映画ザビエル[23]エログロ礼賛/カンクロー

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◎渇き

原題(英題):THIRST
制作年度:2009年
制作国・地域:韓国
上映時間:133年
監督:パク・チャヌク
出演:ソン・ガンホ、キム・オクビン

●だいたいこんな話(作品概要)

神父のサンヒョンは人体実験によってヴァンパイアとなった。ヴァンパイアとして生きていくには血が必要だが、神父である以上、人を殺さずに血を手にいれなければならない生活を続けていた。

古い友人宅を訪ねたとき、その家族から虐げられ続けている友人の妻、テジュと出会う。サンヒョンは自らの信仰のみならず、あらゆるタブーを犯してテジュと強く惹かれ合うのだが。




●わたくし的見解

パク・チャヌク監督の「オールドボーイ」が好きで、ところが続く復讐三部作の完結作「親切なクムジャさん」は少々ピンとこなかった(「オールドボーイ」は三部作の二作目にあたる)。

クムジャさんは今ひとつだったし、しかも本作は吸血鬼ものといふ、アジア映画としては取扱い注意な素材だしで、正直なところ期待値低めで鑑賞に臨んだ。ハードルを下げた結果か否か判別がつきにくいものの、とにかく「渇き」は面白かった。

アジアン・ヴァンパイア・ムービーは大方の予想どおり、やはり微妙というか絶妙で、映像技術に驚かされたりはしない。

しまいにはワイヤーアクション満載で滑稽にも見えるのだが、それがかえってチャーミングな仕上がりになっている。しかも、ヴァンパイアなる超人的な存在の描き方だけが滑稽なのではない。

韓国映画の特色でもある暴力表現のグロさは、この監督の場合とても顕著。人間性の描き方も、えげつなくて露悪的でさえある。

それらを緩和する目的ではないのかも知れないが、作品全体に滑稽が散りばめられていて、それはつまり人間性の魅力の表現なのだと思う。格好悪いから、人は人っぽい。

当事者は笑い事では済まされない危機的状況で四苦八苦しているのに、パニクってドジを踏めば踏むほど、はた目には可笑しく映る。そして、それが大変にチャーミングなのだ。

役者も、この上なく魅力的だ。ヒロインはもちろん、この作品では少しダイエットしたせいか、ビジュアルよりも演技力で名を馳せるソン・ガンホが超超セクスィーに映っていることに、驚き桃の木この木なんの木気になる木。

パク・チャヌク監督は、役者を色っぽく撮るのが本当に上手い。

エロもグロも実にクドくて、えげつない。ところが常にどこかコミカルで、どぎまぎしたり顔をしかめたりしながら、つい笑ってしまう。

ヒロインが超萌え声で「神父さま、神父さまっ」と繰り返すところなど、何のプレイやねん! と力強くツッコミを入れずにはおれない。

実際は、プレイでも何でもなく正真正銘の神父なのだけれど、エロと見事に可笑しみが両立している。また、アジアン・ヴァンパイアの血の頂き方が実に効率的で、グロテスクを通り越して、ある種コミカルの領域に入っているのも、そのひとつと言えるだろう。

とは言え、えげつないクドさに、さすがに食傷気味でたどり着く映画の終盤。台詞の全くない長回しと(これも少々クドい。笑)ラストのポエティックな演出に、ただのエログロ悪趣味映画では終わらせない力量を感じ、どぎついファムファタールのツンデレっぷりと甘酸っぱさに、思わずニヤリとして終了。

たけし映画に見るようなビターな切なさも後味に加わる、どこか愛おしく思える不思議な映画だった。


【カンクロー】info@eigaxavier.com
映画ザビエル http://www.eigaxavier.com/

映画については好みが固定化されてきており、こういったコラムを書く者としては年間の鑑賞本数は少ないと思います。その分、だいぶ鼻が利くようになっていて、劇場まで足を運んでハズレにあたることは、まずありません。

時間とお金を費やした以上は、元を取るまで楽しまないと、というケチな思考からくる結果かも知れませんが。

私の文章と比べれば、必ず時間を費やす価値のある映画をご紹介します。読んで下さった方が「映画を楽しむ」時に、ほんの少しでもお役に立てれば嬉しく思います。