通、番組表をリモコンで操作すると、現在選択している番組は色が変わるとか、枠がつくといった形で区別されますよね。あの機能がすでに特許として出願されていたのです。

いわばExcelのセルのフォーカスと同じ機能。既存の機能と同じものがどうして特許として認められているのか、ということで散々抵抗しましたが、結局特許としては有効なままで、EPG表示機能を持ったテレビを開発しているメーカーの悩みの種でもありました。今は、その特許は権利が切れていて悩まされることはなくなっているはずです。

●単体機器としての「ホームサーバー」へ

その後、パソコン用テレビアプリケーションとして、録画番組を家庭内LAN経由の他のパソコンで観られる機能の追加、ハードウェアエンコーダー搭載機種への対応、メールによる録画予約機能の搭載などの進化を経て、いったん開発は終了します。

その後、企画・開発されたのが組み込みLinux搭載で単体で動作する「ホームサーバー」"Galileo”でした。

Galileo
< http://www.sharp.co.jp/galileo/ >

これは、アナログ放送の番組視聴、録画、録画番組のネット経由(外出先を含む)での再生機能、ブラウザ、Webサイト公開機能、写真共有機能などを搭載。今なら、ガラポンTVとクラウドサービス(Google Photos、blogサービスなど)を組み合わせてやっているようなことを、ひとつの機械でやってしまおうという超画期的な機械でした。

ガラポンTV
< http://garapon.tv/ >

超画期的なあまり、プロジェクトメンバーは膨れ上がり、開発は難航。にもかかわらず、ビジネスとしては成功しませんでした。

業界ではかなり話題になりました。次に、どんなものが出てくるのだろうか? と注目も浴びました。しかし、商品として売れなくては意味がありません。マイナーチェンジモデルが一回出た後、開発は終了となりました。

●新しい商品を生む難しさと楽しさを知る

結局、「ホームサーバー」を新しい事業として立ち上げることはできませんでしたが、これらの開発を通して商品をゼロから開発することの難しさと楽しさを経験しました。

それまでは決まった線路の上を走る仕事で、外へ出ることもほとんどありませんでしたが、たくさんの外部の方と接する機会や展示会などのイベントに参加する機会、新しい技術を学ぶ機会(この時に、音楽や映像の圧縮技術、デジタル放送の技術を学ばせていただきました)を得ることができました。

この時のメンバーとは、その後もプロジェクトで一緒になることが多く、新規事業、新規商品というとほぼ同じ顔ぶれが集まっていました。

このような経験をしたメンバーは大企業の中でもそう多くはなかったのです。

次週に続きます。

【若林健一 / kwaka1208】 kwaka1208@pote2.net
crossroads
< http://kwaka1208.net/ >
< https://twitter.com/kwaka1208 >
< https://www.facebook.com/kwaka1208/ >

CoderDojo奈良
< http://coderdojonara.wordpress.com/ >


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■ところのほんとのところ[115]
[ところ]を支えてくれる人たち

所 幸則 Tokoro Yukinori
< http://bn.dgcr.com/archives/20150616140100.html >
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●「アインシュタインロマン 所幸則 Tokoro Yukinori」

森岡書店(茅場町)での個展「僕が愛した渋谷、そして銀座」が13日(土)20時に無事終了しました。わざわざ来てくださった方ありがとうございました。次は、「アインシュタインロマン 所幸則 Tokoro Yukinori」が以下のスケジュールで開催されます。

会期:6月19日(金)〜7月30日(火)11:00〜21:00 日休〜20:00
会場:H.P.FRANCE WINDOW GALLERY MARUNOUCHI
東京都千代田区丸の内2-4-1丸の内ビルディング1F
< http://hpgrpgallery.com/cms/wp-content/files_mf/1432454086TOKORO_ReleaseSS.pdf >

◎H.P.FRANCE WINDOW GALLERY MARUNOUCHIより、所幸則「アインシュタインロマン」の開催をご案内申し上げます。走行中の新幹線の車窓からシャッターを切り、流れゆく風景をカメラに収める所幸則。切り取られる一瞬の中で、被写体となる物は容易に形を変え、日常では感じ得ない”危うさ”を画面に漂わせます。緊張を孕んだ静謐な世界観を、この機会にぜひご高覧ください。

◎これは僕が少年の頃からのスーパースターである、アインシュタインの特殊相対性理論へのオマージュである。僕が生きている間には、光に近い速度で地上を走りながら写真を撮る事は不可能だろう。せめてもの可愛い挑戦として、時速300km(秒速83m)で走る新幹線から撮る事で、一部の人には伝わるかもしれないというささやかな試みである。(所 幸則)

オープニングレセプション:6月19日(金)19:00〜21:00
大口俊輔(音楽家)と樋笠理子(バレエダンサー)によるイベント

さて、このオープニングでは、7月1日から始まる個展「PARADOX - TIME アインシュタイン・ロマンスをめぐる冒険-」のために作ったタブロイドを配布します。H.P.FRANCEのキュレーター戸塚健太郎くんの寄稿が掲載されているからです。この8ページのタブロイドに参加してくれた、あらゆるジャンンルの55人のほとんどが、[ところ]のアート活動を始めとして、One Secondに対する理解者です。

東京藝術大学の教授から、音楽家、ダンサー、茶の湯のひと、画家、哲学家、カメラ雑誌の編集長、写真が趣味の人、美術評論家、写真家、キュレーターなど多岐にわたり、とても面白いものになっています。

あまりに急に決まったため、どうしても書いて欲しかった人七〜八人に連絡がつくのが遅れたりして、残念ですがまたの機会に。

そんななかで、僕の転機のときのもっとも重要な一人が漏れてしまいました。電話が繋がらなかったのです。忙しいのと、電話にあまり出ないキャラだったからか、理由は定かではありませんが非常に残念でなりません。

●MOGRAの大将

そこで、彼にどれだけ世話になって感謝しているのか、「渋谷1セコンド」の展示を渋谷で実現できた経緯をふくめて書いておきます。

マイタウンである渋谷のランドスケープを撮るには、大きなカメラでなく小さいカメラがいいと思っていたので、描写が抜群のSIGMA DP1を買った。使い方は相変わらずよく分からないけど、何となく使ってた(じつは携帯もカメラも操作は苦手だ)。

そのとき、はっとする写真が撮れた。いや、まだ完成していないのだけど、イメージが頭に流れ込んで来た。それが渋谷1secondの1枚目として、その後仕上がっていくのだ。

これだ! これなら[ところ]を知る人も知らな人でも、はっ! とするよ。うん、これだー。[ところ]スタイルのランドスケープだ! それを現実に一枚に定着するにはどうすればいいのか? Adobe CS3で試行錯誤、数日悩む。ここは友人のAdobeの人に来てもらうことに。ランチでおびき寄せる。

こういうイメージなんだけど、それに向いた技術はCS3にあるかな〜。Kさんは、こうやれば良いんじゃないかなと、テキパキ教えてくれる。

できそうだ! ありがとう! ヒントはいただいた! そこから3〜4日ずっと実験。手応えあり! [ところ]はいつもみんなに助けられて[ところ]でいられるんだなあと実感。

2008年6月15日に1枚の写真が仕上がった。「合成」という言葉はちょっと違うと思う。「凝縮」があってる。「コマーシャル・フォト」10月号の個展紹介の三枚並んだ[ところ]の作品の、真ん中のが最初の完成品です。

こういうのが撮りたかったんだ。[ところ]が元旦から撮ってたスナップは、まさに[ところ]にとって王道のスナップだ。その場の出会いに反応して、自分の目とカメラで素早く切り取り定着される。もちろん、同じ写真は二度と撮れない。

自分の体の中を通って行ったスナップであり風景、[ところ]スタイルが次第にかたまってきた。そしてその写真は今、その時はこのカメラじゃないと撮れなかったと思う。

6月末に4〜5枚の写真が仕上がって、渋谷で有名雑誌のADやってる知人のいる編集部に電話して、面白いことやってるんだけど見に来ない? って言ったらその日の夕方に編集部を抜け出してやってきてくれた。面白いからもっといっぱい見たい、新作できたらいつでも見に来たいと言って帰って行った。

自信が出て来て突っ走る。念のため、もう一人の渋谷の写真の目利きに電話。彼女はハーフでかつてNY'70年代に生息していたアーティストたちとすごく交流があり、アートや写真については正統派の目利きだ。

彼女も「これはまるで、渋谷という街のポートレートね」「渋谷と、ところさんの狂気が見えるわ」といって帰って行った。

次の日、近所にいるから会おう、ついでに昼飯でもっ! と電話をかけて来たのがMOGRAの大将だった。彼、高村くんは、アートコーディネーターをしている友人で、彼にも見せてみた。「これはおもしろいすね……、渋谷で個展やる気ないすか?」

ん? これはベルリンかパリに持ってくつもりなんだけど(これも長くなるから次回!)日本なら確かに渋谷が一番だよね。相談にのってくれるかな、[ところ]は渋谷の展示スペースに疎くて。

渋谷なら思う場所があるので、話をしてみていいすか! とのこと。それならと彼に協力をお願いして、いろいろ案内してもらったりしたけどなかなか決まらず[ところ]はあきらめかけていた。その二週間後に個展が決まった、と高村君から連絡が! 大感謝! しかし、その時点で作品数たった八枚……。

日にちが決まったのが7月31日。会期は9月28日(日)から10月4日(土)だ。7月31日は「アイデア」8月9日売りの校了日、たまたま編集長立ち会いで撮影をしていた。そのとき差し替えで個展のために表3をくれた。感謝です! その時点で作品数はまだ予定の半分かな。

高村君の友情と、彼がいいと思ったものに対して、見返りもなく協力してくれるところに感激しています。個展もおかげさまで大盛況に終わった。大感謝な[ところ]でした。

●写真集制作プロジェクト

最後にいま、新たなそして歴史的な作品集を作ろうと頑張っています。方法はクラウドファンディングで、これを使う意味はこういう本があるということを広めること、出資者を募ることだ。

今回、以前出した「One second vol.1 Shibuya」と同じA4変形横位置で、なおかつ目一杯のサイズで写真を配置して、より大きく作品を見てもらおうと思ってファンディングを募った。

その金額の7割は制作費になるほどの金額だったが、支援者たちはもっと大きいイメージでもあった。そこでB4変形横位置にしようとしている。知らなかったが、このやり方だと機械製本ができないらしい。すべて手製本になるため予算は1.8倍になってしまった。

16日には蒼穹舎の太田さん、デザイナーの原さんとの話し合いで決めるつもりですが、[ところ]は記憶に残るいい本が作りたい。みなさん支援よろしくお願いします。

このプロジェクトは、写真家・所幸則の写真集制作プロジェクトです。
< https://greenfunding.jp/lab/projects/1083 >


【ところ・ゆきのり】写真家
CHIAROSCUARO所幸則 < http://tokoroyukinori.seesaa.net/ >
所幸則公式サイト  < http://tokoroyukinori.com/ >


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編集後記(06/16)

●「長尾和宏の死の授業」を読んだ(ブックマン社、2015)。長尾氏は在宅医療の第一人者である。多忙なはずなのに次々と本を書いている。多作だからスカスカ本もあるが、それらを次々と読んでいるのがわたしだ。古稀の人グループのブログを作っているから、この先生の本は興味深いテーマというか、いいネタになるのだ。2014年末、余命半年と宣告されたアメリカ人女性・ブリタニーさんが、安楽死を選択することをネット上で宣言した。世界中で賛否両論が巻き起こる中、予告通り彼女は安楽死を実行した。意外なことに多くの日本の若者が、この報道に大きく反応した。死とは遠いはずの若者が、である。

通常、死は高齢者の最大の関心事で、若者は死に無関心だという固定概念がみごとにひっくり返った。ある週刊誌は「9割の人が尊厳死に賛成し、7割の人が安楽死に賛成している」と報じたが、多くのメディアは「日本では安楽死は殺人罪で、尊厳死さえもグレーである」という実態を知らないのではないか。それぞれの定義を知っている人はいるのだろうか。また平穏死という言葉もある。この本は、長尾先生と生徒の、建前や立場を超えた「死」の授業3時間の報告である。安楽死、尊厳死、平穏死とはどういう「死」なのか。

欧米の一部の国や州における「安楽死」にはふたつの方法がある。1)医師が直接、安楽死を希望している患者に注射などを用いて薬を注入し死亡させること、2)安楽死を希望している患者に、いつでも死ねるように薬を処方すること。つまり、死の瞬間に医師は不在であってもいい。ブリタニーさんはこの方法で死んだ。2)の方法は直訳すると「尊厳ある死」だが、日本語でいう「尊厳死」(不治かつ末期の状態において無駄な延命治療をしないこと。日本では法律がない)とは違う。そして、2)は日本では「安楽死」であり違法(犯罪)。欧米では日本語で定義している「尊厳死」は「自然死」のことである。

「平穏死」は「自然死」のことであり、「尊厳死」とほぼ同義である。ああ、めんどうくさい。長尾先生はこうまとめる。尊厳死・平穏死は自然な死を「待てる」死、安楽死は自然な死を「待てない」と。文学的に過ぎる。尊厳死には「自己決定」が根底にある。だが、その「リビングウィル」には法的担保が日本には、先進国で唯一「ない」のである。なぜか、反対の声が大きく本質的な議論に入れないからだ。日本は近い将来、尊厳死しか、できない国になるかもしれない。医療費は上がり続け保険制度は破綻、「年寄りは死ね、ということか」と叫ぶ老人だらけになる。わたしはその前に平穏死したい。 (柴田)

< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4893088378/dgcrcom-22/ >
長尾和宏の死の授業


●マラソン続き。更衣スペースはあるものの混雑が予想されるので、ウェアを着てその上から上着。荷物はもらった預け用の袋に入れて持つ。ICカードの全国共通化のおかげで小銭を出して切符を買う手間もなし。

地下鉄はウェアを着た人たちでいっぱい。みんな参加者だと思うとワクワクする。ドームまでの道のりは、昨日と同じはずなのに違って見える。応援のために集まっている人たち、誘導するボランティアの人たち、ヘリコプターの音、アナウンスの声、参加者同士の会話……。

荷物はドームの駐車場を一方向に歩き、該当ブロックの担当者に預ける仕組み。大阪マラソンはスタートとゴール地点が違うため、トラックに預ける形だったけれど、この大会はドームに戻る形なので、引き取りも同じ場所になる。

7時15分から8時半までに預けることになっていて、8時前には到着したものの、人数制限があって少し進んでは待機、しばらくしてまた少し進むという状態。待っている間に上着を脱ぎ、持ち物を用意して走るための格好に。女性ばかりが並んでいるのって壮観。スポーツウェアなのでみんな派手。色の洪水。キラキラランナーやコスプレランナーたちもいた。

スタートブロックへの整列は8時40分までで、閉め切られた後は最後尾からのスタートとなってしまう。9時10分のスタートに間に合わなければ出走できない。直前にトイレに行っておきたかったため、焦り始める。続く。 (hammer.mule)