3Dプリンター奮闘記[69]大手国産3Dプリンターの発表と素材の多様化
── 織田隆治 ──

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前回の終わりに、そろそろ日本も本気出しても良いんじゃないでしょうか?(笑)って書いたんですが、そのせいではないんでしょうが、国内メーカーから色々とアナウンスが出て来ました。

リコー初の3Dプリンターは8100万円!SLS方式を採用
http://weekly.ascii.jp/elem/000/000/374/374515/


キヤノン独自の出力方式を採用した3Dプリンタ、3年以内に製品化を目指す
http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1511/04/news121.html


な〜んて記事が出て来ました。




リコーさんのモデルは、粉末状の材料に積層断面をレーザーで焼き方固める、粉末焼結積層造形(SLS)方式のもの。この方式のプリンターは、ナイロン樹脂、セラミック、エストラマー、ポリプロピレン、金属などが使用できるものがあります。

ナイロン等の粉末樹脂等で行うことも可能で、3Dプリンターの中では、もっとも工業製品の量産に向いているプリンターと言われています。

一方、キヤノンさんのプリンターが面白そうですね。発表された内容を見てみると、現在ある方式のプリンターと似たもののような気もします。objet24とかのラインナップの、インクジェット技術を使った光硬化式プリンターですね。

これは、インクジェットプリンターのように、光で硬化する樹脂をインクの変わりにノズルから噴射。その後、紫外線を照射して固体化させて積層して行くタイプのプリンターで、特徴とすれば、メイン材とサポート材を同時にプリント出来て、高精細なオブジェクトを高速にプリントできる機種となります。

この原理を使ったものなのかなぁ、とは思います。メイン材とサポート材を一度にプリントして、何らかの科学変化を利用し固めて一層をシート状態にし、それを積層することによって立体を作って行くんでしょうか。

サポート材は水溶性の物を使うらしいですが、これも以前からある方法となんら変わらないように思います。シート状にして積層するということですが、これまでのインクジェット積層方式の方が工程は少ないようには感じます。

あと、説明を見ると、光硬化式のプリンターの弱点でもある、素材の劣化強度が高めてあるようですね。

見たところ、革新的に今までの方式とは違う、とは思えないんですが、三年以内に製品化したいとあるので、何か他の利点があるんだと思います。でないと、これから三年もかかって出すものじゃないですもんね。

なんにしても、どのプリンターも大手国産メーカーのこれからの機種。「見せてもらおうか、日本大手メーカーの3Dプリンターの実力とやらを!」という感じですね〜。

いずれにせよ、両方とも小ロットの生産を目的としたBtoBのプリンターであり、個人ユーザー向けのプリンターではないということです。今後、こういった技術を応用した、コンシューマ向けのプリンターが出来てくるんじゃないかとは思います。

この流れって、インクジェットプリンターがコンシューマ向けに普及した動きとまったく同じなんでしょうけど、ちょっと遅い気もしますね…。出遅れたような、と言いますか…。どんどん頑張っていただきたいところです。

ところで、今は出尽くした感のある熱溶解積層方式(FDM)の3Dプリンターですが、そのフィラメントがいま熱いです。

少し前に行われた、関西DMSに行ってきたのですが、プリンターとしては、新しい方式ということではなく、大きさを競うものや、精度を競うような感じになっています。

素材であるフィラメントの種類が今面白くて、以前から出ている金属の粉末を取り入れたもの、木彫のようになるもの、といった素材も展示されていますが、他にもいろいろな素材を取り入れたフィラメントが開発されてきています。

今では、カーボンをとりいれたもの、電気を通すもの、通さないもの、強度を優先したポリカーボネイトを素材としたもの等々、凄く面白い素材がたくさん出て来ています。基本的には、個人ユーザー向けのオモシロ素材になるんでしょうけど…。

FDM3Dプリンターの精度、積層時間を考えると、まだまだ工業製品の量産なんかには向いてないものではありますので、プロトタイプを作るとか、趣味、趣向に偏っている観はありますね。

それでも、今後、このFDM3Dプリンターの需要って、もっと伸びていってくるように思います。

キヤノンさんやリコーさんが出すであろう大型の高価なプリンターは企業向け。FDM方式のプリンターは個人ユーザー向け。といった構図が取られているように思います。

聞くところによりますと、実際ふたを開けて見ると、中小企業でのFDMプリンターの導入の方が、個人ユーザーより多いようです。

そりゃあ、高度なプリントが出来るプリンターを入れたいけど、そんな予算もないのが現状。素材やメンテナンス、保守等のランニングコストも結構かかってきます。

プロトタイプ制作くらいなら、FDMでもある程度は行えるし、そっちの需要の方が大きいんでしょうね。

生産ラインを考慮したプリンターの導入、ってのは、もうちょっと先になって来るんじゃないかと思います。それを見越しての大手メーカーさんの開発なんでしょうね。

こういった技術が普及してくると、素材自体のコストも安くなるでしょうし、技術もこなれてくる。そうなると、もっと個人ユーザー向けにも普及するんだろうな〜と期待してます。

僕みたいな個人ユーザーは、そういう見方をしちゃいますね(笑)

あと、今後はもっとそういったハードでなく、ソフトの技術も上げていくべきでしょうね。当然、3DCADといった技術を持った人を増やして行くことは必須でしょうし、3Dプリンターに精通した販売員とか、説明員とかも。

誰でも簡単にプリントできる3Dプリンター! ってのは、まだちょっと先になるような気もしますね。そこのところが伸びて行かないので、この3Dプリンターの普及の折り返し地点が来ていると言われる所以では?

ハードは飛躍的に進化しています。もっとソフトを進化するサービスであるとか、そういったものを開発すると、かなりのビジネスチャンスが生まれて来るんじゃないかな、と思っています。

という僕も、そういった面で最近いろいろと水面下で動き出してはいるのですが、今後が楽しみですね!


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