映画ザビエル[18]出来が良すぎて思わずウケる/カンクロー

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◎ファニーゲームU.S.A.

原題:Funny Games U.S.
制作年度:2007年
制作国・地域:アメリカ他
上映時間:111分
監督:ミヒャエル・ハネケ
出演:ナオミ・ワッツ、ティム・ロス、マイケル・ピット

●だいたいこんな話(作品概要)

ハネケ監督自身の「ファニー・ゲーム」のハリウッドリメイク作品。ハリウッド的スリラーのパロディと言われるが、その手法は洗練されたえげつなさ。ある裕福な家族の穏やかな休日が、一変して不条理極まりない暴力にさらされる。行われる暴力をカメラが捉えることは一切ないが、赤裸々に見せつけられるスプラッタホラーよりも、ずっと恐ろしい。

コワイ怖い作品ですねぇ。(←淀川長治節)




●わたくし的見解

97年のオーストリア作品「ファニーゲーム」と全く一緒、と伝え聞いていたのでスルーしていたけれど、オリジナルの鑑賞から数年経ったおり、じゃあどんくらい一緒なのか見てみっぺと思いたち、U.S.版も鑑賞。

リメイク権を獲得しプロデュース陣に名を連ね、オリジナル作品の監督ミヒャエル・ハネケに懇願して、自ら主演も務めるナオミ・ワッツの頑張りを見ておこうか、とゆー気持ちもあった。ナオミ・ワッツが監督に懇願、というくだりは出どころが思い出せない。ただの私の妄想かも知れない。

ミヒャエル・ハネケ本人が語ったのか、映画批評家が勝手に解説しているだけなのか、これも定かではないが、オリジナル「ファニーゲーム」はハリウッド映画への痛烈な批判であると一般的に言われている。

にもかかわらず、オリジナル監督がハリウッドでセルフリメイクするってどう? どーゆーことだと思います? みなさん。

U.S.版は伝え聞いていたとおり、マジでか? と思うほどオリジナルと一緒である。

キャストがハリウッド俳優に変わり、言語が英語に変わり、たぶん電話が携帯電話に変わった(あるいはオリジナルも子機ではなく携帯だったかも知れないが大きさが、ほら10年も経つと随分違いますよね)程度で、あとはホント一緒。

役名もドイツ語読みが英語読みになっているだけだし(子供の名前は違うっぽいけど)ロケーションもよくここまで似たとこで撮ったよな、て感じ。音楽もたぶん一緒で、衣装もほぼ同じ。カット割りも。

何これ?! こんな舞台の再演みたいなこと、やる意味あんの? 映像で。と思いつつ、ここまでくるともうウケる。

ナオミ・ワッツがこれを自分で演りたがるのは、よく分かる。

映画大国アメリカでは、案外ヨーロッパの映画って上映されないらしく、たぶん日本のほうが(たとえば地方都市においても映画館で)他国の映画を観ることが容易。

素晴らしいと思った外国映画があればリメイク作って、知名度もある自分が演じて、作品と同時に自らの演技力も誇示したくもなるでしょうとも。

すげー美人でスタイルも良し。演技だって出来ちゃうんだけど、いつまで経っても同じオーストラリア出身のニコール・キッドマンには追いつけない感じのナオミ・ワッツ。いつもすげー頑張ってるのにね。

でも、この作品を獲ってきたのは大正解。これはニコール・キッドマンの映画ではない。ニコール・キッドマンだと最後には勝っちゃいそうだもん。

ただただ、ひたすらいたぶられ続け一矢報いることさえない可哀想な感じはナオミ・ワッツ向き。「マルホランド・ドライブ」同様にニコールではなく、ナオミがハマる作品と言える(だって、ハリウッドで成功しまくりのニコールだと今いち悲哀に欠けるから)。

面白いのはミヒャエル・ハネケみたいな変人(としか思えない監督)がリメイクに同意したところ。やっぱ美人に、あいりありーりすぺくちゅー、とか言われたら悪い気しなかったのかな。

オリジナルがハリウッド映画への批判なのだとすれば、セルフリメイク自体がハリウッド・リメイク全てへの揶揄かも知れない。けど、完成度が高すぎて、なんか、どっちでもいーやって思う。

ミヒャエル・ハネケには、映画愛ゆえの映画への批判精神みたいなものは勿論あるだろうけど、それよりも「どう、こんなに完璧(な作品。だって、どこも修正するとこないもんねー)」って自信に満ち満ちている感じがして、そこが楽しい。しかも実際に完璧すぎて、ウケる。

たしかに完璧なんだけど、以降の作品を観ると、やっぱ未だ若いのかもと思ったり。

「ファニーゲーム」は徹底的に悪意を見せる映画で、何しろ悪意がクンクンの短パン履いて歩いてる(クンクンなのはオリジナル版で、リメイクでは時代と共に短パンからハーフパンツになってるけどね)。

悪意が全面に出ていて、不快極まりない。ところが、その後の作品「白いリボン」では悪意が表に出てこない。たしかに存在してるのに。なんと気色の悪いことか。

悪意の無い直近の作品「愛、アムール」でさえ観客を徹底的に打ちのめすのだから、つくづく恐ろしい監督。でも美人には弱い。(←だから勝手な妄想だって)嫁にも頭が上がらない。(←たぶんそんな気がする)ウケる。


【カンクロー】info@eigaxavier.com
映画ザビエル http://www.eigaxavier.com/

映画については好みが固定化されてきており、こういったコラムを書く者としては年間の鑑賞本数は少ないと思います。その分、だいぶ鼻が利くようになっていて、劇場まで足を運んでハズレにあたることは、まずありません。

時間とお金を費やした以上は、元を取るまで楽しまないと、というケチな思考からくる結果かも知れませんが。

私の文章と比べれば、必ず時間を費やす価値のある映画をご紹介します。読んで下さった方が「映画を楽しむ」時に、ほんの少しでもお役に立てれば嬉しく思います。