[4087] 放送局と情報リテラシー教育

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《藝術は結局「心(ハート)」なんだなあ》

■crossroads[08]
 放送局と情報リテラシー教育
 若林健一

■ところのほんとのところ[139]
 フォト・ラボKトークショーと第8期募集説明会
 所 幸則 Tokoro Yukinori

■羽化の作法[12]閑話休題
 ディープラーニングについて
 武 盾一郎




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■crossroads[08]
放送局と情報リテラシー教育

若林健一
https://bn.dgcr.com/archives/20160315140300.html

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こんにちは、若林です。二週続けて娘の話で恐縮ですが、3月9日に高校の卒業式を迎えました。

中高一貫校だったので中学から通算6年通った学校ともお別れ。帰国子女を多く受け入れていることもあってユニークな校風で、卒業式もまた独特。

男子はほとんどがスーツ、女子はパーティドレスや袴姿が多い中で、男女ともに自分の母国や、滞在していた国の民族衣装で出席する生徒もいました。独特な校風の学校生活を締めくくるにふさわしい卒業式、自分が通ったわけでもないのに名残惜しいです。

同志社国際中学校・高等学校
http://www.intnl.doshisha.ac.jp/


●国営放送局が作った子ども向けプログラミングデバイス

近年、数多く発表される子ども向けプログラミングツールや、マイコンボードのひとつに「micro:bit」というものがあります。

日本であまり知られていないのですが、イギリスの国営放送局「BBC」が開発した教育用デバイスで、プログラミング環境の開発にはMicrosoftも協力したそうです。

micro:bit
https://www.microbit.co.uk/


放送局がこういったデバイスを開発した、ということだけでも驚きですが、これがイギリス国内の小学生(11歳〜12歳)全員に無償で配られるということにも驚かされます。

イギリスは情報リテラシーやメディアリテラシー教育の先進国で、「BBC」はメディアリテラシー教育の面でも積極的に活動していますし、こういった環境で学べるイギリスの子どもたちが羨ましい限り。

放送局がハードやソフトを開発するというと意外な気がしますが、日本の「NHK」にも「NHK放送技術研究所」というものがあり、先進的な放送技術の開発や実証実験を行っています。

また、ご存知の通り教育番組専門のチャンネルがあり、子ども向けプログラミング教育番組の制作もやっていますから、そういう意味でも親和性は高い、「NHK」も「BBC」と同じような活動はできると思います。

イギリスと同じことをするのがいい、というわけではありませんが、若い人のテレビ離れが進む中で、これ以上「放送技術」に力を入れる時代でもないでしょうし、これからは「STEM教育」や「情報リテラシー教育」に舵を切っていくような動きになることを期待しています。

Why!?プログラミング(3月21日〜25日放送)
http://www.nhk.or.jp/gijutsu/programming/



【若林健一 / kwaka1208】
Web: http://kwaka1208.net/

Twitter: https://twitter.com/kwaka1208


CoderDojo奈良
http://coderdojo-nara.org/

次回は、4月9日(土)です。


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■ところのほんとのところ[139]
フォト・ラボKトークショーと第8期募集説明会

所 幸則 Tokoro Yukinori
https://bn.dgcr.com/archives/20160315140200.html

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ふー、「Einstein Romance 所幸則写真展」、5連発終わりました。

東京駅、西巣鴨、渋谷、広島市、神戸。最後の神戸TANTO TEMPOは、8年間のギャラリーの歴史でいちばんお客さまが入ったそうです。

神戸で、というより関西エリアでは、[ところ]がファインアート作家になって初めての個展ということもあり、「東京の個展に見に行きたかったけどタイミングがなかなか合わなくていけなかったので嬉しい」という声を多く掛けられました。

東京からわざわざ見に来られた方が何人もいたのにはびっくり。「東京で見られなかったので……」。そういうケースもあるのか〜。関西圏からは、すべての県から観客がありました。

広島では、「よくある普通の写真展は多いのだけど、こんな凄い写真は滅多に来ないので」と、在来線で2時間かけて来てくださった方もいました。

地元・香川ではこのシリーズはまったく展示の誘いがないので、本当にがっかりしています。何が「アート県」なんだよ……とか思う、今日この頃。


それでも、今季もフォトラボkの8期生の募集も始まります。今回の募集告知もかなり頑張ったほうです。説明会前のトークショーのゲストもすごくて。

【フォト・ラボKトークショー&第8期募集説明会】

芸術写真家・所幸則氏が講師をつとめる「フォト・ラボk」第7期が終了し、作品展が開催されます。その作品をもとに、アーティストの人材育成などについて、以下の日程にて、所幸則氏がゲストとトークショーを行います。

トークショー 入場無料/予約不要
3月19日(土)13:00〜13:50 ゲスト:杉山武毅氏
4月 2日(日)13:00〜13:50 ゲスト:中條晴之氏

杉山武毅氏・Gallery TANTO TEMPOディレクター、六甲山国際写真祭総合ディレクター。公立病院の外科系医師という立場ながら、ファインアート写真のコレクターを経て、2008 年に写真専門企画展ギャラリーGallery TANTO TEMPOの設立に関わり、そのディレクターに就任。

日本の写真の状況を研究する中で、海外の写真の様々なイベントを取材。アメリカの主要レビューイベントである「Review Santa Fe」をはじめ、世界各地のフォトフェスティバルから公式レビュワー、ゲストキュレーターとして招かれる。また国際写真展の審査員も務める。

中條晴之氏・中條文化振興財団 事務局長。数寄者、茶人であり、芸術に造詣が深い。

また、第8期生募集の説明会は、各トークショーの後14:00〜14:30に行いますので、是非ともご参加ください。

3月13日(日)〜3月27日(日)フォトラボK第7期生修了作品展
3月29日(火)〜4月10日(日)kラバーズフォトグラファーズ作品展

詳細はこちら。
https://www.e-topia-kagawa.jp/kouza/photolab8th.asp

https://www.e-topia-kagawa.jp/img/kouza/photolabk8_201602.pdf



前回、[ところ]はこういうことを書きました。

[ところ]は最近、人との出会いが人の歴史や文脈を作っていくんだなあということを、改めて痛感しています。

どのタイミングでどんな人と出会い、どこへ自分は向かおうと思ったのかも含め、一つ一つ意味があったなと。少しでもタイミングがずれたら、違う道にずれていったわけですよね。もちろん、すべての人に言えることですが。

来週は香港に飛びます。どんな人たちに出会えるのでしょうか。


【ところ・ゆきのり】写真家
CHIAROSCUARO所幸則  http://tokoroyukinori.seesaa.net/

所幸則公式サイト   http://tokoroyukinori.com/



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■羽化の作法[12]閑話休題
ディープラーニングについて

武 盾一郎
https://bn.dgcr.com/archives/20160315140100.html

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今回は連載「羽化の作法」じゃなくて、「閑話休題」と題して最近気になったことを、ちょこっと覚書のように書きます。

AI、ディープラーニングについての覚書です。

・AlphaGoが李氏に一敗、「この敗北データはAIの学習のために非常に貴重」と開発者(ITmedia)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1603/13/news034.html


囲碁にもAIにも詳しくないのですが、とても気になりました。それは、「今までに見たこともない手を打った」らしいということろです。

紀元前から親しまれてきたゲーム。あらゆるスジはもう出尽くしていて、それらをどれだけプレイヤーが知っているか、だと思ってました。

しかし、ディープラーニングは人間同士だと生じない手を打って勝った、と。人間同士だと決して見えないスジがあった、ということで、これは非常に興味深い。

これによって囲碁は滅びるか? というとそうではなくて、新たな魅力が発掘されたように思う。

では、ディープラーニングによる絵画はどうか?

http://www.boredpanda.com/inceptionism-neural-network-deep-dream-art/

http://deepart.io/latest/


これもとても面白い。廃業する画家、イラストレーターが出てしまいそうだ。。しかし、これらの画像処理をアシスタントにして、更なる想像世界を描くことも可能になる。

クリエイターに必要なものは「こういう感じの絵を描きたい!」という「動機」とか「目的」とかになる。そうだとすると良い方向に向かうと思うのだ。

知能とはアシスタントである。藝術は結局、「心(ハート)」なんだなあ、と当たり前のことを再確認したので覚書きと致しました。


【武 盾一郎(たけ じゅんいちろう)/しばたさんごめんなさい】

◎『アリス in アートラッシュ』展
2016年3月9日(水)〜3月28日(月)

新作、線譜パンク・シンフォニー『アリス・イン・アンダーグラウンド』から第一楽章『アングラウサギのメグ』、第二楽章『チェシャ猫のμ(ミュー)』を出展します。
https://www.facebook.com/media/set/?set=a.1098571333521086.1073741850.206228169422078&type=3


この新作は新境地という感じで、今までずっと自然音とかノイズ音のようなものを線譜にしてきたのですが、「ネズミに恋したネコのタムちゃん」を描き始めたのがきっかけで、メロディや主旋律が浮かび上がる音楽も線譜にできるようになってきました。

「アリス・イン・アンダーグラウンド」は伴奏とメロディがノイズや自然音を伴って繰り広げられる楽曲、というイメージです。

facebookページ http://www.facebook.com/junichiro.take

Twitter http://twitter.com/Take_J

take.junichiro@gmail.com


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編集後記(03/15)

●村松友視「老人の極意」を読む(河出書房新社、2015)。昨年75歳になったばかりの人が、もう極意を語るなんてそんなセンエツな〜と思ったが、もちろんそんなスタイルではない。本人も自分を老人とは思っておらず、老人になりきれずにいる後期高齢者、という心模様だという。今まで出会ってきた「これが老人の領域だ!」という思いを与えてくれた人々の、姿、かたち、たたずまい、言葉、仕草などを、自分が老人になりきれずにいる事情を明かしつつ紹介するものである。30話書き下ろしで、ほぼ30人の「老人の極意」が伝えられる。村松友視は家柄もよく、有名編集者だったから、社交の名人である。

ところが、わたしにとっては手の届かぬ別世界の、お金と才能をお持ちのご老人のありがたいお話を承る、みたいな感覚で正直そんな楽しい読み物ではなかった。住んでいた世界が違うのだろう。だから30話中で共感というか、よく理解できるのは半分くらいしかない。「ゲンペーさんの『老人力』再読」はいちばん分かる。「“まだまだ”で始まる老人の単純な頑張り力に、“老人力”は馴染まないというわけだ。“衰え”を“力の変化”としてとらえるのが老人力なのだ」。老人力の“力”とはシャレであり、脱力というセンスが隠し味として仕込まれている。赤瀬川原平の筋金入りの極意を再読してみようと思う。

いちばん面白かったのが最終話「九十歳の誕生日でひとセリフ」である。筆者が大学生の頃、叔父から聞かされたオバアチャンの話。93歳で天寿を全うした彼女の、90歳の誕生日に発した伝説的なひとセリフについての考察である。10人ほどが集まり彼女の長寿を祝った。オバアチャンは、お祝いの言葉を述べる親戚の者たちに、いちいちうなずき返していて、表情のメリハリが一同を安心させた。宴が終わり一同が帰ろうとした時、オバアチャンは声をかけた。「みんなに一度たしかめておきたかったことがあるんだよ……とにかく気になってたしかめたかったことん、ひとつだけあるだよ」しばらく間をとったあと……

「あのねえ、あたしゃオジイサンだっけ? オバアサンだっけ?」。皆は唖然として押し黙る。ついにそこまできちゃったか、という受け止め方だったに違いない。やがて笑い話の語り種として、その場にいなかった叔父にも伝わった。今となっては、村松にはそのセリフの意味がわかる。オバアチャンは、親戚の人たちをただ笑わせたかっただけではないのか。その座興を受け止められず、一同は常識に沿って90歳の衰えととってしまった。「あれは、オバアチャンからの返礼たる老人のユーモアが空回りした、切ない場面だったにちがいない」。みごとな見立てだ。わたしもいいネタを仕込んでおかねばならない。(柴田)

村松友視「老人の極意」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4309024114/dgcrcom-22/



●美容室の続き。クーポンの新規と2回目以降で金額が大きく違うのはどうなの。半額目当てで来たお客さんは、次回も来てくれるんだろうか。違いを感じて、正規金額でも来たくなる、そんなお客さんだけをひたすら待つんだろうか。

このお店はクーポンで引いてくれるのは100円。リピーター重視なんだろう。メンバーズカードに日付が記入され、この日までに再訪してくれたら200円引きね、と。

表に出ている営業時間ぎりぎりに来てもいいのかと聞いたら、基本的にはそうなんですが、混む日は2時間前からお断りすることもあるんです、とのこと。間際よりお昼の方がいいかもしれません、夕方はパートさんたちが上がってしまうので、とも。

パートさんが働く美容室に行ったのは初めてだったわ。お昼はもっと混雑しているのね。仕上がりは普通。本気のカットやパーマなら別のお店が良さげだが、ブローを自分でまともにできない(再現できない)私には十分のような気がしないでもない……。 (hammer.mule)