晴耕雨読[30]必要なのは柔軟性とバランス感覚と精神的な慣れ/福間晴耕

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この前ネットで読んだ、大西宇宙飛行士のリハビリの話が面白い。

宇宙に行くと、無重力のせいで筋力が衰えるという話を聞いた人もいるかと思うが、実を言うと宇宙に行って一番衰えるのは筋力ではなく「重力下でどうバランスをとるか」という身体の動かし方だというのである。

例えば、大西さんは地球に戻ってからしばらくは、歩いたり走ったりする時に、太腿を高く上げることができなくなっていたそうだ。

その理由は、宇宙では重力がないので、腕や足を持ち上げる時に僅かな力で済んだからだ。地球上では腕や足の重さを支えて、その分大きな力で持ち上げる必要があるのに、無重力に慣れるとどのくらいの力で持ち上げる必要があるか、頭が忘れてしまっているからだという。

また、かがんで物を拾い上げるとき重心が前にずれるので、人間は無意識に身体を調整してバランスを取っているのだが、しばらく宇宙にいるとその感覚を忘れてしまって、ちょっとしたことでバランスを崩してしまうという。




こうした事から、リハビリでは筋力よりもバランスのとり方や、腕や足、頭の重さがどのくらいで、どの程度の力で支える必要があるのかを思い出させる練習にウエイトが置かれるそうだ。

長い前フリだったが、実はあらゆるスポーツや筋トレもこれと共通するような気がする。

最近、忙しさを口実にだいぶサボリ気味だが、以前やっていたロシアの格闘技システマでも、強くなるためには単に筋力をつけるのではなく、柔軟性やバランス感覚が必要な事を痛感した。

たとえ筋力があっても、柔軟性がなければ腕や足が上がらないし、関節技にもかかりやすい。そして、何より怪我をしやすい。

またバランス感覚がなければ、キックしようとして逆に均衡を崩して転倒するといった、笑い話のようなことにもなりかねない。

特にシステマではこのバランス感覚は大切で、たとえ筋力がある相手でも、僅かな力で倒す方法がある事を繰り返し練習したものだった。

そして、最後に大切なのは精神的な慣れだろう。よく喧嘩慣れした人間がとりあえず一発殴れば、相手は動揺するから主導権を握れると言うように、普通の人間は突発的な事、特に暴力に対しては肉体的な問題よりも精神的に弱くパニックになりやすい。

だが格闘技をやってみるとわかるのだが、意外と普通の打撃というのは急所に当たらない限りは、多少痛くても致命的なダメージにはならないし、それがわかると思ったよりも冷静に対応できるのだ。

そして、これは暴力的な事に限らない。むしろ階段を踏み外したり、突然抱きつかれたりといった時に、パニックになって固まらないためにも、こうした突発事態を想定して簡単なトレーニングをしておくだけで、ずいぶん気の持ち方が変わると思う。

特に受け身はあらゆる局面で役に立つのでおすすめである。


【福間晴耕/デザイナー】

フリーランスのCG及びテクニカルライター/フォトグラファー/Webデザイナー
http://fukuma.way-nifty.com/

HOBBY:Computerによるアニメーションと絵描き、写真(主にモノクローム)を撮ることと見ること(あと暗室作業も好きです)。おいしい酒(主に日本酒)を飲みおいしい食事をすること。もう仕事ではなくなったので、インテリアを見たりするのも好きかもしれない。