[4090] セーラー服と想定外

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《チープなアイドル映画じゃないってば!!》

■Otakuワールドへようこそ![230]
 セーラー服と想定外
 GrowHair



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■Otakuワールドへようこそ![230]
セーラー服と想定外

GrowHair
https://bn.dgcr.com/archives/20160318140100.html

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なんでオレが挫折感を味わっているのか、うまく説明できない。制作に関わったわけでもないし、こっちの懐具合になんの影響があるわけでもない。しょせんは他人の領域ではないか。ま、そりゃそうなんだけども。

1月にマスコミ向け試写会で観たときは、大ヒットを予感した。だって、薬師丸ひろ子バージョンよりも、ずっとずっといい。あれが大ヒットしたんだったら、今度のは大大大ヒットぐらいしたっておかしくない。

ただ、35年前のあのころは映画が休日のデートや暇つぶしのデフォルトだったのに対して、今は、ゲームやカラオケといった能動参加できる娯楽が隆盛で、映画のように座って見てるだけの受動的な娯楽が押され気味であるという時代の違いを考えると、そこまではいかないかもしれない。

にしても、『下妻物語』に匹敵するぐらいの、今年一番の話題作になるのは、ほぼ確実であろう。

その後、封切り前の宣伝には一枚かませてもらった。写真やイラストを投稿できる「プリキャン」という女子中高生向けのコミュニティサイトの上で「セーラー服と〇〇」というお題に答えて画像を投稿する大喜利をやろうという企画だ。私は特別審査員を仰せつかった。

そのキャンペーンの告知用の写真撮影では、主演女優の橋本環奈さんが実際に使用した機関銃を持たせてもらった。何のとりえもないごくごくふつうのおっさんが、セーラー服を着て街を歩いてたってだけのことで、こんないい話が来るなんて、ありがたすぎる。うん、けっこう舞い上がっていたオレ。

3月5日(土)、初日に見るなら、舞台挨拶のある回にしたかったが、チケット発売日をうっかりしていて出遅れ、気がついたらネットで高値がついていたので、あきらめた。

翌日、「角川シネマ新宿」へ。2:00pmからの回。チケットを購入する際に、画面に表示されたレイアウトから座席が選べる、指定席制になっているとは知らなかった。時間ぎりぎりに駆け込んだのに入ることができたのはラッキーだったけど、さすがにあんまり空席が残ってないなぁ。

と思ったのは大きな勘違いで、「えっ? 白いほうが空いてるの?」と思わず言っちゃった。大失言。

2割弱の入り。2日目にしてこれ? そんな馬鹿な! ネットの掲示板には「橋本環奈ちゃん主演 セーラー服と機関銃 壮絶コケ ドラえもんの35分の一ぐらいでスタート」というスレが立ち、初日のランキングが第10位だったことが示されている。何がどう間違ってこうなった?

3月10日(木)には、「【悲報】橋本環奈主演『セーラー服と機関銃』見に来てるんだが、開演5分前で客が俺1人」などと書き込まれている。

翌週末、3月12日(土)には、第12位にまで落ちていた。「千年に一度の大コケ」、「【悲報】爆死アイドル、橋本環奈完全終了へ。主演映画が『しまじろう』に敗北」などと、一種のお祭り騒ぎになっている。

ものすごくいい映画なのに。KADOKAWAの大馬鹿野郎、前宣伝をしくじりやがって! と言いたいとこだけど、その前宣伝にオレも一枚かませてもらってるわけだしなぁ。なんか、オレの存在自体に「失敗」の烙印を押された気分。恥の多い生涯を送って来ました。

しかし、実際に観た人からの評判は概して高い。3月13日(日)の未明になって、ツイッター上に約20ツイートほどにわたって、めっちゃ秀逸なレビューを上げた人がいる。これがリツイートで拡散していき、翌日の午前中にキーワード「カドカワの大爆死映画」がツイッターのトレンドに上がった。

これでネットのムードが変わった。「俄然、観に行きたくなった」という書き込みがどっと増えた。ようやくいい流れになってきている。今週末あたりから、お客の入りが増え始め、評判が評判を呼んで、今月中には遅ればせながらの大ヒットにいたるはずである。

ところが、もうすでに上映館が減ってるとか、上映回数が減ってるとか。おいおいおいおい、ちょと待てちょと待て。映画館、もうちょっと辛抱してくれや。たのむぞ。打ち切るなよ。打ち切るなよ。打ち切るなよ。3回言ったからな。

●始まりは去年の6月

アイドルグループ「Rev.from DVL」の橋本環奈が、角川映画40周年記念作品『セーラー服と機関銃 -卒業-』で主人公の女子高生組長役を演じることが発表されたのは、去年の6月23日(火)のことである。主演女優は、当時、16歳だった。
http://www.oricon.co.jp/news/2054748/full/


私はネットのニュース記事で知り、話題に乗じて、自分が機関銃を構えている写真をツイッターに上げた。機関銃は、やのあんなさんのMusic Videoを収録した際に、ちょこっとお借りしたものである。これ。
http://picasaweb.google.com/Kebayashi/YanoAnnaMVMaking


●奇跡の一枚から登竜門を駆け上がった

「Rev.from DVL」は、もともと福岡で活動していた。都から遠く離れた一都市に埋もれていたローカルアイドルを全国区に押し上げたのは、「奇跡の一枚」と言われる写真である。ステージ上の橋本環奈をファンが撮ってネットに上げた写真が、ネットで拡散し、「千年に一度の美少女」と言われた。

シンデレラストーリーだが、私にはどうにも解せない。かわいい子なんてそこらにいくらでもいるし、芸能という世界はかわいいだけで上がっていけるところではないのだ。

私もかつて女子中学生アイドルグループに所属していたことがあり、その世界の空気を多少は吸っている。

地下アイドルの底辺付近のイベントでは、十数組が参加し、ひと組あたり10分〜15分程度の持ち時間しか与えられない。その中で、3曲ぐらい歌って、間にトークを挟む。

それとは別に物販タイムが設けられ、写真集やTシャツなどのグッズを売る。1枚500円くらいでチェキが撮れて、サインペンで絵やメッセージを書き込む。10枚くらい売れればまあまあなほうだ。意外と地味な活動なのである。

AKB系の新メンバー募集のオーディションがあると、数万人が応募し、5次くらいまで選考があって、絞り込まれていく。そうとういいところまで残り、あとちょっとのところで落とされた人たちが地下へと流れる。

そんな子たちが数十人も集まるイベントでは、かわいい子がうじゃうじゃいてあたりまえなのである。やる気に満ちている。歌もダンスもよく練習し、そこそこ上手い。時間通りにちゃんと来るし、大きな声でちゃんとあいさつするし、マナーもできている。トークもそこそこできる。

いつか浮上することを夢みて、一所懸命がんばってはいる。けど、あとほんのちょっとの何かが足りない。芸能で生きていく厳しさに対する覚悟のすわりっぷりとか。人生をこれ一点に張っている真剣味とか。

一枚の写真がネットで評判を呼んで知名度が上がるのは、まあ、あるとしても、それだけで上がっていけるはずがない。芸能で生きていくのに必要な心構えがちゃんと備わっていた、そっちのほうが私にとっては奇跡のように感じられるのである。

橋本は、小学生時代にテレビのCMに3回ほど出演しているらしい。ちゃんと、しっかり、目指していたのだ。おそらく。

だとすると奇跡の一枚のストーリーも、ひょっとしたら、プロモーション側が仕掛けたシナリオをなぞっただけなんじゃなかろうかという疑いさえ生じる。けど、そういうことではない。きっと。

もつべきものをちゃんと備えた人というのは、上がるべくして上がっていく運命を最初から背負っており、その過程で奇跡のような運まで引き当てちゃうのだ。たぶん。

千年さん、これからの活躍、楽しみにしてるからな。がんばれよ。

●一度だけステージを観ている

私は、2014年8月2日(土)に、お台場で開催されたイベント「Tokyo Idol Festival」で、「Rev.from DVL」のステージを観ている。ネットであんだけ話題になってんだから、実物が見れるこのチャンスを逃す手はないという好奇心にかられてのことだから、観たってことそれ自体に満足しちゃったっていうのはある。

ただ、実際に千年に一度の美少女かどうかよりも、歌やダンスやトークなどの芸がものすごくしっかりしているという、そっちのほうが印象的だった。

日差しが暴力的に照りつけるカンカン照りの日で、同じ日に「スマイレージ」、「アイドリング!!!」、「アップアップガールズ(仮)」、「LinQ」、「アイドルカレッジ」、「さくら学院」なども見た後の夕方だったので、こっちの意識が朦朧としていた。

●予想を超越したオファーが来る

「突然のご連絡、大変失礼いたします」で始まるメールが届いたのは、2015年12月14日(月)のことである。こういう書き出しのメールを頂戴することはときどきあり、たいていの場合、用件はイベントやテレビへの出演オファーだ。

今回は違った。ウェブ上で映画の宣伝をする会社の、本作担当者からである。その氏名は後にエンドロールで見ることになる。

自己紹介と会社の紹介に続き、「この度、ぜひ小林様に本作をご覧いただきまして、気に入っていただけました折にはイベント等ご一緒できないかと思いご連絡差し上げました」と。これは予想外。

12月10日(木)から2月9日(火)まで、12回にわたって、マスコミ向け試写会の上映日が設定されている。場所は飯田橋にあるKADOKAWA本社の角川試写室。私は1月8日(火)に行くことにした。

知り合いも連れてきていいというので、私のマネージャ的な役割をいつも買って出てくれる上に、海外のイベント出演話もよく持ってきてくれるひよ子さんに声をかけた。

それと、映画にゆかりがある、福島の本宮映画劇場のU子さん。U子さんは、私のために機関銃を調達してきてくれるという。ならば、私はA面で行こう。

3日間ぐらい笑いが止まらなかった。おっさんがセーラー服を着て街を歩くとどうなるかを考えるとき、たいていの人は悪いことばかりを思い浮かべる。警察に捕まるとか、会社をクビになるとか、友達が去っていくとか、まともな社会生活が送れなくなるとか。

けど、実際にやってみると、いいことしか起きない。若い女の子たちから握手や写真撮影を求められたり、テレビやイベントへの出演オファーが来たり。それにしても、今回の「いいこと」は予想を超越している。アホなことを思いついたら、躊躇せずにとにかく実践してみるべし、って教訓だろうか。

●映画がなくても生きていけちゃう

私が映画について書くのはどうにも無理がある。なにしろ、めったに観ないもんで。これぞまさしく私のために作ってくれたような作品、っていうのが出たときだけ、映画館へ行って観る。そうでなければ、旬を過ぎてから出るDVDで間に合う。

この前映画館で観たのは『極道大戦争』で、2015年8月30日(日)、愛媛県松山市にある「シネマルナティック」で観ている。これはちょっと特殊な事情による。

酷評の砲火を浴びて2週間で打ち切りになった映画を、この単館が「ウチはあえてやるよ」と上映したものだ。かつての館主が、応援するよと言って、実際に使用されたカエルの着ぐるみを借りてきて、みずから着込んで「銀天街」で宣伝活動した。熱射病になりそうになりながら。その姿に心を動かされ、微力ながら応援に行ったというわけだ。

その前は『電車男』だったか。2005年7月7日(木)に新宿文化会館6階で。『下妻物語』は映画館で観たようなつもりになっていたが、どうやら勘違いで、DVDだったようだ。『千と千尋の神隠し』もか。

あとは、高見知佳『愛しのチイパッパ』(1986年)とか、有森也実『キネマの天地』(1986年)とか、斉藤由貴『恋する女たち』(1986年)とか、菊池桃子『パンツの穴』(1984年)とか、美保純『ピンクのカーテン』(1982年)とか。

●アイドルの皮の下は極道だった?

1月8日(金)、カラオケ屋で着替えて、神楽坂の角川試写室へ。機関銃を手に乗り込む。受付で「目高組の小林と申しやす。よろしゅうおたのん申しやす」。バカ受け。

50席ほどがすべて埋まった。観終わって、これはヒットするぞ、と思った。私は薬師丸バージョンを当時観たわけではないが、試写会のオファーを受けてからDVDを入手し、2度観て予習している。今回のはそれを遥かに凌駕している。

前のは、女子高生が組長になるというナンセンスな設定そのものを、笑いの要素にする娯楽色が強かった。当時はそれがよかったのかもしれないけど、今の感覚だと、色褪せていてあんまり笑えない。

今回のは、もっと現実色が強く、シリアスなストーリーに引き込まれる。女子高生がヤクザ「目高組」の四代目組長で、なんの違和感もない不思議なリアリティ。

高齢化社会、地方創生、権力の癒着、悪徳企業、麻薬、原発誘致など、まさに現在進行中の社会問題を題材にしている。模型の都市で、建物が麻雀牌のようにじゃらじゃらとなぎ払われ、空いたところへドンと置かれる巨大な建造物は、原子力発電所であろう。後に「発電所を誘致する」という台詞が出てくる。

組長の組長っぷりがもう板につきすぎてて。役柄、鬼の形相を呈するところが何回か出てくるけど、これが怖いのなんの。アイドル形無しである。

封切り後、ネットでいろいろ言われることになる。

・薬師丸版は女子高生がヤクザの組長になった話だったけど、今回のは組長が女子高生って話

・高度に洗練されたアイドルは、ヤクザと区別がつかない

・『極道の妻たち』みたいな映画になってた

・凄みのある演技。生まれた時からその世界おったやろ…!? と思わせるアネゴ感

・「まるでなるべくして組長になったような凄み、どこでこんな演技覚えたんだ?」みたいに言われてますけど、みなさん、彼女が修羅の国・福岡の出身であることをお忘れなのでしょうか

大物感、ハンパねぇ! 30歳になっても40歳になっても、芸能界の上のほうに君臨している姿が目に見える。

●ずいぶん撮ってるパラレルワールド

試写会を観た後、俳優の森田光氏からメールをもらった。本作で、麻薬を買いにきて警察に捕まっちゃう役を演じているのですが、そのシーン、使われてましたか、と。

橋の下で麻薬入りクッキーを密売人から買うところを、私服警官に取り押さえられて、「だから関係ねぇって言ってんだろ! 俺は関係ねぇ! 離せ! まだ俺は何も買ってねぇ!」って叫ぶところがアップで撮られているのですが、と。

ええと、あったっけ? 選挙演説のシーンで、組長は「通報したのに警察は動いてくれなかったんだよ!」と叫んでいる。捕まるシーンがあったら、矛盾しちゃわないか?

やはり、まるまるカットされてたとのこと。けど、エンドロールとパンフレットには氏名が載っている、と。映画の制作においては、後でいかようにも編集可能なように、マルチなストーリーに基づいて、いろんなシーンを撮っておくってことだろうか。

そう言えば、1月の試写会版と3月の公開版とでも、けっこう違ってたような...。気のせいかもしれないが。

●いつ大人になったか

この映画の最大の見どころは、橋本環奈演じる星泉の処女喪失シーンだ。そんなシーンがもしあったらの話だが。あるわけがない。収録当時、橋本は16歳だった。

直接的な描写はできなくても、ストーリーの進行上、重要なポイントである場合、なんらかの形でほのめかしていたりするので、「映画の文法」を手がかりに読み解かなくてはなるまい。

薬師丸バージョンでは、「ファーストキスをオジンにあげちゃった」と言い、映画の観客が心の中で「しかも死んでるし」とつぶやくシーンがある。その時点ではヤッてなかったと分かる。

最後に、やけにヒールの高い似合わないハイヒールを履いて出てくるので、観客は、「えっ? もしかしてその後、どなたかとヤッちゃいましたか?」と心の中でつぶやく。

橋本バージョンでは、ストーリーは続編ながら、死体とのキスシーンと似合わないハイヒールはやっぱり登場する。なので、私は同じなのかと思い込んでしまった。

その間違いを指摘したのはひよ子さんである。やはり映画は、女性と一緒に観にいくべきもんだ。

重要な手がかりは、エレベーターのシーンである。悪の元凶たる巨大企業、堀内グループへ乗り込んでいくところ。機関銃を携えた星泉を挟んで、長谷川博己演じる月永と、武田鉄矢演じる土井が立つ。

土井は、星泉が四代目組長を務める目高組の若頭。月永は、敵組である浜口組の組員だったが、堀内グループの傘下に入れと脅されてあっさり頭を下げた浜口に失望して造反し、星と手を組む。

刑務所から抜け出してきたばかりの土井が「しばらく見ないうちに、きれいになりましたね。なんかこう、おんなっぽくなったっちゅうか」と言う。

月永と星はお互いをちらっちらっと見て照れ笑いをする。だって私たち、ヤッちゃったもんねー。けど、そういうのって、分かっちゃうもんなのねー、みたいな。観客は「おいおい君たち、いつの間に?」とツッコむところ。私は見逃してたけど。

あれだ。倉庫だろ? 組長と月永が麻薬の密売人を締め上げて、誰に言われて売っているのか吐かせたところへ殺し屋が現れる。二人は手をつないで逃げる。

にわか雨が降り出し、倉庫へ逃げ込む。Tシャツに着替えるところで、お互いを意識しちゃうドキドキな描写がある。その後、Tシャツ姿になった二人は、先代の組長を偲ぶ話をする。その間だろ。

あるいは、群馬の山中で青姦とか? 組長がみずからスコップで穴を掘り、組員の死体を埋めようとする。目高組の先代は、学校へ迎えに来て、星と一緒に歩いているところを撃たれて死んでいる。撃ったのは、ほかでもない月永だったことを、直前に知ったばかりだ。

穴を掘る星に月永は自分の銃を渡し、「俺が許せないなら今すぐ撃て」と迫る。星は鬼の形相。どうせ撃てまいと振り返って穴を掘る月永に、背後からバン! あれ? 撃っちゃった。

しかし、空へ向けて、だった。許したついでに、体も許しちゃいました、みたいな? 仲間の死体の傍らで?

武田鉄矢のひと言で、おじさんの妄想を大暴走させちゃうこの映画、そうとうエグいよね。

余談だが、ひよ子さんの腐女子妄想大暴走にはちょっとついていけない。月永の白スーツは、ウェディングを象徴していて、実は安井×月永でデキてた、とか。そこを掛け算する?

あ゛ーーーっ。チョコのお返しするの忘れてた。ごめん、撃っていいよ。

●プロモーションに私も一枚かませてもらう

試写会に呼んでくれたY澤氏からまたメールが届いたのは、2月3日(水)のことである。映画のプロモーション施策として、女子中高生向けのコミュニティサイト「プリキャン byGMO」で、キャンペーンを実施することになったので、ご協力願えませんか、という内容。

画像が投稿できるそのサイトで、「セーラー服と○○」というお題で大喜利をやるので、特別審査員になってくれませんか、と。はい、喜んで!

2月12日(金)、渋谷のオフィスに行くと、リアル女子高生が3人呼ばれて来ていて、さらに、実際に映画で使用された機関銃が置いてある。うわーい、セーラー服と機関銃ごっこ!

組長、ちょいとばかり武器を拝借させていただきやんすよ。おっ、けっこう重いっすね、これ。「こんなの気に入らない!!!」ズダダダダダダダ...。カ・イ・カ・ン!

「シネマズニュース」や「ASCII」が取り上げて記事にしてくれた。
「セーラー服おじさんと機関銃」。
http://cinema.ne.jp/news/sailor2016022918/

http://ascii.jp/elem/000/001/127/1127549/


投稿募集期間終了後、一次選考で絞り込まれた応募画像が10点ほど送られてきた。その中にないのを私はグランプリに選んだ。だって、その前からこれがダントツって思ってたんだもん。「セーラー服とやかん」。

われわれオジサン世代だと、ついついダジャレに走りしがち。読みからも意味からも関連性をすっぱり捨てた、超越的なセンス! シュールさがたまらない。スマホページからしか結果が見られないのはなんとかならんの?
http://prcm.jp/campaign/sailor-and-gun


●三つの客層

観にきてくれそうな客層としては、三層考えられる。

第一に、薬師丸バージョンをリアルに観ていたおじさん世代。女子高生と言えばセーラー服。青春の甘酸っぱい思い出も、もはや遠い過去。セーラー服への思いが募って、みずから着ちゃう...のは私か。

第二に、橋本環奈のファン。アイドルオタク。略してドルヲタ。死んだ組員を組長が山中に埋めると聞いて、「あー、ボクもボクもー、埋めて埋めてー」とかブヒブヒ言ってるキモいやつ。それも私っぽいか。

一人あたり20回ぐらいずつ観にきてくれるのであれば、興行的には成り立つのかもしれないけど、これがメインのターゲットでは、制作側がモチベーションを維持するのがつらいかも。

第三に、いまのリアル女子高生。キャンペーンからもうかがえるように、KADOKAWAがいちばんに狙っている層は、ここであろう。

●千年に一度の大コケ

3月5日(土)が封切りだった。初日には舞台挨拶があるので、機関銃を持って最前列に陣取っていれば、うまくすれば舞台上からツッコんでもらえるかもしれない、とU子さんが提案してくれていた。

ところが、チケットの発売日に気をつけてなくて、気がついたら、ネットの転売で高値がついていた。しかも後ろのほうの席だし。自分の失策にくしゃくしゃっとした気分で、初日はもういいやと放ったらかして、十日町に行っていた。

けど、心配でしょうがなかった。前の週、機関銃を持って原宿の竹下通りを歩いたときの人々の反応がいまひとつ薄いような感じがしていた。私の写真を撮っていく人はたくさんいても、機関銃を持っていることの意味を理解して、そこへツッコんでくる人がほとんどいなかったのだ。もしかして、あんまり知られてないとか?

3月6日(日)、「角川シネマ新宿」の2:00pmからの回に行き、前述のように、埋まってる席と空席とを逆かと思ってしまったというわけである。A〜C列には一人もいなくて、D列には私ともう一人だけ。

ツイッターでは、「上映中、前方にいたセーラー服おじさんのハゲ頭が視界に入り続けるという、現場ならではの体験」とか言われちゃうわけだ。水平線から月が昇るみたいなことになってたか。

デイリー上映25分前販売数合計ランキングの土曜7:00pm中間集計で、第10位。1位の『ドラえもん 2016 新・のび太の日本誕生』の132,989席に対して4,782席と、27倍もの開きがある。

公開初週の映画興行収入ランキングでは、全国238スクリーンという大規模公開ながら、トップ10圏外の12位。週末2日間の興行収入はわずか2,773万円。制作費には数億かかっているであろうから、そうとう厳しい結果だ。ちなみに、薬師丸バージョンでは、制作費1.5億で、興行収入は47億円だ。

翌週、3月12日(土)になると、2:00pm中間集計で販売数は579席で25位。13日(日)には、ベスト25からも消えている。

で、ネットでは、「千年に一度の歴史的大爆死」とか言われちゃうわけだ。あー、なんかヘコむー。別にオレが数億損したわけじゃないんだけど、宣伝に他の人を起用してれば結果は違ってたかもしれないと考えると、広告塔としての価値ゼロみたいではないか。たぶん、もらったギャラを埋め合わせるほども人が呼べてないぞ。げ、マイナスじゃん。

●チープなアイドル映画じゃないってば!!

そう言えば、オレが行ったとき、若い女性は一人もいなかった。この客層のハートがつかめなかったら、どうにもならない。

ひよ子さんによると「素でかわいいは女の敵」だそうで。藤田ニコルみたいに「かわいいは作れる」と言ってるような人なら、じゃあ、私も作ればかわいくなれるんだね、と希望が持てる。

素でかわいいには勝ち目がない。先祖代々の財閥に生まれ育った人から、金儲けのコツを聞かされても、その資本がオレにはねーよ、ってなるようなもんである。

最初っから女優として世に出てきたなら、張り合うような対象にはならないんじゃないかと思うのだけど、地方都市のローカルアイドルがかわいいだけでのし上がってきた、みたいに見えちゃうからアレなのかなぁ。

ネットではお祭り騒ぎになっている。

・当たると思う方がどうかしてるわ
・コケるつもりだったとしか思えん
・ちゃんとマーケティングしろやwwwww
・こりゃ、あ環奈
・今週から本気出す
・環奈ッ! ボクは最低でも20回は観に行くからねッ!! 心配しないで!!

ネットでの書き込みを見ると、リメイクだと思い込んでる人が圧倒的に多かった。赤川次郎の原作のタイトルは『セーラー服と機関銃・その後 -卒業-』だったのだが、映画タイトルでは「その後」を取っちゃってる。

いや、たしかに「その後」なんてつけたら「その前」を知らない世代から敬遠されそうだし、リメイクではなく続編であることは「-卒業-」で分かるはずだから冗長ではある。けど、伝わってないんだなぁ。

アイドルのかわいさを見せるだけのプロモーション映像、みたいに思ってる人も。角川が「40周年記念作品」と銘打って、そんなチープなもん作るはずないじゃん、って思うんだけど。

前田弘二監督へのインタビュー記事によると、最初に会ったとき橋本は、「私、普段はアイドルやらせていただいてるんですけど、アイドルが映画に出て、あーこういう感じね、みたいになるのは絶対嫌です」と言ったそうである。すんげークソ意地! 骨があるね。すばらしい!

観客があまり入っていないのは、内容がつまらないことの当然の帰結だ、という決めつけもけっこうあった。そもそも邦画はぜんぶつまらない、と思っているようなフシも。

「ちゃんと分かってないのに公の場で発言するのは恥かしい」という心がけがあんまり感じられず、「分かってなくて、それがどうした、オレからはそういうふうに見えているってだけのこと」という態度で吐き捨てて逃げる、みたいなのがネットのムードなのかなぁ。

対象に積極的に関心をもって、こっちから情報を取りに行くんじゃなくて、自分の位置から見えている範囲の外のものごとは存在しないも同然、どうでもいい、みたいな?

口を開けて待ってるから、瞬間瞬間に笑える情報をそっちから送り込んで来いや、みたいな? それってアパシー? 心、生きてる?

大手が力を入れて制作し、大々的に宣伝したものが、歴史的な大コケを喫しました、なんていうのは娯楽として最高なんだろうなぁ。

「テレビですげー宣伝してたのに。朝の情報番組から夜まで出っ放しで全力宣伝。映画と関係ない商品のCMでも応援してますって。ガンガン宣伝してたのにな。テレビの宣伝効果無くなってきてるね」。
2016/03/07(月)21:54:35.13

そのテレビを朝から晩まで見続けてたんかい、ってツッコミはともかくとして、それ、すげーあるかも。35年前の薬師丸バージョンの時代は、テレビが流行を作り出すことができていた。「シラケの時代」に突入したとは言われてたけど、今よりはまだ活気があった。

人々は付和雷同的で、話題に乗り遅れたら負けだぞ、みたいなムードがあった。流行ってんだったら知っておかないと、人から笑われて、みじめな目に遭うぞ、みたいな。

今は、テレビ自体、見る人が減ってるっぽいし。それに代わるメディアが登場したわけでもないし。ネットは極小のコミュニティと些末な情報の膨大な集まりで、しかも情報の消費サイクルが一日単位ぐらいの短さなので、多くの人々に広く情報が拡散することを狙う広告媒体としては、あんまり頼りにならない。広告失敗を騒いで煽る媒体として機能しちゃってる。

●救世主、あらわる?!

公開の翌週末、3月13日(日)の0:02amに始まり、20件ほどの連続ツイートで、ツイッターに秀逸なレビューを上げた人がいる。

cdb氏(@C4Dbeginner)。
トータル5万リツイートに迫る勢いで、「カドカワの大爆死映画」が14日(月)の午前中にトレンド入りしている。

・「橋本環奈の超人性」だけが強烈に残る内容

・薬師丸版とは何もかも別物というか、あえて正反対の方向にした感じ

・どんなに賢そうな台詞を用意しても、しゃべらせるとバカなのがばれてしまうような俳優とは逆で、等身大の女子高生の台詞が用意されていても、声を出すと「こいつは頭が切れる、普通の人間ではない」と一発で観客にわかってしまう。

・ヤクザ映画の中で「頭が切れる、優秀である」ということは「こいつは強い」というイメージに繋がるんだよね

・橋本環奈演じる星泉は出演俳優の誰よりも危険な暴力の匂いを発している。「ヤクザとは何か」「なぜヤクザは怖いのか」という本質に迫る「アイドル映画版アウトレイジ」みたいな映画になってる。ファンが望んだかはともかく。

・「愛する人に銃を向ける」というシーン、目をカッと見開いてヒューッ!ヒューッ! と速い呼吸を整えるっていう演技、橋本さん、どこで覚えたんだよそれ。本当にヤクザが人を撃つ時に腹をくくる演技ですやん

・特に「怒り」の演技。顔を歪めて怒るんじゃなくて、スッと無表情になった顔にバリバリっと怒気が走るっていう演技ができる。たぶん人生の中でそういう風に怒った経験が何度もあるんだろうと思う。知らないけど。

・頭いいのは「オラァ」とか「なんじゃワレェ」とかは一切言わない。「法律に守られた女子高生がどういう態度を取るとヤクザが困るか」をよく知ってる。なぜ知ってるのかは謎です。

・いちおう年上のヤクザとの淡い恋もあるけど、「姐さんと若頭」的文脈で長谷川博己が年下に見えてくる。

恐れ入りました。

中森明夫氏もなんか言ってる。

中森明夫@a_i_jp
『セーラー服と機関銃-卒業-』を「爆死」とかほざいてる輩がいるけど、「爆死」してるのは絶対に観るべき映画を観ないで冷笑してるお前らのほうだよ! 橋本環奈の機関銃に撃たれて死んでくれ!! 8:07 - 2016年3月15日

こいつ「オタク」の名付け親で、「銀ブチメガネのつるを額に喰い込ませて笑う白ブタ」とか言ってたやつじゃん。たまにはいいことも言うんだな。
http://www.burikko.net/people/otaku01.html


●過小評価はじきに是正される

株に投資するとき、人気上昇株を買ってはいけないと言われている。人気ってことはすでにみんなが知ってるってことで、すでにガンガン買われまくった後だってこと。

需要と供給の法則にしたがって、すでに値上がりした後である。その会社の実力に見合う以上にまでつり上がっていれば、後に適正な価格へと下がるだけ。

まだ人が気づいていないのを見つけるべきである。過小評価されている企業、ほんとうの実力にまだ認識されていない企業は、本来あるべき株価よりも低く取引きされている。そういうのは、やがて人々が気づき始め、適正な価格へと引き上がる。そういうのを見つけて買っておけ、と。

この映画も、まだ人々の多くは思い違いをしていて、過小評価されている。いくらなんでも、こんなに客席スカスカってことはありえない。やがては評判が評判を呼び、徐々に人が入るようになっていき、桜が咲くころには今年一番の話題作になっているはずである。たのむから、いま早まって、打ち切ったりしないでくれ。

興行収入で余力ができたら、ついでに『セーラー服おじさんと一晩中』も作ってくれないかな。数学とか物理とかコンピュータサイエンスとか、哲学とか、社会問題とか、語り明かしちゃうぞ、っていうの。どう?

●「ハルチカ」主演決定!

Sexy Zoneの佐藤勝利と橋本環奈が、2017年公開の新作映画「ハルチカ」でダブル主演を務めることが、3月17日(木)に発表された。
http://natalie.mu/eiga/news/180006


「爆死アイドル、橋本環奈完全終了へ」とか言ってたネット民、なんか言うことは?


【GrowHair】GrowHair@yahoo.co.jp
セーラー服仙人カメコ。アイデンティティ拡散。
http://www.growhair-jk.com/


あ、タイトルの意味を説明しておくのを忘れた。タワシおじさんがプリキャンの大喜利に投稿してくれたネタからです。

今回は、時々刻々、リアルタイムで変化していく状況を追いながら書く、という作業になりました。書きながらもネットから目が離せないという。それに全力を投入しちゃったもんで、この欄を埋めてる時間もエネルギーもなくなりました。いまここ。湯気がほかほか立ってる状態で配信されます


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編集後記(03/18)

●澤田瞳子「若冲」を読んだ(文藝春秋、2015)。カバー絵は「紫陽花双鶏図」のトリミングである。かつて若冲のプロフィールと異様に緻密な作品を、どこかで見た記憶がある。8つの短編からなるこの本を、退屈を覚悟で読み始めたのだが、若冲という人物の意外な(といっても、殆ど知らないのだから、意外も何もないのだが)設定にひかれて面白く読み進めていった。「若冲の絵には古今東西の画人があえて筆に起こさなかった、生命の醜さ不気味さを直視する冷酷さがございます」と同業の谷文晁が言う。与謝蕪村、円山応挙、池大雅など有名絵師も登場する。だが、当時の画壇の交流を描いた物語ではない。

若冲にとって、絵とはすなわち自らの罪の権化、妻を死に追いやった己を罰するための手立てである、という設定がまずある。己の罪を塗り込めるべく、息を詰めて幾重にも顔料を重ねて精緻な彩色画を描き続ける。そして、若冲への怨念だけを糧に絵の修業を重ねて、驚くべき画力で這い上がってきた義弟がいる、という二段目の設定がある。己への罰として絵筆を執る自分と、そんな自分を怨んで若冲の贋絵を描く義弟の君圭。奇矯と陰鬱が入り混じった絵を何十年も描き続けられたのは、追いたて続けた義弟の存在ゆえであった。義弟が後の市川君圭(実在)というのはもちろんフィクションだ。やや無理な構造かも。

「18世紀の京都で円山応挙と並ぶ人気を集めた若冲は、特に2000年の大回顧展以降、命の喜びを謳うとかでポジティブに再評価され、一気にブレイクした。でもあの筆致や色彩感覚といい、本当にそれだけ? そんなに明るい絵? って、ずっと違和感があったんですね。そこで彼の絵や史実の間を物語で繋いだのがこの小説で、『どこまでが事実?』って、よく聞かれます(笑)」と、週刊ポスト2015年5月29日号のインタビューにある。この「若冲」は評伝ではない。史実をベースにしながら創作したエンターテインメント小説である。もとより史実など知らないわたしだから、物語にすんなり入り込むことができた。

絵画の見巧者であろう筆者の文章は、若冲の絵のように緻密で格調高く、読んでいて気持ちがいい。「いずれ散る運命に花弁を震わせる花々、孤立無援の境遇をひたすら噛みしめるばかりの鳥たち、身の毛がよだつほどの孤独と哀しみが、極彩色の画軸から滔々と溢れ出している」と説かれると、なるほどそういう見方があるのかと感動する。若冲のいちばんの理解者は薄幸の妹お志乃であり、お志乃こそ澤田瞳子の分身だ。折しも4月22日から東京都美術館で「生誕300年記念 若冲展」が開催される。小説を読んだ人の鑑賞のポイントは、読んでいない人とは絶対違う。読んでから見るか、見てから読むか。 (柴田)

澤田瞳子「若冲」
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「生誕300年記念 若冲展」特設サイト
http://jakuchu2016.jp/



●マラソンのリオ代表決まったね。そういや名古屋ウィメンズは去年は世界選手権代表選考、今年はオリンピック代表選考レースだったんだなぁ。いい時に出場できて良かったわ。

名古屋ウィメンズマラソン続き。ノースフェイスのエンデュランスベスト。360gと軽い。背負い、胸に縦についているファスナーで着用。背中部分は大きなメッシュ。身体にフィットして揺れない。下は肋骨あたりまでで、腰や腕が自由に動かせる。ちんちくりんに見えないこともない……。ハイドレーション対応(しないけど)。ドリンクフォルダーが両肩に。前側にポケットが6つ。

山用らしくホイッスルになるファスナータブがついている。背中側にはメインバッグ。中にはまたポケットがあり、上着はバッグ外にあるバンジーコードに挟むことだってできる。

便利すぎて普段から使いたいぐらいだ。釣り好き、カメラ好きの人が普段からベストを着用する気持ちがよくわかる。続く。 (hammer.mule)

ノースフェイス(THE NORTH FACE)エンデュランスベスト
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