晴耕雨読[28]画像の翻訳の話/福間晴耕

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映像制作の仕事をしているとよくあるのだが、ある画像を別の媒体に置き換える作業というのが発生する。広義にとらえれば、ラフやコンテから完成画像を作る作業も入るので、それこそ全ての作業が当てはまると言っても良いだろう。

ところで、最近は映像制作ツールの進歩によって、コンテ段階でも完成品レベルのものだったりする。またよくあるコンバート作業、たとえばあるゲームをPS4からXBox Oneに移植したりするときは、一見するとほぼ同じクオリティの表現能力なので、画像を置き換えるときもほぼ同じクオリティで移す作業になってくる。

ところが、実はこれが難問なのだ。一見すると同じ表現能力を持つ媒体同士でも、絵を出す仕掛けは全く異なっていたりするので、単に素材を移し替えただけでは全く違う仕上がりになることも少なくない。




だが、発注者側から見れば一見同じような絵が出せるハードからハードに移し替えるだけなのに、どうして絵が変わるのだという話になってくる。ましてや、時間もお金もかかると言われればなおさらだ。

そんな訳で、元の素材がそのまま使えそうな仕事ほど、後でもめる可能性が高くなる。

更に厄介になったのはデジタル技術の進歩で、これまで手動でやっていたこうした置き換え作業を、自動でやってくれるツールが増えてきたことだろう。

それ自体は、上手く使えば省力化に繋がるので悪い話ではないのだが、残念ながら多くの人は「機械で変換すれば簡単でしょ」と言ってお金を払わなくなるどころか、自分でツールを使って変換すればよいと、仕事すら外に出さなくなってしまうのだ。

それでも変換がきちんと行われるなら、時代の流れだし仕方がない。しかし、残念ながら多くのツールでは、一見きちんと変換されているようでも実は間違っていたり、酷いものだと中でインチキをしているものさえある。

ついこの前も、自分の写真をイラスト風に変換することが出来る、スマートフォン向けの写真加工アプリ「Everfilter」が、「君の名は。」などで知られる新海誠監督のアニメ映画から、背景美術を無断使用していた事が明らかになって騒ぎになっているのを知っている人も多いだろう。
参考:http://www.huffingtonpost.jp/2016/12/04/everfilter_n_13421424.html

また、画像ではないがDeNAがやっている医療系サイトWELQが、医学的に見て中身が間違いだらけな上に、多くの記事が他のサイトから窃取したものだったことが判明して、閉鎖に追い込まれた事は記憶に新しい。

実はこのWELQの騒動も、指定した文章を入れると自動的に文体を変えて書き換えるツールが使われていたのではないかと言われている。
参考:http://bylines.news.yahoo.co.jp/yamamotoichiro/20161202-00065073/

同じような表現能力を持っていても、日本語から英語に翻訳するとニュアンスが変わるように、映像も媒体が変われば同じ素材から作ったも見た目が変わる。

そして、翻訳が単に単語を入れ替えただけでは出来ないように、映像もまた素材を入れ替えるだけでは済まず、最後は必ず人の手がかかることをわかって欲しい。


【福間晴耕/デザイナー】

フリーランスのCG及びテクニカルライター/フォトグラファー/Webデザイナー
http://fukuma.way-nifty.com/

HOBBY:Computerによるアニメーションと絵描き、写真(主にモノクローム)を撮ることと見ること(あと暗室作業も好きです)。おいしい酒(主に日本酒)を飲みおいしい食事をすること。もう仕事ではなくなったので、インテリアを見たりするのも好きかもしれない。