装飾山イバラ道[175]懐かしいだけじゃない「まんがはじめて物語」
── 武田瑛夢 ──

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ヒストリーチャンネルで「まんがはじめて物語」を放映するというので、何話か録画してみた。これは1978年から1984年まで放送された子供向け教養番組だ。およそ35年前で、当時小学生の私はよく見ていた。

・まんがはじめて物語
https://www.historychannel.co.jp/detail.php?p_id=01002


この番組がヒストリーチャンネルで扱われるのは意外な気もした。確かに物事の初めてを探るというのテーマだけれど、内容は電気、映画、スポーツや食べ物などで、学ぶ知識は幅広かった。

可愛い女性とキャラクターが実写で出てきて、本編はアニメというのも、教養番組ジャンルとしては革新的だったと思う。

当時はお母さんたちからの「変なマンガを見るくらいなら、こっちのお勉強まんがを見なさい」という雰囲気もあって人気だったのだと思う。




●実写部分に時代を感じる

実際に見てみると、うつみ宮土理が歌う元気なテーマ曲、お姉さん役の岡まゆみとピンクのモグタンの実写から始まるシーンはものすごく懐かしかった。

「電車」の回は、街でのロケで車が映る。なんだか四角くて古臭い車ばかりで、あーこんな感じの時代だったなぁと思う。昭和そのものだ。

番組はお約束の展開で、謎の生物モグタンがお姉さんを「電車のはじめて」を見に行こうと誘い、「くるくるバビンチョパペッッピポ(以下略)」の呪文でタイムスリップして過去へと飛ぶ。

そんなことができるモグタンとお姉さんって何者なのか、今考えると結構怖いかもしれない(笑)。

タイムスリップからはアニメ画面なので、お姉さんの仕事は声だけに切り替わる。アニメはなかなか良くできているし、声の出演者ロングおじさんも安定感ばつぐんで、ところどころに歴史的解説を加えてくれる。

アニメの展開は面白いけれど、絵は今見ると正直かなりガクガクでガサガサしていて、高解像度の大画面で見られる時代が来るなんて想定外だろうと思えて同情してしまう。教養番組らしく途中で入ってくる図解説明はわかりやすくできている。

●今見るからこそわかること

「電車」の初めての回では、煙ボウボウの蒸気機関車の時代から、ちんちん電車が導入され運転手が花形職業であったという話などだった。

その後、連結車両が当たり前になり、山手線付近の都会からどんどん電車化されていったのがわかる。最後は新幹線がカッコ良く走る現代の実写シーンで終わっている。

この時代なので新幹線はまん丸のライトの0系で、東京・大阪間を便利に移動できるようになったという解説だった。

丸い目と鼻の「ひかり」の顔はゆるキャラみたいで本当に可愛い。当時は100系新幹線に置き換えが始まる直前だったようだ。北海道新幹線が開通した今見ると何とも感慨深いので、電車好きの人にはたまらないと思う。

私はお姉さんが色っぽすぎるのが気になったけれど、そこがいいという人もいると思う。

一話作るのにいろんな手間をかけているのに、一回分が15分の二話構成なのも子供の飽きっぽさを考慮してのことだと思う。このシリーズはその後も色々と作られた。

現代の便利な生活の「はじめて」が何だったのか、それを確かめに行くのがテーマの番組だけれど、番組自体が35年前の話なのだ。そこからはるばる日本が重ねた歴史を、追加で作って欲しいと思ってしまう。

ただ、どんなに時代を重ねようが「はじめて」は、はじめてで変わりがないので、この番組はこれで完結しているとも言えるのかもしれない。

今見ると番組自体がタイムカプセルのようで、はじめて何かをした昔の人たちの頑張りが詰め込まれているみたいだった。忘れてしまうには惜しい番組だと思った人がいたからこその再放送なのかもしれない。


【武田瑛夢/たけだえいむ】eimu@eimu.com
装飾アートの総本山WEBサイト"デコラティブマウンテン"
http://www.eimu.com/


冷蔵庫をそのうち新しく買い替える必要があるけれど、ちょっと調べると10年ちょっと経つとすごく進化してしまっていて困る。今時の冷蔵庫のCMを見るとラップしないで生の魚を入れているし、人を驚かそうとしてつけた機能なんじゃないかと思うほど。私は用心深いので、そんなの当たり前になった頃でないと怖い。