腕時計百科事典[08]腕時計のブランド(オメガ)
── 吉田貴之 ──

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今回ご紹介するのは、ロレックスと並んで人気と知名度の高い「オメガ」です。オメガを代表するモデルである「スピードマスター」は、高級腕時計に興味のない人までも巻き込んで、日本国内で一大ブームを巻き起こしました。

●手工業から機械工業へ

1848年6月、当時23歳であった時計士のルイ・ブランが、スイスのラ・ショー・ド・フォンに懐中時計の組み立て工房を開いたことがブランドの始まりです。その後約30年の間に、ルイ・ブランは息子のルイ・ポール・ブランと共に、組み立て工房での手工業から工場での機械工業へと体制を切り替え、より高効率でシステマチックな生産システムを完成しました。




●「オメガ」の誕生

1894年には、その後のブランド名ともなる記念すべき新型時計「オメガ」を発表します。時計業界には「究極」や「最高」を意味する商品名や社名は沢山ありますが、「オメガ」という名前は人を引きつける魅力に富んでいます。

オメガはその名前の期待に応える形でヒット商品となりました。1903年には社名を「オメガ」に変更し、現在も高い知名度を誇る有数の時計ブランドとなりました。

●冒険とオメガ

宇宙や深海など、未踏の地への冒険に必ずと言ってよいほど携行される腕時計、それがオメガです。

1969年、アポロ11号の飛行士アームストロングとオルドリンが人類初の月面着陸に成功。この際、腕に着けられていたのがオメガ社の「スピードマスター・プロフェッショナル」でした。

1970年には、アポロ13号が爆発を伴う過酷なトラブルに見舞われましたが、スピードマスターの精度や安定性は乗組員の帰還に大いに貢献しました。深海探査の分野においても大きな功績を残しており、オメガはダイバーズウォッチの最先端をリードしています。

●オフィシャルタイマー

0.01秒を争うスポーツの世界では、時計の精度が非常に重視されます。オメガはオリンピックの公式計時を何度も任され、スポーツ・タイミングの世界でも計測の限界に挑み続けています。

スイス各地で行われてきたクロノメーター・コンクールで圧倒的な実績を築き上げてきた開発力を持ち、現在も技術革新と挑戦を続けるブランドです。

●ブランディングの妙

有名人に身につけさせたりイベントに登場させたりすることで、ブランドのイメージを高めるのは現在でも盛んに行われる手法です。ただ、昨今のSNSやブログを使って行われる空虚なマーケティングと大きく違うのは、冒険者達が命を預ける道具としてオメガを選んだ、という事実の裏付けがあることでしょう。


【吉田貴之】info@nowebnolife.com

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兵庫県神戸市在住。Webサイトの企画や制作、運営を生業としながら、情報の整理や表現について研究しています。