3Dプリンター奮闘記[68]3Dプリンターの今後を考えてみる
── 織田隆治 ──

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最近、めっきり「ローガン」が進んで来た織田です。みなさん、まだの方もおられるでしょうね…。40超えたくらいから急に来るんですよねぇ…。

細かい作業の際には、ローガン…もとい、作業用メガネが必須になってきました。あくまでも「作業用メガネ」です! はい!

ということで、そろそろ話を本題に持って行きましょう。

先日、大阪 設計・製造ソリューション展(DMS)に行ってまいりました。関東では1シーズン前になりますが、関西はちょっと遅れてやってきます…。




そこでは、やはり3Dプリンターといった、制作ツールの展示もかなり増えてきました。僕も、それ目当てに行ってきたのですが、一時期の爆発的なフィーバーではなく、実際に使用する目的に沿ったプリンターが、どんどん進化していってる感じを受けました。

目新しい技術! という訳ではなくなり、確実に使用することを目的とした爆発的進化でしょうね。

マスコミでは、あまり取り上げなくなったのが不思議なくらいです。まあ、目新しいものを追いかけて、視聴率を求めるものでしょうから、そのあたりは仕方ないのかな〜とも思いますが。

以前は、3Dプリンターはドラえもんの道具! って感じの扱いで目を引きましたけど、今ではそういう一時的なミーハーなブームが去り、今は「本当に使う」ことを目的としたムーブメントになっています。

大きいものを出力出来るFDM(熱融解式プリンター)も多数展示されていましたし、より精密な造形が可能なものも出て来ています。あと、日本のメーカーが「やっと『頑張りだした』」感が見受けられました。

超大手メーカーさんはまだのようですが(笑)。

このあたりは、市場の動向を見据えた動きだとは思いますが、もうちょっと露出しても良いんじゃないかな〜なんて思います。

逆に、海外の中小メーカーの技術の発展には目を見張るものもあります。こういったポジティブな動きには、日本のメーカーさんに追いついて欲しいものですね。

3Dプリンターの普及について、興味深いお話も聞けました。個人ユーザー向けに発売されているような、小型、安価なFDMプリンターですが、個人ユーザーよりも中小のメーカーさんが購入されていることがほとんどだそうです。

やはり、あまりに高価なプリンターを導入するのは難しいんでしょう。こういった安価なプリンターも、かなりの精度で出力出来るようになっていますし、プロトタイプの制作には、個人ユーザー向けのプリンターで充分、といったところでしょうか。

それと、一般的な個人ユーザーにとって、まだ「3Dプリンターは難しい」と感じているんだと思います。

マスコミで取り上げずに、あまり目にしなくなってきた時点で、一般的には忘れ去られたブーム。家電量販店で展示販売されている3Dプリンターのコーナーも、縮小傾向にあるように思います。

これは、使用するコンテンツが少ない、まだ一般的でない、ということがほとんどの理由だと思います。

以前、デジクリにも書いたんですが、「プリントゴッコ」や「インクジェットプリンター」の普及といった、国民的行事に使えるようなものに、まだなっていないんでしょうね。

やっぱり年賀状って凄いと思います(笑)。最近では、年賀状や暑中見舞いなんかも、メールで送るようになっている人が増えてきていますが、それでも、メールに3Dデータを添付して、各自自宅でプリントする、な〜んてことは、なかなか難しいでしょうね。

まだ、手軽にプリント出来る、という物も認識もないのが現実です。

2〜3万円くらいで、出力は小さくてもいいから、簡単に出力できる3Dプリンターが出て来て、コンテンツデータももっと気軽に制作できるような環境が整わないことには、3Dプリンターの一般的な普及は難しいかと思います。

このへんについては、海外の一般的な家庭も同じなんじゃないかなぁ、とは思います。

どういったサービスを作って行き、どういったコンテンツを用意するかによって、今後、この分野においては、かなりのビジネスチャンスが眠っている可能性は充分にありますし、それを模索している企業なんかも多いと思います。

「先にやったもん勝ち」というか、そういったソリューションを作った者勝ちなんでしょうね。

まず使える人を増やし、一般の人の目に触れる機会を増やし、使いたくなるような魅力的なコンテンツを増やす必要がありますね。

というわけで、オタク的、趣味趣向的分野から攻めて行くべきなんでしょうね、とは思います。

顧客に対して「これ欲しい!!!!」と、圧倒的に思わせるコンテンツって凄く難しいように思いますが、そういった趣味趣向をスタートにするってことは、かなり重要だと思っています。

例えば、SF映画やアニメに出て来る道具やコスチュームなんか。これを、公式サイトからデータを配布してみるってのも一興かと。

3Dプリンターのメーカーと協賛して、そのデータを購入したユーザーには、安価でプリンターを販売するといったような、ソフトとハードの融合が必須かと思います。

ソフトの配給メーカーは、そういったデータを定期的に発信すれば、コンテンツの話題作り、普及にも繋がって行くでしょうし、ハードメーカーにとっては、素材の継続的販売が可能になって来るんじゃないかと思っています。

まあ、そうなっちゃえば、玩具メーカーからのプレッシャーもあるでしょうけど、おもちゃと、またそれは違う分野になってくるんじゃないのかなぁ、とは思います。

こういった他業種との連携こそ、3Dプリンターの普及に繋がって行くんじゃないかと思います。

まずは、「欲しい!」と思わせるコンテンツを制作し、じわじわと広めて行くようなレジスタンス的な広報活動ですね。出来るんじゃないかなぁ。

話は変わって、先週末に某国立大学へ行ってきました。今年はじめくらいから、制作工房を立ち上げる計画が持ち上がり、微力ながら僕の方でも協力させて頂きまして、このたびめでたく完成しました。

そこで制作をご指導する立場の先生や院生のみなさんに、基本的な使い方などを講演しに行ってきました。

さすがに色々と質問が飛び交いまして、かなり良い結果になってきていると感じています。これまで、造形にはあまり縁がなかった先生等の参加もあり、いろいろとご興味を持っていただけたようです。

そういった他分野の知識が集まって、試行錯誤することで、また新しい使い方が出て来るんだと思います。

水面下では、こういった面白い動きが沢山あり、今後も3Dプリンターを使った「モノ作り」の発展は進んでいるんですね。

今後もワクワクするようなことが沢山あるんですが、一般的ではない…というのが非常に残念ではあります。

そろそろ日本も本気出しても良いんじゃないでしょうか?(笑)


【___FULL_DIMENSIONS_STUDIO_____ 織田隆治】
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